【インタビュー】“陰”を強さに――新たな強さを獲得したニノミヤユイの“今”に迫る! TVアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』OP主題歌、TVアニメ『テスラノート』EDテーマ収録の両A面シングルリリースインタビュー

自らの不安や闇を包み隠すことなく楽曲に昇華し、個性的かつ共感性の高い音楽を発信しているアーティスト・ニノミヤユイ。声優・二ノ宮ゆいとしても精力的に活動し、今年9月に20歳を迎えたばかりの彼女が、約1年ぶりの両A面シングル「Dark seeks light/散文的LIFE」を完成させた。気鋭のクリエイター・ケンカイヨシとのタッグにより生み出された、今期のTVアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』『テスラノート』のテーマ曲となる表題2曲をはじめ、新たな強さを獲得した彼女の“今”が詰まった本作について、たっぷり話を聞いた。

“陰”を強さに変えていく!攻めに攻めた新曲「Dark seeks light」

――約1年ぶりの新作「Dark seeks light/散文的LIFE」は、両A面シングルで、しかも表題曲はどちらもTVアニメのタイアップ曲になります。

ニノミヤユイ 久々のリリースですし、今回は初めて自分でタイアップ曲の作詞をしたので、作品を背負うという意味でもかなりプレッシャーがありました。「この歌詞はちゃんと作品に寄り添えているのか?」ということをすごく考えながら作詞をして。

――作詞自体はこれまでもたくさんやってますけど、今回は自分から手を挙げて挑戦したんですか?

ニノミヤ はい。これは20歳の抱負でもあるんですけど、“アーティスト・ニノミヤユイ”を知ってもらうためには自分が考えていることをもっと表に出していくべきだと思うんです。ただ、作曲でそれを表現するにはまだ自分の技術が伴っていないので、今回は作詞で表現させていただきました。でも、タイアップの2曲はどっちもメロディが難しくて……。

――「Dark seeks light」も「散文的LIFE」も、ケンカイヨシさんが作編曲を手がけていますが、どちらもサウンド的にかなり攻めてますもんね。

ニノミヤ 今までは歌詞を優先して自分の想いを伝える方向で書かせてもらうことが多かったんですけど、今回はメロディやリズムに言葉を上手く合わせていかないとグルーヴ感が出ない部分が結構あったので、その作業が大変でした。

――ケンカイさんとは、1stアルバム『愛とか感情』収録の「呪いを背負って生きたいよ。」でもご一緒していました。

ニノミヤ その曲もとてもお気に入りだったので、またご一緒できるのがすごく楽しみだったんです。ケンカイさんは音楽の引き出しをたくさん持ってらっしゃる方なので、どんな曲になるのかワクワク感がすごくて。今回の2曲で私のレベルを引き上げていただいた感覚があります。

――では「Dark seeks light」のほうから詳しく聞かせてください。こちらはTVアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』のOP主題歌ですが、ニノミヤさんは作品からどんな印象を受けましたか?

ニノミヤ 世界観がダークめと言いますか、暗殺者の主人公が裏切られて死んだところから転生して物語が始まるというところが、意外性があって面白いなと思いました。生まれ変わった主人公のルーグくんは、自分の持っている力や技術を、今度は人を幸せな方向に導けるように使いたい、という志を持って生きていくお話なんですけど、その自分が逆境の中でも頑張っていく姿勢がかっこいいなと思って。それは現代を生きる私たちの気持ちにも通じる面があると思うし、自分とリンクする部分もあったので、そういう気持ちを汲み取って歌詞を書いていきました。

――リンクする部分というのは例えば?

ニノミヤ 主人公は「次こそは自分のために生きる」と言いながらも、女神から転生の条件として「人類に厄災をもたらすと予言された《勇者》を殺すこと」という使命を背負わされているので、結局は運命に囚われているところがあって。それって、今のご時世的にもがいている人の心境にも繋がると思いますし、私もその一人なので。今は閉塞的な日が続いていて、なかなか外に遊びに行ったり、友達と騒ぐこともできないから、塞ぎ込んでしまう人が多いと思うんですよね。

――たしかに。ずっと家にいると鬱々としてくることもあります。

ニノミヤ そういうのもあって、今はSNSも荒れているというイメージが私の中にはあって。直接は言えないけど陰でゾワゾワと嫌な感情が溜まっている感じ、爆発できない何かが渦巻いている感じが、私的にすごく嫌だなと感じる時期があったんです。この曲の歌詞は、そういうことを思いながら書いたので、2Aのラップっぽい部分の歌詞(“不要不急のLove?もう何もかもが要らないじゃん!”など)は完全に皮肉ってる感じになりました(笑)。今回は割と皮肉強めの歌詞になったと思います。

――この曲を聴いたとき、ニノミヤさんはきっと世の中に物申したいことがたくさんあるんだろうなと感じました。

ニノミヤ そうですね。これまでは“陰(いん)”でネガティブ方向に沈んでいく感じでしたけど、今は“陰”を強さに変えていきたい気持ちが私の中に芽生えていて。

――その“陰”を強さに変換するという発想は、何がきっかけで生まれたのですか?

ニノミヤ (2020年に)高校を卒業して、プライベートで人と関わる割合が少なくなったときに、自分の道は自分でちゃんと設計して考えていかないと、自分以上に自分のことを考えてくれる人なんていないということを思うようになったんです。もちろん事務所や周りのお世話になっている方々も私のことを考えてくださっているので、今のままでも前に進んでいくと思うんですけど、自分がアーティストとしてやりたいことをちゃんと表現していくには、強さを出さないと伝わっていかないと感じたので、この曲では強さを出すことを意識しました。

――特に2番の歌詞、“型破りの刺激求めてるんでしょ”や“「良い子」のままじゃダメでしょ!”といったフレーズからはニノミヤさんらしさを強く感じました。ちなみに「Dark seeks light」というタイトルにはどんな意味を込めたのですか?

ニノミヤ “闇が光を探す”みたいなイメージですね。「嬉しい」とか「頑張ろう」みたいな光の感情が増えれば増えるほど、「でも不安だし、どうしていいのかわかんない」っていう陰の感情も増えていくと思うんですよ。だから明るくて色々なことを考えている人ほど、すごく闇を持っているはずで。たとえ闇を強めることになったとしても、光を求めていく、そんな気持ちを込めて「Dark seeks light」というタイトルにしました。

――それは、ニノミヤさん自身のネガティブな感情もいずれはきっと光になる、そんな願いのような気持ちの表れでもある?

ニノミヤ その通りだと思います。2Cの歌詞に“きっと影が光を創るから”って書いたんですけど、やっぱりネガティブな感情があるからこそ、それを強さに変えようっていう気持ちになれたし、ネガティブな気持ちになるたびに、「でもやっぱりこうしたい、成長したい」という思いが強くなって、ここまで来ることができたので。自分の闇の部分も大事にしてあげたいなって思いますね。

――この曲、サウンド面でも相当刺激的ですよね。フューチャーコア、ハイブリッドトラップ、エレクトロニコアなどの要素を感じさせつつ、ほかのどこにもないゴリゴリのポップスに仕上がっていて。

ニノミヤ 私もすごくびっくりしました(笑)。ケンカイさんが、楽曲提供するときは歌う人のレベルを少し上げられるような曲を作りたいとお話されていて、まさにそういう曲だなと思って。自分のクリエイトに対する気持ちも引き上げられたので、今回ご一緒させていただけてありがたかったです。

――歌に目を向けても、ラップに近い言葉を詰め込んだパートがあったかと思えば、無感情に囁くようなフレーズや、サビのエモーショナルに歌い上げる部分もあって、緩急がすごいですよね。

ニノミヤ この「Dark seeks light」が今回のシングルで最初のレコーディングだったんですけど、難しすぎてちょっと辛くなっちゃいました(苦笑)。自分の中でなかなか消化することができなくて、何時間もRecさせてもらって……多分、過去最長に時間がかかりました。ラップっぽい要素が要所要所に入っているので、そこをいかに抜きすぎず、でもかっこよくキメるかっていうバランスがすごく難しくて。でも、時間をかけたからこそ納得できるものになりましたし、曲作りに対して最後まで粘ることができたのは自分的にも良かったです。

――MVもスタイリッシュでかっこ良くて。今回はケイゴイノウエさんのイラストを用いたカットが中心で、ニノミヤさんは途中でチラチラと登場する作りでした。

ニノミヤ ケイゴイノウエさんのイラストがそもそもかっこいいですし、面白いフォントをたくさん作ってらっしゃるゆうたONEさんがリリックのフォントを作ってくださったので、歌詞に合わせて色んな表情や形に変わっていくのがすごいなって思いました。MVを作っていただくうえで、私から歌詞の解釈を書いてお渡ししたんですけど、それをちゃんと噛み砕いて理解したうえで表現してくださったのがすごく嬉しかったです。

――全体的に夜の雰囲気がありますよね。

ニノミヤ そうなんですよ。やっぱり『暗殺貴族』の曲なので闇の中を奔走するというか暗躍するみたいなところがあって。かっこいいですよね。

自由に感じて愛して――「散文的LIFE」に投影されたポジティブな気づき

――もう1つの表題曲「散文的LIFE」は、TVアニメ『テスラノート』のEDテーマ。こちらは主人公の根来牡丹を意識して歌詞を書かれたとのことですが。

ニノミヤ 『テスラノート』のキャラクターはみんな魅力的なんですけど、そのなかでも牡丹ちゃんはコミカルの中にシリアスさがちゃんとある子なんです。諜報員として重い使命や責任を抱えているはずなのに、普段は甘いもの好きで流行りものにも興味がある、好奇心旺盛な普通の女子高生だったりするので、その暗い部分を持ちながらもポップな感じを表現できたらと思いながら書きました。曲調はジャジーな方向でいくことが決まっていたので、その内容でケンカイさんにお願いしたら、またすごいものが出来上がって。その曲に合わせて歌詞を書くのが大変でした(笑)。

――いわゆるエレクトロスウィング的な曲調ですが、声ネタやSE的なものを含め色んなサウンドが散りばめられていて、聴けば聴くほど発見がある作りですね。

ニノミヤ ジャズっぽくもあればロックっぽいところもあるし、キャッチーだからアニソンっぽくもあって、色んな要素が入ったコロコロ表情が変わっていく曲というのが、私の第一印象でした。でも、そのなかに明るさやポップな雰囲気を感じたので、私が感じる牡丹ちゃんの雰囲気ともイメージが合致して。今までよりは音のハマり重視で歌詞を書いていきました。

――語感の気持ち良さは聴いていてすごく感じられました。とはいえ、ちゃんと意味や主張が込められた歌詞になっていて。

ニノミヤ 『テスラノート』や牡丹ちゃんのストーリーを意識しつつ、私の曲だから自分の想いも入れなきゃいけないと思って。そのバランス感を調整するのがすごく大変でした。

――個人的な感想としては、牡丹の明るくてポップな部分とシリアスな部分が同居しているところが表現されているのに加えて、自分の中の色んな感情や取っ散らかった気持ちをそのまま吐き出してポジティブに進んでいくような印象を受けました。

ニノミヤ そうなんですよ。「散文的LIFE」というタイトルにも表れていますけど、私を含め人間って常に色んなことを考えて生活しているから、やっぱり感情が二転三転するし、さっきまで辛そうな表情だったのが突然ケロッと明るくなったりとか、逆に今まですごく楽しい気持ちだったのに一瞬で辛くなることがあるじゃないですか。そういう感情がまとまらない気持ちをわかってほしい、その色々な感情も全部その人自身だから、それを抱えて人生を生きていきましょう、っていうところに辿り着けたらと思いながら書きました。

――それは先ほど「Dark seeks light」の話でおっしゃっていた、自分の中の“闇と光”の話にも通じますね。その自分の感情をそのまま受け入れる姿勢というのは、ニノミヤさんが元来持っていたものなのですか?それとも最近気づいた?

ニノミヤ それに関しては最近やっと気づき始めたものだと思います。今までネガティブになったときは「なんで私はこうなんだろう?」って考えがちだったんですけど、ちょっと視点が変わったときに、そういう経験や思いが自分の実績に繋がったと思えた瞬間があって。アーティスト活動をしているうえでも、声優としてお仕事をしているうえでも、「あのときに挫折して沈んだからこそ成長できたな」って思えることが、少しずつですけど増えてきているんです……本っっ当に少しずつですけど(笑)。

――随分念押ししますね(笑)。

ニノミヤ でも、あのとき経験した挫折は絶対に間違いじゃなかったと思えることが出てきたのは大きかったですね。役者やアーティストは色んな感情を経験することで、それが全部自分のパフォーマンスに繋がるということをよく聞きますけど、昔の私はその実感があんまりなくて。「いや、苦しい気持ちは苦しい気持ちだし、この気持ちに生産性はない!」みたいな(苦笑)。でもそれを自分の体験として経験したことで実感に変わった部分があって。そこから自分の色んなところを愛してあげたいなと思うようになりましたね。

――めちゃくちゃいい傾向じゃないですか。

ニノミヤ うふふ(笑)。成長したのかなぁ?今までは挫折で終わっていたものを強さに変える作業をしていくことで、自分の中でこうやりたいっていう気持ちがどんどん生まれてくると思うので、その気持ちを強く持っていきたいと思います。

――それってちょっと自分に言い聞かせているようなところもありますよね。

ニノミヤ いやあ、言い聞かせって結構大事だなって思っていて。この間バースデーイベント(“二ノ宮ゆい 20th Birthday Event~さよならteens、よろしくtwenties!~”)をやらせていただいたんですけど、そのときに最後の宣言で「二ノ宮ゆい、売れます!」って言ったんです。

――おおっ、すごい。

ニノミヤ 結構勇気のいることだったんですけど、私自身が気を強く持って、ちゃんと発していかないと、ファンの方も信頼してついてきてくれない気がしたので。ファンの方との約束であり、私の中で私を追い込む言葉でもありますね。

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