INTERVIEW
2013.11.18
長らく顔として在籍したI’veから独立後の作品『ヒラく宇宙ポケット』以来、およそ2年ぶりとなるニュー・アルバム『空中パズル』をリリースするKOTOKO。本作は独立後の2年間、彼女のインプットが凝縮させたような非常に濃厚であり、そして何よりKOTOKOが今なお新鮮なイマジネーションと共に活動していることを高らかに宣言する傑作となった。そんな大作リリースを、そして来年にきたる活動10周年を目前に迎えた彼女に話を聞いてみた。
――まずは今回のニュー・アルバム『空中パズル』ですが、構想から制作はどのような流れで作られていきましたか?
KOTOKO 私自身の構想は前からあったんですが、制作陣も決まってというのは最近のことで、2ヵ月ぐらいで集中して作った感じですね。私としては1年前ぐらいから出す気満々で曲を作っていたり、コンセプトはこんな感じでとかイメージして、作曲もどんな方にお願いするかとかイメージはずっとあったんですね。
――本作の制作陣としては、さまざまなクリエイターとタッグを組んだ前作『ヒラく宇宙ポケット』での制作陣から、斎藤真也さんやDECO*27さんといった方々とご一緒していますね。
KOTOKO そうですそうです。今回は事務所の独立前の10年間と、独立後の2年間で出会った作家さんでリスペクトする方にそれぞれお声掛けさせていただきまして、文字通りパズルを組み合わせる感じで、素晴らしい方々との楽曲を組み合わせたらどうなるのかなって考えたのが最初ですね。
――いわゆるバラエティ豊かな前作を踏襲してつつ、それを凝縮した印象ですよね。
KOTOKO そうですね、より濃くなった感じですね。
――今回ご一緒したクリエイターさんについてお伺いしますが、確か以前、斎藤真也さんとのレコ―ディングにカルチャーショックを受けたというお話をされていたような……。
KOTOKO ふふふっ、しています(笑)。独立後のレコーディングで衝撃的だったのが斎藤さんでしたね。普段はとても柔らかい方じゃないですか? それがレコーディングになると小さいところまでこだわってディレクションしてくださるんですよね。それは歌のレコーディングだけではなく、楽器のレコーディングからそうだと聞いていて。手を抜かないところも尊敬する部分だし、今までお会いしていなかったタイプの作家さんなので、そういうもの作りに対する姿勢もリスペクトする部分で、もっと一緒にやってみたいなというのはありました。斎藤さんとのレコーディングは1年生に戻った感じで「はいっ!」ってなるんですよ(笑)。
――そういった意味では、I’veからの独立以降のKOTOKOさんの音楽についても影響を与えた方なのかなと。
KOTOKO すごく与えてくれました。優しくも厳しい方なので、I’veのみんなとはまた違った育て方をしていただいたんです。いつもは「えへへ」っていう感じなんですけどね(笑)。
――そして今回ではfripSide/ALTIMAの八木沼悟志さんとも、シングルの「→unfinished→」のほかにも多くコラボしていて。
KOTOKO satさんとは「→unfinished→」より前から仲良くさせていただいたので、お友達みたいな感覚だったんですよね。そんな仲で、「いつか一緒にやりたいよね」っていうのが「→unfinished→」で夢が叶った感じで。その喜びがすごくあって、satさんには「自由にやってください」と言って、楽しくやらせていただきました。
――あとリスアニ!本誌の連載でsatさんも書いてあったのですが、札幌のレコーディングが非常に楽しかったそうで(笑)。
KOTOKO そうですね(笑)。美味しい食べ物を一緒に食べにいきましたし、レコーディングしたスタジオが芸森スタジオといって、ちょっと札幌の外れのスタジオなんですね。satさんとmotsuさんだけじゃなくて、斎藤さんもDECO*27さんもここでレコーディングしたんですよ。窓から紅葉した木を観ながら、リフレッシュして楽しい感じでレコーディングできました。今回はほぼ全曲北海道でやれたというのがひとつ企画として、一緒に楽しくアルバム作りができたかなと思います。
――レコ―ディングしつつ、北海道をプレゼンするというか(笑)。
KOTOKO そうそう、「いいとこでしょ?」って案内して(笑)。お昼は市内でラーメンやスープカレーをご一緒して、レコーディングしたあとはまた夜も遊んでいただくという(笑)。
――ちょっとしたツアーですね(笑)。
KOTOKO 札幌を楽しむパッケージというか(笑)。そこにレコーディングを挟むかたちでやらせていただいたので。自分のホームを紹介していいところを堪能していただいて、「仕事以外でも遊びに来てください」という宣伝もしつつ(笑)。そういう雰囲気のなかでやれましたね。
――そして引き続き参加クリエイターのお話ですが、DECO*27さんも前作に引き続いてのタッグになります。
KOTOKO 前作お願いするときからDECO*27さんの音に惚れこんでいましたので、出来上がったときに「もう一回やりたいな」って感じていて。というか一回だけじゃなく二回三回お願いしたいぐらい好きなんですね、DECO*27さんの音が。
――そんなクリエイターたちの持ち味が出た一方で、よりKOTOKOさんのアルバムとして強固な作品になりましたね。
KOTOKO もうみなさんのお持ちのカラーを遺憾なく発揮していただいたなかで、どういうふうに組み上げていこうかというのが私のパズル作業で、それが楽しくって。
――レコーディング環境もそうですし、非常にリラックスした制作になったと。
KOTOKO リラックスしていましたね。楽しんでやれたというか、私の意見もみなさんに組み込んでいただいた部分もあるので、自分のやりたいことをたくさん発言させていただいて、みなさんとコミュニケーションをとりながらやれたという感じですね。前回は未知の世界に踏み出した感じだったので、そこで自分がどこまでできるかというのを試させていただいた感じなんですね。みなさんのカラーのなかで踊らせてもらった印象があるんですけど、今回はより、おひとりおひとりとタッグを組んで、そのクリエイターさんとKOTOKO、というのをキチンとイメージして作らせていただいて。前は曲を提供していただいて、私が乗せていただいたというイメージなんですけど、今回は始めて一緒にやらせていただいたと言っていいのかなって、そこまで初めて行けたかなと思います。
今までアニメの楽曲にあるセオリーをぶち壊したいなという想いがあった
――さて、ここからは『空中パズル』の全曲を解説していただきます。まずは1曲目の「My-Les」。
KOTOKO 核になるのはこの曲だろうなっていうイメージが最初からあって。すごくキャッチーだったので、リード曲は「空中パズル」とどっちにしようかって迷ったのですが、「空中パズル」は自分のなかで冒険したい楽曲にだったんですよね。それもあってリード曲はキャッチーでストレートな「My-Les」のほうがむいているだろうなという話になって、このアルバムを引っ張ってくれる曲ということで、ここから作っていこうとなりました。
――アルバムの幕開けにピッタリですが、また歌詞も含めて非常にストレートな印象があります。
KOTOKO 「My-Les」に関してはとにかくストレートに、誰かの背中を押したり誰かを引っ張っていけるようにしたいという想いがあったので、いつもは歌詞にちょっと難しい言い回しをいれたりするんですけど、今回はストレートに行こうというのが最初の目標でした。
――続いては高瀬一矢さんとの「WING OF ZERO -the ring-」です。
KOTOKO ゲームの主題歌として、この曲を作ったのですが、でき上がった時「これだよね!」というKOTOKO×高瀬サウンドが出来たので、これはたくさんの人に聴いてもらわないといけないなと思って、リミックスしてもらった曲です。アルバムを作る以前から高瀬さんに「今度アルバムを作ることにあったら入れたいと思うんですよね」って話していて。それぐらい私のなかでも「来た!」という曲になっていて。KOTOKO×高瀬というみんなが待っている曲が出来たなって思える楽曲になりましたね。
――まさに、KOTOKOさんと高瀬さんの黄金タッグで聴きたい楽曲が出来た印象ですね。
KOTOKO 斎藤さんが作ってくれる楽曲がどちらかというとエモーショナルでキャッチーなので、高瀬さんの楽曲はそれと対比するようなトランシーでスマートな感じ。どちらも勢いがあるので、そのせめぎ合う感じも曲で並べてみたかったんですよね。
――そして3曲目が「空中パズル」。
KOTOKO これは、私がやりたいことを全部詰め込んだらこうなっちゃったという曲です(笑)。
――いわゆるアルバムが持つサウンドの多様性を詰め込んだと。
KOTOKO そうですね。この一曲に集約されているといっても過言ではないかなと。今までアニメの楽曲にあるセオリーみたいなものをぶち壊したいなという想いがあって。だからどこがAメロかBメロかわからないような構成に見せかけて、ちゃんとキャッチーな部分もあって勢いもあって、かつ不思議で、でもわかりづらくないように、A面っぽくというか派手さを残してわかりやすさを残して……というのを全部やりたかったんですよね。
――まさに全部詰め込んだという(笑)。しかしこれは本当にすごい曲ですね。
KOTOKO まず私のデモがすごく不思議な感じだったんですよね。それを聴いたレーベルのプロデューサーさんが、まず「うん?」と思ったんですよ、きっと(笑)。「これは大丈夫かな?みんなに受け入れてもらえるかな?」って、頭の上にいっぱいハテナマークが出たと思うんですよね。でも私はそのアレンジを斎藤さんにお願いしたいと。「絶対に良くなるので」と斎藤さんのお力を信じて、そこに賭けたんですね。斎藤さんから上がってきたアレンジがバッチリだったので、それでみんな安心したというか(笑)。斎藤さんには「さすがです!」って拍手しかなかったですね。
――そして続いては八木沼さんの「frozen fir tree」です。satさんらしいサウンドといては本作では「→unfinished→」がありますが、このミディアムもまたsatさんらしいというか。
KOTOKO 私はsatさんの真骨頂は、実はこっちかなと思っていて。なのであえてミドル・テンポをお願いしました。今回はアルバムのなかにバラードを入れていないんですよね。この曲と「サクラノアメモエギノヨ」の2曲がミドル・テンポで。ですから、ある意味ではこのミドル2曲もアルバムの核だなーと思っています。
――まさにsatさんらしい抒情的なメロディが存分に堪能できる楽曲になりましたよね。
KOTOKO そう思います! 曲をいただいたときに「うわーっ!」ってイメージが出来たんですね。何もなくても歌詞が書けるぐらいだったんですけど、satさんからメッセージがあって「札幌の街をイメージしました(ススキノではありません)」ってあったんですよね(笑)。でもその文を読まなくても雪景色が浮かんできたんですよね。街角で雪がしんしんと降って、木の下で交わされる会話から広がる物語というのが浮かんできたんですけど、「凍ったもみの木」というタイトルと歌詞を提出したときに、satさんもイメージともピッタリと一致したみたいで、「実は針葉樹をイメージしたんですよ」って言ってくれて。同じイメージを共有して作れたなって思いますね。
――そんな余韻のなか、ryoさんとの「Light My Fire」がアグレッシブにスタートします。
KOTOKO ryoさんとの制作は熱かったですね! ryoさんもご自身の楽曲にし対して想いが溢れている方なので、レコーディングひとつとっても語尾の伸ばし方とか言葉の表現の仕方とかがryoさんの頭の中にあって、ここまで「一個一個の単語についてこう表現してください」と言われたのは初だなって。音に言葉が乗ったときの響きまで考えられて曲を作られている方なんだなと思って、私も熱くなりましたね。私も作家さんのメロディを感じ取っていかに良い響きを載せるかというところで作詞をしているので、きっと同じ感じで作られているんだなって思ったし、そういう意味ではクリエイター同士で想いを感じ取れたというか、すごく楽しかったですね。
――続いてはDECO*27さんとの楽曲「黙れよ、ピーター」ですね。
KOTOKO DECO*27さんとの曲は淡々としていて、ちょっと怖さを出したいなと思って。DECO*27さんは前回の「メーテルリンク」を作ったときは「青い鳥」題材にしたんですけど、今回も童話の要素を入れようと思って、ピーターパンとお菓子の国と、鈴錫の兵隊さんが出てきます。ただ実は、DECO*27さんがデモで仮歌を入れてくださったんですが、そのときの仮歌詞が無茶苦茶良かったんですよ。これを崩すのもったいないなって思うぐらいのすごく素敵な歌詞だったので、韻を踏む箇所などの響きはそのままにさせていただいて、そこから私の物語を作らせていただきました。
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