――話の流れが前後してすみませんが、ここからはアルバムの曲順の流れに沿ってお伺いします。2曲目「乖(かい)」はササノマリイさんが提供した、感情の波に溺れていくようなエレクトロニカ。まだ葛藤の中にいるような印象を受けました。
HACHI 「乖」は“乖離”を意味していて、「自分が思う自分」と「他人から見た自分」の乖離をテーマにしています。嫌われたくなくて自分を隠している自分、と言いますか。歌詞に“「ここにいて」なんて不安になってしまうよ”とあるように、「ここにいて」という言葉に不安になってしまう自分もいながら、その後には“手放そうとした世界から 消えたくないんだって声がしたんだ”とも歌っていて。自分の中で色んな気持ちが乖離して本当の自分がわからなくなっている、そんな不安定さを歌い方でも表現しました。切迫した感じ、息が詰まっている感じと言いますか。
――3曲目は、先行配信されたアルバムのリード曲「∞」。HACHI作品ではお馴染みの海野水玉さん提供で、かなり踏み込んだ感情が描かれています。“「死にたい」と歌うmy heart”という、ショッキングなフレーズが含まれていて。
HACHI この楽曲は一番の深層心理というか、心の奥底で抱えているどうしようもなく淀んだ感情を表現してもらいました。この曲では初めて明確に“死”という言葉を使っていますけど、これは命を終わらせるという意味だけでなく、その場から逃げたい、消えたい、という意味も孕んでいて。表現者にとっての「死」とは活動を辞めること。私の場合は音楽を辞めることが、アーティストとしての死だと思うんです。歌詞にある“知らない頃に戻れたのなら”というのは、「自分の音楽を知らない時に戻れたらな」という意味合いも含んでいて。誰に何を言われても納得できず、深い水底に沈んでいくだけでいい、引き上げてほしくない……そんな感情を抱いていた時期のことを歌っています。
――救いを求めているわけではない、と。
HACHI 海野さんと「そういう感情の時に、無理やり引き上げてくれる音楽なんて聴きたくないよね」という話になって。「じゃあ、そんな自分の代わりに死んでくれる曲を作ろう」ということで生まれた曲です。無理に励ますのではなく、どうにもならない時に全てを肯定して隣でたゆたってくれるような曲。海野さんも私と同じタイプなので、こういう感情を抱いたことのある人にしか書けないし、歌えない楽曲だと思います。
――そこまで深い部分を隠さずに楽曲にできたのは、やはりファンへの信頼があるからでしょうか。
HACHI そうですね。今までは言葉を選んで、ここまで強い言葉は使わないようにしていたのですが、今回は取り繕うのをやめました。“自己開示”と謳っているのに、ここで取り繕ってしまったら薄っぺらくなってしまうので。なので包み隠さずに、代わりに死んでくれる曲を作りました。正直、発表する時は本当にお腹が痛くなるくらい怖かったです(笑)。ファンの皆さんも、いつもなら「聴いたよー!」と報告してくれるんですが、この曲に関しては言葉を選んで感想をくれていて。「ごめんね、重たいよねー」と思いながら見ていました。
――ただ、今はもうその状態ではないんですよね?
HACHI はい!めちゃめちゃ重たい話をしてしまいましたが、今は全然大丈夫です。そういう気持ちを曲に昇華して乗り越えているので、全く心配しないでください!
――そして4曲目はピコンさん提供の「誰も知らない」、5曲目はkeenoさんが書き下ろした「ivy」と続きますが、今作には他にもnikiさん、buzzGさんが参加していて、ニコニコ動画の全盛時代から活躍するボカロPさんが多いですよね。
HACHI 私が元々ニコニコ動画の音楽文化・ボカロ文化が好きで育ってきたので、ルーツに従って「好きな人と音楽がやりたい!」とお声がけしていったら、ものすごいメンバーになってしまいました(笑)。すべて私が「この方にお願いしたい」と希望を出させていただきました。
――「誰も知らない」を提供したピコンさんに関しては、以前に「君の脈で踊りたかった」や「再生」を歌ってみた動画でカバーしていました。
HACHI ピコンさんの楽曲は昔から大好きで、メロディから感じる儚さや哀愁もそうですし、歌詞が本当に美しいんですよね。なので今回、熱烈なアプローチをさせていただきました(笑)。ちなみにこの曲、ハモリもダブルも一切なくて、メインの歌一本勝負なんですよ。「メイン一本でいきましょう」と言われた時はすごくドキドキしましたが、高音のファルセットや哀愁を含んだ表現など、結構チャレンジングな楽曲になりました。
――そしてアルバムの後半は、ロックな曲調が増えていきます。
HACHI アルバムの後半、buzzGさんの「あいあいがさ」からnikiさんの「Before anyone else」、そして「星を待つ」の流れは、スランプ脱出を象徴するような力強さがある曲になりました。スランプ時は呼吸が浅くなってお腹から声が出せなかったのですが、それが気にならないくらい真っ直ぐ歌うことができて。アルバム前半で重苦しい感情を歌っている分、後半の希望に向かう楽曲で聴いている人の心を引き戻せればと思い、強く歌わせていただきました。特に「Before anyone else」は「絶対にそばにいることを約束するからね」という思いを込めつつ、最後の歌詞が“、、、いいかな”で終わるあたり、なんだかんだおずおずしてしまうHACHIらしさも出ているかもしれないです(笑)。
――「星を待つ」もまさに星空の光景が目に浮かぶような、エモーショナルかつスケール感のあるギターロックに仕上がっています。
HACHI この曲は自分としては珍しく、最初から最後までフルスロットル、100パーセントのパワーで歌っています。今まではバラードを中心に“抜き”をメインで歌ってきたので、ここまで力強く張り上げる曲はそれほど多くはなくて。でも、私はこういう楽曲が元々好きなので、歌いながら「あ、これやりたかったんだな」という気持ち良さがありました。自分の中にあった固定観念を破った曲でもあるので、ぜひ聴いて欲しいです。
――そして結びの曲「Brand New Episode」の前に置かれた、アルバムの12曲目「Revealia」はHACHIさんご自身が作詞を担当されています。
HACHI 自分の言葉で綴っているので、この曲が一番正直な自己開示だと思います。孤独を感じていた自分、その辛さを誰にも、自分にすら気づかれないようにしていた自分がいて。その心を覆い隠して、自分の言葉が届くように歌うけど、声が震えてしまう時もあるし、それを「見抜いて欲しい」という反対の気持ちもある。でも、やっぱりみんなのことが好きだからそばにいてほしい。“心の檻”から羽ばたくのは怖いけど、リスナーの“あなた”となら一緒に風を知りにいきたい。そんな思いを綴りました。
――前作で作詞した「レコードのように」に続き、ファンへの手紙のような曲ですね。
HACHI BEESのかけてくれる言葉は、みんなの考えている以上に私の心の糧になっているんです。自分でもどうしようもない感情があるなかで、そういうものも全部解いてくれるくらいの力を持っていて。“あなた”が向けてくれる言葉に私も焦がれているし、“あなた”の言葉があるから羽ばたいていける、一人きりじゃないと思うことができる。なので最後は“私は ここにいる”と歌っていて。“あなた”がいるから私はここに存在していけるんだよ、という意味を込めています。私が“あなた”の言葉をどれだけ大事にしているかが伝われば嬉しいです。
――自分の好きな人たちと一緒に好きな音楽を作るという意味でも“自己開示”できたアルバムになったと思いますが、改めて、完成した今の率直な感想はいかがですか?
HACHI 今まで自分の話をするのが得意ではなかった私が、自分の好きなものや悩みを作品に昇華するためにどうすればいいのか、改めて自分と向き合い、対話することで学び直せた制作期間でした。自分の心を歌として開示していくことでテクニカルな面での気付きもありましたし、自分と向き合うことで新たな感情の引き出しが増え、歌い方もブレッシーになったり、逆に力強くなったりと、表現が少し変わったと思います。その勇気をくれたのは、BEESのみんながいつもかけてくれる愛の言葉です。より繋がりが深くなったと思いますし、自分のことを開示できて、本当によかったなと思います。
――最後に、3月5日にはライブツアー「HACHI Live tour 2025 “Unlockture”」の台北公演も控えていますが、今後の活動について教えてください。
HACHI ライブツアーのタイトル“Unlockture”は、“Unlock(解錠)”と“Overture(序章)”を掛け合わせた造語なんです。“Overture”には「序章」という意味があるということは、「じゃあ何の序章なの?」というところで……まだ言えないですけど、ちょっと企んでいることはあります(笑)。所属しているRK Musicの方でもイベントやライブを予定していて、みんなと生で会える場所を増やしていければと考えているので、これからも頑張っていきたいと思います!
●リリース情報
HACHI 4th ALBUM
『Revealia』
2月11日リリース
【特別仕様盤(初回限定盤)】

品番:KICS-94243
価格:¥8,800(税込)
【通常盤(CDのみ)】

品番:KICS-4244
価格:¥3,500(税込)
<CD>
01. To Be Alive
02. 乖
03. ∞
04. 誰も知らない
05. ivy
06. Chère amie
07. Empty Town
08. 雨うつつ
09. あいあいがさ
10. Before anyone else
11. 星を待つ
12. Revealia
13. Brand New Episode
Bonus Track. Rainy proof(Avec Avec remix)※通常盤のみ収録
<特別仕様盤特典>
・特製クリアケース
・南京錠⾵Revealia アクリルカラビナ
・記念カードRevealia ver.(シリアルナンバー⼊り)
・HACHI ライナーノーツカード
HACHI
公式サイト
https://hachi-official.jp/
公式X
https://x.com/8HaChi_hacchi
公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC7XCjKxBEct0uAukpQXNFPw
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