4月より放送がスタートしたTVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ 4th Season 2年生編1学期』。本作の主題歌を務めるのが、久々のアニメタイアップとなる藍井エイルと、これまで本シリーズのOPテーマを務めてきたZAQの2人だ。攻撃的かつ新機軸のアプローチで高らかに鳴らした藍井エイルによるOPテーマ「MONSTER」、そして作品と約10年の関係値から生まれたZAQによるジャジーヒップホップのEDテーマ「ライアーヴェール」。2人のアニソンシンガーの視点から見える『ようこそ実力至上主義の教室へ』(以下、『よう実』)の音楽についてたっぷりと語ってもらったスペシャルインタビューをお届けしよう。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
――今回はTVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ 4th Season 2年生編1学期』のOP/EDテーマを担当されたお二人の対談ということで、こうした対談は初めてですか?
ZAQ 初めてです。ライブ現場以外でお会いすることもあまりなかったので。
藍井エイル いつから知り合いなのかもあまり覚えてないよね?
ZAQ 多分最初に会ったのは“Animelo Summer Live”(以下、“アニサマ”)だったんじゃないかな?
藍井 そうか。現場以外では会わないんだけど、連絡先はもうずっと前から知っていて。
ZAQ 確か「ジビエを食べに行こう」って言ってた気がする。それもずいぶん昔だけど(笑)。
藍井 うちらまだ1回も遊べてないよね(笑)。
ZAQ 確かに!(笑)。
――こうしてプライベートの交流がないまま、同じ作品のタイアップが決まったわけですね(笑)。
ZAQ そうですね。でもデビュー日も近いので、勝手にマイメンみたいな感じではいます。
――エイルさんが「MEMORIA」でデビューしたのが2011年、ZAQさんが「Sparkling Daydream」でデビューしたのが2012年と、時期的には近いんですよね。“アニサマ”で同じステージに立ったのは2014年ですが、その頃からお互いの活動についてどんな印象をお持ちでしたか?
藍井 一言で、天才。最初に会った時から本人にもずっと言っているんですけど、自分で作詞作曲、編曲までして、ピアノも弾けて、歌詞の内容も「なんでこんなの思いつくの!?」というのがすごくたくさんあって、「天才だな」ってずっと思っていました。
ZAQ 初めて会った時からこの感じで、もうグイグイ来てくれるからすごく話しやすくて。最初から会うなり「ねえねえ、曲ってどうやって作るの!?」って(笑)。「私もやりたいんだよね」みたいなことも言っていたので、「私のことをめちゃくちゃ知ってくれているんだ」「初対面でここまで聞いてくれるんだ」って嬉しくなったのを覚えていますね。
――さて、ZAQさんから見たエイルさんの印象はいかがですか?
ZAQ 最初の頃は顔も隠していてミステリアスだったので、結構怖い方なのかなとか思っていたんですけど(笑)、初対面からラフに話してくれたので「なんて良い子なんだ!」って。性格の良さがすごすぎるんですよ。歌も強めのゴリゴリ曲が多かったから、そのギャップにやられてしまいました。
――そんなお二人がTVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ 4th Season 2年生編1学期』の主題歌を担当することになったわけですが、ZAQさんはこれまでシリーズのOPテーマを担当していて、およそ10年近い付き合いになるわけですよね。
ZAQ はい、2017年からになりますね。
――作品への印象というものはいかがですか?
ZAQ 表向きには学園青春ものと見せかけて全然違う物語というのが他の作品と違うところですよね。水面下で暗躍する主人公もそうですし、他の頭の良い生徒たちが上にのし上がっていくという戦国時代的な作品ってあまり見ないですよね。これがSFとかならわかりやすいんですけど、学園ものでそれをやっているというのはあまりないので、唯一無二の存在感を放っている印象はあります。あとは、主人公が未だにすべての能力が解放されていない部分がこの作品の一番の魅力だと思っていますし、綾小路清隆が10年以上愛されてきた理由がそこに詰まっているんじゃないかなと思っています。
――エイルさんは、『よう実』は今回初めてとなりますが、作品への印象はいかがでしたか?
藍井 正直、最初に観た時は「主人公パッとしないけど大丈夫!?(笑)」って思ったんですよ。
ZAQ そうだよね!そこがまたずるい(笑)。
藍井 そうそう、ずっと無表情だし。周りからは、それこそZAQちゃんが言ったように戦国時代のような、生徒同士の戦いみたいなものだと聞いていたので、清隆を見て拍子抜けしたんですよ。
ZAQ わかる。千葉翔也さんの初期の芝居もそうだったよね。
藍井 そうそう、ちょっと抜けた感じの演技で。それもあって拍子抜けしていたら、観れば観るほど緊張感がどんどん高まっていったんですよね。で、清隆が色んなことを仕組んでいくんですけど、視聴者はそれをわかっているわけじゃないですか。でも、生徒たちは何も知らないで騙されていくわけで、なんなら私もどちらかというと生徒と一緒に騙されていて。その騙されている感覚が気持ち良くて。
――綾小路清隆、そして『よう実』という世界観に引き込まれていくわけですね。
藍井 今はもう昔からの知り合いみたいに、「ウチの綾小路やってくれるでしょ?」みたいな気持ちになってます(笑)。
ZAQ 「さすが俺たちの綾小路さん!」って言いたくなる(笑)。
――そんな『よう実』最新シーズンの主題歌についてお伺いします。まずはエイルさんによるOPテーマ「MONSTER」。そもそもタイアップも久々になりますよね。
藍井 久しぶりです。「心臓」(「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ」主題歌/2022年リリース)以来だから3年半ぶりくらいかな?
――久々のアニメ作品あっての楽曲制作はいかがでしたか?
藍井 そうですね。『よう実』といえばずっとZAQちゃんが歌っているイメージがあったので、そこに私が参加するのにはちょっとした緊張もありました。「なんかすみません、ちょっと端っこから失礼します」みたいな、お邪魔しますの気持ち(笑)。
――これまでZAQさんが歌われてきたOPテーマも聴かれたうえで制作に臨まれていったわけですか?
藍井 そうですね。ZAQちゃんの曲を聴いて、歌詞を書く時の参考にさせてもらったりしました。私の視点で書くとなった時に、“周囲から見た綾小路”という形で書いてみようかなというのもそういったところから出てきて。ZAQちゃんの楽曲があったからこそ、自分の中でこうしようと決めたことも多かったですね。
――「MONSTER」というタイトルはどういった流れで?
藍井 「バケモノって英語でなんて言うんだっけ?あ、MONSTERだ!」って、シンプルにすぐに出てきました。
――なるほど、そこは曲調にも出ているのかなと思いますが、サウンドとしてはギターリフとベースのスラップで攻めていくダンサブルながらヘビーな作りで、エイルさんの楽曲としても新鮮な響きだなと。
藍井 重ためですよね。サビも今までの藍井エイルの高音で突き抜けていく感じとはまた違う、ちょっと狡猾さを感じるようなサウンドで、そこは『よう実』にはすごく合っている楽曲なんじゃないかなと思っています。
――確かにボーカルも中~低域中心になっていますよね。そこはGAK-amazuti-さんが作られたサウンドの影響も強いというか。
藍井 そうですね。最初聴いた時は衝撃でした。「めちゃくちゃかっこいい!」って。
――そこから作詞に入っていくなかで意識したポイントはなんですか?
藍井 Bメロのところが、メロディだけを聴いた時に、「テンテンテンテンテンテン……」って抑揚のない感じだったので、最初は「ここは何を書けばいいんだろう?」と思ったんですよ。全部日本語にするとしっくりこないし、何か良いワードはないかな?って。そんな時に、“hidin’ ding”という言葉が出てきて、じゃあ言葉遊びみたいにしようと。そしたら自分の中ですごくしっくりきました。苦労したのはそこだけですね。
――なるほど、あのメロディだったからこそ擬音的なアプローチになったと。しかもそれがBメロだけではなくイントロやサビにもかかってくるわけですよね。
藍井 そうです。それが途中から出てきて「これはすごく良い、フックになるかもしれない」と思って、イントロや間奏やサビでも使ってみたんです。
――この“hidin’ hidin’”というフレーズが支配的になることで呪術的といいますか、エイルさんのいう狡猾さに繋がっていくわけですね。
ZAQ サンプリング的にずっと流れているのが良いですよね。展開して展開してサビでハイトーンがパーンと突き抜ける!みたいなのがエイルちゃんらしさだと思っていたんですけど、この繰り返して中毒性を高めるみたいなのはまたすごい。
藍井 そうだね、今までそんなになかったと思う。あとすごく妖しげな感じがする。
――ZAQさんの言うようにボーカルアプローチもエイルさんの十八番である突き抜けるような展開ではない今回ですが、レコーディングはいかがでしたか?
藍井 難しかったです。バーンといけないのが、体がストレスを感じるというか。
――体が記憶している展開ではないという?
藍井 そうそう、体がバーンと突き抜けていこうとしているのに対して「 ちょっと待ってちょっと待って」と理性で止めるみたいな。
ZAQ 体はいきたいんだ。確かにいきたくなる気持ちはわかる(笑)。
藍井 「ここは突き抜けたい!」ってなるんだけど、GAKさんに我慢させられるみたいな(笑)。
――そこは15年以上培ってきた型や癖みたいなものはありますよね。サビも最後は突き抜けるのではなく、メロディも少し下がり気味というか。
ZAQ 下げていってますもんね。
藍井 うん。でも感情としては抑えなきゃいけないけど攻撃的な楽曲なので、歌う時は威圧感を出さなきゃいけない。だからやっていることが、体と気持ちがぐちゃぐちゃになっている感じ。それが結構大変でしたね。
――曲調としては攻撃的、だけど抑える歌い方にするというのは確かにぐちゃぐちゃになりますね。
藍井 狡猾さや怪しげかつ攻撃的、というのをサビで出すのに苦労はしました。
――デビュー以来、ご自身の歌い方や体の使い方を模索してきたエイルさんですが、ここに来てまた新しいアプローチ、体の使い方を学んでいったわけですね。
藍井 そうなんです。そこはまた色々やり直しながら考えています。
ZAQ エイルちゃん、前に「ロックの歌い方を開放した」みたいこと言っていたよね。
藍井 そうそう。いわゆる喉声というやつですね。サビの“The monster”のところとか、喉を結構閉めて歌っていて、閉めて開放するというか、がなる感じで絞り出すみたいな。それもあってレコーディングは結構苦しかったんですよ。
ZAQ わざとそうやってやるのって苦しいよね。
藍井 うん、蛇の首を絞めて声を出させる感覚に近いかな。レコーディングでは見事に声が枯れたので、ライブでは枯れないような歌い方に変わってくるんだと思いますね。
――さて、改めてそんな「MONSTER」を聴いたZAQさんの感想はいかがですか?
ZAQ まずトラックがバチクソかっこいい!GAKさん特有の歪んだドラムのEDMロックで、そこがエイルちゃんの歌声にハマっているのがすごいなと思いましたね。私はこれまで『よう実』に関してはジャズをベースに書いてきたんですけど、シンセが入りまくったEDMロックが『よう実』とどう絡むんだろう?と思っていたんですよ。それで先日OP映像を観させていただいたんですけど、めっちゃかっこ良くて。エイルちゃんの曲と映像とのマッチングがすごくて、これは大正解なサウンドなんだと思いましたね。あと何より中毒性がすごい。ずっと歌ってるもん。頭でずっと鳴ってる。
――なるほど。
ZAQ 私、今回「ライアーヴェール」を書くにあたって、OPテーマがエイルさんになるというのを聞いたので、スタッフさんに「どういう曲になりそうですか?」という質問をしたんです。歌詞も入っていないトラックだけ聴かせていただいたんですけど、その時点で頭の中でずっと回っていたんですよ(笑)。
藍井 嬉しい(笑)。
ZAQ あと気になったのが、サビでの“奴を捕えろ”の“奴”って誰なのかなっていう。
藍井 “奴”は綾小路のこと。みんなで「綾小路を捕えろ!」って言っているんですよね。
――まさに視点は彼のことを見ていて、どこか俯瞰した印象ですよね。
藍井 私から見た、同級生から見た綾小路の危険性に警鐘を鳴らしている歌詞みたいな感じですね。
ZAQ 「あいつはやばいぞ、さっさと捕まえちまえ」という。
――そこはまさにシーズン途中から参戦したエイルさんならではの視点ですよね。
藍井 そうそう、「危ない人いるよ」って(笑)。
ZAQ 他にも“白く淀む部屋”とか“思考は迷路 謎が泳いでいる”とか、作品と正面から向き合ってくれている感じがして、「エイルさんありがとう!」ってなりました。
藍井 お邪魔しますの気持ちでね(笑)。
ZAQ 『よう実』をずっとやってきた身としてはそれがすごく嬉しかったんですよね。ちょっと偉そうに聞こえるかもしれないですけど、愛を持って制作に臨んでほしいし、愛を持って歌ってほしいというのはずっと思っているので。ちゃんと向き合ってくれているというのがすごく嬉しかったんですよね。
藍井 でもやっぱり、そこの加減は難しかったですよ。歌詞を書くためにフレーズをメモ帳に色々書いていたんですけど、細かく綾小路のことについて書いていたので、だんだん悪口みたいになってきて、「いや、こういうことじゃないよな」って(笑)。
――クラスメイトの感情に没入するがあまり(笑)。
ZAQ でもそういう人物だよね。前にYouTubeで『よう実』の楽曲のコメント欄に「俺が綾小路だと思い込んでいた時代を思い出した」とか書いてあって。中高生が憧れるキャラクターですよね。
藍井 まさに私、こういうのに憧れてました(笑)。
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