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INTERVIEW

2016.08.17

『涼宮ハルヒの完奏』ハイレゾ配信記念!「ハレ晴レユカイ」「God Knows・・・」ほか作詞の畑 亜貴さんインタビュー

ban_mora_lisani_600200_160817こちらのインタビューは、『涼宮ハルヒの完奏~コンプリートサウンドトラック~』の配信開始となった2016年7月7日より音楽配信サイト“mora”にて公開されたものです。話題となったこちらのインタビューをこの度、リスレゾ開設記念としまして掲載させていただくこととなりました。作詞家・畑 亜貴さんの『涼宮ハルヒの憂鬱』への愛情がたっぷりと詰まったロングインタビューです。作品のレビューと併せてお楽しみください!

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『涼宮ハルヒの完奏~コンプリートサウンドトラック~』
レビューはこちら


ラノベ・アニメ界を作り変えた伝説の作品『涼宮ハルヒの憂鬱』アニメ放送10周年を記念したコンプリート・アルバム『涼宮ハルヒの完奏~コンプリートサウンドトラック~』配信開始!TVシリーズの劇伴を初CD化した他、社会現象となったエンディング曲「ハレ晴レユカイ」を始めとしたTV・ラジオテーマソング、挿入歌をすべてフルサイズでコンパイルしたファン待望のアイテムです。

そしてmoraではこの度、アニソン専門誌『リスアニ!』とタッグを組み、収録曲の全作詞を担当した畑 亜貴さんへのインタビューを実施!アニメ界・アニソン界の常識を覆した伝説の作品『ハルヒ』が後世に与えた影響、また制作時のマル秘エピソードまで!?現在の畑さんのご活躍へと続く歴史を紐解く、貴重な証言満載のインタビューになりました。全世界のアニメファン必見のロングインタビュー、じっくりとお楽しみください!

聞き手:澄川龍一(リスアニ!編集部)

最初はOP曲はまったく違う歌詞を書いていました

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──今回は10年前のTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のあのムーブメントがいかにして起き、シーンに影響を与えていったのかというのを、当時の証言をもとにを伺っていければと思います。というわけでまずは『ハルヒ』のTVシリーズから10周年というわけなんですけども。

畑 亜貴(以下、畑) 早いですよね。もう「ふっ」って感じで、目をつむって開いたら10年経ってた感じで(笑)。

──正直私やファンの皆さんも同感だと思います(笑)。

畑 恐ろしい……フレッシュさとか、ピュアさとか、この10年で失ってきたものを考えると(笑)。

──いやいや、得たものも多いと思いますよ(笑)。やはりご本人としても「もう10年経ったんだ」っていう印象が強いですか?

 そうですね、しかも派生の作品に関わり続けているので、あまり分断された感じがなくて。今日までずっと繋がり続けてるので、「10年前の」っていう歴史感とか、さかのぼる感覚があんまりないんですよ。

──アニメの2期が2009年で2010年には劇場版もありましたし、タイム感でいうとそんなに離れてないんですね。いきなり聞いてしまうんですけど、『ハルヒ』以前と以降で畑さんの中で変わったことってありますか?

 仕事量(笑)。

──やはりそこが(笑)。如実でしたよね。

 人間こんなに忙しくなるんだっていう(笑)。それまでも結構忙しいつもりだったんですけど、なんか嵐に巻き込まれたような感じになって。仕事でも生活でも自分のことを考える暇がまったくない状態で、その流れにただびっくりしているうちに10年経っていたというか。

──なるほど、それを継続したりアップデートするうちにこの年数が経っていたと。ちなみに畑さんが『ハルヒ』のワークスで最初に手がけたのは「冒険でしょでしょ?」ですか?

 どうだったかな?「ハレ晴レユカイ」だったかも……。

──作詞するときに原作や資料を読まれたと思うんですが、ファースト・コンタクトの印象は覚えていますか?

 最初に読んだときは「自分はこの作品を好きになって、魅力をみんなに届けなきゃ」っていう意識があって、とにかく愛するモードになってたので、印象というか「よしわかった、やろう」って感じでした。SOS団のみんなは面白い子たちだったし。

──原作小説の時点で話題にはなってたんですよね。それもあって制作に携わっていた方々も気合いは入ってたものの、「これは確実に売れる!」という確信まではなかったと聞きました。

 だから逆に自由度が高かったのかもしれない。

──なるほど、最初の段階で楽曲や作詞に関する細かい指定などはあったんですか?

 10周年にあたって色々思いだしてたんですけど……指定というか、最初はOP曲はまったく違う歌詞を書いてました。

──へぇー!

 もっと「ファンタジック寄りに」っていう要望があって、そういう雰囲気で書いてたんですけど、書きながら自分の中でベストじゃないというか、なんか違う気がしてて。ちょっと自由な形で書いてみようと思って、今の「冒険でしょでしょ?」の詞を書いたんです。そしたら自分でも腑に落ちた感じがして「あ、こっちじゃないかな」と。

──なるほど。

 最初の詞はもっと世界観自体をとらえるっていう意識だったんですけど、「冒険でしょでしょ?」の場合はひとりの女の子の心に寄りそってる部分が大きくて、自分でもこっちの路線がいいなと感じて。

──サウンドや平野 綾さんの歌も相まって、ものすごくキャッチーながら、ハルヒ的なとらえどころのなさを感じたんですよね。作詞をされて、平野さんの歌を聴いて、放送を見たうえでの感想はいかがでした?

 「やっぱりこっちだったな」っていうのをすごく実感しました。小説を読んだ時点ではまだクッキリしてなかった涼宮ハルヒ像が、OPテーマ、EDテーマを作って、平野 綾ちゃんの声とサウンドのキャラクター、彼女自身のキャラクターと相まった時に不思議な感動を覚えて。売れる売れないの話じゃなくて「これは何か始まるのかもしれないな」っていう感覚が、原作やアニメの内容ともシンクロしてたと思うんですよ。このシンクロを感じる時っていうのがたぶん奇跡が起きるときなのかなと思ってて。作っている側も観る側も、「あれっ?」って思ったエネルギーをみんなが感知するというか。

──その予感は実際に第1話が放送されて即座に現実になったわけですよね。誰もがよくわからないままに目撃して耳にして、瞬く間にすごいうねりになっていきました。EDテーマの「ハレ晴レユカイ」は、おそらく畑さんのこの10年間でもっとも話を聞かれることが多かった曲だと思うんですが。

 そうですね(笑)。

──改めてここでもお話を伺いたいんですが、EDテーマは主演キャストが3人で歌う楽曲ということで、こちらは作詞の際にはどんなイメージを持っていましたか?

 何度か話してるかもしれないんですけど、EDテーマの作詞ではオペラの「蝶々夫人」のイメージがなぜか思い浮かんだんです。「蝶々夫人」の中では女性が「何か起こるんじゃないか」って待ってるんですよ。でもハルヒたちはそういうときに待ってないなと。この子たちは何かを自分で引き寄せる、作ろうとする、掴もうとするっていう「蝶々夫人」との対比みたいなものを考えていて。「アル晴レタ日ノ事」っていうテーマは同じだけど、「今の女子は待ってないよ」っていうことが書きたかったんです。

──ハルヒ以前からもありましたけど、畑さんの描く少女像っていうのがこの曲でも出てると思うんですよ。

 ですね(笑)。「待ってないよ」っていう好物の女子観が。

──振り返ってみれば前年度の清水 愛さんの楽曲でもその女子観はありましたし、女子といえば『舞-乙HiME』のEDテーマ「乙女はDO MY BESTでしょ?」などもありました。この頃から「でしょ?」って言ってますからね。

 そうだ、ほんとだ(笑)。

──確かにSOS団の女子3人って先ほどもおっしゃった「待たない、引き寄せる、自分から行く」っていう、観てる側が引き込まれるような魅力がありましたね。

 出てくる女子たちがみんな見ててワクワクするっていうかね。何が起きてもおかしくないし、何を起こされてもいいかもしれないっていう。「許しちゃうし、ついてっちゃうよ」って気持ちにさせてくれるんです。

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