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INTERVIEW

2016.08.17

『涼宮ハルヒの完奏』ハイレゾ配信記念!「ハレ晴レユカイ」「God Knows・・・」ほか作詞の畑 亜貴さんインタビュー

「当時の私は、このあとキャラソンを作り続けるということをまだ知らなかったのです……」

──当時を思い出すと、とにかく「ハレ晴レユカイ」はED映像も含めてあらゆる場所で流れて、あらゆる人がコスプレして踊ったりして、このOP/EDだけを切り取ってもものすごいムーブメントが起きていたと思います。アニメも1話の段階で大きな反響があって、2話からOP/EDが流れてさらに大きいリアクションがありましたが、そういう2006年4月の熱というか反響っていうのは肌で感じたりしてましたか?

 キャラソン・シリーズを作ることになったときに初めて感じました。それまでは実感としてはそんなに……。「なんか人気出てきたらしいよ」ぐらいの温度感で聞いてたので「それはよかった」って暢気に構えてたんですけど、そこから怒涛の日々が始まるなんて……。「当時は思っていなかったのです……」ってナレーション入れたいぐらいですよ(笑)。

──そうなんですよね(笑)。これが後に畑さんが切れ目なく手がけることになるキャラソン・ワークスの先駆けになるという。

 「当時の私は、このあとキャラソンを作り続けるということをまだ知らなかったのです……」って感じです。ここだけフォント変えておいてください(笑)。

──変えておきます(笑)。しかしキャラソン展開自体はハルヒ以前もありましたが、ひとつの作品でこれだけ曲が出る、しかも後の『ラブライブ!』のように音楽に特化したわけでもない作品が、キャラクターひとり一枚シングルを発売するっていうのは異例でしたね。

 長門有希ちゃんのシングルとかは正直キツかったですね(笑)。「そんなに喋らないのになんでこんなに音数多いの!?」って(笑)。キャラソン制作に関してはここでガッチリ鍛えられた気がします。

──確かに長門はハルヒ、みくると3人寄ってれば形にはなりますが、ひとりの状態だと掴みどころがないですよね。

 『あずまんが大王』で結構な数のキャラソンを作ってきて「よし、いけるな」って思ってたんですけど、まさかここまですべてのキャラに曲が作られるなんて……しかもカップリング曲まであって。朝倉(涼子)さんなんて人柄とか内面が覗ける場面ってあったっけ?みたいな(笑)。

──それがすべてヒットするのがまた凄いというか。

 おかげで妄想力がたくましく発達しましたよ(笑)。「このキャラはこういうことは言わない」とか、「こんなこと思ってるかもしれない」っていう二次創作的な部分ですね。

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──曲を聴いてて本当に彼ら彼女らが言ってる感じがするというか、畑さんの妄想力と二次創作力の賜物ですよね。あと1期で大きい存在が「God knows…」だと思うんですが、この曲もまた後の作品群に大きな影響を与えることになります。

 そうですね、たぶん『ハルヒ』の曲の中では一番カラオケで歌われた曲なんじゃないかと思います。

──聞くところによるとこの曲が収録されてる『涼宮ハルヒの詰合』は未だに売れてるらしいですからね。これって最初にオーダーが来た時には文化祭でハルヒがバンドで歌うということは決まってたんですか?

 決まってました。

──この曲は「冒険でしょでしょ?」で平野さんが歌うような世界観、「ハレ晴レユカイ」の女子観とはまた違うベクトルですよね。

 そうですね。これはもう「文化祭をやり抜こう」「文化祭で彼女たちがやるべき曲を作ろう」っていう事を決めてました。だからリアリティがあった方がいいなと。歌詞に「背伸びした10代の女の子が、自分の心よりもちょっとだけ大人になってるつもりなんだけど、実際はすごく子供」っていうギリギリ感を入れたくて、言葉のチョイスなんかも結構特殊だと思います。

──映像的にもあのライブシーンはもはや伝説と言っていいというか、アニメでのライブ描写、楽器演奏描写の革命だと思います。

 最初に観た時本当にそう思いました。あまりにリアルすぎて「顔が怖い!」って思いましたもん(笑)。でも「こうなるよな」って納得できるというか。

──歌詞もそういう歌詞ですよね。こういう顔になるような歌詞っていうか。

 そうですね。「そういう感じで歌っちゃうよね」みたいな。

──でもそういうオーダーはなかったわけですよね?

 特にはなかったんですけど、すごく出したい「ゆらぎ」みたいなものがありました。自分の心とか立ち位置をどこに持っていっていいかまだ分からない少女の「ゆらぎ」というか。

──あの歌詞を女子高生当人が書いてるという設定も含めての「ゆらぎ」ですね。

 当人が書いてるんだけど、どこか統合性がない。そういう歌詞の未熟感みたいなものって人の心をくすぐると思うんですよ。

──そうやって畑さんの作詞のスキルや、音の使い方とかの技術をある種デチューンする作業って、後に『ラブライブ!』でも登場するわけですよね。「これは畑 亜貴が書いてる歌詞じゃない」感覚というか。

 そうそうそう(笑)。そうですね。

──そう考えるとキャラクターに対する妄想力や二次創作力の部分や、少女観という部分などの、畑さんならではのエッセンスって『涼宮ハルヒの憂鬱』の中に詰め込まれてる気がしますね。それから、後に数々の仕事でタッグを組むことになる作曲家の方々、特に神前 暁さんとはハルヒが初仕事だということで。

 そうですね。

──サウンドを聴いて「この人すごいな」って思ったりする感覚ってありましたか?

 ファンクが好きだって聞いて、「あ、気が合うわ。もう大丈夫だ」って思って(笑)。

──自分がやりたかったり良しとするものからは大きく外れてないと(笑)。

 共通言語がひとつあるとわかって、すごくリラックスできました。でも彼もこの仕事はすごく大変だったと思います。

──TVアニメで劇伴まで手掛けるのが初めてだと言ってましたね。

 お互いにゲーム・ミュージック出身だという部分でもなんとなく繋がるものを感じて。

キャラクターと本人のいいところがクロスしている部分をすくい上げるのが役割

──キャスト陣もフレッシュな人が多かったわけじゃないですか。特にこれ以降アーティストとして歌詞を手掛けることになる平野さんや茅原実里さんなど、特に茅原さんは長門のキャラソンがきっかけで再デビューするという流れもありました。そういったキャストの方々との初対面での印象っていかがでしたか?

 平野 綾ちゃんは……「太ももと太ももの間から向こう側が見える……」って(笑)。

──足が細いってことを言いたいでよろしいんですね?唐突な表現でびっくりしましたけど(笑)。

 ごめんなさい(笑)。彼女はフレッシュなイメージなんだけど芸歴は長いじゃないですか。で、茅原実里さんもそうですけど、何か固い覚悟があって声優として、アーティストとしての道を進むんだろうなと、そう思ったらどうしても売れてほしいって思うんですよ。だからどうやれば本人の魅力を伝えられて、キャラクターとの親和性も保ちつつ、アーティストとしての可能性を広げていけるだろうかと、作詞のお仕事をいただくたびにすごく考えてました。

──そこは作詞家として考えますよね。

 とにかく当時の「今」が、あの瞬間が大事だろうから、今すごくみんなの心にも本人の心にも響くものを作って、彼女たちが人として大きくなってほしいなぁって。

──以降の作品でもそういった経験はあると思うんですけど、普通に声優さんがアーティストデビューして作詞を依頼されるよりも、先に作品を手がけて、その後に出演していた方個人を対象に歌詞を書くっていうプロセスは、思い入れとか感情の動き方がおそらく違うと思います。平野さんや茅原さんに関してはそういった想いって特に強かったんでしょうか?

 私も強かったし、やっぱりその時の私に求められているのって、ファンの方々の期待や想いも裏切らないことなのかなって思ってて。演じたキャラクターと本人のいいところがクロスしてる部分をすくい上げるっていうのが私に求められてる役割なんだろうと。たとえばアーティスト本人に寄った気持ちとかって、本人が書いたり、他の作家さんが担当する部分なのかもなと。私の役割としては、寄りすぎることなく、キャラクターも活かしつつ、アーティスト性も出すミックス感は大事にしようと思ってます。

──アーティストの曲なんだけど、作品やキャラクターの何かがうっすら見え隠れする感じというか。

 そうなんですよ。「あれはあれ、これはこれ」っていうのじゃなく、「ちょっと重なってるかも」っていう期待を裏切らないことかなと。

──当時の平野さんや茅原さんを見ていると、これだけ作品として大ヒットして、アーティスト・デビューする前から武道館など大きなステージに出たりしてましたけど、浮かれてる感じがなかったというか、覚悟やプレッシャーを感じたんですよね。

 浮かれてる感じは全くなかったと思います。

──ちゃんと『ハルヒ』を背負ってる感じがして、皆さん強いなと思ってたんです。男性陣も同じで、小野大輔さんも古泉の「まっがーれ↓スペクタクル」が相当なインパクトがあったというか、男性キャラのキャラソンっていうのはいかがでした?女性キャラとは違うと思いますが。

 男性キャラの時は女性ファンが聴いてドキッとしてほしいなと思って。だから普通にキャラソンとしても成立するんだけど、女性が聴いた時に刺激を感じちゃうようなアピールはしたいと思ってましたね。

──ただキョンも古泉もイケメンではありますけど……。

 まあ性的魅力方向かというと……(笑)。

──そこですよね(笑)。

 好きな方は好きなんだろうなっていう、マニアライン上にいる感じというか(笑)。

──どうしても三の線が出てしまう感じというか。そこが絶妙ですよね。かっこよさも出すんだけど、ハルヒらしいコミカルさも出てるというか。

 いやー、やっぱり男子の方が難しいですよね。

──小野大輔さんも今年武道館でやられましたけど、彼特有の、あんなにかっこいいのに滲み出る三枚目感ってここらへんで形成された気がしますね。

 確かに。そういう部分もあるかもしれないですね(笑)。

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