REPORT
2025.03.06
これぞ最上の切なさ、そして熱さ――。ドラマチックRPG『ヘブンバーンズレッド』のライブ、“HEAVEN BURNS RED LIVE 2025”が2025年2月12日、神奈川県民ホール大ホールにて行われた。出演はやなぎなぎ、She is Legend。ストーリーとリンクした構成で、She is Legendの2人が思わず抱き合うなど感情のこもったパフォーマンスを披露。作品の感動と熱気を伝えるライブとなった。
TEXT BY 金子光晴
PHOTOGRAPHY BY Takashi Konuma
ドラマチックRPG「ヘブンバーンズレッド」(以下、「ヘブバン」)はライトフライヤースタジオ×Keyによる麻枝 准15年ぶりの完全新作ゲームで2月10日にリリース3周年を迎えている。ライブが行われたのは平日だったが、会場は超満員。会場に来ることができなかったファンのためにネットでのライブ配信も行われた。
今年も主題歌を担当するやなぎなぎと、XAIと鈴木このみによるラウドロックユニットShe is Legend(以下、シーレジェ)が出演。本作品はすべての楽曲を原案・メインシナリオ・音楽プロデュース担当の麻枝 准が作詞・作曲しており、その世界観がゲームを飛び出して生バンドでのライブという形で展開されるという意味で、麻枝ファンとしても見逃せないライブとなっている。
なお、今回のライブは事前に「メインストーリー第五章前編の内容を含んでいる」というアナウンスがあり、メインストーリーをプレイしておくとより感動が深まるライブとなっていた。このレポート記事ではストーリーのネタバレになるような記述は極力避けるが、楽曲名などは登場するのでその点はあらかじめご了承いただきたい。
さて、ライブと作品とのリンクは開演前のアナウンスから始まっていた。「影ナレ」を担当したのは第31A部隊のメンバーである逢川めぐみ(CV:伊波杏樹)。セルフボケツッコミが冴えわたり、開演前から会場は笑いに包まれた。さらにステージは作品内のある場所を再現したセットとなっていて、ここでどんなライブが展開されるのか期待を十分に膨らませてからの開幕となった。
まずステージに登場したのは、やなぎなぎ。1曲目の「くそ暑い日の誓い」から会場のファンの大きな歓声やクラップも起き、スタートにふさわしい楽曲で盛り上がりを見せた。そこから疾走感のある「ディベートソルジャー」でさらに加速。そして「ワルキューレの叙事詩」ではポエトリーパートも生で披露され、ポーズも見事に決まっていた。
MCの後、披露されたのは「Bougainvillea」。力強い歌詞ながらどこか切なさを感じる、やなぎなぎ×麻枝 准の真骨頂ともいえる楽曲で、ライブ序盤ながらクライマックスといってもいいのではないかというぐらいの熱さが感じられた。
ここでやなぎなぎはステージから去り、会場にはストーリー映像が流された。登場したのは茅森月歌(CV:楠木ともり)と逢川めぐみ。月歌が幼い頃、ハムスターを飼っていたことを回想するというストーリーなのだが、月歌が名付けた「ねずっち」という名前に会場は大爆笑。いや、確かにハムスターがねずっちというのはそんなにおかしな名前ではない。しかし、ねずっちの名前が呼ばれるたびに、なぜかある芸人の顔が浮かんでくるのだった……。
映像パートが終わると、今度はシーレジェが登場!「闇夜のKomachi Vampire」はイントロから大歓声が起き、2人はヴァンパイアの黒いマントを羽織って登場するというパフォーマンスを見せた。「Thank you for playing~あなたに出会えてよかった~」もファン待望の一曲。観客と共に手を左右に振って会場が一体となり、最後の「ワンワン・ニャー」のポーズもかわいらしかった。続く「Come on baby!」では「カモンベイベー!」のコールが起こり、観客と一体となった激しいパフォーマンスが展開された。
MCではシーレジェの2人から、黒いマントを羽織った登場シーンは麻枝 准が発案したものだったことが明かされ、会場からは驚きの声が上がっていた。楽曲作りだけでなく、ライブのパフォーマンスにも麻枝ワールドは広がっているのだ。
そして次は初披露の曲ということで、「Kone Kone Day By Day」のイントロが流れるとさらに大歓声。「Goodbye Innocence」もXAIと鈴木このみの歌声が重なり合い、ものすごいパワーで観客を圧倒した。
シーレジェの2人のパートが終わると、またストーリー映像が流された。今度はねずっち(ハムスター)が様々な騒動を起こしたり、整ったりして、そのたびに爆笑が起こっていた。
そして、映像の後は再びやなぎなぎが登場。「インドラ」は民族音楽的な楽曲で、炎を使った演出で魅惑的な世界へと観客を誘う。さらに本作品の中でも特にライブ映えする「Particle Effect」で会場はさらに燃え上がった。
「Welcome to the Front Line!」に続いて、ステージ上のベンチに座って「夏気球」を歌い上げた。ステージが感傷的な色彩を帯びてきたところで、ストーリーの続きが上映された。今までの明るい日常から一変し、月歌に厳しい現実が突きつけられるというKey作品ならではの展開となっていく。
その後シーレジェが登場し、 「放課後のメロディ」「Long Long Spell」を立て続けに披露。MCで鈴木がこの1年は激動の1年だったと振り返ると、XAIは「鈴木さんのおかげ」と感謝を述べた。すると、感極まった鈴木が思わずXAIに抱き着き、2人で抱擁を交わすという感動のシーンが見られたのだった。
そして、昨年のツアーでもシーレジェにとってこの曲が中心にあったという「春眠旅団」の後、「Dear R. Heinlein」を歌唱。さらに、最後のムービーが終わると、XAIのソロで「陽のさす向こうへ」が万感の想いを込めて届けられた。バックに流れていた映像も含めて楽曲とストーリーが完全に融合した演出で、観客の涙を誘ったのだった。
いよいよライブ本編もラスト。やなぎなぎによる「きみの横顔」、「死にゆく季節のきみへ」と畳み掛け、さらに観客のエモーショナルな反応を引き出していく。最後の楽曲は麻枝 准もイチ推しという「オールトの雲」で締め括ったのだった。
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