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INTERVIEW

2017.02.22

花澤香菜 4thアルバム『Opportunity』トータルサウンドプロデューサー・北川勝利 インタビュー

ポップスではあるけれど、ちょっと尖っていて欲しいんです。そういうギターロックみたいなサウンドが今作には必要だなと思ってて。

───「チャレンジ」というのも今回のアルバムに関わるキーワードのように思えます。その大胆な試みというか、今作にはSpangle call Lilli lineが参加しています。僕も大好きなバンドなんですが、この組み合わせはちょっと驚きでした。でも楽曲を聴いてみると花澤さんの声と相性が抜群で。

北川 ですよね。実は『25』のときにお願いしたかったんですが、タイミングが合わなくて。あと前作はニューヨークだったので、ちょっと方向性が合わないかもしれないなと。今作はUKがテーマで、さらにギター・サウンドの楽曲ならばということで、前から名前が挙がっていたSpangle call Lilli lineにようやくお願いできました。面白いのが、彼らはデモとかは作らなくって、曲を作る時はメンバー3人とライブのサポートをしているメンバーとでスタジオに入って、ジャム・セッション的なものを行うそうなんですよ。そこでいろいろと録音した音源をヴォーカルの大坪(加奈)さんが持ち帰って、メロディや歌詞やコーラスとかを付けていくって話していて。バンドで演奏しているときには考えてなかったところにメロディが付いたり、編集をしている際にも曲の構成がどんどん変わったりとかするらしくて、こっちは「ああ……そうなんですかぁ」みたいな感じで。あまりにも異例だったから、ひたすら「このバンドすごいなぁ」って思ってましたね。

───ある意味、実にSpangleらしいというか、納得してしまう制作方法でもありますね。とても構築的ではあるのですが、偶然じゃなければ生まれないようなフレーズが特徴的でもあるので。

北川 リーダーの藤枝くんとずっとやりとりしていて、向こうも「もっとポップな方に寄せた方がいいですか?」って言ってくれたんだけど、Spangleらしさとか、Spangleならではのサウンドが今回欲しかったので、「いつもやっているスタイルそのままでお願いします」と伝えて、進めてもらいました。

───型にぐっと押し込めるといった感じではなく、元々Spangle call Lilli lineが持っているものを花澤さんが歌うイメージで広げてほしいと。

北川 うん。やっぱり、あくまでも彼らのバンド・サウンドに花澤香菜のヴォーカルが乗っかっているようなイメージかなぁ。ポップスではあるけれど、ちょっと尖っていてほしいんです。そういうギターロックみたいなサウンドが今作には必要だなと思ってて。

───そして、この曲はsalon musicの吉田 仁さんがミックスを担当されてます。吉田 仁さんはレコーディングやプロデュースなどでSpangle call Lilli lineの作品に深く関わっていますね。

北川 吉田 仁さんはカジ(ヒデキ)くんが手がけた曲(「ライブラリーで恋をして!」「パパ、アイ・ラブ・ユー!!」)でも参加してもらっています。Spangleからの希望もあっての参加なんですが、非常に調和のとれたサウンドに仕上がりましたね。

───ミックスによって音のバランスや印象ってガラリと変わりますよね。特にこの曲では重層的な音の鳴りとそのバランスがとても重要になるかと思います。楽器のアンサンブルなどはまさにポストロック的なミニマルな音の重なりと響きですね。

北川 そうですね。音数はそれほど多くなくて、空間性を感じるけど、アナログシンセだったりギターのフレーズだったり、その組み立て方ってメンバーのイメージがエンジニアの方にうまく伝わってないと、違うものになっちゃう。だけど今回は吉田さんもいたので、何も心配せず作業が進みましたね。

「できればGREAT3のオリジナル・メンバーでレコーディングとかいいですよね~」なんて話していたら、なんと実現しました

───続いては、片寄明人さん作曲の「FLOWER MARKET」です。高桑 圭さん、白根賢一さんもいらっしゃるので、恐ろしいことにまんまGREAT3ですね(笑)。

北川 そうなんですよねー。12年振りって言ってたかなあ。以前から機会があれば片寄さんにお願いしたいと思って、今回お話ししたところ「ぜひやりたいです」と返事をいただいて。レコーディングについて話し合っていたときに「メンバーいろいろ呼べるけどどうする?」なんて言われて、「できればGREAT3のオリジナル・メンバーでレコーディングとかいいですよね~」なんて話していたら、なんと実現しました。レコーディングは大久保のフリーダム・スタジオで行ったんですけど、GREAT3がデビューしてからずっとそこのスタジオを使っていて、レコーディングしないでゲームとかばかりやっていたとか(笑)、そんな話も聞けました。そのフリーダム・スタジオが年末(2016年)に閉鎖することになって、「じゃあ、GREAT3のオリジナル・メンバーで録音しようか」って話になって。

───ギターではこれまた驚き、會田茂一さんも参加しているんですよね。

北川 そうそう。アイゴン(會田茂一)もギターで参加してくれて。それにGREAT3やFOEのエンジニアをされていた南石聡巳さんも加わって、ちょっと同窓会的な雰囲気もありましたね。スケジュールはギリギリだったんだけど、なんとかスタジオを押さえられて。レコーディングは、お昼前に集合して2時、3時ぐらいには終了してました。すごく早かったんです。その後は当時のことを知っている方が続々といらして、差し入れとか記念撮影とかしたりしていて。あと、誰それが録音のときあんなことやって大変だったとか、当時のエピソードをいろいろ聞かせてくれて。レコーディング自体はあっという間だったけど、そういう話を聞かせてもらったのもすごく楽しかったです。このメンバーが集合して演奏している姿が見られたのも僕的にうれしかった。金澤ダイスケくん(フジファブリック)のキーボードも良かったなあ。香菜ちゃんフジファブリック好きだから、「言ってくれたらスケジュール合わせたのに!」ってあとで言われました(笑)。

───オルガンの音色等々、サイケデリックな感じがむちゃくちゃカッコいい曲ですよね。

北川 片寄さんはポップスの引き出しをすごく持っているから、「こういうのもどう?」っていろいろと提案してくれるんですね。そのなかからいくつかこちらのリクエストとしてご相談して、ああいうちょっと音響的な要素も入った、最近の片寄さんのスタイルにも近いポップス・サウンドが完成しました。

───この曲では、岩里祐穂さんが歌詞に花の名前をいろいろと盛り込んでいますね。

北川 岩里さんが「イギリスっていったらやっぱりイングリッシュ・ガーデンよ」っておっしゃっていて、花の名前をいっぱい入れてくれました。岩里さん旅行するのがお好きなので、そのイギリスでご覧になった庭園のことか、「ロンドンに行くんだったらどこそこのなになにを見るといいわよ」って、歌録りのとき、香菜ちゃんに教えていて。僕はそれほど興味がなかったのであんまり覚えてないんですけど(笑)。

花澤香菜Opportunity_初回盤JK花澤香菜『Opportunity』【初回生産限定盤】ジャケット

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