「私たち、趣味・特技。アイマスです!!」。“THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”東京公演最終日レポート

int-141007-001-c001

『アイドルマスター』の9周年ライブツアー“THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”のファイナルとなる東京公演2日目が10月5日、東京体育館で行なわれ、中村繪里子(天海春香役)、今井麻美(如月千早役)、釘宮理恵(水瀬伊織役)、平田宏美(菊地 真役)、下田麻美(双海亜美・双海真美役)、沼倉愛美(我那覇 響役)、原 由実(四条貴音役)、浅倉杏美(萩原雪歩役)が出演。さらに最終日のサプライズゲストとして、玲音役の茅原実里が登場した。

int-141007-001-c002int-141007-001-c003

東京公演はアニメ『THE IDOLM@STER』のOPテーマ「READY!!」でスタート。前日のソロコーナーは中村の「START!!」から始まったが、東京公演では何かと“始まり”や“原点”を感じさせる楽曲が多い。そんな印象は、二日目のソロの頭が「太陽のジェラシー」であったことで決定的になった。

 

そこから始まった伝説

 

『アイドルマスター』の原点となる曲は何か。多くの人は「THE IDOLM@STER」と答えると思う。位置づけとしてはまさしくその通りなのだが、実はアーケード版の9人のキャラクターをイメージした「太陽のジェラシー」「蒼い鳥」「魔法をかけて!」「おはよう!!朝ご飯」「Here we go!」「ポジティブ!」「9:02pm」「エージェント夜を往く」「First Stage」の持ち歌が先にあり、最後に「……やっぱり全員の統一したテーマ曲がいるんじゃない?」と、急遽数日で作り上げられたのが「THE IDOLM@STER」だったという。

int-141007-001-c004

アーケード版のプロトタイプが開発されていた頃、最初にアイドル役として選ばれたのが天海春香役の中村繪里子であり、初めて歌声を吹き込んだのが「太陽のジェラシー」だった。当時の中村はダンスも歌もまだまだだが、とにかく全力で元気いっぱいで、笑顔とトークが魅力だった。アイマスチームの楽曲作りも当時は手探りで、椎名 豪が手がけた「太陽のジェラシー」も新人が歌うにはあまりにもメロディラインが難解な曲だ。しかしだからこそ、今の中村の伸びやかな歌声や余裕のある表情、元気に任せるのではなく、ピタリと止めを入れてダンスとしてしっかり見せる動きなど、そのパフォーマンスのすべてが、この10年間の中村繪里子の努力の証と言ってもいい。

int-141007-001-c005

そして驚いたのは、中村が残る2曲も「Vault That Borderline!」「I Want」と初日とソロ曲の編成を入れ替えてきたことだ。6周年以降のツアーは会場ごとにメンバーの入れ替えと組み合わせにより、メンバーの負担を抑えながらも新鮮なセットリストを組む方向性だった。しかしここまで大胆に曲目を入れ替えると、実質新しいライブの準備を一からし直すに等しい。だが、懐古に寄せるのではなく。最近ファンになった人を満足させながらも「太陽のジェラシー」のような原点を確認し直すセットを組むには、これだけの努力が必要だとアイマスチームと、何より中村自身が判断したのだろう。

int-141007-001-c006

中村の感性には驚かされることが多いが、「Vault That Borderline!」で、「ステージと客席に境目なんて無いと思うんです。境界線なんてぶっ飛ばして、飛び越えちゃえばいいと思うんです!」と、国境や境界を超える原曲のテーマを「プロデューサーさんと私」の関係性に結びつけたのは唸らされた。「I Want」は、「MASTER ARTIST」で見せた天海春香の新しい一面、新しい魅力を凝縮した楽曲と考えればしっくり来る構成だ。生バンドとの相乗効果で、さらに蠱惑的な表情を覗かせる姿も新鮮だった。

 

亜美と、真美。

int-141007-001-c007int-141007-001-c008

下田麻美をひと言でいえばサービス精神の塊だ。カメラを見つければ見逃さず食いつくのも、会場いっぱいの観客はもちろん、カメラの向こうにいるBlu-ray視聴者や、ライブビューイングの観客も最大限に楽しませたい、という心遣いだろう。「Honey Heartbeat」は説明不要に楽しく、同時に幻惑されるような浮遊感も。765プロでエンターテイメント性が高いステージと言えば若林や仁後が浮かぶが、彼女たちがダンスを中心としたパフォーマンスを研ぎ澄ませたエンターテイメントだとすれば、下田は声色や表情、小道具のすべてを使って「客席を楽しませる」ことに特化した個性といえるだろう。「黎明スターライン」は節回しやエコーの効かせ方がよりトリッキーで、トリップ感のある仕上がりになっていた。

int-141007-001-c009

そして下田麻美といえば、双海亜美と双海真美、メインアイドルのうちふたりを演じる役者としてアイマスで唯一クレジットされている声優だ。亜美と真美は、一心同体。作品やメディアによって設定に違いはあるが、初期作品ではステージに立つ双海亜美と、真美が時々入れ替わってステージに立つことが多かった。そんな真美が『アイドルマスター2』を契機に表舞台に立ち、身長も伸び髪型を変え、一人のアイドルとして亜美とは違う個性とともに手に入れた初めての専用曲が「ジェミー」だ。いわば真美の本当のデビュー曲であり、記念すべき舞台で「ジェミー」を披露したことで、亜美と真美が一緒に現実のステージに立つ夢が実現したような気がした。

亜美と真美は双子で、よく似た存在だが、ステージで下田が歌う少し大人で、少し背伸びした少女は間違いなく「双海真美」だった。

 

そこに若林直美

int-141007-001-c010

抜群の安定感と確かな実力で、誰よりも安心してみていられる平田宏美のステージ。出産という人生の大きな節目を経て、ソロで3曲を立て続けに歌い踊るコンディションを作り上げる努力が、簡単なものであるはずがない。だがそれをあまり見せずに、いつでも安定している……ように見せるのが彼女の挟持なのだと思う。だが今日の「自転車」の締めの「好きだー!」の叫びには、特別な想いと気迫がこもっていたように思う。

int-141007-001-c011

そんな彼女のステージで一番印象に残ったのは、参加していないメンバーの持ち歌カバーコーナーで浅倉とともに歌った「livE」だった。「livE」は平田の親友である若林直美が演じる秋月律子の楽曲だ。「魔法をかけて」や「いっぱいいっぱい」など印象的な持ち歌が多い楽曲だが、その中でも「livE」は最も身を削る、命を燃やすような激しさを持った楽曲だ。

int-141007-001-c012

平田と浅倉は、いかにも若林っぽいフレームのメガネ姿で登場。普段ライブではメンバーとかぶらないことを考えて髪型をアップにすることが多い平田だが、この日少しイメージが違ったのは、若林のイメージに寄せていたのかもしれない。そう思わずにはいられないぐらい、歌っている時の平田は不思議と若林っぽさがあった。絶唱と呼ぶのがふさわしい若林の「livE」とはまったくイメージが違うにもかかわらず、だ。

思えば平田が新しい命を授かってステージを離れていた期間、ステージを全力で支えていたのは若林だった。そして若林が先日新しい命を授かった今、彼女の楽曲と魂を持って平田がステージに立っている。おそらくアイドルを冠する作品では他のどこにもない関係性だが、あえて表現するならそれは「戦友」だろう。

 

浅倉杏美の「First Step」

 

そして、同じく「livE」で若林の眼鏡を身につけたのが浅倉杏美だ。浅倉は4年前、幕張イベントホールで行なわれた5周年ライブで初めてアイマスファンの前に立った。愛されてきた萩原雪歩という役を、引き継ぐという立場でだ。数千人のファンに受け入れてもらえるのか、雪歩を変わらず愛してくれるのか。

int-141007-001-c013

そんな、押しつぶされるようなプレッシャーに震えていた彼女がラストの「THE IDOLM@STER」でどんなパフォーマンスと表情を見せるのか。見届けようと浅倉を超望遠レンズで追っていたとき、不思議とカメラに入ってきたのが、若林だった。緊張する浅倉を抱きしめ、ぽんぽんと安心させるように頭をなでる若林の姿をとてもよく覚えている。そのとき若林がステージで包み込むような優しさで支えていた新人が、今オリジナルな魅力と自信を身につけて、彼女の歌を9周年の舞台に乗せている。ステージにはいないのに、今まで若林がアイマスと過ごしてきた時間の息使いを感じるのは、まるで劇場版の律子とアイドルたちの関係のようだと思った。

int-141007-001-c014

「First Step」は、『アイドルマスター2』の雪歩専用曲として、浅倉自身が作詞を担当した楽曲だ。二人三脚で進んできたプロデューサーへの雪歩の想いを描いた楽曲だが、浅倉がアイマスのライブに出始めた頃、とても大切に歌って浅倉のステージの土台を築いた「何度も言えるよ」。そして前日「昔の私だと歌えなかったかもしれない」と語った「Kosmos, Cosmos」をより自分の表現で生き生きと歌う姿を観たあとで聴くと、後半の「あなた」はまるで浅倉から、雪歩への語りかけのように聞こえた。長く美しく響く「今──」には万感の想いが込められているとともに、何かから解き放たれたような感じがした。

この記事を書いた人