4thアルバム『Curiosity』中島 愛インタビュー

2016年12月、約3年の活動休止期間を終えて、ふたたび歌手としての道を歩み始めた中島 愛。2017年には「ワタシノセカイ」「サタデー・ナイト・クエスチョン」という2枚のシングルを発表し、ワンマン・ライブの開催や“Animelo Summer Live”、そして先月開催された“リスアニ!LIVE 2018”といったイベント出演で、その唯一無二の美声を届けてくれた。

そんな彼女がついに、復帰後の念願でもあったニュー・アルバム『Curiosity』を完成させた。数々の大物アーティストを手がけてきた田村充義をプロデューサーに迎えた本作には、ラスマス・フェイバーや岩里祐穂、重永亮介といったなじみの作家から、新藤晴一(ポルノグラフィティ)、CMJK、松本良喜、前山田健一、バグベアといった初顔まで、多彩なクリエイターが参加。好奇心と挑戦心に満ち満ちた9曲の新曲を含め、バラエティー豊かな全12曲が収録されている。自らの様々な心境を楽曲に重ねながら、ゆっくりと、しかし着実に前へ進み続けるまめぐのあらたな〈ファースト・アルバム〉について、たっぷりと話を聞いた。

Interview & Text by 北野 創
at FlyingDog

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再デビューというか〈ファースト・アルバム〉の気持ちでと考えてました

──まずは復帰してから初のアルバムを作り終えた感想を教えてください。

中島 愛 まずはやっと出来たという達成感ですよね。制作期間は3〜4カ月ぐらいだったんですけど、今回は新曲が9曲もあったので、ずっとスタジオにいるような感じだったんです。それがとても楽しかったし、大変だったし(笑)、すごく力を注いだので、今はホッとしてます。

──2017年6月に品川ステラボールで開催された復帰後初ワンマン・ライブのときにも「アルバムを作りたい」とおっしゃってたわけですけど、そもそも今回はどんなアルバムにしようと考えてらっしゃったのですか?

中島 再デビューというか〈ファースト・アルバム〉のような気持ちで考えていました。もちろんファースト・アルバムというのは人生において一回しかないものですけど、私は休止期間を置いて復帰させていただいたというのもあって、気持ちとしては「もう一度ファースト・アルバムを」という想いがあったんです。とにかく自分の気持ちが瑞々しい状態で作ることができたというのがひとつあって。あとはいろんな人とご一緒してみたいというのも大きかったですね。これまでの私を知ってくださってる方ともご一緒しつつ、自分が想像してなかったような組み合わせで曲を作れたら楽しいだろうなと思ってました。

──そこでポルノグラフィティから広瀬香美さんまで手がける田村充義さんを初めてプロデューサーに迎えられたわけですね。

中島 そうなんです。まさかこんな日が来るとは思ってなかったのでうれしかったです!実は私の休止前からの担当ディレクターの方が以前に田村さんとお仕事をされていたという繋がりがあって、今回、田村さんとの制作を提案してくださったんです。で、私は元々(田村が手がけた)小泉今日子さんがとても好きなこともあって、田村さんのインタビュー記事などもたくさん読んで存じ上げていたので、「えっ!?私のアルバムを田村さんが!?」ってもう腰が抜けそうになって、めちゃくちゃうれしい驚きでした。それだけで「このアルバムすごいことになるぞ!」という気持ちだったので、制作へのモチベーションはすごく高かったです。

──なるほど。今回のアルバム・タイトルとなる『Curiosity』には“好奇心”という意味がありますが、どんな想いが込められてるのでしょうか?

中島 これは打ち合わせの中で自分自身の気持ちをいろいろお話させていただいたとき、田村さんに「中島さんが休止中でも変わらず持っていたものは好奇心なんじゃないか」とおっしゃっていただきまして。いろんな音楽を聴きたいとか、いろんな人に会いたいという欲求が枯れていなかったからこそ、またここに戻ってこられたと思うので、その好奇心を軸にアルバムを一枚作ったら、復帰後の1枚目にふさわしいものになるんじゃないか――。そういったこともあって、まずは『Curiosity』というテーマを掲げてから制作がスタートしたんです。なので、今回の収録曲は好奇心に溢れてさえいれば何でもオッケー、という感じでした。

『Curiosity』初回限定盤ジャケット

表でどんなことがあっても揺らがないし大丈夫、と言えるのも大人なのかなって

──それで過去3枚のアルバムのどれと比べてもバラエティーに富んだ内容になってるのですね。ここからはアルバムで初出の新曲について収録順にお話を聞かせてください。まずはリード・トラックでもある1曲目「サブマリーン」は、中島さんの作品ではおなじみのラスマス・フェイバーさんが作曲、初顔合わせとなる新藤晴一(ポルノグラフィティ)さんが作詞を担当されてます。

中島 晴一さんは、田村さんがポルノグラフィティを手がけてらっしゃるご縁もあってご提案いただいたんです。先にラスマスさんが作ってくださったメロディとアレンジが出来上がっていたので、晴一さんにはそれを聴いたうえで歌詞を書いていただいたんですけど、私からは特に内容についてリクエストなどはしていなくて。そしたら“サブマリーン”というアイデアの歌詞いただいて、「こういうテーマなんだ!」ってビックリしましたね。

──歌詞は“ベッドに沈んだままで 今は逃避のサブマリーン”から始まって、心に秘めた想いについて書かれた、少し影のある歌詞ですものね。

中島 ラスマスさんが作ってくださった楽曲自体は、ダンス・ミュージック寄りなサウンドと少し違って、ポップで歌謡曲テイストがあるなじみの良いメロディだったので、もしかしたら前向きな歌詞が乗るのかなと想像してたんですけど、この歌詞が届いて度肝を抜かれましたね。晴一さんは「光と影なら影のほうを表現したかった」とおっしゃっていたんですけど、私は復帰してからはできる限りポジティブなことを言ったほうがいいと思っていたんです。不安とかもできる限り押し殺して進んだ方が、年齢的にもキャリア的にもいいんじゃないかと自分の中で勝手に解釈していたんですけど、晴一さんからこの歌詞をいただいて「そうじゃないんだ」と思い直して。「大人だって不安な気持ちはなくならないし、なくならないけどいいんだよ」って別の視点から背中を押してもらえるような歌詞だったので、私も何のためらいもなく歌えました。

──自分はてっきり新藤さんに「私の活動休止期間中の心情を歌詞にしてください」といったようなオーダーをされて書いてもらった歌詞だと思ってたのですが、中島さんからは何も言わずにこの歌詞が上がってきたということは、新藤さんは中島さんのことをものすごく考えてこの歌詞を書いてくださったんでしょうね。

中島 曲もそうなんですけど、私自身を見て書いてくださったのがすごく伝わってきて、晴一さんのセンスが爆発している歌詞だと思います。音楽活動はもちろん人生の先輩でもあるので、その両面ですごくうれしかったですね。なんか「影があるのも悪くない」「闇をなかったことにするな!」と言っていただいてるような気持ちになって、すごく救われました。

──けっこうトゲのあるフレーズの多い歌詞なので、自分でもドキリとなる部分が多かったのでは?

中島 いっぱいありすぎて本当にドキッとしました。その中でも印象に残るフレーズをひとつ選ぶなら、3番の“心にはサブマリーン 感情全部 誰にも見せたりはしない 大事な場所”ですね。その直前には“大人の顔に微笑みを 絶やさないの”と言ってるんですけど、すごく本質的なところを突かれてる気がしたんです。やっぱり大人って本音と建前じゃないですけど、場面によって顔を使い分けるのは当然のことだし、マナーとしてあるべき部分だと思うんですけど、それも自分を押し殺してしょうがなくやるのではなくて、自分の中には自分らしくいられる場所があるから、表でどんなことがあっても揺らがないし大丈夫、と言えるのも大人なのかなって。それと全体的にネガティブなワードも散りばめられてはいますけど、それが不信感とかに繋がらないところも気に入ってます。“私の悪口を言う 友達たちの歪んだ口”なんて歌詞を歌えるときがきたんだと思うと感慨深いですし、正直にさらけ出しているところが良いと思います。

──例えば実際の休止期間中に、この「サブマリーン」の歌詞みたいなお気持ちになったりしましたか?

中島 あったと思いますね。自分探しみたいなキレイな言葉ではなくて、水中に潜ってすべてを模索しているような期間だったことは間違いないです。その時期に「サブマリーン」で歌っている自分の心の中の部屋みたいなものを一生懸命構築して、「次に出ていったときはどんなことがあっても潜伏しないぞ!」という決意をしてたので、晴一さんがそれを汲み取ってくれたんだと思います。

──そんな歌詞がラスマスさんのポップで流麗なサウンドに乗るというのも粋というか絶妙です。

中島 そもそもこの楽曲も、ラスマスさんには絶対にアルバムで曲を書いていただきたかったのでオファーをしたら、ラスマスさんから「もう曲は用意してあるよ」と言われたんです。実は私の復帰を受けてラスマスさんが、“中島 愛が歌うならこんな曲”というのを数曲書いてくださっていたんですよ。オファーさせていただいた瞬間から、中島 愛のために書き下ろしてくださった曲がすでに存在しているというのは初めての展開でした。なので、すごく作家さんの愛を感じる始まりでしたし、「サブマリーン」は曲も詞もこのアルバムを象徴するようなナンバーになったので、リード曲にするしかないと思ったんです。

──やっぱりラスマスさんにとっても中島 愛というシンガーは特別な存在なんでしょうね。

中島 私の復帰前に、ラスマスさんのビルボードライブでの公演にお邪魔したことがあって、そのときに今度復帰することを直接ご挨拶したんですよ。そのときは「お互い機会があったらまたやろうね」ぐらいの挨拶だったんですけど、今思うとその頃から考えてくださってたのかなと思って。ラスマスさん自身もこの「サブマリーン」をすごく気に入ってくださってるというお話ですし、今回はどの楽曲も作家さんに「私もこの曲好きなんですよ」とおっしゃっていただいて、それが歌い手としても励みになってますね。

──この曲はMVも作られてますが、どこか不思議なタッチの映像ですよね。中島さんは最初から宙を浮いてますし。

中島 東京の空に空中浮遊しております(笑)。これは、普通に生活してると思ったら実は水の中だった、という摩訶不思議なテーマで撮ってまして。だから途中からいろいろな物がプカプカ浮いてたりするんですけど、その空に浮いているもうひとりの自分と私が思いがけず対面して、今までにない気持ちになるというのが私の中でのテーマだったんです。なので、ストーリー性というよりは、ひと口で言い表せない不思議な世界にいる感覚を映像から感じ取ってもらえたらと思います。

──撮影場所としては陽光降り注ぐ公園のような場所で、春っぽい曲調にもピッタリな映像ですね。

中島 でも撮影はとても寒かったんですよ(笑)。撮ったのが12月の上旬だったので、状況としては今まででいちばん過酷だったかも。私の今までのMVの中で「いちばん頑張ったで賞」を自分で自分にあげたいかもしれません(笑)。あたかも「私は今、春の日差しに包まれて気持ちがいいんだぞ」って思い込みながら一生懸命撮ったMVなので、皆さんぜひ観てください!

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