2023年4月に開催された“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks Zepp tour 2023「iは自由で、縛れない。」”の東京公演で活動に一度幕を下ろしていたCHiCO with HoneyWorks(以下、チコハニ)。「一回りも二回りも成長して帰ってきます」と宣言し、ソロ活動に注力していたCHiCOの言葉を信じ、再会を待ち望んでいたファンの前に、ついに彼らが帰ってきた! 2026年の年明け早々にスタートし、大阪・愛知・東京を巡った本格再始動となる“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks Zepp tour 2026 『HELLO!!』”は全会場がソールドアウト。大きな声の「ただいま!」と「おかえり!」が交差する温かく感動的な空間を生んだ。そのファイナル公演、1月18日の東京・Zepp DiverCity (TOKYO)のステージを振り返る。
TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+)
冷たい風が吹きつける東京・お台場。しかしZepp DiverCity (TOKYO)だけは、集まったチコハニファンの賑やかなざわめきと、あと何十分後かの再会への期待と熱に満ちていた。整理番号が呼ばれ、待ちきれない顔で地下の入場口に続々とファンが吸い込まれていく。何より懐かしく感じたのは、若い女性ファンの多さだ。今から10年前、チコハニがワンマンライブ活動をスタートした時、小中学生から高校生くらいの女の子たちが、華やかに客席を埋め尽くして驚いたことを思い出す。そうそう、これがCHiCO with HoneyWorksライブの風景だった。
そういえば2016年の夏、彼らが行った初のライブハウス・ツアーのタイトル“CHiCO with HoneyWorksファースト・ライブハウス・ツアー『HELLO』”にも今回と同じ“HELLO”の文字が掲げられていた。2019年春の初のアリーナ2days公演“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks First Arena Live「HELLO! ARENA!! –sweet CHiCOLATE-」/「–bitter CHiCOLATE-」”のタイトルにも、「!」を付けた“HELLO”の文字があった。チコハニにとってこの“HELLO”というワードは、とても大事な瞬間にいつもそばにあった。そして3度目に“HELLO”を掲げ、「!」が「!!」になった今回の再始動ツアー。それは「!」が増えるたびに進化し、成長してきたチコハニが“再始動”によってさらに大きくなるのだという新たな宣言を、ツアータイトルそのものからも感じられる。
会場に入る。暗いステージにチコハニバンドの楽器たちが並んでいる。その頭上には、いつものCHiCO with HoneyWorksのロゴが。ステージ向かって左、下手側から中西(Gu)のギターアンプとHiroki169(Ba)のベースアンプが並んで、その後ろにAtsuyuK!(Dr)のドラムセット。中央の階段を挟んで、上手側には宇都圭輝(Key)のキーボードシステムとその前にもう1台、Oji(Gu)のギターアンプ。そして中央と上手・下手に1台ずつのお立ち台。まだCHiCOもバンドメンバーも姿を見せてはいないのに、約3年前と同じその並びを見るだけで「あぁ、これからチコハニのライブが始まるんだ!」という実感がこみ上げてくる。しかもドラムセットの前には、チコハニライブではいつもステージのどこかにいる『銀魂』のキャラクター、白いエリザベスがスポットライトを浴びて鎮座。そんな演出にも、“帰ってきたチコハニ”を感じて微笑んでしまう。
開演の18時。ピアノの音色から軽やかなBGMが流れてくる。沸き立つ手拍子。薄暗いステージにシルエットとなって一人ずつ、大きく手を振るバンドメンバーが現れると、静かだった客席に一斉に赤いペンライトが灯って、「おお~!」と声が挙がる。AtsuyuK!が手拍子を煽り、中西がピョンピョンと飛び跳ねながらポジションにつくと、一気に暗転。一段高くなった場所にスポットライトが当たると同時に、真っ白でファンシーな衣装をまとったCHiCOがドッと沸くオーディエンスに愛おしそうに瞳を向けて、「世界は恋に落ちている」を歌い出す。弾むリズムにのって、伸びやかな歌声とバンドの“あの音”が客席を満たしていく。曲中にあるセリフ「だって好きだから」を優しく告げて、心を込めて“「ねえ、好きです」”と歌い伝えるCHiCO。チコハニが鮮烈なデビューを飾ったこの曲が、“二度めまして”となる再始動の1曲目に選ばれたことに、感慨が深くなる。
大きな拍手のなか、次に放ったのは「プライド革命」。疾走感を増すバンドの音にのせて、「本気で来いよ!」と噛み付くHiroki169が、いつもの「全員声出せ!」を大声でシャウト! 中西とOjiも同時にステージ前へと飛び出してくる。客席からの「Hi!Hi!」の掛け声に、ニコニコと微笑むCHiCOとバンドが、早くもステージ狭しと動き回り、熱を浴びせる。「さあ、今宵は一緒に歌って踊って、チコハニの歌を、音楽をたっぷり味わってください! 次の曲も一緒に歌ってください!」。優しく告げて始まったのは「人生のオーケストラ」。LEDビジョンに音符が飛ぶリリックビデオが流れ、サビを一緒に歌う客席に、CHiCOがまるで指揮をするように手をひらひらと揺らす。はじめましての人も、そうじゃない人も、ライブの始まりにふさわしいこの曲に笑顔になる。
最初のMCからバンドもCHiCOもハイテンションだ。中西とHiroki169が口々に「楽しみにしてたんだよ!」「曲、たくさん用意してます!」と掛け合うと客席は笑いに包まれ、CHiCOが「もう最高だね、東京! ファイナルですからね!」と元気に声を掛ける。そんなトークのワチャワチャ感も、「チコハニのライブはこうでなきゃ!」な気分を高めてくれる。
ここから少し気分を変え、“恋”をテーマにしたポップな楽曲が続く。HoneyWorks節全開で、柔らかなCHiCOのボーカルが恋する気持ちを爽やかに届ける「くすぐったい。」は、昨年10月にリリースされたばかりの最新Wシングルのうちの1曲。リズミカルなバンドのアンサンブルにのせて、“s/キス・ki + ss しちゃってる?”と歌いながらCHiCOが指でハートを作り、Ojiのアコースティックギターが軽やかに響く「乙女どもよ。」では、CHiCOの強い歌声が、恋する女の子のちょっと傷つく苦しい気持ちに迫る。届きそうで届かない“好き”の気持ちは、振り注ぐ雨の音と宇都圭輝のピアノから始まった次の「ノスタルジックレインフォール」で、よりもどかしく歌われる。切なげな表情を浮かべてお立ち台に座り込み、宇都圭輝のキーボードソロでは楽しそうにぴょんぴょんとジャンプ。CHiCOのクルクルと変わる表情と変化する歌声は、恋する乙女の複雑な気持ちに重なる。ミドルテンポで届けられる優しげな楽曲で光っていた彼女の表現力と深い歌声は、チコハニ再始動までのソロワークスで、より磨かれたものに違いなかった。
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