ワルキューレ『TVアニメーション「マクロスΔ」レアトラック集 ワルキューレがとまらない』レビュー

新曲2曲に、「星間飛行」「ダイアモンド クレバス」のカヴァー、「僕らの戦場」「GIRAFFE BLUES」の別ヴァージョンなど、 秘蔵音源を収録したワルキューレのボーナス・アルバムが登場!

2016年4月から9月まで放送された『マクロス』シリーズの最新作となるTVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』。劇中に登場する戦術音楽ユニット“ワルキューレ”(美雲ΔJUNNA、フレイアΔ鈴木みのり、カナメΔ安野希世乃、マキナΔ西田望見、レイナΔ東山奈央)は、これまでに素晴らしい楽曲の数々を発表してきた。

■2016年5月11日   1stシングル『一度だけの恋なら / ルンがピカッと光ったら』
■2016年7月6日   1stアルバム『TVアニメーション「マクロスΔ」ボーカルアルバム Walküre Attack!』
■2016年8月10日 2ndシングル『絶対零度θノヴァティック/破滅の純情』
■2016年9月28日   2ndアルバム『TVアニメーション「マクロスΔ」ボーカルアルバム2 Walküre Trap!』

※ここでしか聴けない「クラゲ音頭」「裸喰娘娘の唄」を収めた『TVアニメーション「マクロスΔ(デルタ)」オリジナルサウンドトラック1も6月22日にリリースされている。

TV放送が最終回を迎え、リリースも終了かと思われたが、11月にはボーナス・アルバム発売のアナウンスが飛び込み、そして2017年1月25日に『TVアニメーション「マクロスΔ」レアトラック集 ワルキューレがとまらない』がリリースされた。

“星間複合企業ケイオスの倉庫から発掘された秘蔵音源から待望の新曲まで、ファン垂涎の音源を集めたコレクターズ・アイテム!”という今作は、レアトラックや新曲、「星間飛行」「ダイアモンド クレバス」のカヴァーなど、合わせて全8曲を収録している。

「ようこそ! ワルキューレ・ワールドヘ」

公式のコメントによると、“「恋! ハレイション THE WAR」はまだフレイアが加入する前に作られたものだが、これはワクチンライブの新オープニングナンバーとしてフレイア加入後に作られたもの”とのこと。

作詞は、『マクロスΔ』シリーズ構成の根元歳三。作曲・編曲は、谷村有美や岡崎律子、メロキュアなど、多くの作品に携わっている西脇辰弥。そして、作曲のクレジットには“Wilhelm Richard Wagner”の名前が記載されている。リヒャルト・ワーグナーといえば「楽劇王」の別名に持つ19世紀、ドイツの作曲家。『さまよえるオランダ人』『タンホイザー』『ローエングリン』『トリスタンとイゾルデ』など歴史に残る歌劇、楽劇を手がけてきたワーグナーだが、ここで使用されているのは皆さんの期待に違わず、『ニーベルングの指環』の第1日『ワルキューレ』第3幕の冒頭にて流れる「ワルキューレの騎行」。『地獄の黙示録』でもおなじみのあのメロディがイントロ部分で流れてくる。“LIV MOON”の例を挙げるまでもなくシンフォニックな楽曲を得意とする西脇辰弥のクラシカルなアレンジに、銀河の果てをイメージさせるような電子音が入り交じる。テーマが終わった後に流麗なピアノ演奏が差し込まれるのも実に西脇辰弥らしい。

「ワルキューレの騎行」を用いた期待高まる、長く壮大なイントロから一転、サウンドはダイナミックなファンクへとシフト。ハイレゾでは量感豊かな低域が、ファンキーなこの楽曲の要となるリズム隊とホーン・セクションの音色に厚みを加え、メロキュアの「Pop Step Jump !」と同様に名うてのスタジオ・ミュージシャンが参加しているに違いないと思わせる迫力たっぷりの演奏を聴かせてくれる。

オープニングナンバーとして観客を一気に引き込む役目を担うこの曲は、まずはとばかりにメンバーの自己紹介から始まる。“Enjoy yourself”といった和やかな雰囲気に包まれた語り口調のヴォーカル・スタイルは、まさにパーティ・ラップ。さてパーティ・ラップ華やかなりしオールドスクールの初期においては、レコードによるブレイクだけでなく、フレーズの生演奏といういわば人力サンプリングによる手法も使用されていた。ファンクやディスコ・ミュージックの影響を受けて誕生したHIPHOPらしい制作話だ。生演奏+パーティ・ラップというオールドスクール的観点から捉えてみると、このノリのいいサウンドが「Got To Be Real」みたいにも聴こえてくるから何だか不思議。

カナメ→レイナ→マキナ→美雲→フレイアとマイクリレーよろしく自己紹介が、他メンバーからのレスポンスを挟みながら進んで行く。各キャラクターの特徴を的確なリリックへと置き換えたそのセンスと、凝縮された内容をリズミカルに歌う巧みなライミングに思わずにやりとさせられる。何よりもメンバーそれぞれの表情が実に活き活きとしていて、おなじみの“歌は命” “歌は愛” “歌は希望” “歌は神秘” “歌は元気”のコールもひときわ鮮やか。ラップによる自己紹介の後は、美雲とフレイアのソロにコーラスが交差しながら、爽やかにサビへと突入。メンバー全員によるラストのユニゾンも美しく、昂揚感が銀河系規模のパーティを興奮の渦に包み込む。

「ワルキューレがとまらない」

アルバムのラストは、オープニングテーマとなった1stシングル「一度だけの恋なら」や「僕らの戦場」を手がけた唐沢美帆加藤裕介とのコンビによる書き下ろし曲。

こちらは、“フレイアデビュー後のワクチンライブ用に作られていた新曲だが、その後、戦況が激しくなったこともあり、発表する機会のないままお蔵入りになっていたレアトラック。”とのこと。

タイトルがそのままに歌い上げられ、“とまらない”のフレーズがいつまでも耳に残る、平成の杏里かC-C-Bか、ワルキューレ Don’t stop! 80年代歌謡に真っ向から勝負を挑んだ、熱さほとばしるナンバー。音楽プロデューサーの福田正夫氏がインタビューでも語っているように、歌謡曲の中毒性や、ロックと歌謡曲との折衷によるアプローチを選択したアン・ルイスの「六本木心中」との関連性など、『マクロスΔ』の音楽の意図するところがよく理解できる曲だ。

80’sハードロックが始まるかのようなイントロから、ライヴ映えするこの曲の期待がいっそう膨らむ。高らかに奏でられるエレキギターのキレや雷鳴のごとく打ち鳴らされる轟音など、ハイレゾでは音の威力を引き出すようなミックスも効果的に作用しており、ステージでの演奏シーンを想像させるような、迫力が存分に伝わってくる。

序盤から飛ばし続けるサウンドと競りあうように、情熱的なヴォーカルを鮮烈に響かせる、ワルキューレの勢いも止まらない。ハイレゾの情報量がキャラクターの歌声をリアルに描写しており、くるおしいほどの愛を語るそれぞれのパートでは声に艶があふれる。ラストではさらに加速度を増して連呼される“ワルキューレがとまらない”のパワフルなフレーズに圧倒される。

収録されている他の曲について、公式のコメントとともに簡単に紹介しよう。

「涙目爆発音~with Claire~」

“脱退してしまったメンバー、クレア・パドル(CV.日笠陽子)が在籍していた当時に録音されていた秘蔵音源。カナメ、レイナ、マキナの3人が美雲を助けようと医療船に侵入した際、独房内でこの頃のエピソードを振り返っていた。”

エピソードとは、第21話『切望シークレット』のこと。『TVアニメーション「マクロスΔ」ボーカルアルバム2 Walküre Trap!』に収録されている「涙目爆発音」は、カナメが曲を通してメイン・ヴォーカルをとっているものだが、このヴァージョンはクレアだけでなくレイナやマキナもメインとなる箇所があり、その頃と現在の違いを聴き比べることができる。

「星間飛行~Freyja Ver.~」

“フレイアがワルキューレオーディションに応募しようとしていたデモテープ音源。子供の頃のフレイアは、ランカ・リーに憧れて故郷のレーブングラス村でもこの曲をよく歌っていたようだ。”

天真爛漫なフレイアの明るい歌声がいっそう際立つ、彼女にぴったりのカヴァー曲。曲が始まる前にはフレイアの自己紹介が入っており、緊張した面持ちながらも歌に対する純粋な気持ちやワルキューレへの憧れがひしひしと伝わってくる。

「僕らの戦場~Freyja Solo Edition~」

“ハヤテのΔ小隊入隊を賭けた最終試験の際、フレイアが歌ったバージョンをそのまま収録。”

『TVアニメーション「マクロスΔ」ボーカルアルバム Walküre Attack!』にも収録されている「僕らの戦場」だが、初披露された第3話『旋風ドッグファイト』でのヴァージョンが登場。フレイアのアカペラからスタートするのでまた違った印象を受ける。

「ダイアモンド クレバス~Mikumo Ver.~」

“美雲がワルキューレに加入する際にテストで歌った中の1曲。シェリル・ノームのカヴァー。”

脱退したクレアに代わってワルキューレに加入した美雲だが、第21話『切望シークレット』ではカナメ、レイナ、マキナが初めて美雲の歌を聴き、衝撃を受けるシーンが描かれている。

このアルバムでは、フレイアがランカ・リーを、美雲がシェリル・ノームの代表曲をカヴァーしている。ワルキューレのフロントを務める二人の個性の違いがこんなところでも表われているようだ。美雲は作品世界でも伝説となっているこの歌の偉大さに臆することなく、堂々とした歌声を披露している。

「僕らの戦場~Mikumo Solo~」

“美雲がメインボーカル、他の4人がバッキングボーカルを務める形で新たにレコーディングし直したニューバージョン。”

『TVアニメーション「マクロスΔ」ボーカルアルバム Walküre Attack!』に収録されている「僕らの戦場」では、美雲とフレイアが交互にメイン・ヴォーカルをとっていたが、ここではカナメやレイナ、マキナのソロ・パートもすべて美雲が歌唱している。

「GIRAFFE BLUES~Kaname Solo Requiem~」

“メッサーの戦死後、カナメをメインボーカルに据えて、アレンジも変えてレコーディングし直したニューバージョン。”

『TVアニメーション「マクロスΔ」ボーカルアルバム Walküre Attack!』や、シングル『絶対零度θノヴァティック/破滅の純情』にはフレイアと美雲のソロ・ヴァージョンが収録されているこの曲はファンからの支持が厚い。「レクイエム」の名を持つこのヴァージョンでは、厳かに奏でられるピアノとストリングスの旋律が哀しみに染まる歌声と寄り添うように美しく重なり、心に深く響く。

第20話「衝動 エクスペリメント」では、医療船の中で行方不明の美雲に呼びかけるようにカナメが歌い出すシーンがあった。

各曲に添えられたエピソードも興味深く、楽曲とともに楽しめる今作。新曲はもちろんのこと、ヴォーカルが異なるヴァージョンやカヴァーもまた味わい深い。2017年1月28日、29日にはこのアルバムのタイトルと同名の公演となるライヴ、《マクロスΔ 戦術⾳楽ユニット”ワルキューレ” 2nd LIVE in 横浜アリーナ「ワルキューレがとまらない」》が開催される。このアルバムに収録されている新曲もきっと披露されることだろう。今後もまたワルキューレの楽曲がリリースされることを願ってやまない。

●ワルキューレの音楽がどのようにして生まれたのか、よくわかるインタビュー
ハイレゾで広がる『マクロスΔ』の音世界〜FlyingDog音楽プロデューサー・ 福田正夫インタビューこちら

walkure ga tomaranai_JK_sワルキューレ
TVアニメーション「マクロスΔ」レアトラック集 ワルキューレがとまらない

FlyingDog
2017.01.25

FLAC・WAV 48kHz/24bit

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 収録曲

 1.ようこそ! ワルキューレ・ワールドヘ(新曲
   作詞:根元歳三 作曲:西脇辰弥・Wilhelm Richard Wagner 編曲:西脇辰弥

 2.涙目爆発音~with Claire~
   作詞・作曲:堂島孝平 編曲:北川勝利

 3.星間飛行~Freyja Ver.~
   作詞:松本 隆 作曲・編曲:菅野よう子

 4.僕らの戦場~Freyja Solo Edition~
   作詞:唐沢美帆・加藤裕介 作曲・編曲:加藤裕介

 5.ダイアモンド クレバス~Mikumo Ver.~
   作詞:hal 作曲・編曲:菅野よう子

 6.僕らの戦場~Mikumo Solo~
   作詞:唐沢美帆・加藤裕介 作曲・編曲:加藤裕介

 7.GIRAFFE BLUES~Kaname Solo Requiem~
   作詞:菜穂 作曲・編曲:h-wonder ストリングス編曲:加藤裕介

 8.ワルキューレがとまらない(新曲)
   作詞:唐沢美穂・加藤裕介 作曲・編曲:加藤裕介

©2015 ビックウエスト/マクロスデルタ製作委員会

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