『フルーツバスケット』『プリンセスチュチュ』などのアニメ作品や、林原めぐみや堀江由衣ら声優への楽曲を数多く手がけてきた岡崎律子と、自身のソロ活動を始め、〈物語〉シリーズや花澤香菜、中川翔子らの作品の作詞でもおなじみのmeg rockこと日向めぐみ。この2人のシンガーソングライターによるユニットが“メロキュア”。スタンダードを極めた美しいメロディとダイナミックなアレンジが調和したポップなサウンド、そして2人の歌声による美しいハーモニーが重なる、メロキュアでしか成し得ない音楽が華麗に広がっている。
10年ぶりにリリースされたアルバム『メロディック・スーパー・ハード・キュア』には、これまでに発表した全楽曲をリマスタリングして収録している。さらにクラムボンのミト&kz(livetune)、末光 篤(SUEMITSU & THE SUEMITH)、西脇辰弥、川口圭太らによるリアレンジ・ヴァージョン(ヴォーカルはメロキュア)や「Agapē」「So far, so near 」の別ヴァージョン、岡崎律子の提供曲のカヴァーや日向めぐみによる新曲を含む新録8曲を追加した全28曲。
以前よりファンからはメロキュア作品のハイレゾ化が待ち望まれており、その熱い声に応えるべくハイレゾ配信がCDリリースの後、急遽開始された。当時から48kHz/24bitによるレコーディングを行なっており、その音源をミックスしたデジタルデータやアナログ・ハーフインチからハイレゾ化を施している。まさにハイレゾという“未踏の地を踏む最初の瞬間”を体感できるアルバムだ。
アルバムの1曲目を飾るナンバーは華々しい叙事詩の開幕を告げるような壮大さ。ハイレゾではエネルギーが漲るダイナミックなサウンドが展開される。そうる透のパワフルなドラミングは天まで届くばかりに音が上へと突き抜け、間奏のギターはビームが放射されているかの荒々しい勢い。空間はライヴスタジアムのように広大で、臨場感ある演奏を映し出す。
迫力のある分厚いサウンドの中、それぞれ音のフォーカスもはっきりとしており、立体感のある音像。そして甘いヴォーカルもふんわりと量感豊かに耳に響く。コーラスとギターが相重なりながら突入する怒涛のエンディングも圧巻だ。
TVアニメ『ストラトス・フォー』オープニングテーマの2ndシングル曲は、イントロが始まった瞬間からハイレゾの解像度と躍動感が伝わる、スパークする音の抜けがますます痛快。音像はくっきりと定位も把握しやすく、ギターのカッティングも鮮やかに、空間の隅々まで響き渡るサウンドにハイレゾとの相性の良さを感じる。メインヴォーカルとコーラスが入れ替わる、岡崎律子と日向めぐみの歌のポジションも明瞭に描写している。
CDではdisc 2に収録されている、ロッキンピアノ・シンガーソングライターの“SUEMITSU & THE SUEMITH”こと末光 篤によるリアレンジ・ヴァージョンは、ベン・フォールズばりのアッパーなピアノと、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也と、toe、the HIATUSの柏倉隆史によるリズム隊が生み出すグルーヴが炸裂して実にご機嫌な仕上がりとなっている。
ギターのディストーション、強調されたステレオ感、凝りまくったアレンジ、厚みのあるコーラスワークで構成された、TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ』のオープニングテーマとなったデビュー曲。岡崎律子の70’sブリティッシュ・ロックへの憧憬が、日向めぐみのインディー、オルタナ感覚と化学反応を起こし、最高にポップでキュートなロックを生み出した。エレキギターの荒々しさ、散りばめられたエフェクト、左右に移り行く“Please Please Please”のコーラスなど、ハイレゾの解像感、分離感も目立ち、サウンドの鮮やかさがさらに際立つ。
豊かな情報量は声の輪郭を精緻に描き出す。岡崎律子のヴォーカルは華やかなサウンドに埋もれず前へと姿を表わし、高域はシルキーな質感で、中域と低域のウェットさが声に艶を与えている。何よりあふれんばかりの甘美な歌声に魅了される。イントロの吐息もこの上なくリアルで、さらに刺激を増した疾走感高まるサウンドに仕上がっている。
TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ』の挿入歌であり、多くのアーティストにカヴァーされているゼロ年代を代表するアニソン名曲。ハイレゾでは打鍵の動きがわかるほどのピアノの演奏が、レコーディングの空気感をありのままに伝える。残響は深くも音場は広すぎず、音や声に包まれているのような感覚だ。またダイナミクスレンジの広さが、重厚なストリングスとドラムによる壮大なサビ部分と叙情的な旋律を奏でるピアノパートとのコントラストを強めている。間奏のハーモニカは滑るように旋律を行き来し、胸を締め付けるエモーショナルな演奏はひときわ鮮やかに響く。
この曲ではメインとなる日向めぐみのヴォーカルは凛としてしなやかに、目の前で語りかけてくるように焦点を結ぶ。解像感が声の抑揚を繊細に映し出し、切ない想いが静かに伝わる。岡崎律子の柔らかなコーラスが日向めぐみのヴォーカルに寄り添うように広がり、感動がいっそう深まる。
今作には『円盤皇女ワるきゅーレ SPECIAL』の劇中歌となった「Agapē [水の惑星 version]」、メインヴォーカルを岡崎律子、コーラスを日向めぐみとヴォーカルを入れ替えた初出となる「Agapē [switched edition]」も収録している。
またクラムボンのミトとkz (livetune)による「Agapē」のリミックスも収録。原曲の雰囲気を保ちつつ、二人のヴォーカルの美しさを引き立てる、昂揚感あふれる「メロキュ愛」に満ちた仕上がりとなっている。
アコースティックな演奏にフレンチボッサの雰囲気が漂う小粋なナンバーは、OVA『円盤皇女ワるきゅーレ 星霊節の花嫁』のオープニング・テーマ。『ワるきゅーレ』シリーズではメロキュアが2作オープニングテーマを手がけているが、第3弾となるOVAでは日向めぐみ名義でクレジットされている。
初出のシングルの際、ややくぐもって聴こえたウッドベースもリマスタリングではベールを脱いで響きが豊かに、さらにハイレゾでは沈み込む低域のふくよかな鳴りも再現されている。爪弾かれるアコースティックギターの音色もみずみずしく、ウィンドチャイムや淡いキーボードの音色、アコーディオンの華やかさも印象的。音像はすっきりと質感は温かく、分離感によるリズムの軽快さが加わることにより爽やかさが増している。日向めぐみのウィスパーヴォイスが耳に心地好く、このスウィートさもまた絶品。
アルバムには岡崎律子が声優やアニメ作品に提供した楽曲を日向めぐみがカヴァーした新録の音源も収録。堀江由衣に書き下ろした「笑顔の連鎖」(アルバム『楽園』に収録)は、西脇辰弥による疾走感が加わったアレンジ。「ボクのキモチ」は『円盤皇女ワるきゅーレ』のキャラクター、コーラス(CV:桑島法子)のキャラクターソングで、山本陽介のギターが激しくも哀愁を漂わせかき鳴らされる。そして岡崎律子への想いを綴るラストナンバー「my favoritz」でアルバムの幕を閉じる。
月日を経ても色褪せることがないエヴァーグリーンな名曲の数々は、これから初めて聴く人にとっても親しみやすく、そして今なお新鮮に響くことだろう。ふたつの才能が「やり散らかした」音楽を、余すところなく再現するハイレゾならではのサウンドが実に魅力的に伝わってくる作品だ。
メロキュア
メロディック・スーパー・ハード・キュア【24bit/96kHz】
日本コロムビア
2015.10.02FLAC・WAV 96kHz/24bit
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1.Pop Step Jump !
(アルバム『メロディック・ハード・キュア』2004年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
2.1st Priority
(TVアニメ『ストラトス・フォー』OPテーマ 2003年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:関 淳二郎
3.めぐり逢い
(TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ 十二月の夜想曲』OPテーマ 2003年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
4.「虹を見た」
(アルバム『メロディック・ハード・キュア』2004年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:飯田高広
5.木枯らしの舗道を 花の咲く春を
(アルバム『メロディック・ハード・キュア』 2004年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:大野宏明
6.向日葵
(TVアニメ『ストラトス・フォー』EDテーマ 2003年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:関 淳二郎
7.Agapē
(TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ』劇中歌 2002年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
8.birthday girl
(アルバム『メロディック・ハード・キュア』2004年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:パパダイスケ
9.愛しいかけら
(TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ』OPテーマ 2002年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
10.Sunday Sundae
(ミュージックバード「週刊メディア通信」内『メロキュアの沈黙のradio』テーマ・ソング 2003年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:吉川 慶
11.ふたりのせかい
(アルバム『メロディック・ハード・キュア』 2004年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:高見 優
12.ALL IN ALL
(TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ 十二月の夜想曲』劇中歌 2003年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
13.rainbow kind of feeling
(OVA『ストラトス・フォー CODE X-1/X-2』EDテーマ 2004年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:関 淳二郎
14.So far, so near
(TVアニメ『ストラトス・フォー』劇中歌 2003年)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
15.しあわせ
(アルバム『メロディック・ハード・キュア』 2004年)
作詩:日向めぐみ 作曲:岡崎律子 編曲:パパダイスケ
16.ホーム&アウェイ
(TVアニメ『奥さまは魔法少女』OPテーマ 2005年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:水島康貴
17.1st priority(メロキュア meets 末光篤 a.k.a. SUEMITSU & THE SUEMITH)
rearranged by 末光篤 a.k.a. SUEMITSU & THE SUEMITH
Piano:末光篤 Bass:田淵智也 (UNISON SQUARE GARDEN)
Drums:柏倉隆史 (toe, the HIATUS) Guitar:鈴木俊介
※テレビ東京「アニメマシテ」 8月度EDテーマ
18.Agapē(メロキュア meets ミト & kz)
remixed by ミト (クラムボン) feat. kz (livetune)
19.ホーム&アウェイ(メロキュア meets 西脇辰弥 again)
rearranged by 西脇辰弥
20.ふたりのせかい(メロキュア meets 川口圭太)
rearranged by 川口圭太
Drums:かどしゅんたろう additional chorus arrangement:Takeshi (REVALCY)
21.Agapē(水の惑星 version)
(TVアニメ『円盤皇女ワるきゅーレ SPECIAL』劇中歌 2004年)
22.So far, so near(acoustic version)
(アルバム『ストラトス・フォー beyond the stratosphere』 2003年)
23.Agapē(switched edition)
※岡崎律子と日向めぐみのヴォーカルパート入れ替えヴァージョン。
24.笑顔の連鎖/日向めぐみ
rearranged by 西脇辰弥 chorus:岡崎律子
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:西脇辰弥
※岡崎律子が堀江由衣に提供した楽曲。今回 岡崎律子によるコーラスパートも収録。
25.ボクのキモチ/日向めぐみ
rearranged by 山本陽介 additional chorus arrangement / Takeshi (REVALCY)
作詩・作曲:岡崎律子 編曲:山本陽介
※アニメ『円盤皇女ワるきゅーレ 十二月の夜想曲】キャラクターソングとして岡崎律子が提供した楽曲のカヴァー
26.夏の向こう側/日向めぐみ
(OVA『円盤皇女ワるきゅーレ 星霊節の花嫁』OPテーマ 2005年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:亀山耕一郎
27.ちいさなうた/日向めぐみ
(OVA『ストラトス・フォー アドヴァンス』EDテーマ 2005年)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:関淳二郎
28.my favoritz/日向めぐみ
arranged by 川口圭太 chorus arrangement:Takeshi (REVALCY)
作詩・作曲:日向めぐみ 編曲:川口圭太
※新曲
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