スピラ・スピカ(以下、スピスピ)の幹葉が、自身の憧れの人物に直接会いに行き、対談を通じて学びと刺激を得る人気企画『幹葉の森 おしゃべりルーム』。
第9回のゲストは、同じ事務所に所属する幹葉の先輩、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也である。バンドとして20年以上走り続けてきた歩みから、事務所との関係性、ソロアルバム『田淵智也』の制作背景までが縦横無尽に語られた。
音楽を続ける意味とは何か。長く続ける者だけが辿り着ける視点と、芽生える感謝。この日、時折涙を浮かべながら受け取った真心は、これからの“幹葉の森”をさらに豊かに、より生き生きと輝かせてくれるはず。そして、このインタビューを読んでくださった方にとっても、それぞれの歩みを続けていく力の一端となるのではないだろうか。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
PHOTOGRAPHY BY MISUMI
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──以前から「幹葉の森」で田淵さんに会いに行きたい!とおっしゃっていた幹葉さん。実は最初にお会いしたのは随分前なんだとか。
幹葉 そうなんです。そのあたりのこともお話したいなと思いつつ……田淵さんにこうしてお会いするのは本当に久しぶりなので、自己紹介を兼ねて私から先にお話してもよろしいでしょうか?
田淵智也 うん、よろしくおねがいします!

幹葉 やっほー!スピラ・スピカの幹葉です。……すいません、先輩に対して「やっほー」と言わせていただきました!(笑)。徳島県出身です。関西でバンドを組んでいた時代から、お客さんとしてUNISON SQUARE GARDENのライブに行っていました。その後、SMAに所属が決まって、SMAにはユニゾンさんをはじめ、LiSAさんなどがいて「すごい事務所に入ってしまった」とドキドキで・・・。その後、スピラ・スピカのメンバーはそれぞれの道で進むことになったのですが、私は大好きな歌をまだ歌いたいと思って、それを事務所の方たちに伝えたところ「幹葉が頑張りたいなら、一緒に頑張ろう」と言ってくださって、そこからはソロで活動しています!
田淵 うんうん。
幹葉 今は『The Wakey Show ~ ザ・ウェイキー・ショウ』というNHK Eテレの番組で、ウェイキーのスーツアクターをやらせてもらっていて。そして、この「幹葉の森」では、芸能界を生き抜くためにはどうすればいいか……そのヒントをいただくために、様々な先輩方にお話を伺っています。これまでにはオーイシマサヨシさんや森口博子さん、同じ事務所ではザコシさん(ハリウッドザコシショウ)にも会いに行き、本日は田淵さんに会いに来ました!
田淵 なるほど、よくわかりました。森口博子さんが対談相手だったの、まさに適任だよね。あの人の生き方は完全にそれだから。
幹葉 はい!憧れの女性です。スピラ・スピカはTVアニメ『ガンダムビルドダイバーズ』でデビューしているので、森口さんは大先輩で。森口さんにはありがたいことにお会いできることが多くて、ソロになるタイミングでも「頑張っていたら、いつか全部歌に繋がるから」と言ってくれて……って、すいません、私が畳み掛けるように喋ってしまいました。
田淵 いやいや。すっごくいい話だよ。ところで、さっき自己紹介で「関西でバンドを組んでいた時代」って話をしてたけど、幹葉ちゃんと事務所を通じて会ったのはまさにそのときだったよね?
幹葉 わ、覚えててくださってたんですか!バンド名を決めているときにもライブに行かせていただき、ご挨拶させてもらいました。
田淵 そうそう、で「こんなバンド名がいいんじゃない?」って。俺たちが好き勝手言いましたね(笑)。
幹葉 そうですそうです!そのとき、田淵さんがオーブントースターにハマっていて、ツアーに持って行ってるんだって教えてくれて、だから「オーブントースターズでいいんじゃない?」って(笑)。実はその後のバンド名を決める会議で、最後までホワイトボードに候補として残っていました。「これってもしかして、すごくいい名前なんじゃないか?」って。
田淵 あはははは。そうだったんだ。で、バンド名が決まったときにも報告しに来てくれたもんね。「決まりました! せーの!」みたいな。
幹葉 そうです!
──そう考えると、本当にお付き合いは長いですね。
幹葉 はい。いつか何かでご一緒できたらって思っていました。
田淵 確かに事務所も一緒なのに、意外と接点なかったよね。
幹葉 まだ私たちが追いつけていなかったというのもあって。でも今、こうして対談という形でおしゃべりできるなんて、とっても嬉しいです。私の序章が長くなってしまったのですが、今日は色々なお話を伺えればと思っています。

田淵 ところで、スーツアクターになったきっかけってなんだったの?スーツアクターと一口に言っても、戦隊モノも含めて色々あるわけで。
幹葉 スーツアクターになりたいと思っていたわけではなく、「ウェイキーになりたいな」と思った結果が、スーツアクターだった、という感じだったんです。
田淵 そうだったんだ。やっぱり、勉強になることも多い?
幹葉 多いですね。私の場合は、着ぐるみ操演と“声”を同時に担当しているんですが……。
田淵 えっ、マイクをつけてやってるってこと?
幹葉 そうなんです!声も同時にやっているからこそ、ちょっとした「はぁ……」みたいな息遣いでも感情が伝えられることに気づいて。正解がない難しさもありつつ、今はウェイキーらしい動きを模索しているところです。ただ、これはちょっと長距離戦になるなって思っています。
田淵 いや、大事なことだよ。それだけ目の前の仕事に真心を込めてやっているということだもんね。一生懸命やることって、本当に大事なこと。
幹葉 ありがとうございます!それはUNISON SQUARE GARDENの活動に限らず、プロデュースをされる際も、同じように大切にされていることなんでしょうか?
田淵 そうですね、という答えになっちゃうけど(笑)。言い方はよくないんだけど、我々は使い捨てが効くところもある職業だからさ。ちょっとでも手を抜いて「こんぐらいでいっか」ってやったものが上手くいかなかったら、当然「もっと頑張ればよかったな」って自分で思うし、見る人からしたら「こいつ大したことないな」ってなる。だからこそ、やるか、やらないかだったら、一生懸命やったほうがいい。さっき“長期戦”って言ってたけど、まさに長く続けるにあたっても、一生懸命やっていれば“頑張ってる時間”が苦労だと思わなくなっていくんだよね。
幹葉 ああ、確かに……。
田淵 それに長く打ち込んで何か認められたとき、もしかしたら別のところから声が掛かるかもしれない。「あの子、あのときちゃんと頑張ってたもんな」って思ってもらえたからこそ声が掛かってるんだろうし、もし「手抜いてるな」って思われていたら、多分その頃には生き残ってない。まとめると、目の前のことを頑張ることにデメリットがないんだよね。
幹葉 その考えになれたのは、音楽を始めた頃からですか?
田淵 う〜ん。潜在的にはそうだったと思うけど、デビューしたての頃は違ったよ。なんていうのかな、ある程度“かっこいい職業”だから尖っててもいいとか、周りは敵だと思っててもいいとか、ちょっとスカしててもいいじゃないけど……それをパフォーマンスとしてやっていた部分もあるし、それが正しいと思っていた時期もある。だから当時は「目の前のことを一生懸命やれ」なんて聞こえのいいことわざわざ言ってなかったと思う。
でも長く続いたときに、「なんで自分は今生き残ってるんだろう」って考えたら、人から嫌われなかったし、「感じ悪いな」「最悪だったな」と思われなかったからじゃないかな、と思ったんだよね。バンドに限らずだけど、レーベルや事務所から「あなたとやりたい」と言われて契約すると、一定の時期がきたら更新がくるわけで。そのときに(相手側から)「もっとやりたいか」を判断される。もちろん売り上げは大事だけど、俺は“そういうときに人柄”もめちゃくちゃ大事だと思ってて。
才能のあるクリエイターがこんだけたくさんいて、ある種“替えが利く”世界の中で、人柄って超武器になると思う。俺自身、めちゃくちゃ斜に構えてるし、ルサンチマンもあるし、性格もたぶんそんなに良くないけど(笑)、人当たりはいいと思うんだよね。
幹葉 今もこんなにニコニコしゃべってくれて、嬉しいです!
田淵 (笑)。それは、一緒に仕事する人に嫌われないようにするためでもあるし、大事なことだと思ってるから。打算的にやってるつもりはないけど、俺はそれをやるのが嫌じゃなかった。
幹葉 じゃあ、一度も“腐る瞬間”みたいなのはなく、ここまで?
田淵 いや、腐る瞬間はあったと思う。売れるまでに時間かかったから。
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