2024年からは自身で作品の方向性を舵取りするセルフプロデュースでの音楽活動をスタートさせ、昨年12月には恋愛をテーマにしたミニアルバム『愛恋路』をリリースしたことも記憶に新しい宮川愛李。彼女が最新ミニアルバム『ラフレア』を完成させた。
この『ラフレア』は、『愛恋路』から続いた2作連続ミニアルバムリリースの第2弾。『愛恋路』での恋愛を題材にした楽曲制作を経て行き着いた、「生きることとは何か?」というテーマの作品になっている。現在放送中のTVアニメ『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』のOP主題歌「ラフレア」に加えて、未発表となる新曲「Swallow」「白昼夢」、デジタルシングルとして発表されていた「アオレイド」や「タンバリンの鳴る丘」「弱虫」が収録され、アーティスト・宮川愛李の変化が伝わるような雰囲気も印象的だ。
最新のアニメタイアップ曲となる表題曲「ラフレア」の制作エピソードを中心に、ミニアルバムの楽曲やセルフプロデュースでの活動を始めてからの変化などについて聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁
――新作『ラフレア』は『愛恋路』に続くミニアルバム連続リリースの第2弾です。今作との違いをわかりやすくするためにも、まずは前作について振り返っていただけますか?
宮川愛李 前作の『愛恋路』はテーマを恋愛に絞った作品で、楽曲も恋に重きを置いたような楽曲が多くなっていて。曲調としても、2024年にセルフプロデュースを始めた当初は特にそうだったと思うのですが、それまで楽曲を提供していただいて作詞をしていた頃と比べても音楽性が大きく変化したと思うので、今までの宮川愛李のアルバムを手に取ってくださっていた方にとってもすごく新鮮な作品になったんじゃないかなと思います。恋や愛には、すごくポップで楽しい気持ちがあったりする半面、時にはきれいとは言い難いような感情もあったりしますよね。そんなことを考えて最終的に行き着いたのが『愛恋路』の恋愛観で、作品の中で1人の人の心の変化を表現したいと思っていました。アルバムを通して、自分のアーティストとしての活動が大きく更新されたような感覚でした。一方で、今回の『ラフレア』では、『愛恋路』で恋愛をテーマにした後に行きついた、「生きるって何だろう?」ということからアルバムの着想を経ています。前回、恋愛ものの楽曲を書くにあたって、恋とか愛とか、大切な人への感情を深く考えていった時に、「一概に好きだからとか、見た目や好みだけで済ませられるような単純な感情じゃないな」「それって結構、生きるということにも直結しているな」と思ったんです。そういう流れを、『ラフレア』でゴール地点に持っていけたらと思っていました。2作連続でリリースするように進めていたので、『愛恋路』を作っている時に、まだタイトルは決まっていなかったんですが、『愛恋路』がこういう作品になるのなら「次の作品はこうしたい」ということも頭の中で考えていて。
――具体的には、どんな作品にしたいと思っていたんでしょう?
宮川 まず表題曲の「ラフレア」は私の中では別枠になっているので後でお話しするとして、それ以外の楽曲でいうと、これは言い方が難しいんですが……今回の曲は、自分ではある意味で未完成な雰囲気のものが多いと思っていて。どれから説明したらいいかわからないくらい、新しいジャンルや新しい歌い方など初めてのものに挑戦してみた楽曲がたくさん入っているので、気持ちとしては『愛恋路』で作り込んだ世界観とはまた違った、二度と作ることができないような気持ちの塊が詰まった作品になっている気がします。
――新しい挑戦がたくさん詰まった作品だということですね。
宮川 そうですね。それに、今回の『ラフレア』には、コロナ禍や、アーティストの活動において迷う瞬間があった時などに(最初の着想を得たり、原型が)生まれた曲がたくさん入っているので、「楽しかった」という思いだけではなく、「辛かったな」「迷ったな」という気持ちも、全部声に乗った作品になっていると思います。それが図らずも、「人生とは?」「生きるとは?」というテーマに繋がった感覚があるので、自分の中では貴重な曲が入っている作品だなと思っています。
――では、1曲ずつ制作時のエピソードを聞かせてください。表題曲「ラフレア」は放送中のTVアニメ『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』のOP主題歌ですが、この作品に触れてみての感想はどうでしたか?
宮川 『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』のことは主題歌のお話をいただく前から知っていたんですが、最初に読んで思ったのは、「純粋に人を思って行動するってこういうことだよね」とか「本当に大事なものを思い出せたような気がする」という感想で。読んでいるうちに、そういう行動がヒロインのバーティアに多いことに気づかされました。こういうタイプの作品ってヒロインと王子が行き着く恋路の話がメインで、間にライバルのような存在が入ってきたりしながらも、シンプルで魅力的な王道の展開がされていく作品が多い気がするんですけど、この作品は単純に恋愛というだけではない、もっと「絆」と呼べるような部分も際立っているように感じます。物語としても、幼少期から大人になっていく様子が描かれるので、小さな頃からセシルとバーティアの成長を応援していくような感情移入の仕方ができて、心から入り込んで作品を楽しむことができました。
――特に気に入ったキャラクターはいましたか?
宮川 私はバーティアですね。バーティアの良いところって、良くも悪くもすべてが曲がらずに芯が太いまま大人になっていくところだと思っていて。成長して色々なことを知っていくなかでも、やっぱり根底にはセシルの幸せを願っているという部分が常にありますよね。私は自分にできない生き方をしているキャラクターに憧れるところがあるので、バーティアの強い意志がしっかりある部分には憧れます。バーティアって外側に不安を一切見せないですよね。その覚悟というか、太い精神力のようなものがすごく好きです。彼女のそういう姿が、作品のコミカルさの大事なキーになっているのかなと思いますし、セシルとバーティアの絆の物語という根底の部分を忘れないための大切な要素にもなっているんだと感じています。
――表題曲「ラフレア」についても、どんなふうに制作していったのか教えてください。
宮川 今回の作品は「乙女ゲーム」というキーワードが背景にあるので、ゲームっぽい音を入れたいということは最初から考えていました。私の場合、普段なら「ゲームの音を入れるなんてわかりやす過ぎるかもしれない」と思いがちだったりもするんですけど(笑)、今回はそういう雑念をすべて取っ払って、作品から感じたものを素直に形にしました。子供の頃って、マンガやアニメを見ていてもそこにすごく自分を投影して、世界観にどっぷり浸かって楽しんでいた人が多いと思うんですよね。私もそれが好きだったので、一度その気持ちに戻って、あの頃の私だったらどんなふうに表現しただろうということを考えました。『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』に触れた時に、私にとって大切な気持ちを思い出させてもらえたこともあって、楽曲にもそんな気持ちを込めていきました。
――作中のバーティアたちから感じたものを、楽曲制作の時にも大切にしたんですね。なかでも、特に工夫をした部分はありますか?
宮川 歌詞の面だと、1番と2番とで視点が切り替わるようなものになっていて、ここは工夫したところの1つです。もちろん、聴いてくれる方がそれぞれに解釈してもらえると嬉しいので、こちらから「この曲はこういうストーリーです」と決めたくはないんですけど、私としては1番ではバーティアが大切に持ち続けている信念だったり、大切な人に対して素直に思っていることを行動に起こしたりする様子を表現しています。そして2番では、セシルのあるはずだったもう1つのルートの切なさだったり、でもそのセシルは今もどこかのルートで苦しんでいるかもしれないとか――。セシルの中に燃えている静かな闘志のようなものを表現してみました。そういったお互いの決意のようなものが、この曲の中でDNAのように1つにまとまってくれたらいいなと思っていたんです。そのうえで、今回はOP主題歌なので、力強く華やかに切り開いていくような、道しるべになるような曲にできたらと思っていました。
――歌う際に意識したことはありますか?
宮川 この曲は、私の曲の中では結構キーが高いんです。思い返してみると、作品を読み返して興奮冷めやらぬままに作ったので、すごくハイテンションな楽曲になったのかもしれないです。その結果、「果たして歌えるのか……!?」という感じになってしまって。
――自身で作った楽曲にもかかわらず、「歌えるんだろうか?」と(笑)。
宮川 はい(笑)。デモを録る時に軽く歌ったりはしていたんですけど、本番のレコーディングの時に、「もしかしたら、とても難しい曲を用意してしまったかもしれない」と思いました。そもそも、私は音楽の知識がまったくないところからデビューして、そこから徐々に自分が作りたい音楽を作るようになっていったので、基本的に自由形で作ってきた部分があって。今ちょうど、セルフプロデュースで何曲か作ってきたなかで、成長痛のような状態にいると思っていたりもするんです。
――最初の右も左もわからない状態ではなくなると、理想もさらに上がってきますよね。
宮川 そうですね。1曲書き終わるたびに、できるようになったことだけではなくて、やりたいことがもっと出てくるというか。私も人に音楽を届ける立場であるなら、「誰かの心にちゃんと届ける」という意思をまずもって、楽曲に取り組んでいきたいと思っています。
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