――その「Brand New Episode」もtee teaさんの提供で、TVアニメ『SHIBUYA♡HACHI』の主題歌。第1クールの主題歌だった前作「Dusk」と比べてどんな楽曲になりましたか?
HACHI 前作の「Dusk」は“仲間の大切さに気付く”というテーマでしたが、今回は、その仲間と一緒に作り上げたキラキラした思い出を集めに行く、前向きな曲にしようと思いました。なので「Dusk」よりも明るくアップテンポで、“キラキラ”というワードを意識して作っていただきました。キラキラした思い出があるからこそ、過去の辛かったことを自分の中で噛み砕いて、消化して、新しい物語を紡ぐ糧にすることができると思うんです。「忘れる」のではなく、噛み砕いて受け止めていく。それって仲間がいるからこそできることだよね、というニュアンスを込めています。
――歌詞の“あなたに会えないから あなたに会いたいから 当然今日も歩いていく”というフレーズにも繋がりますね。
HACHI アニメの元になっている忠犬ハチ公の物語のように、過去の別れや悲しみがあっても、仲間と一緒にいれば思い出で中和され、前向きに捉えられると思うんです。聴いてくれる人の後押しになれば嬉しいですね。何を幸せとするかは人それぞれですが、仲間がたくさんいれば幸せを見つける先が増えるし、些細なことでも幸せに思えるようになる。「Dusk」も「Brand New Episode」もひっくるめて、「仲間って素晴らしいな」ということを歌っています(笑)。
――楽曲としてはドラムンベース調の都会的かつ爽やかさのあるサウンドで、ボーカルもシルキーかつキラキラしている印象です。
HACHI もう、ニコニコで歌っていました(笑)。跳ねるようにお散歩しているイメージで、口角も声のトーンも上げて、綺麗にかわいらしく歌わせてもらいました。
――楽曲のラストのピアノが、コードが着地しない感じで終わるところも印象に残りました。
HACHI あれはtee teaさんが作ってくださったもので、私も意図は聞いていないんですけど……もしかしたら「これからも物語は続いていく」ということを表現してくださっているのかもしれません。歌詞にも“終わりのない物語を”とあるように、まだまだ終わらないし、歩き続けていかなくてはいけないけど、あなたには仲間がいるから大丈夫だよ、みたいな。
――HACHIさんは『SHIBUYA♡HACHI』で声優にも初挑戦されましたが、それに絡めてお話しを聞きたいのが、今回のアルバムの新曲「Chère amie」。この曲ではポエトリーリーディングに挑戦していますが、歌とは異なる声の表現に取り組んでみていかがでしたか?
HACHI ポエトリーリーディングはずっとやってみたかった手法だったんです。以前から文学的な独白が好きで、それを音に乗せて楽曲として届けることに興味があったのですが、今回のアルバムでは「やりたいことをやろう!」「できないと思っていたことにもチャレンジしよう」と決めていたので、満を持して澤田空海理さんに楽曲をお願いしました。澤田さんは、以前、私が事務所のバーチャルシンガー仲間4人と一緒に活動しているライブユニオンの全体曲(「薫習」)を手掛けていただいたことがあるのですが、楽曲の中にポエトリーを取り入れるのが得意な方で、私も澤田さんの楽曲が元々好きだったので。実際にどちらもやってみて、声優とポエトリーリーディングはほんのり違うものなんだなと思いました。
――というのは?
HACHI ポエトリーは声色が大切で、喋り方ひとつ、語尾の上がり方や細かなところで感情表現が変わってくるんですよね。歌とも演技とも違う表現方法で、「愛おしさを出すにはどう喋るべきか」「笑ったように喋っているけれど、儚さを出すには?」とすごく悶々と考えながらトライしました(笑)。「演じる」というよりも「物語を読む」ような、読み聞かせのようなトーンを意識してやらせてもらいました。
――ポエトリーの独白的な部分と歌の組み合わせの妙と、室内楽的なサウンドの優雅さが合わさって、ミュージカルのような雰囲気も感じられる楽曲です。歌詞はどこか乙女チックな内容ですね。
HACHI ああ、そうです。この曲はラブソングなので。楽曲を作ってもらうにあたって澤田さんとお話しする中で、「大切な人を失った経験はありますか?」と聞かれたんです。私にもそういう経験があるのですが、大事な存在を忘れていく自分、どんどん大丈夫になってしまう自分がいて、それに慣れていくこと自体が辛い、というお話をさせていただいて。澤田さんがその気持ちを汲み取ってくださり、このラブソングができました。“ラブ”と言っても世間一般の恋愛だけでなく、家族やペット、友人など、万物に対する「どうしようもない愛情」、先にいなくなってしまったことに対して「しょうがないやつだな」って愛おし気に微笑むような楽曲になっていると思います。
――終盤の歌い上げるような高まりも印象的です。
HACHI 最後のサビは、澤田さんから「上手に歌わないでください」と言われました(笑)。「ここは上手さを強調したいわけではない。心の赴くまま、下手でも雑でもいいから感情を思い切り込めて歌ってほしい」というディレクションをいただいて。なので、この盛り上がりの部分が一番大切なポイントになっていると思います。
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