リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2025.05.09

“MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」”に見たアニメとリアルライブの融合の1つの到達点――Kアリーナ横浜を震撼させた圧巻のステージの記録

“MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」”に見たアニメとリアルライブの融合の1つの到達点――Kアリーナ横浜を震撼させた圧巻のステージの記録

次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」発の2バンド、MyGO!!!!!Ave Mujicaによる初の合同ライブイベント“MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」”が、4月26日と27日の2日間、神奈川・Kアリーナ横浜にて開催された。キャストが実際にライブを行うリアルバンドとしての活動と並行して、TVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』『BanG Dream! Ave Mujica』を通じて因縁浅からぬ関係性が描かれてきた両バンド。その物語は今年3月に放送されたTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』の最終話をもってひとまずの結末を迎えたわけだが、今回の合同ライブではそれらアニメで描かれたストーリーをなぞりつつ補完していくようなステージを展開。まるでアニメの世界と地続きにあるような、“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”が同期した景色が、そこには広がっていた。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY ハタサトシ、関口佳代

DAY1公演とは違ったアングルから奏でられる2バンドの軌跡

DAY1公演は“Petrichor”、DAY2公演は“Geosmin”というサブタイトルが付けられた今回の合同ライブ。前者は雨が降った時に地面から立ち上る匂いを指す言葉、後者はその匂いを持つ有機化合物のことで、とりわけ雨上がりに匂いが強まることで知られる。アニメでもCRYCHICが決裂するシーンなどで“雨”が印象的に使われていた他、劇場版『BanG Dream! It’s MyGO!!!!! 後編 : うたう、僕らになれるうた & FILM LIVE』のライブMCで燈(CV:羊宮妃那)が雨の匂いについて語っていたことを考えると、とても意味深いタイトルだ。さらに今回は各公演ごとで演出やセットリストに変化があり、どちらも観ることでより理解が深まる仕掛けが多くあった。なので本稿ではDAY2公演を中心にレポートしつつ、ポイントとなる部分ではDAY1公演の内容も適宜補足していきたい。

両公演のオープニングを飾ったのは、初華(CV:佐々木李子)とまな(CV:反田葉月)によるアイドルユニットのsumimi。アニメの劇中ではすでに名の知れた人気ユニットとして描かれており、現実でもオリジナル楽曲の配信リリースはあったが、実際にライブを行うのは今回が初めてだ。「皆さん、こんばんはー、sumimiでーす!」とまなが陽気に挨拶しながら2人一緒に登場すると、明るくポップな「Here, the world!」でライブをスタート。アニメ内の格好そのままの白と黒を基調とした対照的なツートーン衣装を着た両者は、キュートな手振りと共に愛らしい歌声を届ける。続く新曲「Sweet Escape」はエレクトリック・ピアノが躍るグルービーな1曲で、「Here, the world!」が朝だとするならばこちらは夜の雰囲気。2人は華麗にステップを踏みながら息の合ったパフォーマンスで会場を盛り上げる。自ら手を叩きながらクラップを誘ったり「カモン!」と天真爛漫に呼びかけてリードするまな、手にしていたギター(Ave Mujicaで使用しているのと同じ七弦ギターだった)を弾いたかと思えば、MCでペンライトが煌めく客席を見て「1人1人がキラキラしてて星みたい」と、星を見るのが好きな彼女ならではの感想を漏らす初華。まるで太陽と月のように、それぞれの光を放ちながら2人で1つのステージを作り上げていく姿に、アイドルとしての輝きを感じずにはいられないステージングだった。

会場が暗転すると幕間映像へ。雨が降る音と景色、そこに燈のモノローグが重なり、最後に本公演のタイトルでもある「わかれ道の、その先へ」という言葉を告げる(DAY1公演では祥子(CV:高尾奏音)がその役を担っていた)。続いて祥子のモノローグが始まり、やがてTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#13のAve Mujicaのライブ直前のバックステージのシーンに。祥子の「今宵一時の享楽に溺れましょう」というセリフを引き金に、ドロリス(Gt. & Vo./CV:佐々木李子)、モーティス(Gt./CV:渡瀬結月)、ティモリス(Ba./CV:岡田夢以)、アモーリス(Dr./CV:米澤 茜)、オブリビオニス(Key./CV:高尾奏音)から成るAve Mujicaのマスカレードが幕を開ける。

DAY1公演では、最初はマスクをした状態でステージに上がり、幕間劇にてTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#1のアモーリスこと祐天寺にゃむがメンバーたちのマスクをはがすシーンを再現してみせた彼女たちだが、この日は最初からマスクなしで登場。まずはTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#10の挿入歌「Imprisoned XII」を披露する。Ave Mujicaとしては初のアコースティックギターを取り入れた本楽曲、ドロリスはアニメのライブシーンと同様に座りながらアコギで弾き語り始め、そこにオブリビオニスのピアノが絡み合い、サビでその他のメンバーの演奏も加わってドラマチックに一気に色づいていく。狂おしいほどの愛情と哀切に満ちたその歌が会場を満たしたかと思うと、そこから一転してバンド名を冠する楽曲「Ave Mujica」で悦楽の淵へ。華麗さと激情が入り乱れたパフォーマンスで観る者をAve Mujicaの世界へと誘う。

さらにTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#13の挿入歌「顔」「天球(そら)のMúsica」を連続で披露。前者ではティモリスの見せ場となる重々しくうねるベースリフ、ドロリスの舌打ちと締めの笑い声、オブリビオニスの悪戯っぽい微笑みやモーティスのハイキックといった、アニメで印象的だった描写をことごとく再現。「天球(そら)のMúsica」では、モーティスがオルガンを弾くオブリビオニスの前に回り込んでしっかりと見つめ合う前日にはなかった演出も盛り込まれ、5人で壮大なシンフォニーを築き上げていく。DAY1公演ではTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』本編のライブシーンに登場した挿入歌を終盤に5曲連続でライブ初披露し、会場に熱狂と興奮をもたらしたが、DAY2公演ではセトリや演出を変えることで、楽曲のまた違った魅力と奥行きを見せることに成功していた。

再び暗転して、時おり稲光が光る嵐の映像と燈のモノローグが会場の空気を塗り替えると、今度はMyGO!!!!!の出番。燈(Vo./CV:羊宮妃那)、愛音(Gt./CV:立石 凛)、楽奈(Gt./CV:青木陽菜)、そよ(Ba./CV:小日向美香)、立希(Dr./CV:林 鼓子)の5人は、TVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』のOPテーマ「壱雫空」で快活にライブをスタートさせる。彼女たちらしいアッパーな青春パンクというだけでなく、“もしこの雨が上がっても 忘れずに歩いてくよ”というフレーズから始まる歌詞もまた、MyGO!!!!!の本公演における1曲目としてぴったりな選曲だ。晴れやかな表情で歌い演奏する5人の姿からは、雨上がりの空の下で音を合わせるアニメのOP映像を思い出さずにいられない。

そしてTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』#12の挿入歌「迷路日々」へ。紆余曲折を経て、迷いながらでも一緒に一生歩んでいくことを決めた5人の想いが、それぞれの奏でるサウンドに乗って1つに重なっていく。間奏で5人が輪になって見つめ合う場面はもちろん、終盤の“隣で一緒に 奏でたいよ”というフレーズで燈がメンバー1人1人を見つめながら歌う様子も感動的だ。そこからメンバーの挨拶を挿んで歌われたのは、彼女たちの最初のオリジナル曲「迷星叫」。さらに燈が「迷子でもいい、迷子でも進め!」とバンドのキャッチコピー的なフレーズを力強く口にすると「碧天伴走」を畳みかけて、会場に熱を注ぎ込む。「迷星叫」と「碧天伴走」もまたTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』#12のライブシーンで披露されたナンバーで、このブロックは“迷子のバンド”だった彼女たちが“MyGO!!!!!”としての第一歩を踏み出す、あの日のライブを思い起こさせるものだった。

次のページ:わかれ道のその先で、CRYCHICがステージに立った意味

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP