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REPORT

2017.04.05

『アイドルマスター ミリオンライブ!』4thライブ日本武道館公演3DAYS全アイドル個別レポート「BlueMoon Harmony」編

『アイドルマスター ミリオンライブ!』の4thライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」が3月10日~12日、東京・日本武道館で開催された。今回は、武道館2日日「BlueMoon Theater」に向けて結成されたチーム「BlueMoon Harmony」組の12人を中心にレポートする。

今回レポートするのは、「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER FORWARD 02」で結成された星座ユニット「サジタリアス」より藤井ゆきよ (所 恵美役)、戸田めぐみ(舞浜 歩役)、阿部里果(真壁瑞希役)、「ピスケス」より近藤 唯(篠宮可憐役)、小岩井ことり(天空橋朋花役)、野村香菜子(二階堂千鶴役)、「ウィルゴ」より斉藤佑圭(永吉 昴役)、伊藤美来(七尾百合子役)、田所あずさ(最上静香役)、「アクアリウス」より平山笑美(北上麗花役)、愛美(ジュリア役)、駒形友梨(高山紗代子役)の12人=チーム「BlueMoon Harmony」。上記キャストが2日目以外の別日に出演した際の印象についても本稿で書いていく。

伊藤美来(七尾百合子役)

今回の日本武道館ライブは各日にサプライズが用意されていたが、本当の意味でのサプライズは「サプライズの存在自体を予期している人が少なかった」初日の19曲目「創造は始まりの風を連れて」の披露だったように思う。この日初めて暗転した会場で、ステージの上段に伊藤、小岩井、麻倉もも、村川梨衣、中村温姫の5人の姿が見えた瞬間の会場の驚愕の叫びと熱狂は忘れられない。

その鮮烈さの一因として、センター・伊藤のパフォーマンスが果たした役割は大きかったように思う。七尾百合子のソロ曲といえば「透明なプロローグ」と「空想文学少女」で、アイドル感のある透明なボーカルを聴かせることを重視した楽曲。ダンスよりもボーカルに想いを込める姿や表情などで見せる傾向だ。だが伊藤がStylipSなどで非常に運動量の多い、激しいダンスをノンストップで踊っている姿を知っていると、ダンスで見せないのはちょっともったいないと思うこともあった。『ミリオンライブ!』の音楽はあくまでキャラクター性重視だし、敢えてそういう楽曲を用意することにも意図があるのだろうな、とも思っていたのだが。

伊藤がソロ曲で百合子としてキラキラした表情でボーカルを響かせる姿がすっかり目に馴染んだ今だからこそ、「創造は始まりの風を連れて」のセンターで、真っ赤な照明の中で彼女が見せた稲妻のように鋭いキレ味の動きと、凛とした表情から目が離せなくなってしまった。本曲が「THE IDOLM@STER THE@TER ACTIVITIES 01」に収録された劇中主題歌であり、「七尾百合子が演じる勇者」としての歌唱であることも、彼女のポテンシャルを全開にできた要因であるだろう。リリースイベントで最初にこの曲を見たときはもっと大きな会場で見てみたいと感じたものだったが、日本武道館ならではの大会場仕様の照明や演出と大観衆、サプライズの衝撃度を背負ったステージは予想を大きく越えるものだった。「創造は始まりの風を連れて」参加メンバーの5人は、攻めの楽曲では普段の柔らかいイメージとは全く違ったソリッドな表現ができるメンバー揃い。その中でなお鮮烈な印象を残した伊藤はやはりスペシャルな存在だった。

初日の印象も覚めやらぬ2日目、伊藤が歌ったソロ楽曲は原点の楽曲「透明なプロローグ」だった。そこで印象に残ったのは、彼女の笑顔が持つ様々な色合い。サビの華やかな笑顔、間奏前の夢見るようなキラキラした笑顔。そして客席に向けて「絶対忘れません!」と叫んだあとの、ちょっとはにかんだような笑顔。それは、その時々の彼女自身の感情と、楽曲の中で描かれる気持ちがしっかりとリンクしているからこその表現だと思う。伊藤自身はいちばんリラックスして歌えた、指をぱっと上げた瞬間に今までの思い出がぱーっとよみがえったとのことで、そんな心の動きを会場も一緒に感じられるステージングだった。

ユニット・ウィルゴとして歌った「プリムラ」では、ゆったりと舞うようなダンスの中での、伊藤の動きの美しさが印象に残った。ダンスを見るときはつい激しい、大きい動きに目が行きがちだが、ゆったりした動きの中で身体を制御して美しく見せるのはごまかしがきかない。それだけに彼女のダンスの確かな基礎を感じる時間だった。ウィルゴのメンバーである伊藤と田所は「Blue Symphony」でも一緒に歌ったが、低めから伸びていく田所のかっこよさと、あくまで声質は高くキュートでありながらも凛とした味わいを備えた伊藤のボーカルの相性の良さを感じる2曲だった。

斉藤佑圭(永吉 昴役)

ウィルゴの「プリムラ」は、永吉 昴ってこんなにかわいい女の子だったんだな、というシンプルな事実を再確認するようなステージだった。昴と静香が普段あまり前面に出すことはない秘めた可憐さが、基調になる百合子のキュートな歌声と溶け合うサビのシンクロはとても華やかだ。間奏の小刻みにハネるような振付も抜群にかわいいのだが、単にかわいいばかりではなく、かわいい振付をやるときに斉藤がちょっとはにかむところが昴のキャラクターに重なるイメージだった。

「Day After “Yesterday”」は「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER HARMONY 09&10」発売記念イベントでの初披露以来約2年ぶりの披露となった。当時から完成度の高さとアイドルとしてのポテンシャルの高さを感じさせるパフォーマンスだったが、武道館ではより歌声の芯が強い、印象的なボーカルになった気がする。バックの重低音の歪みが力強い楽曲だけに、それを切り裂くようなボーカルの爽やかさ、清涼感がなんとも気持ちいい。

前回はリリイベということもあり私服でのパフォーマンスだったことを考えると、アイドル衣装を着て、間奏でダンサーとシンクロしたダンスを見せる「Day After “Yesterday”」は初めての光景だった。客席が歌うパートのあと、「想いちゃんと受け止めたよ」のフレーズに合わせて、受け取ったものを胸に抱きしめるような仕草は見ている側まで胸が熱くなった。終盤のワンフレーズは「ほんとに、ありがとー!オレ、ここで待ってるからなー!」と、今この場所に立った昴ならこう叫んだであろう心からの叫びに置き換えられていた。

「星屑のシンフォニア」では、オリジナルユニット・ミルキーウェイの星井美希を除いた4人が集結した。美希はこの4人が揃ったステージを喜ぶだろうか、いや、このキラキラしたステージを見たら悔しがるだろうな……と思っていると、間奏で斉藤たちが叫んだのは「“星”みたいな輝きが!」「“い”つも私たちを照らしてくれる!」「“美”しい夜空を彩って!」「“希”望を明日へ届ける為に!」の言葉だった。4人がつなげたミルキーウェイの傍らには、気まぐれで頼れるリーダーの姿があった。

今回の武道館では『アイドルマスター』とプロ野球・パシフィックリーグの異色のコラボが発表されたが、斉藤からは「野球といえば、永吉 昴ですよね? 皆さん野球してる昴が見たいですよね?」とのアピールも。かっこよくてかわいい昴と斉藤の姿を球場で(?)見ることができるのかにも注目だ。

田所あずさ(最上静香役)

ライブ2日目、はじまりの曲「Thank You!」は、田所の「BlueMoon Harmony、いっくよー!」の声とともに幕を開けた。「Dreaming!」でもそうだったが、歌い出しのパートでの田所は初日のMachicoや最終日の山崎ほど個人の色が飛び出してくるわけではなく、確かな技巧と安定感で全体の調和の鍵になっている感じが静香らしい。

最上静香らしさ。それがこの日の田所のひとつのテーマだったと思う。原点の楽曲「Precious Grain」を静香が夢見た武道館で歌うステージは、冒頭の「聴こえているでしょう?」のフレーズが、自分たちの席を通り抜けて武道館の最後方まで糸を引くように伸びていった時点で、最高の仕上がりであることがわかってしまった。迫ってくるような音圧に魂を揺さぶられ、一瞬の暗転とスポットライトが交錯する瞬間の眼差しに鳥肌が立つ。仄暗い照明に浮かび上がる横顔は青白き月の女神のようだ。

だが本当に驚かされたのは、輝く涙、そして夢を歌うくだりで華が咲いたような笑顔を浮かべたこと。これまでにはなかった楽曲の解釈だったが、その姿は今までのどのステージよりも濃厚に「最上静香」を香りたたせた。田所によれば、今まで楽曲に寄り添わせるためにあまり表情を出さないように努めていたが、今回は夢の武道館に立った静香の感情、喜びを素直に出したとのこと。田所と静香の一致した感情をそのまま表に出した表現が、深くまで届いてくるのは必然だった。笑顔に限らず、本当にいい顔で歌うようになったと思う。

ミルキーウェイ組による「星屑のシンフォニア」の余韻が残るステージに、雨が降る。徐々に強くなる雨音に打たれるかのようにステージに現れたのは、ゲッサンコミック版『アイドルマスター ミリオンライブ!』特装版に付属するオリジナルCDのために生み出された楽曲「Flooding」を歌うクレシェンドブルー(田所、平山、雨宮 天、小笠原早紀、麻倉)の5人だった。ソロパートの掛け合いでめまぐるしく切り替わるピンスポットがとてもスタイリッシュ。ユニット名にも関する「蒼」のイメージが強い楽曲だが、この日はむしろ小笠原、麻倉が存分に自身とアイドルの「色」を見せたからこそ田所たちの蒼の色合いも深まった気がする。最上静香らしさを表現するうえで、2日目の「Flooding」で見せた志保と高め合うテンション、そして最終日に「君との明日を願うから」で見せた未来、翼との3人の関係性から生まれる歌声は、どちらも欠かすことができないものだったと思う。

田所と静香が重なって見えた「Precious Grain」と、コミックで紡がれてきた物語が結実する「Flooding」。この2曲を最上静香が夢見た舞台・日本武道館で歌うというシンクロの在り方は、『ミリオンライブ!』だからこそ実現できたものだと思う。最終日のステージに立った田所は、「最上ちゃんのあこがれの武道館で、あこがれの景色を見せてくれてありがとうございました」と心からの感謝を客席に捧げていた。

藤井ゆきよ (所 恵美役)

長身で、華やかで、人情家で涙もろい。だがいざパフォーマンスとなると吹き上がる炎のように激しく鮮烈なパフォーマンスを見せるのが藤井ゆきよのイメージだ。

サジタリアスの「Raise the FLAG」は、そんな藤井の激しさ、重厚なかっこよさを凝縮したような楽曲。このユニットでは低音を担う藤井と戸田だが、藤井の歌声はややもすれば裏返る、叫ぶような歌唱から激しい感情の高まりが覗くのが魅力的だ。武道館の地に旗を掲げよと拳を突き上げる会場の盛り上がりは唯一無二のものだ。

恵美のパフォーマンスの妖艶さの面にもフォーカスしたのが「フローズン・ワード」で、ステージをゆったりと歩む足取りが醸し出す空気感や、間奏のなまめかしい腰つきなど、動きでの表現がものすごく巧みだ。「痛いほど好きだよキミが どうして…」からの彼方を見つめる眼力の強さと、クライマックスにかけての痛切な感情におぼれるような表現力に飲みこまれそうなパフォーマンスだった。

そんな大人の激しさと情念を感じさせるパフォーマンスが多い藤井だけに、「Beat the World!!!」のカラッとした陽性のパフォーマンスはとても新鮮だったが、あっけらかんとした素の恵美のイメージにはとてもぴったりくる。楽曲的にはこの曲の主役は(オリジナルメンバーの)戸田だったと思うが、その表現にぴったり寄り添った上で新しい色を見せてくれたのは藤井の力だった。それにしても戸田と藤井の歌声は姉妹のように近くて、それでいてそこに込められる「表現」が違っていて、とても面白い組み合わせだ。

そして藤井が、歌うことに強い葛藤があったと明かしたのが最終日のシークレット、ユニット・灼熱少女として歌った「ジレるハートに火をつけて」だった。藤井、桐谷蝶々、稲川英里、上田麗奈とオリジナルメンバーの5人中4人が揃った灼熱少女だったが、そこに責任感が強いリーダー・田中琴葉を演じる種田梨沙の姿はない。休業中の種田が帰ってくる日を待つか、今歌うべきか。その葛藤への答につながったのは、「恵美なら気合を入れて歌う」という想いだった。

あふれる想いを堪えながらその決断と想いについて語る藤井は、強い信念と精神力で涙を見せまいとしていた。その気持ちを支えていたのは、ひとつには村川のMCもあったのではないかと思う。3年前の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 1stLIVE HAPPY PERFORM@NCE!!
の締めのMC、隣でくっちゃくちゃになって号泣が収まらなくなった村川を、姉のように優しく面倒を見ていたのが藤井だった。ところが3年後の武道館で、最終日の村川のMCは笑顔で短く鮮やかで、しっかりと想いの込もった完璧なものだった。そうやってつないできたMCのトリで、ゲストとして出演した藤井が泣き崩れるわけにはいかない意地もあったと思う。MCを締めくくった藤井の言葉は、「胸を張って琴葉に報告できます!」だった。

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