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2016.07.13

Kalafina『THE BEST “Blue”』レビュー

Kalafina『THE BEST “Blue”』レビュー

壮大に広がるサウンドと美しい歌声が圧倒的。「Magia」「to the beginning」を収録したKalafinaのベスト盤。

梶浦由記がプロデュースする女性3人によるヴォーカル・ユニット“Kalafina”。 2007年に公開された劇場版『空の境界 第一章 俯瞰風景』の主題歌「oblivious」にてその活動をスタートさせた。2011年にはTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のEDテーマ「Magia」、TVアニメ『Fate/Zero』2ndシーズンのOPテーマ「to the beginning」が大ヒットとなり、その存在をさらに多くの人に知らしめた。

類稀な歌声と技量を持つ – Wakana、Keiko、Hikaru – この三つのヴォーカルが美しく重なり、梶浦由記が創り出す物語を奏でるKalafinaの音楽は、日本のみならず海外からの人気も高く、作品のリリースやライヴも盛んに行なわれている。

2014年7月に同時リリースされた初となるベストアルバム『THE BEST “Red”』と『THE BEST “Blue”』。それぞれにシングル曲からライブの人気曲までを多数を収めており、併せて聴くことによってKalafinaの歌の軌跡を辿ることができる。

『THE BEST “Blue”』には、「Magia」「to the beginning」「君の銀の庭」「heavenly blue」などのヒット曲を収録。躍動感が高まる楽曲から静謐な歌が広がるバラッドまで美しい音楽が彼方まで広がっている。

「Magia」

TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』EDテーマとなる9枚目のシングル。呪術的に躍動するビートと謎めいた雰囲気が立ち込めるメロディが織りなすサウンドは、重々しくドラマチックなアレンジで展開される。

ハイレゾでは、オリエンタルな旋律とコーラスが心をかきむしるようなイントロから、もたらされる情景が鮮烈。ダイナミクス・レンジを広くとっており、光と闇の対比といったサウンドのコントラストも強い。奥行きを増した空間は広大な世界を描き、量感を増した低域が音の壁を築く。

打ち鳴らされる太鼓は重量感のある響きで迫り、ヴァイオリンは妖しい調べを奏で踊り、梶浦作品ではおなじみの是永巧一によるギターもいっそう荒々しい。分離感が楽器の音色をそのままに伝え、鐘やウィンドチャイムなどの高音も華やかだ。

ヴォーカルは声質を濃厚に映し出し、切り裂くような鋭い語尾には決意を表わす力強さが溢れる。それぞれの位置からエネルギー漲る声が重なるサビ部分では、凄みを感じる歌唱力のインパクトを表わす、ハイレゾの情報量に圧倒される。

「to the beginning」

マスターとサーヴァントたちの壮絶な戦いと過酷な運命を描くTVアニメ『Fate/Zero』2ndシーズンのOPテーマは、気高く勇猛さを讃えるメロディと秘められた悲しみを綴る歌が心を揺さぶる。

リズムのキレも良く、疾走感が高まるシャープな音像となっているハイレゾ。引き締まったグルーヴが緊迫した雰囲気を醸し出しており、またライヴでの演奏を思わせるダイナミックな臨場感も伝わってくる。

流麗なストリングスとともにヴォーカルはしなやかに浮かび上がり、絶望に差し込む一片の光のようなハーモニーが切なく響く。旋律を力強く滑る歌声は宙空に高く舞い、慈しみを惜しみなく降り注ぐ。

解像感が特徴のあるそれぞれの声 – Wakanaの透明感のある高音域、Hikaruのたおやかな中・低音域、Keikoの深みのある低音域 – を丁寧に描き、そして重なる瞬間の美しさがひときわ輝く。

「君の銀の庭」

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』の主題歌は、煌めくようなダルシマーの音色が響くイントロに導かれ、光が満ち溢れた世界が広がる。メルヘンチックなサウンドと牧歌的なメロディには安らぎさえ感じるが、暗示だらけの歌詞とやや誇張気味なアレンジにじっくりと耳を傾ければ、そこに触れば崩れ落ちる儚さが潜んでいることがわかる。

見渡す限りの音に囲まれた「Magia」とは対照的に、隙間のある空間がハレーションを起こしているような、白っぽさを感じるハイレゾ。軽やかなワルツのテンポがゆったりと時を刻み、弾むような空気感なのだが、置き去りにされたような虚ろさも何処となく漂う。

短いセンテンスで次々と折り重なる声はいつもとは異なるニュアンスが感じ取られ、危ういバランスで情景を照らし出す。穏やかに語るように、しかし強調されたアクセントがどこかミステリアスな雰囲気を放つ。ストイックなイメージもある彼女たちのここでは特に柔らかな歌声が印象的だ。

6分半に渡り壮大な世界が繰り広げられる2ndアルバムの表題曲「red moon」、陽炎のように揺らめくサウンドに声が飛翔する、劇場版『空の境界 第七章 殺人考察(後)』の主題歌となった「seventh heaven」、アッパーなビートが昂揚感を促す4thアルバム収録曲「signal」、疾走するサウンドに声が交差する、劇場版『空の境界 第五章 矛盾螺旋』主題歌「sprinter」、情感豊かに言葉がゆったりとしたリズムに並ぶ、劇場版アニメ『イヴの時間』の主題歌「I have a dream」、大河のような雄大なサウンドが包む、TV番組『歴史秘話ヒストリア』のEDテーマ「symphonia」、TVアニメ『アルドノア・ゼロ』のOPテーマとなったアグレッシヴなナンバー「heavenly blue」など、Kalafinaならではの世界が果てしなく広がる『THE BEST “Blue”』。

重厚なサウンドを形作る多層的な構造やスケール感、複雑なコーラスワークが鮮明に伝わるハイレゾ版では、音のタペストリーを紡ぐ「梶浦サウンド」と3人の声の見事な調和にあらためて驚かされ流。豊穣で美しいKalafinaの深淵にいっそう近づくことができる。

Kalafina
THE BEST “Blue”

Sony Music Labels Inc.
2016.07.13

FLAC 96kHz/24bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
mora

収録曲

   作詞・作曲・編曲:梶浦由記

 1.storia(NHK「歴史秘話ヒストリア」オープニングテーマ カヴァーソング)

 2.君の銀の庭(「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」主題歌)

 3.red moon

 4.Magia(TBS・MBS系アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」エンディングテーマ)

 5.seventh heaven(劇場版「空の境界 第七章 殺人考察(後)」主題歌)

 6.signal

 7.夏の林檎

 8.sprinter(劇場版「空の境界 第五章 矛盾螺旋」主題歌)

 9.I have a dream(劇場版アニメ「イヴの時間」主題歌)

10.未来(「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編]始まりの物語」挿入歌)

11.満天(アニメ「Fate/Zero」第18話・第19話エンディングテーマ)

12.snow falling(劇場版「空の境界」終章カヴァーソング)

13.to the beginning(アニメ「Fate/Zero」オープニングテーマ)

14.symphonia(NHK「歴史秘話ヒストリア」エンディングテーマ)

15.heavenly blue(TVアニメ「アルドノア・ゼロ」オープニングテーマ)

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