REPORT
2025.11.05
TrySailの3人は、やはり唯一無二にして最高のトライアングルであることを、改めて実感させてくれるライブだった。
今年5月にアーティストデビュー10周年イヤーを迎え、それを記念して初のベストアルバム『BestSail』をリリースした彼女たちが、アニバーサリーをさらに盛り上げるべく決行したライブツアー【LAWSON presents TrySail 10th Anniversary Tour 2025 “BestSail”】。9月より全国6都市10公演を巡ってきた航海は、間違いなくTrySailのベストパフォーマンスを更新するものであり、同時にこの先に広がる未来を約束するものだった。そのツアーの終着点、メンバーたちが“実家”と呼ぶ会場・パシフィコ横浜国立大ホールで、10月11日に行われた追加公演の感動に迫る。
PHOTOGRAPHY BY hajime kamiiisaka
TEXT BY 北野 創
追加公演の舞台となったパシフィコ横浜国立大ホールは、デビューから間もない2015年5月23日に、TrySailとしての初ワンマンライブ【LAWSON presents TrySail First Live 2015 “Sail Out!!!”】でステージに立って以来何度となくライブを行ってきた、メンバーにとってもファンにとっても思い出多き場所。そもそも目の前に海が広がる立地ということもあり、帆船の帆に由来する名前を持つTrySailにはぴったりの会場だ。そんな“TrySailの聖地”での追加公演ということでチケットはソールドアウト。現地には本ツアーのグッズTシャツ姿の人はもちろんのこと、過去のライブグッズを思い思いのスタイルで身につけた人も多数見受けられ、まるでTrySailグッズファッションショー、もしくはミュージアムといった趣き。ライブが始まる前からテンションは高まるばかりだ。
オープニングを飾ったのは、TrySailの過去のライブ映像を繋ぎ合わせて構成したスペシャルムービー。まだ初々しさの残るデビュー当時の姿から、徐々にメンタルもフィジカルもたくましくなっていき、“お祭りマッスルユニット”として覚醒していく軌跡がスクリーンに映し出されていく。まるで走馬灯のような演出に早くもエモさで昇天しかけるなか、映像は今年3月に日本武道館で行われた10周年イヤーに向けての出航ライブ【LAWSON presents TrySail 10周年出航ライブ “FlagShip” in 日本武道館】の場面に。そのライブのラスト、メンバーの麻倉ももが10周年に向けて「出航!」と号令するシーンに合わせて、パシフィコ横浜のファンたちが一斉に「出航!」と大きな声を上げると、ステージの照明が明るくなり、麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜の姿がついに露わになる。出航を飾ったライブの1曲目は、1stシングルのカップリング曲にして、彼女たちの1stライブのタイトルにも引用された「Sail Out」。ベスト盤の初回生産限定盤のみに同梱されたメンバーセレクト曲集『MEMBER’S SELECT BEST』の1曲目にも収められていたこともあり、10周年イヤーの新たな船出にこれ以上なく相応しい選曲だ。
晴れやかに歌い上げ、ラストは眼前に広がる“楽しい 未来”の広がる海を見渡すようにポージングして締め括ると、続いてLINDBERGの渡瀬マキが歌詞を提供したガーリーなギターロック「Good Luck Darling」へ。メンバーは手を大きく上げて横揺れやクラップを促し、それを受けてペンライトでカラフルに染まった客席が大きく揺れる。落ちサビでの夏川の気合いと楽しさに溢れたソロパート、そこからラスサビを一気に駆け抜けていく爽快感と疾走感は、一度味わったら病みつきになる楽しさだ。そして“バンザイ姉さん”こと雨宮の「最高に盛り上がっていこうぜー!」という掛け声と共に繰り出されたのは、『MEMBER’S SELECT BEST』にも収録された雨宮の推し曲「バン!バン!!バンザイ!!!」。武道館公演でも披露され“バンザイ姉さん”は念願かなって感極まっていたが、やはり10周年イヤーを祝ううえでこの曲を欠かすことはできない。メンバー各々が元気いっぱいに“バンザーーーーーーーーーーーーイ!”と伸びやかなロングトーンを聴かせ、会場も大合唱で応えると、雨宮は満足そうな笑顔を浮かべて「テンキュー」と告げて締め括った。
と言いつつ、その直後のMCで「テンキュー」とは言ったものの、今日の観客にはさらなる「ポテンシャルを感じる」とのことで、「私、まだまだこんなもんじゃないと思っています」と、ファンにもっと盛り上がるように発破をかける雨宮。麻倉も「遊ぶ気満々で来たので、みんなでたくさん遊びましょう!」と呼びかける。また、今回のツアーでは、ライブ前半パートで過去の衣裳をリバイバルで着用していたのだが、この日の衣裳は10年前の2015年10月11日に同じ会場で行われたライブ【LAWSON presents TrySail Live 2015 “The Golden Voyage of TrySail”】で着ていたものであることをアピール。映像にも残っていないレアな衣装、しかも10年ぶりに着たにも関わらず、お直しの必要がなかったことを自慢する。なおかつ10年前のライブの1曲目に歌ったのも「Sail Out」だったとのことで、まだ心許ない状態だった10年前と比べての自分たちの成長と変貌ぶりに「パシフィコも絶対びっくりしてるはず(笑)」(夏川)と楽しそうに語り合う。バラバラなようで息の合った楽しいトークもまた、彼女たちがこの10年、いやTrySailを結成する前から培ってきた絆の賜物だ。
準備運動はここまで。雨宮の「本気の筋肉で行くけど大丈夫そう?」という言葉に、ファンが威勢の良い歓声で応えると、無敵感の漂うアクセル全開のアップチューン「WANTED GIRL」、いつまでも色褪せない青春の輝きを封じ込めた「whiz」と、人気のシングル曲をワンツーパンチで浴びせかけ、2019年のツアー以来、久々にセットリストに組み込まれた日替わり曲「Believe」へ。黒須克彦が作曲・編曲した熱気ほとばしるアグレッシブなロックを、6年前よりも明らかに力強さと頼もしさを増した歌声で届け、間奏では夏川の「いくよ!」という呼びかけに会場中が「オイ!オイ!」と声を上げて盛り上がる。ラスサビの“Believe これまでの軌跡も夢も そのすべてが今を紡いでいる”というフレーズ、締めの“走り続ける 限りない明日へ”という歌詞もまた、10周年を記念したツアーで耳にすると意味深く聴こえる。
そのまま休みなく投入されたのは、アラビアンのフレイバーを取り入れたアゲ曲「Ah! La Vie En Rose!!! -ア!ラ・ビ・アン・ローズ-」。松井洋平が作詞した、オアシスを求めて彷徨うストーリー仕立ての歌詞はとてもユーモラスだが、それをアラブ歌謡風のコブシを交えながら違和感なく表現できるのは、声優を本職としている彼女たちだからこそと言えるだろう。首だけを横にスライドさせる動きなどの振付も楽しく、サビでは「ウッ!ハッ!」と掛け声しながら正拳突きを行い、ライブのためのマッスルをさらに鍛え上げていく。また、ラスサビ前の“ヤバイ!水のみた~い!”というフレーズは、毎回、趣向を変えた見せ方をしていたなか、この日は突然音が止んで、3人が「きっつ……」とやさぐれ始める寸劇を展開。その流れで「ヤバイ!」「ヤバイ!」「ヤバイ!」からの3人で一斉に「水のみた~い!」と叫ぶ長尺バージョンを披露した。そこからステージのスモークがだんだんと濃くなり、最後は3人の姿も見えないくらいになって、曲の終わりと共にスモークが晴れるとステージからいなくなっている演出を含め、曲の世界観を踏まえてより楽しくブラッシュアップしたステージングに、彼女たちの「やるからにはとことん遊び尽くす!」という心意気を感じた。
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