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INTERVIEW

2017.10.11

声優デビュー25周年記念アニソン・カバーアルバム 『アニメグ。25th』 緒方恵美 インタビュー

数々のアニメで主役・脇役を演じ、声優デビュー25周年を迎えた緒方恵美。彼女が周年企画のひとつとして、アニソン・カバーアルバムのリリースに対する支援をクラウドファンディングで募ると、海外のファンにも国内と変わらぬタイミングで正規に届けたいという主旨が大いに賛同され、わずか90分で目標額の1000万円を達成。早々に全商品コースが完売し、終了時には2500万円以上を集める結果となった。

そうした経緯で誕生した『アニメグ。25th』が一般流通でのCDリリースのうえ、さらに『アニメグ。25th High Edition』としてハイレゾ版も配信されることとなった。緒方恵美×ハイレゾといえば、今年2月に発表されたアルバム『real/dummy』もハイレゾ版を配信しており、記念イベントをリスレゾでも報告させてもらった(「緒方恵美 ハイレゾ試聴会&トークイベント・レポート」[https://www.lisani.jp/0000101062/])。緒方が旧知のクリエイターと組んで作りあげられただけに、その楽曲はハイレゾでお届けするにふさわしいクオリティとなっている。今回のインタビューではアルバム制作において尽力した佐藤純之介(ランティス音楽プロデューサー)も迎え、各楽曲における各アレンジャーの仕事ぶりをプロデューサー・緒方恵美として解説いただいた。

なお、『リスアニ!WEB』ではアルバムの経緯や制作過程、ゲストボーカル曲についてのインタビューを掲載。本インタビューとの連動記事となっているので、ぜひ併せてご一読いただきたい。

●リスアニ!WEBのインタビューはこちら

Interview & Text by 清水耕司 (セブンデイズウォー)
at Lantis

緒方恵美『アニメグ。25th High Edition』のレビューはこちら

原曲に対するリスペクトをもちながら2017年の音に

───前作『real/dummy』は緒方さんにとって、初のハイレゾ版ではありましたが、どのような印象でしたか?

緒方恵美『real/dummy』のレビューはこちら

緒方 私のファンの方は8割5分ぐらいが女性で、普段ハイレゾで音楽を聴くことのなかった方が多かったのですが、『real/dummy』をリリースしたときにはハイレゾ版がCDよりも先行して発売されたということもあって、多くの方がハイレゾ版を購入してくれました。結果、音楽配信サイトでランキング1位をいただいて私もびっくりしました。『real/dummy』をきっかけにハイレゾに目覚めた方も多くて。

───いいヘッドホンに買い替えてみたり。

緒方 「せっかくハイレゾ版を買ったんだから」ということで。満足してもらえたのはとてもありがたいことでした。「ハイレゾで『real/dummy』を聴いたら、ライブで歌っているイメージそのままのリアルな声だった!」と言ってくださったり。

───今回のマスタリングやミックスもそのときの経験を踏まえてですか?

佐藤純之介 そうですね。こちらとしては、会話しているような声質、オリジナルの生の声に近い音で作っておくことによって、CDのキャパシティの中でも緒方さんの最大限の魅力を出せるし、それこそハイレゾならもっと魅力が増します。それはミックスの話で、マスタリングはむしろオケやバンドも脇役ではないというイメージで音作りのディスカッションをさせてもらいました。というのも、今回は、参加されるアレンジャーの方、ミュージシャンを緒方さん自身が選ばれています。「シンガー&プロデューサー・緒方恵美」なんですね。ですので、アレンジャーの個性を引き出すのがいちばんにあり、緒方さんと制作陣というよりはバンドのようなイメージだったんです。歌が主役ではありつつも、演奏との一体感がある雰囲気を目指しています。

───収録曲に関してはどんなイメージで進められたのでしょうか?支援サイトでは、「アレンジャーによる編曲クオリティを保証」「担当キャラクターに近い声質で歌唱予定(一部対象外)」といったことをあらかじめ謳われていました。また、海外の方にも正規のルートで届けたいという主旨もあったので、そのあたりも意識されたのでしょうか?

緒方 はい。海外の人に日本と同じタイミングで届けられることもそうですが、日本のアニメーション業界は大変な状態なんだと知ってほしい、それに加えて、国内の人にも日本の業界が実はガラパゴス状態で海外には正規品が届いていないしPVもなかなか見れない状況だと知らせたい、という想いから生まれたクラウドファンディングでもあったんです。普段より「海外の人たちのために」という想いが強かったですし、わかりやすいものを作ろうという意識はありました。その点も踏まえて、2007年に出した『アニメグ。』ではシンガーとしてカバーさせていただきましたけど、今回は楽曲や歌詞の内容が合っているならキャラクターに近い声で歌うほうが親切なのかな、とも考えました。それからアレンジに関してですが、アレンジャーの皆さんに「元の楽曲に対するリスペクトを持っていただきながら2017年のあなたの音にしてください」とお伝えしました。「みんなが大切にしてくれているリフ等はぜひそのままで」と。そのうえで細かい発注をしていきました。

1曲目は“I am a dreamer”で始まる「プラチナ」がふさわしい

───では楽曲それぞれについてもお伺いします。アルバムの顔ともいうべき1曲目に「プラチナ」というのは?

緒方 歌詞が“I am a dreamer”から始まるのでふさわしいと思って持ってきました。この曲についてはまず前提として、原曲の坂本真綾ちゃんの声が素晴らしすぎる! というのがあります。ただ、自分が演じた月城雪兎=月(ユエ)のうち、月の方には歌詞が合っていると思ったので、彼に合わせて全体の音域をがつっと下げ、アレンジの鈴木マサキさんにも「ガールズポップではなくボーイズロックな感じに」とお願いしました。マサキさんは見事にこちらの望んだとおりの、その何倍も素晴らしいアレンジにしてくれました。ギターも本当にお上手なので、何にも飾らずにライン録音で録ってきてくれた音がもう、「ひゃーっ!」って感じのカッコよさ!(笑)。寺田志保さんのキーボード、田辺トシノさんのベースにも注目です!

───石川智晶さんが手がけた「不完全燃焼」はどんなイメージでカバーされましたか?

緒方 海外に、日本にはこんな素敵な曲があることをどうしても伝えたくて選びました。でも、やりたい気持ちがありつつも、非常に難しい曲なのでどうするか悩みました。改めて聴くほどに、「石川智晶は天才だ……」と。結果、manzoさんにお願いすることにしました。彼もまた天才音楽職人で、かつ、智晶ちゃんや私の呑み友達でもあり、私たちふたりのことをよく知ってくれているので。この歌は本当に美しいのですが、歌詞の内容がすごく生々しい。そこに注力して歌ったら、manzoさんに、「智晶さんの歌は『天からの声』なボーカルですけど、緒方さんのは地べたを這っている人間が血反吐を吐いているみたいな感じになりましたね」って言われました(笑)。でも、実はそうなることを予想してこういうアレンジにしてくれたんですって。歌う前は思いもしなかったくらい、「私自身の血の一曲」になりました。この曲はボーカルレコーディングの1曲目だったのですが、その意味でも、良かったと思っています。目木とーるさんのギターがまた、シビレル。

───CDのみ収録される「My Soul, Your Beats!」についても教えていただけますか?

緒方 「My Soul, Your Beats!」は『Angel Beats!』のOP主題歌で、劇中に登場するバンド、Girls Dead Monsterがロック・バージョンでも歌っていました。自分は直井文人という役だったんですが、それもあってアレンジしてくれた渡辺卓也さんには「“Boys Dead Monster“の曲にして下さい」ってお願いしました(笑)。渡辺卓也さんは、私が狛枝凪斗として歌った『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』のED主題歌(「絶対希望バースデー」)をアレンジしているので、私の歌の音域も把握されていて。なので思い切った、すごく低い声の曲になっています。ギターの鳴りとか楽器もとてもいい音域。ガツガツでカッコイイ。ライブが楽しみ。

───「神様のいたずら」佐藤順一監督の作品『たまゆら~hitotose~』のED主題歌(歌は中島 愛)で、作詞・作曲の大江千里さんも作品の雰囲気を非常に大切にされてました。

緒方 大江千里さんのあの完璧な楽曲を誰に委ねるか……悩みました。結論として、作品愛のある方にお願いするのがいいと思い、marbleの菊池達也君に依頼しました。『うみものがたり ~あなたがいてくれたコト~』等でmarbleが主題歌を担当していたということもあり、佐藤順一監督の作品にご縁があるうえに、ご本人そのものが『たまゆら』劇中に登場していますし(笑)。今回、クラウドファンディングでストレッチゴール以上の金額が集まったおかげで、アコースティック・バージョンでボーカルも同録、というコンセプトが実現できました。この曲は、亡くなったお父さんが遺した娘に向けて歌っているのですが、弾いてくれたメンバーも全員お父さんで、そのテーマを伝えたらみんなが「はっ!」「そ、それは……」ってなって(笑)。その次に録ったテイクは演奏の雰囲気ががらっと変わって、一発でOKでした。ハイレゾ版で聴くと生楽器の音色の素晴らしさが、さらに伝わると思います。

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