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INTERVIEW

2016.09.09

リスアニ!本誌連載出張版「GOT’S & TAKE(FLOW) ロケ物語 第16章 ufotable編 ロングバージョン」

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リスアニ!本誌で連載中の「ロケ物語」。FLOW のGOT’SとTAKEがアニメ制作現場に潜入。8月9日に発売になったリスアニ!Vol.26では、FLOWがOPテーマを担当している『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』のアニメーション制作を担当しているufotableさんに伺い、代表取締役・プロデューサーの近藤 光さんにお話を聞いてきました!本誌に収まりきらなかった内容を追加してロングバージョンでお届けします。

『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』の制作真っ最中のufotableに潜入!

TAKE お忙しいところすみません!

近藤 光 いえ、とんでもない。来ていただいて光栄です。ただ、放送始まりましたからね、作業がエンドレスです。(取材は7月に行われました。)

TAKE アニメの制作現場のことは全くわからないので。先ほど見させてもらって、いやぁすごいですね。

近藤 本当に多くのスタッフが毎日、コツコツ積み上げるというのがアニメづくりで、まったくもって日常は地味だったりします。

TAKE ちなみに『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』を1本作るのに関わる人の数はどれくらいですか?

近藤 200人くらいだと思います。僅かにお願いする外注さんも含めると300人とか400人になると思うんですけど。

GOT’S ufotableさんに所属されている方で何人くらいいらっしゃるんですか?

近藤 東京と徳島のアニメスタジオに、カフェやCINEMAのスタッフをあわせて200人近くになると思います。

GOT’S 全員が『テイルズ オブ』に関わっているんですか?

近藤 今はそうです。班に分けて何作も同時進行させる方法もあるんだけど、みんなが集結することによって熱をあげてきたいんです。必ずフィルム、まだフィルムって言い方しちゃうんだけど、フィルムに熱が付着するって信じてやっています。

TAKE 今回は『テイルズ オブ』の絵コンテや原画を見せていただけると聞いたのですが、これですね。

近藤 はい。オープニングの原画を持ってきました(ドンと大きな袋をテーブルへ出して)。

GOT’S 原画っていちばん最初のですか……?

近藤 そうそう。それから動画。これがラフ。こっちはレイアウトとこっちが(ペラペラとパラパラ漫画のように捲って見せながら)いわゆるラフ原ってヤツです。ここに作画が載ったら原画に。それから動画。ここにさらに3Dも入って来る。そんな流れですね。

TAKE この原画はすごい量ですけど、これでどれくらいのシーンの分なんですか?

近藤 タイトルが出て来る前の、みんなが揃うところだけですね。カット1。オープニングはいろんなシーンが繋がって出来ているんだけど、その1部分だけでこの量ですね。

GOT’S え!?

TAKE これだけあって!?

近藤 これだけないとオープニングの1カットができないんですよ。今回のオープニングもいっぱい枚数がかかっています。

GOT’S 枚数が多いとそれだけ動きがなめらかになるってことなんですか?

近藤 なめらかはなめらかですが、動きがいいことが正しいことではなく、作りたいものにあわせて何を描くかだと思うんです。それが、結果、枚数が増えるということになってしまっていますが…。

GOT’S そりゃ、そうですよね。

近藤 ですよね。それに、動きが多いっていうことはそれだけのものを描ける能力が必要なんですよ。そして動きが多いことは必然的にエラーも多くなる。だからリスクも高くなるっていうこともあります。

TAKE 先ほどモニタで観た、あの虫はどんなふうに描いていたんですか?

近藤 あれはCGです。それを作画や背景とマッチさせて画面をつくっています。この画づくりは大変で、ワークフロー的に、作画から進めていくのか、3Dのワークを付けてから作画をするのか。まずはそこから違いますし、そもそも違う行程で作ったものをマッチさせなきゃいけないわけですから。さらにそこに背景をつけていかなきゃいけない。詞が先か曲が先か、ではないですが。

TAKE それが合わさったときに、順番の違いで感じが変わるんですか?

近藤 はい。作業工程でもそうですが、やっぱり演出意図をどう画面にしていくかという戦いになります。

GOT’S さっきスタジオ内を見学させていただいいたときも思ったんですけど、木の葉の一枚一枚まで手描きしていくことに、「アニメは忍耐」という言葉を感じますね。

近藤 どのスタッフも本当にみんな凄いですよ。ここにいるみんながいて、みんなが頭と手を動かして、アニメはつくられています。

GOT’S あんなに細かいんですね。重ねて、重ねて描いていくんですよね。

近藤 映画とかテレビとか関係なく「『テイルズ オブ』に相応しい画面を作ろう」と思ってやってます。それが、結果、映画を毎週つくって、放送するみたいなことになってしまいました。

GOT’S 先行上映会でかけた#03(第4話)をさらにブラッシュアップして、200カット以上修正したと聞きました。

近藤 そうですね。作画から修正した部分もありますし、デジタル上で修正した部分もありますし、結果、ほぼほぼ出力しなおしました。

TAKE そのこだわりはすごいですね。一度完成させて先行上映した上で更にまた手を加えていくわけですから。

近藤 やらなきゃと思っちゃうんですね。時間あるなら、あるかぎりやりたい。

TAKE ほかに『テイルズ オブ』の制作で大変なポイントはありますか?

近藤 『テイルズ オブ』で言うと、線が多いんですよ。これは本当に大変です。観る環境もかわって、自宅でもハイスペックな映像が楽しめるようになりましたよね。そうなると、絵の精度も今まで以上に求められる。だから、引きサイズでも、スレイくんの顔をなんとなく見るでしょ。そうすると目の中にも線が細かくある。でも、もう絵を描こうにも、細かすぎて鉛筆が入らないんです。じゃあどうするか。これを拡大コピーして書き込んだものを縮小してコンピューターに貼り込んでいく。それを少しずつ、動かしていくだけの枚数を描いていく。

TAKE 細かい(笑)!

近藤 この時代、コンピューターが勝手にやってくれると思っている人がまだまだいるみたいなんだけど、全部手作業。忍耐です。

TAKE 絵コンテは我々も一回作ってもらったことがあるんですよ。架空のアニメの絵コンテをってことで。

GOT’S 『FLOW ANIME BEST 極』というアニメベスト・アルバムを出したときに、アニメタイアップの曲を集めたんですけど、新曲も入れたくて。その新曲は〝架空のアニメの主題歌〟ということで作ったので、絵コンテも作ったんです。

TAKE この絵コンテの段階でもかなり細かく書き込んであるんですね。自分たちが目にする絵コンテというと、MVの絵コンテを監督から見せていただくということは多いんですが。アニメは非常に細かく描かれているんですね。今回の訪問のためにufotableさんについて調べてきたんですが、とにかくフロンティア精神に溢れる会社だな、と感じました。

近藤 ありがとうございます。

TAKE 人物の髪にグラデーションをつけて、そのグラデーションを動かしていくこととか、手間のかかることにどんどん挑戦されていく姿勢を感じます。

近藤 今となっては当たり前になっていますけどね。昔はもっと手間がかかったし、やっぱり最初だったので試行錯誤、スタッフ間で共有するのが大変でした。グラデーションをやることになったきっかけは『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』という作品です。当時、イラストの連載を雑誌でやっていたんですよ。それがアニメ化に至り、「そのイラストのまま動かしたいよね」って、僕が言ったことを、スタッフが頑張って実現してくれた。それが経緯です。

TAKE アニメに落とすときに、もうちょっと違う表現をしようかな、とはならなかったんですか?

近藤 『テイルズ オブ』で言えば、(衣装の端々にある模様を指さし)こういう模様って、なくても物語には影響ないじゃないですか。これを外せば、作業は随分軽減されるんですよ。エラーのリスクも減る。ただ、ユーザー視点での印象は変えたくない。だから、やっぱり「描こう」と決断する。この思考の繰り返しですね。結果、残すことが大半になるわけですが、このせめぎあいが辛いんです。

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