INTERVIEW
2017.02.22
───そしてですね、最後にとっておいたんですけど。
北川 はい(笑)。あれですね。
───はい、ミトさんの「Blue Water」ですね。この曲は冒頭からもう10ccの「I’m Not in Love」が頭にイメージされます。
北川 そう、コーラスがね。
───あの分厚いコーラスというか、濃霧のように声に覆われるような雰囲気だったものが、だんだんと4つ打ちのレイヴ・ミュージック~EDM的なダンス・ナンバーに変化していく構成で。ご自身の声をここまで重ねた曲って、花澤さんの作品ではありませんでしたよね。しかも北川さんは、このレコーディングについて反対されていたと花澤さんからお聞きしたのですが。
北川 いやいや。だっておかしいんすよ!(笑)
───何がおかしいんですか?(笑)。
北川 だって、香菜ちゃんも忙しいじゃないですか。いや、忙しいからどうこうってわけじゃないけどね。結構スケジュール的にかつかつなのに、ミトくんから「メイン・ヴォーカル以外にコーラスだけで2日押さえたい」って言われて。「え?合計3日間?そんなに録るの?」みたいな。大丈夫なのかなあ?って思って。終わりが見えないままコーラスだけ「あー」って延々と歌うのって、結構きついじゃないですか?そういうのもあって。僕もレコーディングに立ち合いながら「え?まだやるの?もういいんじゃないのー」って言っていて(笑)。「そんなに入れなくてもいいんじゃないのかなぁー」っ(一同笑)。
───(笑)。すごいですよね。ある意味、ミトさんの偏執的な部分が出たなって。
北川 そうなんですよ!おかしいんですよ、あの人!
───ここでも「どうかしてる」ですね?
北川 マジで「どうかしてる」!(笑)。「I’m Not in Love」的な方向性はわかったけど、それと同じだけコーラス録れとは言ってないから!(笑)。なんだったら僕らも歌うしね。結局、100何十トラック録ったのかな?
───120~130と仰ってましたね、トータルで200超えたとかで。
北川 だから「どうかしてる!もうやめろよ!」って言いました(笑)。
───「どうかしてる!やめろよ!」って本当にスタジオでの会話ですか(笑)。たしかに10ccの場合、ほかのメンバーも加えてあのコーラスですからね。
北川 そうなんですよ。「あっちはひとりじゃなくて何人かで歌ってだと思うよ」って言ったんですけどね……聞いてなかったのかな?(一同笑)
───実際、北川さんはこの「Blue Water」を聴かれてどのような印象を受けましたか?
北川 そうですね。最初から「I’m Not in Love」的なというのは聞いていたんですが、そのままだと全体的にふわーっと終わっちゃいそうな気がしたんで、ミトくんにプラスで何か加えてほしいとお願いして。そうしたらEDMになって帰ってきて。「ああ、なるほど。そうなんだー」と思って(笑)。
───こうきたかと?
北川 こうきたんだと思って。うれしそうに「こういうふうになったよー」って言ってきたんで、「お、おう……イイね!」って答えて(笑)。すごい曲ですよね。初めて聴いたとき、ラストはこの曲しかないよなあって思いました。
───曲が進むにつれて祝祭感、多幸感がどんどん上がっていくので、たしかにラストしか置き場所がないかもですね。
北川 すごいよね、隅々まで「どうかしてる!」って(笑)。
───でもこれだけ花澤さんの声を重ねることって、ある種の“究極的フェチ”なところもあって。恐らくこれはファンの皆さんも心の何処かに抱いていた夢のような曲だったりするのかなあって思いまして。すごく贅沢な楽曲ですよね。
北川 これは贅沢すぎますね。おかげでこのアルバムを締めくくる、素晴らしい曲になりました。
───これをハイレゾで聴いたらさぞかしすごいだろうなって思いました。
北川 そうですよね。どうなっちゃうんだろう。スタジオですごく良い音で何種類か試して聴かせてもらったんですが、そのときもすごかったんですよ。どこもかしこも花澤だらけで。
───空間を花澤香菜の声が埋め尽くすこの曲。ミックスも難しかったのではないですか?
北川 いやー、もうイジメですよね(笑)。単純に機材的な面で言っても、トラック数が究極ですから。1台じゃ動かないから、それもあってミトくんが「どうしよう?」みたいに言っていて。「いやどうするのって、それだけ録ったのはあなたなのできちんとお願いしますね!」って(笑)。アレンジをしたミトくんも大変だったし、それをずーっと延々千本ノックみたいに百何十本歌わなくちゃならない香菜ちゃんも大変だし、録り続けて整理していくエンジニアさんも大変だし、それを引き継いで、まとなきゃいけない作業も大変。それを2ミックス(ステレオ)にまとめるために声をすべて生かす方法を探していくなんて、僕にはできないなあ、そういうことは(苦笑)。
───さて、花澤さんの作品として皆さん最良のものを作ろうと突き詰めた結果、最高のアルバム『Opportunity』が完成しました。トータルサウンドプロデューサーとして考える、このアルバムの楽しみ方とはどんなものでしょうか?
北川 まずはイギリスやUKサウンドというキーワードの中で生まれていった各楽曲の振り幅ですかね。それと、さっきのコーラスもそうですけど、今作では96kHz/32bitでほぼほぼ全部録っています。現場も大変そうでしたし、マック(PC)も大変そうで、チャレンジではあったんですけど、のちのハイレゾ対応ということも見据えて良い音で録りましょうと。今回は規格でも統一することができました。CDではすぐにわからないのかもしれないですけど、やっぱり奥行きとか音の響きですとか、いろいろと違ってきているので、ハイレゾで聴いたらその差がさらによくわかると思います。
───音質的にも、ハイレゾの方が北川さんたちがトラックダウンやマスタリングで聴いていた音に近いものになるんじゃないかと思います。
北川 うん、本当にそうだと思います。
───このアルバムは聴いた後にすごい音楽体験をしたなあという感動が湧いてくる作品ですよね。読者の皆さんは、北川さんのインタビューをご覧になられたうえで、またさらにいろいろな楽しみ方をしてもらえたらうれしいですね。
北川 そうですね。そうしてもらえると、僕としてもすごくうれしいです!〈END〉
●花澤香菜『Opportunity』のレビューはこちら
北川勝利
ソウル、JAZZ、ギター・ポップなどをルーツに持つROUND TABLEのVo、G、B。 1997年、高橋幸宏氏の主宰するコンシピオレコードよりミニ・アルバム「WORLD’S END」を発表。これまでのリリース枚数は、ミニ・アルバム、マキシ・シングル含め18枚。現在はリリース、ライブのほかに、楽曲提供、編曲、プロデュースの活動も活発に行なっている。坂本真綾、中島 愛、花澤香菜など人気声優への楽曲提供やプロデュースも多数手がけている。
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花澤香菜
Opportunity
Aniplex Inc.
2017.02.22FLAC 96kHz/24bit
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1.スウィンギング・ガール
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:kz
Bass:ミト (クラムボン)
All Other Instruments:kz (livetune)
2.あたらしいうた
作詞:花澤香菜 作曲・編曲:北川勝利
Drums:山本真央樹
Bass:千ヶ崎学 (KIRINJI)
Piano:末永華子
Electric Guitar:松江 潤
Strings Programming:rionos
Chorus & Programming:acane_madder
Programming:戸川卓士
3.FRIENDS FOREVER
作詞:西寺郷太 作曲:Mick Hucknall 編曲:Andy Wright
Drums:Roman Roth
Bass:Dejay Edmund
Keyboards:Dave Clayton
Guitar:Kenji Suzuki
Saxophone:Ian Kirkham
Trumpet:Kevin Robinson
Trombone:John Johnson
Piano and Programming:Andy Wright
Guitar Solo:Gavin Goldberg
Produced by Andy Wright
Chorus:acane_madder、北川勝利 (ROUND TABLE)
4.星結ぶとき
作詞:宮川 弾 作曲・編曲:Spangle call Lilli line
Drums:歌代龍勢
Bass:柳澤一誠
Electric Guitar:藤枝 憲、笹原清明
Synthesizer:林 英和
Other Instruments:大坪加奈
5.滞空時間
作詞・作曲・編曲:宮川 弾
All Instruments:宮川 弾
6.カレイドスコープ
作詞・作曲・編曲:沖井礼二
Drums & Tambourine:原”GEN”秀樹
Bass , Electric Guitar , Programming & Chorus:沖井礼二 (TWEEDEES)
Trumpet:湯本淳希 (FIRE HORNS)
Chorus:acane_madder
7.透明な女の子
作詞・作曲:山崎ゆかり 編曲・プロデュース:空気公団
Chorus:山崎ゆかり (空気公団)
Bass:戸川由幸 (空気公団)
Piano, Organ & Synthesizer:窪田 渡 (空気公団)
Drums:オータコージ
Electric Guitar & Acoustic Guitar:奥田健介 (NONA REEVES)
8.Marmalade Jam
作詞・作曲・編曲:北川勝利
Bass:千ヶ崎学 (KIRINJI)
Electric Guitar:松江 潤
Chorus & Programming:acane_madder
Acoustic Guitar & Programming:北川勝利 (ROUND TABLE)
9.Opportunity
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:北川勝利
Acoustic Guitar & Shaker:北川勝利 (ROUND TABLE)
Piano:末永華子
10.ざらざら
作詞:花澤香菜 作曲:秦 基博 編曲:島田昌典
Drums:あらきゆうこ
Electric Bass:美久月千晴
Piano, Organ, Mellotron & Tambourine:島田昌典
Acoustic Guitar:秦 基博
Electric Guitar & Acoustic Guitar:八橋義幸
Strings:室屋光一郎ストリングス
秦 基博 by the courtesy of AUGUSTA RECORDS / Ariola Japan
11.雲に歌えば
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:北川勝利
Bass, Acoustic Guitar & Chorus:北川勝利 (ROUND TABLE)
Chorus & Programming:acane_madder
12.FLOWER MARKET
作詞:岩里祐穂 作曲:片寄明人 編曲:片寄明人、北川勝利
Drums:白根賢一
Bass:高桑 圭
Electric Guitar & Acoustic Guitar:片寄明人
Electric Guitar:會田茂一
Organ & Synthesizer:金澤ダイスケ
13.brilliant
作詞:花澤香菜 作曲・編曲:北川勝利
Drums:みどりん (SOIL&”PIMP”SESSIONS)
by the courtesy of Victor Entertainment
Wood Bass:千ヶ崎学 (KIRINJI)
Electric Guitar:松江 潤
Acoustic Guitar & Chorus:北川勝利 (ROUND TABLE)
Chorus & Programming:acane_madder
14.Seasons always change
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:矢野博康
Electric Guitar, Synthesizer & Programming : 梅林太郎
Synthesizer & Programming:矢野博康
15.Blue Water
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:ミト
All Instruments:ミト (クラムボン)
Sound Produced by 北川勝利 (ROUND TABLE)
※except for M-7, M-10
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