2026年4月17日、Zepp Haneda (TOKYO)。ClariSにとってこの日のライブは、単なる“ツアーの幕開け”という意味以上に重要な場所であることは、あの場にいた誰もが理解していた。それは新体制における単独公演のお披露目という意味よりも、周年の延長線上にある総括という意味よりも重要な何か。結果的に、この日提示されたのは、15年にわたり積み上げられてきたClariSという存在がいかにして“今”へと接続されるのか――その問いに対する、極めて明確な意思表示だったと思う。
PHOTOGRAPHY BY 平野タカシ
TEXT BY 冨田明宏
開演前、会場には独特の緊張感が漂っていた。会場を満たす多くの観客たちの記憶の中には2人組ユニットとしての時間が確かに、消えることなく刻まれている。その前提を踏まえたうえで、3人となったClariSが何を表現するのか。期待と同時に、言い知れぬ特別な感情が向けられていたのも事実だろう。
そんな空気を一変させるように、ライブは楽屋からステージへと向かう映像演出で始まる。この導入は素晴らしく巧妙だった。舞台裏という“現実”から、ステージという“物語”へと観客の意識をシームレスに接続/移行させることで、ClariSという存在そのものが“1つの連続する物語である”という前提を改めて共有させる。その流れの中で放たれた1曲目「Trigger」は、この日のライブの性質を決定づけるものだった。
「Trigger」というタイトルが示すとおり、この楽曲は“始動”のための音楽である。しかしそれ以上に重要なのは、そのサウンドと歌唱に宿る“変化への意志”だ。従来のClariSが持っていた透明感や儚さに対し、この曲は明確に推進力と強靭さを帯びている。3人の声が重なった瞬間、そこに生まれるのは単なる厚みではない。音像そのものが立体的に変化し、これまでとは異なる“重心”を持ったClariSが立ち上がる。
続く「ALIVE」「again」「border」といった楽曲群もまた、その変化を補強するように配置されていた。ここで行われているのは、過去の楽曲をなぞることではない。むしろ、“現在のClariSがこれらの楽曲をどう鳴らすか”という再定義の試みだ。身体的表現が強化されたステージパフォーマンス、そして何より歌唱のアプローチに至るまで、明確に“クララ・エリー・アンナ=ClariS”としての意思が反映されている。
一方で、このライブが単なる刷新ではないことは、中盤以降の構成によってより鮮明になる。例えば「ルミナス」といった楽曲は、『魔法少女まどか☆マギカ』という作品とClariSという存在を掛け合わせて今さら語るまでもなく、ユニットの歴史と深く結びついた重要なナンバーであり、それを3人で再構築することは決して容易ではない。しかし、この日の歌唱において感じられたのは新体制による違和感ではなく、音楽表現としての“挑戦の成功”だった。つまり、過去をそのまま再現するのではなく、過去を引き受けたうえで新しい意味を与える。そのプロセスこそが、第3章の核心に他ならないのではないか。それは「ルミナス」が、3人で作詞した『魔法少女まどか☆マギカ』インスパイアソング「リンクス」へと接続するように配置されていたことを考えても、その3人の意志は明白だったとように思う。
ライブ中盤で挿入された映像とモノローグも印象的だった。クララが語る言葉は、決して大仰ではない。むしろ極めて個人的で、内省的なものだ。しかしその語りは、結果としてClariSというユニットの在り方そのものを再定義していく力を持っている。エリー、アンナという新たなメンバーが加わることで、このユニットは単なる継承ではなく、再構築を試みながら“新たに生まれる物語”へと変化している。そのことが、3人で初めて作詞に挑戦した「Umitsuki」における個性際立つそれぞれの歌唱において、明確な形として現れていた。さらに連続して披露された「One more voice」で紡がれた、1人1人の歌声の繊細な魅力と、三声が美しく重なり合い溶け合う極上のハーモニーは、ClariSのまだ見ぬ可能性を明確に表現し尽くした名演であり、この日の本編におけるハイライトだったことをお伝えしておきたい。
後半にかけては、「CLICK」「irony」「reunion」といったkz(livetune)が手掛けた活動初期のClariSを象徴するダンス・ナンバーが連なる。この流れは一見、ファンサービス的な選曲にも見えるかもしれない。しかし実際には、それ以上の意味を持っていたと思う。かつて2人で紡がれていたこれらの楽曲が、3人のフォーメションも絶妙な新しい振付を伴うドラマチックなダンスパフォーマンスによって再構築されることで、<物語の連続性そのものが刷新される>感覚が生まれていた。ライブというリアルな現場において、過去の楽曲に新たな価値観が連続して与えられていくその様子は、単なるライブという表現行動以上に、鮮烈すぎるほどの進化を感じた。特に「コネクト」に至る瞬間は象徴的だったと思う。この曲の歴史的意味や意義は決して揺るがないものだが、明らかに変わらないものと、変わっていくもの。その両立が可能であることを証明するかのように、ClariS楽曲は新たな生命を得て響き続けていた。
そしてアンコールで披露された新曲「Revive」は、この日のライブをより衝撃的な場にする1曲だった。「Trigger」がロックとしての表現でClariSの殻を破ったのだとしたら、「Revive」はパンクなエネルギーで過去の“ClariS神話”を一度破壊/再構築するかのようにパフォーマンスを繰り広げる。この日会場で初公開されたMVでは、メンバーそれぞれが髪色を大胆に変え、カメラに向かってかつてのClariSでは考えられないような挑発的な仕草をして見せる。その度に客席からは大歓声が上がり、メンバー3人も笑顔で、少し照れくさそうにそれを受け入れていた。これはClariSが15年間で築いてきた歴史があるからこそ成立する破壊と再生のサウンド/映像作品であり、いつでも定点に立ち返れるからこそ打てる勝負ナンバーでもある。この曲のサウンドが持つソリッドさとトリッキーに疾走する荒々しい表現、歌詞に宿る強いメッセージ性は、これまでのイメージを意図的に裏切るものであり、その「裏切れるファンとの信頼関係」こそが、彼女たちの現在地を最も正確に示していたと思う。
MCにおいて語られたメンバーそれぞれの言葉もまた、このライブの本質を補強していた。エリーの「諦めなくて良かった」という彼女の心根が透けて見える率直な言葉。アンナの“自分のための音楽から、誰かのための音楽へ”という重大な意識の変化。そしてクララの“守るために変わる”という大いなる決断。それらはすべて、ClariSというユニットが“個人の集合体”ではなく、すでに“意志の共同体”へと進化していることを示している。
この日のライブを総括するならば、やはりそれは“再始動”のためだけのツアーではなかったということだろう。むしろClariSという物語が、もしかすると初めて“本当の現在形”になり、ファンと物語をリアルタイムで共有し、一緒に作り上げていく存在になったということなのかもしれない。
15年という時間は、音楽ユニットにとって決して短くはない。その多くが過去を消費しながら存続していくなかで、ClariSはあえて“変化”を選び、その変化を真正面から提示した。その姿勢こそが、このライブの最大の価値であり、同時にこの先の可能性を指し示すものでもある。
「Trigger」という言葉が示すとおり、この夜は始まりに過ぎないのだろう。しかし、その引き金は確かに引かれた。その音はClariSの未来と共に、アニメ×音楽というジャンルそのものの可能性をも更新していくはずだ。
<セットリスト>
01. Trigger
02. ALIVE
03. again
04. border
05. ルミナス
06. リンクス
07. Radiant
08. 運命
09. ひらひらひらら
10. Umitsuki
11. One more voice
12. カラフル
13. ケアレス
14. ヒトリゴト
15. CLICK
16. irony
17. reunion
18. ナイショの話
19. コネクト
―ENCORE―
EN01. Revive
EN02. タカラモノ
●リリース情報
「Revive」
2026年5月27日発売
【初回生産限定盤/CD+Blu-ray】
品番:VVCL-2925~2926
価格:¥2,640(税込)
<CD>
01. Revive(TVアニメ「勇者のクズ」第2クールOPテーマ)
作詞・作曲・編曲:重永亮介
02. Trigger(パチンコ・パチスロ「リコリス・リコイル」搭載曲)
03. Radiant(パチンコ・パチスロ「リコリス・リコイル」搭載曲)
04. Revive -Instrumental-
<Blu-ray>
01. 「Revive」 Music Video
02. 「Revive」 Dance Video
【通常盤/CD】
品番:VVCL-2927
価格:¥1,540(税込)
<CD>
01. Revive(TVアニメ「勇者のクズ」第2クールOPテーマ)
02. Trigger(パチンコ・パチスロ「リコリス・リコイル」搭載曲)
03. Radiant(パチンコ・パチスロ「リコリス・リコイル」搭載曲)
04. Revive -Instrumental-
【期間生産限定盤/CD+Blu-ray】
品番:VVCL-2928-2929
価格:¥2,200(税込)
※TVアニメ「勇者のクズ」第2クール描き下ろしデジパック仕様
<CD>
01. Revive(TVアニメ「勇者のクズ」第2クールOPテーマ)
02. Trigger(パチンコ・パチスロ「リコリス・リコイル」搭載曲)
03. Radiant(パチンコ・パチスロ「リコリス・リコイル」搭載曲)
04. Revive -Instrumenta -TV MIX-
<Blu-ray>
TVアニメ「勇者のクズ」第2クールノンクレジットオープニングムービー
●ライブ情報
ClariS 15th Thanks Tour 〜一夏灯祭〜
[東京公演]
2026年7月11日(土)
会場:Kanadevia Hall (TOKYO DOME CITY HALL)
開場 16:00/開演 17:00
2026年7月12日(日)
会場:Kanadevia Hall (TOKYO DOME CITY HALL)
開場 15:00/開演 16:00
お問い合わせ:DISK GARAGE
https://info.diskgarage.com/
<チケット>
全席指定 8,500円(税込)
※入場時に別途ドリンク代500円が必要
※6歳以上要チケット。未就学児童(6歳未満)入場不可
[愛知公演]
2026年9月11日(金)
会場:Zepp Nagoya
開場 17:30/開演 18:30
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション
052-320-9100(12:00〜18:00)
<チケット>
1F 立見 8,000円(税込・整理番号付)
※入場時に別途ドリンク代600円が必要
※6歳以上要チケット。未就学児童(6歳未満)入場不可
[大阪公演]
2026年9月13日(日)
会場:オリックス劇場
開場 17:00/開演 18:00
お問い合わせ:キョードーインフォメーション
0570-200-888(平日12:00〜17:00)
<チケット>
全席指定 8,500円(税込)
※6歳以上要チケット。未就学児童(6歳未満)入場不可
*チケット情報
愛知・大阪公演/ClariSファンクラブ「ClariS Room」最速先行(抽選)
<受付期間>
2026年4月26日(日)22:00 〜 2026年5月10日(日)23:59
ClariS 公式サイト
https://www.clarismusic.jp/
ClariS 公式X
https://x.com/ClariS_Staff
ClariS 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC-zeaPnxZHE3EcTyVl1fTdw
ClariSオフィシャルTikTokアカウント
https://www.tiktok.com/@claris.official_
ClariSオフィシャルファンクラブ「ClariS Room」
https://claris-room.com/
SHARE