リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2016.11.09

TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」TO-MASインタビュー Vol.1

普段は結構ロジックで書く方なんですが、今回は印象派になろうと

──その部分を起点として、歌詞全体を書かれたわけですね。

松井 そこを活かしつつ作品の世界観を汲んで……とはいえ、『フリップフラッパーズ』をご覧になった方はわかると思いますが、なんせ最初はハテナが飛びまくるじゃないですか。

──たしかに1~2話を見た段階では「すごいことが起きているけど、何がなんだかわからない!」というような印象でした。

松井 なので普段は結構ロジックで書く方なんですが、今回は印象派になろうと。光の受けた印象をそのまま書こうかなと思いました。それは作品の出している光というか、テレビなので光ってるわけじゃないですか。その光っている感覚を、そのまま想像して書いたものがあの形ですね。意味合いがある・ないという部分は捉え方次第だと思います。

──作品を全部見たあとで読み解くと繋がりがあるにしても、表面の印象はかなり抽象的ですよね。童話的で、言葉は美しいのにどこか恐ろしいような歌詞でした。

松井 そのイメージは作品もそうだったり、真澄さんから出てきたメロディもそうだったり、最後にみんなで作ったアレンジもそうだったりするんです。着地点として見えているビジョンは、恐らく3人とも同じだったはずなんですよ。それを象徴していたのが、あのEDの絵だと思います。あれもう完全に、僕らのイメージを踏み台にしてすごいことになったなという(笑)。

ミト あのEDの絵と音楽には、ついぞ出会ったことのない感覚を覚えますよね。

──かわいらしいのに不安になるというか、脳をこねくり回されている感じといいますか。

伊藤 脳をこねくり回される……良い表現ですね、まったくその通りだと思います。

松井 その世界観に、Chimaさんはすごくフィットしましたしね。

伊藤 ねえ。あのきれいな声で、変なメロディを歌ってもらって。

ミト でも歌入れは飄々と歌ってましたよね。「よく歌えるなあ」と思いましたよ。普通に考えたらちょっと長引くかなと思ってたんですけど、本当にサクサクと進みました。フォーカスを合わせるのがうまい方でしたね。

伊藤 私はミトさんのディレクションの妙だと思います。

松井 あのときのミトさんはすごかったですよね。

確かにTO-MASのレコーディングでは、「人がつながって音楽を作っている」ということをすごく感じますね

──レコーディングの際に、ミトさんはChimaさんに何をお伝えになられたんですか?

ミト ……何か言いましたっけ?(笑)。

伊藤 ええ!?「こういうふうに言えば伝わるんだな」って勉強させてもらいましたよ。

ミト すみません、記憶にございません(笑)。あれ、何言ったっけなあ……?

松井 ディレクションなので「具体的にどんなことを言った」という感じではないんですけど、ひとつ置くたびに形が定まっていくんですよね。

ミト でも多分それは、彼女が元々ポテンシャルの高い人だからなんだと思いますよ。器が広いから、何を入れても受け止めてくれるんです。こちら側に理由があるとすれば、我々3人はなんせスタジオでの仕事を長年やっているので、歌いやすい空気を作るのが普通の人よりうまいのかもしれないですね。しかもそれが3倍いるもんですから(笑)。だから歌っている人も、おそらく居心地が良いはずなんです。

──作曲家が3人いることで、ボーカルやプレーヤーを委縮させてしまったら元も子もないですからね。

ミト そうそう。だから我々が彼女のポテンシャルをこじ開けちゃってるんだと思います。そこで自由に泳ぎ回ってもらう感じが、真澄さんがChimaちゃんを見て作った曲にぴったりハマっていったんですね。だから、超絶プロい作業だったと思います。「私たちを見習いなさい」と言いたくなるような歌のディレクションでしたよ(笑)。

──外部の方を委縮させずに最大のポテンシャルを引き出すということも、それぞれにキャリアを重ねてきたTO-MASならではの能力なんですね。

伊藤 ねえ。やっぱり経験値かしら?(笑)。

ミト 真澄さんなんて特に、劇伴を作るうえで何十人、へたすりゃ何百人という人間を従えてひとつのコンテンツを作り上げるわけですよ。大きな数の人間を扱う仕事でもあり、すごく密閉された環境でもあるじゃないですか。そこでクリエイティブを引き出さなきゃならないというのは、中々普通の人には難しいと思います。

伊藤 いえいえ、まだまだですよ。

ミト いやいやいや、私なんてずっと3人でやってましたから。うち(クラムボン)は家内制手工業なんで(笑)。

松井 たしかにTO-MASのレコーディングでは、「人が繋がって音楽を作っている」ということをすごく感じますね。シンセサイザーじゃないですけど、「線をひとつ繋ぎ換えるだけでこんなに音が変わるんだ」と思うようなことがたくさんあります。

伊藤 ああ良い表現。わかりやすい。

松井 TECHNOBOYSなんで、シンセサイザー感を出しておこうかと(笑)。

ミト そうなんだよね。そういうエレメンツも瞬時に出るしね。

松井 「これが違うならこれを」というのが、瞬時の判断で出てくるんですよね。だからみんな、ゴールがわかっていてレコーディングに入っている訳じゃないと思うんですよ。何ができるかというのは、開けてみるまで僕ら自身が一番わからなかったりします。

ミト そういうリレーションというか、スタジオでの作業を楽しめるスキルを持っているから、こうやって面白いことができるのかもしれませんね。

でもそういう過程を経て、それぞれが現場でやってきたことが全然違うんだなってことがわかるんですよ

──その場のアイデアで、作り手側も予測しなかったような曲になっていくことがあるんですね。

松井 わかりやすい例として、真澄さんが書いた曲でトイ楽器がいっぱい入った曲があったんですよ。それを聴いたミトさんが、突然「これ、インドっぽいボーカルが聴こえてきますよね」って言い出して。で、その瞬間に僕がネットで「じゃあインドの素材買いますね」って(笑)。

ミト インドのボーカルのサンプルライブラリを松井くんがネットで探して、「あ、今セール中です!」ってね(笑)。

松井 「30%OFFセールなので買います!」って買って、すぐに素材を貼りつけてみたらこれが馬鹿ハマりして。

ミト エレクトリック・ヴァイオリンが入ることで、明らかにアジアな感じになってたんですよね。それで「これインドのボーカルとか入れたら最高だよ」「今から呼ぶ?」って言ったら「呼ばなくても買えますよ」って松井くんに返されて(笑)。

──インドのボーカルは、最近はネットで買えるんですね(笑)。

ミト 「呼ばなくても買える」っていう言葉がまず面白いですよね(笑)。松井くんはそういうライブラリというか、カードの切り方が我々には想像だにできない人なんですよね。

──それぞれが思いついた音に対して、別の人間がそれを実現するためのカードを持っているというのは強みですね。

ミト 「2MIXをください」と言われて、それを渡したらすぐにエディットして声を合わせてくれて、2時間後の夕飯食べるときにはもうできてたんですよ。

松井 ちなみにその時に食べた夕飯が、インドカレー(笑)。

一同 (笑)。

──見事なエピソードですね(笑)。

ミト ……あれ、でもその日に食べたのはカツじゃなかった?

松井 あっ、そうか。次の日がインドだ。

ミト うん、でも脚色しとこう。その日にインドカレーを食べたことにしましょう(笑)。

松井 でもそういう過程を経て、それぞれが現場でやってきたことが全然違うんだなってことがわかるんですよ。〈Vol.2に続く〉

インタビュー Vol.2では、Vol.1に引き続き劇伴の制作秘話や、パピカ(cv.M・A・O)&ココナ(cv.高橋未奈美)によるカップリング曲「OVER THE RAINBOW」のレコーディングなどについても触れています。
●TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」 TO-MAS インタビュー Vol.2はこちら

TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST
『シゴフミ』『IS<インフィニット・ストラトス>』『境界の彼方』など数多くの劇伴を担当し、上野洋子とのユニット“Oranges & Lemons”(TVアニメ『あずまんが大王』のオープニングテーマとなった「空耳ケーキ」を手がける)のメンバーとしても知られるシンガーソングライター、伊藤真澄。映画『心が叫びたがってるんだ。』の劇伴やTVアニメ『終物語』のオープニングテーマ作曲など、アニメ作品へ数々の楽曲提供を行なっているクラムボンのミト。『ウィッチクラフトワークス』『トリニティセブン』『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』などアニメ作品の劇伴や主題歌、キャラソン等の楽曲の制作を行ない、作詞・作曲・編曲を手がけたTVアニメ『おそ松さん』のエンディングテーマ「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」も大きな話題を呼んだTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのメンバーであり、声優やアニメ作品の作詞家としても活躍をしている松井洋平
この3人からなる劇伴ユニットが“TO-MAS”。正式名称は“TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST (トーマス サウンドサイト フローレセント フォレスト)”。2015年9月に結成され、TVアニメ『ももくり』『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』の劇伴、『ラブライブ!The School Idol Movie』Blu-ray特典曲「これから」などを手がけている。2016年10月より放送されたTVアニメ『フリップフラッパーズ』の劇伴を担当。またヴォーカリスト・Chimaをフィーチャーリングしたエンディングテーマ「FLIP FLAP FLIP FLAP」も手がけている。

TO-MASのアーティスト・ページ
伊藤真澄 オフィシャルサイト
クラムボン 公式サイト
TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND 公式サイト
Chima オフィシャルサイト
TVアニメ「フリップフラッパーズ」公式サイト

FFED_H1TO-MAS feat. Chima
FLIP FLAP FLIP FLAP

Lantis
2016.11.09

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.FLIP FLAP FLIP FLAP
   TO-MAS feat. Chima
   作詞:松井洋平 作曲:伊藤真澄 編曲:TO-MAS

 2.OVER THE RAINBOW
   TO-MAS feat. パピカ(cv.M・A・O)&ココナ(cv.高橋未奈美)
   作詞:松井洋平 作曲:mito 編曲:TO-MAS

 3.FLIP FLAP FLIP FLAP(Instrumental)

 4.OVER THE RAINBOW(Instrumental)

LACA9484_85_fulifulaOST2TO-MAS
TVアニメ『フリップフラッパーズ』オリジナルサウンドトラック Welcome to Pure Illusion

Lantis
2017.01.18

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

All Music Produced by TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST

Piano:伊藤真澄
Bass:mito
W.Bass:渡辺 等
Flute:高桑英世
Piccolo:森川道代
Fagotto:武井俊樹
Clarinet:十亀正司
E.Guitar&A.Guitar:遠山哲朗
Trumpet:佐々木史郎、奥山 晶
Trombone:河合わかば、佐藤洋樹
A.Sax:本間将人
Toy Piano:toi toy toi(伊藤真澄、良原リエ、コトリンゴ、Babi)
Accordion&toy percussion:良原リエ
Vibraphone:高田みどり
Contrabass:赤池光治、木村将之
E.Guitar:山本陽介
Percussion:よしうらけんじ
Khoomei&Karugura:尾引浩志、岡山守治
Didguridoo:アンディ・へヴァン
Quire:東京混声合唱団

Strings:真部裕ストリングス
1stViolin:真部 裕、押鐘貴之、川口静華、石橋尚子、森本安弘、漆原直美、石亀協子、亀田夏絵
2ndViolin:執行恒宏、伊能 修、納富彩歌、城元絢花、梶谷裕子、高木祐香
Viola:坂口弦太郎、城戸喜代、二木美里、金谷理絵
Cello:堀沢真己、奥泉貴圭、村中俊之、友納真緒

収録曲

 1.Serendipity (Emotion)
   作曲:ZAQ 編曲:伊藤真澄・mito

 2.フリップフラッパーズ ~FLIP FLAPPERS~
   作曲・編曲:伊藤真澄・松井洋平

 3.穏やかな朝 ~Rauhallinen aamu~
   作曲・編曲:伊藤真澄

 4.通学路 ~Route de l’école~
   作曲・編曲:mito

 5.ちょっと憂鬱 ~Un peu mélancolique~
   作曲・編曲:mito

 6.ゴルドベルク変奏曲 BWV988 ~Goldberg-Variationen BWV988~
   作曲:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 編曲:伊藤真澄

 7.寂しさ ~Malinconia~
   作曲・編曲:伊藤真澄

 8.空飛ぶ期待感 ~Flying expectations~
   作曲・編曲:伊藤真澄・松井洋平

 9.あわてんぼ ~Étourdi~
   作曲・編曲:伊藤真澄

10.アゼンボーゼン ~ Il est décontenancé~
   作曲・編曲:mito

11.へんてこおばかさん ~Funny silly~
   作曲・編曲:松井洋平

12.ユクスキュル ~Uexküll~
   作曲・編曲:伊藤真澄

13.FLIP FLAP FLIP FLAP (Slow-motion)
   作曲・編曲:伊藤真澄

14.照れ笑い ~Le sourire embarrassé~
   作曲・編曲:伊藤真澄

15.おしゃべりの時間 ~Temps pour bavardage~
   作曲・編曲:伊藤真澄

16.愉快な日々 ~Ihana päivää~
   作曲・編曲:mito

17.優しい気持ち ~Sensazione di calore~
   作曲:mito 編曲:伊藤真澄

18.小さな友情 ~Poco amicizia~
   作曲・編曲:mito

19.素敵な思い出 ~Buon ricordo~
   作曲・編曲:mito

20.側に… ~Vicino a te~
   作曲・編曲:mito

21.NEXT FLIP FLAPPING!
   作曲・編曲:伊藤真澄

22.遠い呼び声 ~Malproksima alvoko~
   作曲・編曲:伊藤真澄

23.Serendipity(TV SIZE)
   作詞・作曲:ZAQ 編曲:R・O・N 歌:ZAQ

24.研究室 ~Laboratory~
   作曲・編曲:松井洋平

25.Dr.ソルト ~Dr.Salt~
   作曲・編曲:伊藤真澄

26.おかしな実験 ~Mad science~
   作曲・編曲:松井洋平

27.時の逆流 ~Backward flow of time~
   作曲・編曲:松井洋平

28.フリップフラッピング! ~FLIP FLAPPING!~
   作曲・編曲:伊藤真澄・松井洋平

29.ピュアイリュージョン ~Pure Illusion~
   作曲・編曲:伊藤真澄

30.砂漠の村 ~Vesnice v poušti~
   作曲・編曲:mito

31.あわてんぼ ~ चक्कर~
   作曲・編曲:伊藤真澄・松井洋平

32.荒れ果てた広野 ~Pustá země~
   作曲・編曲:mito

33.ならず者 ~Tulák~
   作曲・編曲:mito

34.亡霊 ~Přízrak~
   作曲・編曲:mito

35.悪夢 ~Noční můra~
   作曲・編曲:mito

36.絶体絶命 ~Verzweifelte situation~
   作曲・編曲:伊藤真澄

37.一進一退 ~Seesawing~
   作曲・編曲:松井洋平

38.LET`S FLIP FLAPPING!
   TO-MAS feat.川村ゆみ
   作詞・作曲:松井洋平 編曲:TO-MAS

39.別世界 ~Jiný svět~
   作曲・編曲:松井洋平

40.暗躍の夜 ~Nuit des manœuvres secrètes~
   作曲・編曲:伊藤真澄・松井洋平

41.造られた友情 ~Gebaut freundschaft~
   作曲・編曲:mito

42.計算された双子 ~Berechnete Zwillinge~
   作曲・編曲:松井洋平

43.迫り来る恐怖 ~Peur imminente~
   作曲・編曲:mito

44.崇高な目的 ~Edles ziel~
   作曲・編曲:mito

45.不安 ~Anxiété~
   作曲・編曲:松井洋平

46.ノスタルジー ~Nostalgia~
   作曲・編曲:伊藤真澄

47.悲しき争い ~Triste lotta~
   作曲:伊藤真澄 編曲:TO-MAS

48.圧倒的な力 ~Überwältigende macht~
   作曲・編曲:mito

49.決意 ~Determinazione~
   作曲・編曲:伊藤真澄

50.暴走 ~Perdo de kontrolo~
   作曲・編曲:伊藤真澄

51.大逆転 ~Trading Places~
   作曲・編曲:mito

52.虹の彼方へ ~Oltre l’arcobaleno~
   作曲・編曲:mito

53.FLIP FLAP FLIP FLAP(TV SIZE)
   TO-MAS feat. Chima
   作詞:松井洋平 作曲:伊藤真澄 編曲:TO-MAS

©FliFla Project

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP