TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』OPテーマ「The Other Side of the Wall」Void_Chords feat.MARU 高橋 諒 インタビュー

2017.07.26

カップリング曲とEDテーマと作品世界をつなぐ仕掛け

───なるほど。一方でカップリング曲の「Drive My Fate」はブライトかつソウルフルなナンバーで。これはどのように作ったのですか?

高橋 『プリンセス・プリンシパル』のお話をいただいたときに、EDテーマも書かせていただくことになって、声優さんが歌う「A Page of My Story」という曲を先に書いたんですけども、そことリンクさせたら面白いんじゃないかと思って。なので「Drive My Fate」と「A Page of My Story」はメロディーが一緒なんです。

───そうだったんですね!

高橋 僕のソロ・プロジェクトのシングルではあるのですが、作品世界と縦ラインや横ラインでこんがらがっていく仕掛けがあればさらに楽しめるんじゃないかということで。最初はEDテーマをスウィートボックスみたいにクラシカルな響きとR&B的なビートを合わせたブライト路線にしようと考えていて。「A Page of My Story」をR&Bスタイルで再解釈するとどうなるかっていう実験作品なんです。

───それはすごく面白い試みですね。

高橋 歌詞の世界観も実はIfの物語というか、スパイの女の子たちがもし普通の女の子だったらどうなってるかっていう独白みたいになっていて、すごく面白いんです。これはMARUさんにコンセプトを説明して作詞していただきました。

───なるほどー。これは両方の曲を聴き比べることで、さらに味わい深くなりそうな仕掛けですね。それと「Drive My Fate」を聴いて個人的に思ったのは、UKソウルっぽさがあるということで。

高橋 そうですね。実際にEDテーマのメロディーを弾きながら、ヒップホップのビートを当ててみてるあいだに、やっぱりジャジーな要素が欲しくなって、いろいろ足していくうちにどんどんUK色というかインコグニート感が出てきて(笑)。最初に予想していたよりはちょっと影のある曇った感じになったんですけど、いいバランスになったと思いますね。

───『ACCA13区監察課』の劇伴やONE III NOTESにはアシッド・ジャズの要素が結構出ているように思いましたけど、その流れも感じますね。

高橋 16ビートが好きなので、隙あらばやりたい感じです(笑)。MARUさんの歌声とも当然マッチしますし。

───MARUさんはブラン・ニュー・ヘヴィーズのツアーに参加されたこともありますものね。せっかくなのでEDテーマの「A Page of My Story」についても聞きたいのですが、これはどんなイメージで作られたのですか?

高橋 これはOPがひりついた感じなので、EDはスタイルをガラッと変えようと思って。本編の内容もシリアスなので、EDで抜くことで逆にもっと不穏にもなるというところも狙って(笑)。ジャンル的なアプローチとしては「Strawberry Fields Forever」的な感じでやってみたら面白いんじゃないかなと思って、アコギを弾きながら穏やかな感じで作りました。

───確かにブリティッシュ・ロック風というかビートルズというか。

高橋 トランペットは完全に「Penny Lane」からのアイデアですからね(笑)。

───やはりUK感で統一されている感じなんですね。歌入れも立ち会われたんですか?

高橋 一部は立ち合わせていただきました。ディレクションは作詞もしていたいたKonnie Aokiさんにお任せしたんですけど、みなさんすごい予習をしてきてくださって、英語曲なのに素晴らしい歌ですよね。ぜひ両方手に取っていただければと思います(笑)。

───ちなみにリスレゾでの取材ということでお伺いしたいのですが、ハイレゾ音源に興味はありますか?

高橋 興味はあります。最近は96kHz音源での作業も増えてるので、パソコンが悲鳴を上げてるんですけど(笑)。でもスタジオの音がそのままリスナーさんに届くんだと思うとすごいなあとは思いますね。

───「The Other Side of the Wall」でハイレゾ的な聴きどころを挙げるとしたら?

高橋 ほぼ全部こだわってるので、ここみたいなポイントはないんですけど、やっぱり歌のパワーですね。あとはハイレゾだとひりついた雰囲気がそのまま出ると思いますし、TV版では流れない後半部分の歌と楽器がごちゃつきまくる部分は、より良い音で聴いてほしいと思います。

───そこも一音一音がより鮮明に聴こえてくるでしょうしね。

高橋 それと、わかるかわからないかぐらいの細かさでMARUさんのボーカルをチョップしていたり、2Aの最後にしか入ってない音みたいな仕掛けがいっぱいあるので、そういう音楽の構成も聴いていただけるとスルメ感が味わえると思います。

メタルから現代音楽まで……高橋 諒の音楽ルーツ

───今回のVoid_Chordsで、ご自身の音楽的なルーツとなる部分を表に出すことはできましたか?

高橋 そうですね。ジャズ方向やラウドな音楽でのやりたいことを組み合わせてできたので、こっち方面のバックボーンはわりとオールスター的に出せたかなと思って。僕はヘビーな音楽が大好きなので、バックもゴリゴリに歪んだギターとベースでできましたし。こういうのはアニソンとしては珍しいと思うので、僕は闇とか隙間から攻めようかなっていう(笑)。

───そこはいままでのアニソンにない新しさが生まれてくる可能性にもつながりますしね。今回のシングルだけでも高橋さんの音楽的なバックグラウンドの幅広さを充分感じることができるのですが、これまでどういった音楽遍歴を歩んでこられたのでしょうか。

高橋 僕は本当にありとあらゆるものが好きなんですけど、まずはメタル少年から入って、そこからプログレでコードの響きを知って、ELP(エマーソン・レイク&パーマー)の「Fugue」みたいな曲からクラシックをちゃんと聴くようになって。そこを聴いていくとガーシュウィンからジャズになって、もうちょっといくとどんどんノイズっぽい現代音楽になるので(ピエール・)シェフェールとかを聴いてたら、どんどんテクノが好きになってみたいな(笑)。メタルから掘り下げて音楽史を辿ってきてるみたいな感じですね。

───なるほど(笑)。クラシックからは本当に現代の音楽史をなぞるような流れですね。

高橋 「西洋音楽史I」みたいに順番に授業を受けていった感じはあります(笑)。なので、ダンス・ミュージックとしてのテクノとかハウスというよりも、ミュージック・コンクレートの方向から入ったんですよね。クラシックの時代を一個ずつちゃんと学んでいくなかで、現代音楽がミニマルな方向に広がって自分の幅も広がったっていうか。

───音大出身とも伺いましたけど、何を学んでらっしゃったんですか?

高橋 作曲科にいました。そこで18歳からクラシックをガッツリやってたので、大学で学べたことは大きかったですし、いまの劇伴の仕事にも役に立ってると思います。僕はやりたいことが多すぎてひとつに定められない性質なので、バンド時代もいろいろ入れすぎて器用貧乏みたいなところがあって。でも、作曲家という属性を強く出しながらそれをアーティストとしての看板にすることで、器用貧乏な自分を統合できたと思うんです。Void_Chordsは、いろんなものが好きだけど一本の軸を作りたい自分を統合できるプラットフォームという感じですね。

───なるほど。高橋さんのボイド部分にはまだまだ未知の音楽が眠ってそうですが、今後やってみたい表現としてパッと思い浮かぶものはありますか?

高橋 なんだろう?……今回の作品にも通じるんですけど、過激なことをもっとやってみたいです(笑)。今回もサックスソロとかはだいぶアバンギャルドなんですけど、もうちょっとアバンギャルドでもいいかなとは個人的には思っていて。あとはゴリゴリな変拍子とかもやりたいですね(笑)。

───本当になんでもアリな感じですね(笑)。まだテクノやハウスの引き出しもあまり出していませんし。

高橋 一時期クリス・リービングとかのハード・テクノにすごいはまって、ひたすらそういうDJばかりやってた時期があって。でもそういうのを出す機会はなかなかないですね。

───もっと未来SFみたいな作品だと合いそうですけどね。

高橋 そうですね。劇伴でもそういうがっつり未来みたいなSF作品は一回やってみたいと思いますね。エレクトロニカな方向の引き出しはまだあまり開けてないと思うので。

───個人的にもめちゃくちゃ期待しております!ちなみにVoid_Chordsとしての今後の予定は?

高橋 ありません(笑)。でも今後もパーマネントに活動できればと思ってるので、何かしら尖ったことをやらせていただける機会があれば、このプロジェクトでやりたいですね。〈END〉

Void_Chords feat.MARU「The Other Side of the Wall」のレビューはこちら
●ONE Ⅲ NOTES「Shadow and Truth」のレビューはこちら

Void_Chords
アニソン界に衝撃を与えたONE III NOTESのプロデューサーもこなし、数々のアニメ作品の音楽を手掛ける今話題のクリエイター高橋 諒によるアーティストプロジェクト。

1stシングルで歌唱を担当するのは、MARU。DREAMS COME TRUEのライブや数々の有名アーティストのコーラスなどにも参加し、抜群の安定感のある歌声を持つ新星の歌姫。2015年にブロードウェイ・ミュージカル『RENT』にMrs.Jefferson役として参加。一層活動の幅を広げている今後期待のアーティスト。

Void_Chords feat.MARU(Lantisのアーティストページ)
 MARU -official site-
TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』公式サイト

©Princess Principal Project

Void_Chords feat.MARU
The Other Side of the Wall

Lantis
2017.07.26

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit

ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.The Other Side of the Wall
   作詞:Konnie Aoki 作曲・編曲:高橋 諒

 2.Drive My Fate
   作詞:MARU 作曲・編曲:高橋 諒

 3.The Other Side of the Wall (Instrumental)

 4.Drive My Fate (Instrumental)

この記事を書いた人