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INTERVIEW

2026.05.24

TVアニメ『黒猫と魔女の教室』OPテーマで描いたのは迷いながらも真っ直ぐに進むことの大切さ――ASCA「Cusp」リリースインタビュー

TVアニメ『黒猫と魔女の教室』OPテーマで描いたのは迷いながらも真っ直ぐに進むことの大切さ――ASCA「Cusp」リリースインタビュー

TVアニメ『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』のEDテーマ「Giver」を今年2月にリリースしたばかりのASCAが早くも放つ、2026年の第2弾シングル。それが見習い魔女と黒猫先生の魔法学園ファンタジーを描いたTVアニメ『黒猫と魔女の教室』のOPテーマ「Cusp」だ。星空のような壮麗さを湛えたサウンド、力強く朗々と響くASCAのボーカルが描き出すのは、主人公のスピカや登場人物たちが抱く、自分の夢に向かって真っ直ぐに突き進む揺らぐことのない想い。それはまた、ASCA自身の歌にかける覚悟と共鳴し合って、夢を追いかけるあらゆる人々の鼓動を後押ししてくれる。まるで魔法のようにスペシャルな希望を与えてくれる本楽曲に込められた思いに迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

真っ直ぐでひたむき――スピカの魅力とリンクする夢への信念を込めて

――ニューシングル「Cusp」はTVアニメ『黒猫と魔女の教室』のOPテーマ。作品に触れた印象はいかがでしたか?

ASCA タイアップのお話をいただいてから、初めて原作のコミックを読んだんですけど、その時点で出ていた13巻まで1日であっという間に読み終えてしまうくらい惹き込まれました。主人公のスピカが一等級魔術師になることを目指すお話で、彼女が成長していくプロセスがしっかりと描かれるだけでなく、私のツボにハマるコミカルな要素やシュールなお笑いがたくさん散りばめられていて。シリアスな場面が続いたかと思えば、一瞬で笑わせてくれるんですよね。ストーリーの面白さとコミカルさの配合が絶妙で、原作者の金田陽介先生はお笑いが好きなのかな?と思ったくらいでした(笑)。

――そういえば以前にアニメ化していた金田先生の作品『寄宿学校のジュリエット』も、そういう作品でした。

ASCA 金田先生の真骨頂ですよね。マンガを読みながら思わず笑ってしまうくらいで。それがアニメで映像化された時にどうなるか、正直、最初は「ちゃんと笑えるのかな……?」ってちょっと斜に構えて観始めたんですけど、やっぱり爆笑しながら観ています(笑)。地上波での放送が夜帯なんですけど、近所迷惑になりかねないくらい大声で笑わせてもらっていて。声優さんの表現もそうですし、BGMの使い方も絶妙で、間を作ることで「これは笑わせにくるんだろうな」とわかるのに笑ってしまうんですよね。毎回、制作者の皆さんのこだわりを感じながら観ています。

――本渡 楓さんが演じる主人公のスピカも、感情表現が豊かで見ていて面白い子ですよね。

ASCA 本当に。最初は「魔法の能力を持っていない子なのかな?」と思わせる描写で始まって、平凡な子が頑張っていくストーリーになるのかと思いきや、実はすごい能力を持っていて、それがどんどん開花していく。その姿を見ていると応援したくなる主人公だなと思います。

――そんなスピカが、呪いで黒猫の姿に変えられた一等級魔術師のクロードと出会い、師弟関係になって王立ディアナ魔術校で魔法の勉強に励むのが物語の大筋ですが、そのOPテーマ「Cusp」の制作はどのように進めていったのでしょうか。

ASCA まず、歌詞のテーマをどうするかを決めつつ、同時進行で音楽ディレクターの角田(崇徳)さんがデモを集めてくださって、その中から楽曲を決めていく進行でした。私から歌詞のテーマとして唯一「これだけは絶対に入れてほしい」とリクエストしたのが、「周りの人に何を言われたとしても自分の中の軸を持ち続けることの大切さを描いてほしい」ということ。それは私が原作を読んで主人公のスピカから得たインスピレーションであり、自分自身が大切にしてきたことでもあったので、そこを軸に制作を進めていきました。

――スピカと自分自身の共通項を膨らませていくことで、作品の主題歌であり、ASCAさんの楽曲としても成立するものを目指したわけですね。

ASCA 私はいつも作品と自分の人生の重なるところを探したうえで楽曲を制作するので。スピカは「魔術師になりたい」という強い信念と夢を持っていて、私は「歌手として生きていきたい」という信念がある。そこをテーマとして提案させてもらいました。私はスピカみたいに完全に素直には生きられていない部分もありますけど(笑)。

――スピカは自分の夢や目標に対してすごく純粋に向き合っていますものね。

ASCA 真っ直ぐですし、ひたむきですよね。自分もひたむきさを大切に活動してきたので、もしかしたら自分のその姿が誰かの力になっていたのかもしれないなと、スピカを見て思えたんですよね。やっぱりひたむきさは人を魅了するし、応援したくなるものだよなって、改めて彼女から感じさせてもらいました。

――自分もASCAさんの活動を追っていてグッとくるのは、そういうひたむきなところです。

ASCA 色んなライブで泣いてくださってますものね(笑)。

――はい(笑)。今回、作詞を担当しているのは辻井りとさん。以前に「Never Let It Go」(2025年)でご一緒されていた方です。

ASCA まず、私の方から今お話したテーマを提示させてもらって、そこに『黒猫と魔女の教室』に登場する“星”や“星座”をキーワードを入れて書き進めてもらいました。実は別の方にも(コンペ的な形で)歌詞を書いていただいて、その方の歌詞もすごく好きだったのですが、りとさんの歌詞は言葉遣いがすごくシンプルで、「Cusp」のサウンドに合いそうだなと思ったんですよね。「Cusp」はメロディの1個ずつの音が長くて、この曲はシンプルな言葉をちゃんと伝えられる曲、という印象があったんです。その曲調とスピカの真っ直ぐさがリンクする歌詞だなと思って、選ばせてもらいました。

――確かに難しい言葉は使われていなくて、シンプルで理解しやすい歌詞だと思います。

ASCA 前作のシングル「Giver」は結構偏差値の高いサウンド感と歌詞で、言葉の意味をしっかりと読み込まないと、歌詞に込められた真意に辿り着けない難解さがあったと思うんです。もちろんそれが作品(『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』)とリンクしていたと思うのですが、今回はシンプルでわかりやすいものが良いよね、という話もチームでしていたので、この歌詞に行きついた感じですね。

――『黒猫と魔女の教室』も王道の少年マンガ路線と言いますか、わかりやすく楽しめる作品ですものね。

ASCA うんうん。青春や成長が描かれていますし、お話自体もスッと入ってくるところがあって。自分自身も学生時代、「歌手になりたい」という目標を抱いて過ごしていた時期があるので、その気持ちとも重ね合わせることができるんですよね。なので歌詞もおのずとシンプルになっていきました。

“一番星”に託したメッセージ、緑に溢れたビジュアルのこだわり

――歌詞の内容について更に深掘りしていきたいのですが、作品のどんな部分にリンクしていると感じましたか?

ASCA どこもかしこもなんですけど(笑)、単語で言うと“猫”が入っていますし(“雲は猫のように 背伸びをする”)、1番Aメロの“大地の匂い”というワードも、作品のティザービジュアルで描かれていた広大な大地を感じさせて。でも一番は何といっても“星”や“星座”のモチーフですよね。この作品にはスピカだけでなく、同じく魔術師になる夢を持つ生徒たちがたくさん登場するのですが、彼らは自分が属している星座によって使える魔法が変わる、という設定なんです。楽曲タイトルの「Cusp」も、星座と星座の境界線のことを指していて。

――なるほど!「Cusp」は“先端”“転換点”“移行期”といった意味合いのある言葉ですが、そういう使い方もあるんですね。

ASCA はい。人には誕生星座というものがあって、自分の誕生日によって十二星座の中から割り当てられるわけですが、その前後の星座からの影響も少なからず受けるものなんです。例えば私もスピカも誕生星座はおとめ座で、おとめ座の人は「真面目」「分析が好き」といった性質を持っているんですけど、スピカは8月生まれなのでしし座の要素、「派手」や「牽引する強さ」という性質も持ち合わせていて。そういう風に人は相反する要素を生まれながらに持っていて、「本当の自分はどれなんだろう?」と悩みながら生きている部分がある。でも、それは悪いことではなくて、曖昧な自分を受け入れつつも、大切なのは自分の軸をブラさないことだと思うんです。この曲の歌詞ではそれを“一番星”と表現しています。

――サビの最後にある“一番星 胸に握りしめた 鼓動の彼方”というフレーズですね。

ASCA この“一番星”は人によって捉え方が全然違うと思っていて。それは「自分が好きなもの」でも「昔から目標にしているもの」でもいいんですけど、そういうものを軸にして、いろんな要素を持ち得た自分で迷いながらでも進んでいく。それが作品から受けたインスピレーションであり、私が「Cusp」に込めたかったことです。

――今の話で言うと、ASCAさん自身もおとめ座以外の要素を持ち合わせているわけですか?

ASCA そうですね。私、自分の星や星座を知るのが大好きで、ホロスコープで調べることもあるんですけど、さっきお話した太陽星座のおとめ座とは別に月星座というのがあって……。

――太陽星座と月星座……?

ASCA 雲行きが怪しくなってきました?(笑)。簡単に説明すると、月星座というのは、もうひとつの自分が持っている側面というか性格的な部分を示す星座で、私はそれがふたご座なんです。おとめ座とふたご座は真逆の性質で、おとめ座は地に足をつけて真面目に生きるタイプだけど、ふたご座はいい意味での軽さがあって、楽天家なタイプ。私はその矛盾に幼い頃から超悩まされながら生きてきて、「どっちが本当の自分なんだろう?」と思っていたんです。「自分は一貫性がない人間なんじゃないか?」と悩んだ時期もあったんですけど、今は矛盾を抱えたままでもいいんだなと思うことができて。なぜなら、いつも仲良くしている人だって自分が知らない面をいくつも持っていて、みんなそうなんだろうなと思ったから。それはここ近年に思えたことなので、今の自分のマインドも「Cusp」には入れ込むことができたと思います。

――もう1点、歌詞のことで聞きたかったのが、サビの“誰かの愛が引き留めても 揺らぐことない I believe in my soul”というフレーズ。ここは色んな意味に捉えられるなと思って。

ASCA ですよね。私の個人的な受け取り方をお話すると、愛ゆえに周りの人が色んな言葉をくれたりするじゃないですか。「あなたにもっと幸せに生きてほしいから、それは止めた方がいいんじゃない?」とか、助言をしているようで本人を迷わせてしまうような言葉とか。今はSNSを含めいろんな言葉や情報が溢れていて、ついつい自分の軸がブレがちになると思うのですが、この曲で言うところの“一番星”、自分が大切にしていることややりたいことを信じていけば大丈夫、っていう捉え方をしています。

――なるほど。ちなみにASCAさんにとっての“一番星”はなんですか?

ASCA 自分が幼少期から歌を歌いたいと思ったのは、身近の人が喜んでくれたことが大きくて。母親や学校の先生、親友が、私が歌うことで喜んでくれた経験が大元にあるんですね。私にとって「周りの人を喜ばせること」はすなわち、母の愛や友達の愛、自分が生きていくために必要なものを繋ぎ留めておくための手段でもあって。「歌ったら私に興味持ってくれるんだ」という気持ちもあったし、「こんなに笑顔になってくれるんだ」っていう喜びもあって。気付いたらASCAとしてデビューさせてもらって、私が歌っている姿を見て笑顔で聴いてくれる人もいたり、泣いてくれる人もいたりしますけど、そういう方がいてくれる限り私は歌い続けられる。なので「応援してくれる人たち」が私にとっての“一番星”なのかなって、今、お話しながら思いました。

――ここまで歌詞のことばかり聞いてしまいましたが、「Cusp」は楽曲としても星空の景色が浮かぶような広がりと開放感があって、新鮮さを感じました。

ASCA この曲はロックでもあり、ある種、バラードでもあると思っていて。最初にデモを聴いた時、とにかくメッセージを一番伝えられるメロディだと思ったんですよね。『黒猫と魔女の教室』は初のアニメ化で青春物語、なおかつOPテーマになるので、これくらいの明るさがあるほうが作品に合うなと思ったし、今回はしっかりと言葉を届けることを意識していたので、この曲を選びました。

――歌う時はどんなイメージで歌いましたか?

ASCA この曲は基本的にバラードの意識で歌っていました。ただサビで開けていくところは開放感を大事にしようと思って。ドラマチックに聴いてほしい気持ちはありつつ、声に余計な味付けをしないように、自分の声を信じて歌うことを念頭に置きながらレコーディングしました。いつもは頭サビ、Aメロ、Bメロとブロックごとに録っていくんですけど、今回は歌の中の流れを大事にしたかったので、1番なら1番を丸ごとつるっと歌う録り方にして。それもあってか伸び伸びと歌うことができて、レコーディング自体もそこまで時間をかけることなく終わりました。ただ、私の場合、基本的にリズムに対して歌が後ろノリになるので、そこの塩梅はディレクターの角田さんと一緒に探りながら、グルーヴに乗ることを意識しましたね。

――アニメのOP映像をご覧になった感想はいかがでしたか?

ASCA 星座大好き人の私としては(笑)、キャラクターに合わせて星座がどんどん出てくるところがすごく良いなと思いました。彼らが今後使っていく魔法や伸ばしていく特性を連想させてくれる映像になっているので、すごくワクワクしましたし、美しい星空の描写や個人的に作品内の好きだった場面が出てくることもあって感動しました。

――この曲のMVは、ジャケットやアーティスト写真のアートワークと連動したものになっていて、緑に溢れたロケーションとピンクの衣裳姿のASCAさんの対比が印象深いビジュアルに仕上がっています。

ASCA 今回は私が作品を読んだうえで、どんなアートワークにしたいかを自分で資料にまとめてプレゼンさせてもらいました。まず主人公のスピカは植物魔法を使えるので、「緑が溢れるなかで撮影したい」というのがあって。なおかつ魔法を扱った作品なので「ファンタジー」の要素を入れたくて、「人工物の星」をリクエストさせてもらいました。ジャケット写真を見てもらうとわかりやすいのですが、人工物の星をスタジオに吊り下げてもらっていて。更には、壁紙のデザインまでお話をさせていただいて、アートワークディレクターのエリイクエさんに「広い草原の中」というロケーションをイメージしてスタジオにセットを作り込んでもらいました。

――ASCAさんのイメージやアイデアをクリエイターの皆さんに広げてもらって完成したビジュアルだったんですね。

ASCA お花にもこだわりました。「私が笑う理由は」(2023年)でもお世話になったフラワーアーティストのクワハラさんという方に入っていただいて、実は生花と造花が混ざっているんです。選んだお花たちは花言葉もそれぞれ意味があって、アイリスは「希望」、ポピーは「いたわり」、金魚草は「優しさ」、デルフィニウムは「あなたを幸せにします」など楽曲に込めた想いをお花からも感じてもらえると嬉しいです。

――衣裳からメイクまでピンク色に統一したASCAさんのコーディネートも、スピカの髪色に合わせたものですか?

ASCA はい、自分が今までやっていないことに挑戦したかったので、スピカちゃんの印象的なカラーを取り入れさせていただきました。今回の衣裳のコンセプトは「旅人」なんです。人は誰しも人生の旅人ですし、スピカもこれから魔術師になるための旅をしていく。なおかつ作品の中にビンテージっぽい大きなスーツケースを持っているシーンがあって、「これは絶対に入れたい!」と思って用意していただきました。

――MVでは光り輝く星のオブジェをギュッと抱きしめるシーンもあって。自分の“一番星”を大切にしよう、という楽曲のメッセージとのリンクも感じました。

ASCA MVでは、監督の藤田(大介)さんがこの曲で表現したかった葛藤の部分も汲み取ってくださって、例えばさっきお話した生きていくうえでの迷いや曖昧さも白い布がたくさん出てくるシーンで表現してもらっています。ただ明るく進んでいるのではなく、迷いながらも自分が大事にしているものを見据えながら進んで行くことを、MVでも表現できたと思います。

次のページ:ASCA自身の経験と“愛の形”を投影した、こぼれ落ちる愛の歌

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