今流行っているものだけを聴くのもいいけど、「これが原点」みたいなものを知るとまた違うじゃないですか

──聴いた人はぜひ当ててほしいですね（笑）。音楽好きの人にはそういうネタ探しをする楽しみ方もできますし、純粋に音楽としても気構えなく楽しめるサントラになってると思います。

細野　でも、全体的に聴いたらなんか変な感じですよね？

田中　まあねえ（笑）。みんなどういう心持ちでこれを聴くんだろう？

細野　家で何回か聴いたんですけど、半分ぐらいまでは正常を保ちながら聴いてるんですけど、半分過ぎた辺りからボンヤリしてくるんですよ。

一同　（笑）。

田中　聴き流せないし、BGMにならないんだよね（笑）。

細野　サントラのわりにはほんわかした曲があまりなくて、曲がどんどん何かを主張してくるんですよね。

──メロディやアレンジがはっきりしてる曲が多いですものね。

田中　大瀧（詠一）さんの『Niagara CM Special』みたいな感じかも。あれも一枚の中でパロディやオマージュとかいろんなことをやってるし、僕が好きな作品でもあるので、きっとそういうのを受け継いでるんでしょうね。

細野　なんか名盤作ったなあって思っちゃてるんですよね（笑）。

一同　（笑）。

──自分で言ってしまいましたか（笑）。

細野　最近自分で言わないと誰も言ってくれないんで（笑）。

──今回のサントラ制作を行ったことで、これからの自分の音楽活動にもフィードバックしそうな部分はありますか？

細野　普段はストリングスをサンプリングや打ち込みでやってて、今は製品の技術もクオリティも上がってるから、それで大丈夫だろうと思って作ってたんですけど、今回、生でストリングスを録ったら全然勝てなくて。だからストリングスは呼んだほうがいいんだなと思いました（笑）。

一同　（笑）。

細野　ストリングスとか管楽器の入ったものを今後やってみたいと思いましたね。

田中　僕は細野くんのアレンジが素晴らしいということが改めてわかったというか。打ち込みやバンドサウンドのアレンジはわかるんだけど、ストリングスのスコアもちゃんと書けて。ストリングスをパッド的に入れてるアレンジじゃなく、主旋律と美しく絡み合うメロディーがそりゃもう美しくて。だから、これは細野くんの出世作になって、これから先、仕事がバンバン来るんじゃないかなと思ってて。そうなってほしいというのが裏テーマとしてあります（笑）。

細野　あんまり働きたくないから、そんなに来なくていいよ（笑）。

──ちなみにラーメン通の田中さんから見て、アニメのラーメン描写で印象に残ったものはありますか？

田中　いろいろとあるんですが……あれですね。第1話のいちばん最初のシーンに出てくるラーメンが荻窪の「春木屋」なんですよ。その意味をちゃんとくみ取ってほしいというか。

──というのは？

田中　「春木屋」は老舗のラーメン屋で、いわゆる人気のお店とかチェーン店とは違うんですよ。要は原作者の鳴見なる先生のこだわりでもあると思うんですけど、やっぱりアニメのいちばん最初に登場するラーメンは歴史のある味にするというところに絶対こだわったと思うんです。それが「春木屋」なんですよね。そのルーツを感じるみたいな部分、新しいお店に行くのもいいけど、ちゃんと名店といわれるところを知ったうえでラーメンを食べる、みたいなメッセージが込められてると僕は思ってます。

細野　へー。

田中　だから小泉さんのいちばんはそこのお店なんだと思います。（原作コミックで）病気してラーメンを2週間食べられなくて、いちばん最初に食べるのも「春木屋」でしたからね。やっぱりここがルーツみたいなお店があるんですよ。新しかったり奇抜なお店だけではなくて、ちゃんとルーツの、いちばん歴史ある一杯というのを味わってほしいですね。

──田中さんの目から見ても、そういうラーメン愛がある作品ということなんですね。

田中　そうですね。鳴見先生は本当に詳しいし、ちゃんとわかっていらっしゃるので、ラーメン的に見ても間違いがないです（笑）。

細野　ラーメン原理主義的な見地からから見ても正しいんだ（笑）。

田中　音楽もそうですけど、今流行っているものだけを聴くのもいいけど、「これが原点」みたいなものを知るとまた違うじゃないですか。それと一緒だと思うんですよ。もちろんラーメン好きの人の中にはそういうことに興味がない人もいますけど、音楽と一緒でルーツを辿る、オリジナルを知るみたいなことをやると、より楽しめると思います。＜END＞