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INTERVIEW

2026.02.06

SennaRinが語る、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』と共鳴する音楽――コンセプトEP『LOSTandFOUND』に込めた“喪失とめぐりあい”の美学

SennaRinが語る、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』と共鳴する音楽――コンセプトEP『LOSTandFOUND』に込めた“喪失とめぐりあい”の美学

前作から約5年の時を経て、ついに劇場公開されたシリーズ第2章『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』。その劇伴音楽を手掛けた作曲家・澤野弘之がプロデュースするアーティスト・SennaRinが、本作をテーマにしたコンセプトEP『LOSTandFOUND』を完成させた。[Alexandros]の川上洋平をゲストボーカルに迎えたデュエット曲「ENDROLL」、ヒロインのギギ・アンダルシアをイメージして制作された「CIRCE」の劇中挿入歌2曲をはじめ、登場人物たちの複雑な心情を投影した新曲群は、『閃光のハサウェイ』およびガンダムシリーズの魅力をさらに深く実感させてくれるものだ。鋭い洞察力と深みのある歌声によって表現された本作のクリエイティブについて、ロングインタビューで迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

『閃光のハサウェイ』とガンダムシリーズに惹かれる理由

――SennaRinさんは以前に『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の劇伴曲「A LETTER」の日本語詞カバー「Ray」を発表していますが、直接的にガンダムシリーズの楽曲に携わるのは今回が初になります。

SennaRin ガンダムシリーズはとても人気があってたくさんのファンの方がいらっしゃる作品なので、こうして関われるのがすごく嬉しいです。TM NETWORKさんのトリビュートアルバムで「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」をカバーさせていただいた時に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を観たことはあったのですが、今回、第1章『閃光のハサウェイ』と澤野さんに勧められて『機動戦士ガンダム』を観たうえで『逆襲のシャア』をもう一度観たら、すごく大事なシーンで流れていた曲だということをより深く理解できて。すごく素敵な作品に関わらせていただいていることを自覚しました。

――『機動戦士ガンダム』はテレビ版と劇場版三部作のどちらを観たのですか?

SennaRin 劇場版です。『閃光のハサウェイ』との繋がりをしっかりと理解するために、多分全部で3周くらい観ました。今は『機動戦士Zガンダム』を観ているところです。

――ガンダムシリーズの魅力はどんなところにあると感じましたか?

SennaRin ガンダムシリーズには歴史がありますし、人と人との繋がりが深く濃く描かれているので、それを知ったうえで『ハサウェイ』を観るとまた違う意味に気付けたりしますし、私は伏線回収する作品が大好きなので、そういう見れば見るほど魅力が湧き出てくる部分が面白いなと思います。全体を通してだと、重要な人物であっても容赦なく命を落としてしまうところも好きです。シリアスで重たい空気感の作品が好みなので。私が好きなキャラクターは、ハサウェイのお父さん。

――ブライト・ノアですね。

SennaRin そう、ブライトさん。登場人物の中でも正統派の真面目な方で、逆に珍しいタイプですよね。物語が『閃光のハサウェイ』へと続いていく中でのブライトさんの立ち位置を含めて、魅力的だと感じます。

――ハサウェイは反地球連邦政府運動「マフティー」のリーダーを務めているので、連邦軍の高官であるブライトは、その事実を知らないとはいえ複雑な立場ですよね。『閃光のハサウェイ』自体の印象はいかがですか?

SennaRin お話をいただいてから歌詞を書くにあたって、まず前作の『閃光のハサウェイ』を観たのですが、とても面白かったです。その時はまだ『機動戦士ガンダム』を観ていなかったので歴史的な知識や細かい設定はわかっていなかったんですけど、映像や絵の雰囲気、音楽の効果がお洒落で素敵だなと思いました。それと、その人の性格や人となりが表れる細かい仕草の描写がすごいなと思って。「アニメでそこまで描くんだ!」みたいな。『キルケーの魔女』で例を挙げると、ケリア(・デース)の咀嚼にハサウェイが気になってしまうシーンがあるんですけど、それってあるあるじゃないですか。興味が薄れた人間に対してはちょっとしたことでも気になってしまうっていう。そういう生々しい描写も魅力的だと思いました。

――人間関係のリアリティが表現されていていいですね。

SennaRin 絵コンテで見た瞬間から、いいシーンだなと思って。そういう表現の仕方のシーンがたくさんあって、知らず知らず惹かれていく暗さみたいなものが『閃光のハサウェイ』の魅力だと思います。

ギギの生い立ちや深層心理を推察して生まれた挿入歌「CIRCE」

――『キルケーの魔女』では2曲の挿入歌を担当。そのうち「CIRCE(サーシー)」はRinさんがソロで歌唱、「ENDROLL」は[Alexandros]の川上洋平をゲストボーカルに迎えたデュエット曲になります。それぞれどのような指定で制作を進めたのでしょうか。

SennaRin 「CIRCE」はギギ(・アンダルシア)の日常を描いたシーン、「ENDROLL」はハサウェイとケリアの回想シーンで流れるというお話しだったので、私はシナリオと絵コンテをいただいたうえで、澤野さんの作ったデモを聴きながら、それぞれのシーンのイメージに合うように歌詞を書いていきました。

――なるほど。ということは「CIRCE」に関してはギギをイメージして作詞したと思うのですが、ギギというキャラクターのどんなところからインスパイアを受けて歌詞を書きましたか?

SennaRin ギギは、いわゆる普通のタイプの女性ではないと思うので、彼女がどんな風に物事を考えていて、どんな風にハサウェイのことを思っているのか。そういう内面的な部分を自分の中で考えながら作詞しました。

――ギギのどんなところが「普通ではない」と感じますか?

SennaRin 行動全てが予測不能だし、発言がほぼ「そこでその言葉を言う?」みたいな感じがあるじゃないですか。でも、そこが彼女の魅力だと思いますし、「CIRCE」の歌詞を書いていく上で、ギギって、そうならなくてはいけない生き方をしてきたのかなというのを感じて。多分、家族からの愛をいっぱい受けて育ったわけではないから、愛情表現とかも素直ではないし、ハサウェイに対しても自分の考えや気持ち、自分のことをどう思っているのか知りたいってことを直接伝えないっていうか……。

――それは回りくどい、ということ?

SennaRin 回りくどいでもないんですけど……でも、そうやって思わせぶりな態度をしてしまうのは多分、普通の家庭では育ってないのかなというのをすごく感じて。ギギなりの生きるためのやり方がそういった性格を形成しているのかなとは思いました。

――ギギがこれまでどんな生活をしてきたのかは、作中でほぼ描写されないわけですが、Rinさんはその部分の想像を膨らませていったわけでしょうか。

SennaRin そうですね。私はいつも作詞する時、その曲の対象となるキャラクターなり登場人物のことを分析して、どういう家族構成でどういう幼少期を過ごしてきたかを妄想するんです。やっぱり生い立ちはその人の根本になる部分だし、そこが考え方の軸になると思うので。ギギに関してはその部分の描写が全くないので、自分なりに「円満な家庭ではなかったのかな?」とかいろいろ想像して。ギギは行動の端々に、そういった断片みたいなものが散りばめられているので、想像を膨らませられる部分がたくさんあって楽しかったです。

――ギギは人に対しての当たりが強くて、孤高というか高潔な印象がありますが、「CIRCE」は割と弱い部分も描かれているのかなと思ったんですよ。

SennaRin それで言うと、人に対して当たりが強いっていうのは、相手がいないとそうならないじゃないですか。この曲はギギの日常生活のシーンで流れると聞いていたので、ギギの独り言みたいなイメージなんです。なのでゆっくりした時間にふと考えること、みたいなニュアンスや温度感になっているのかなと。

――誰かに対してではなく、本当の内面みたいなところですかね。

SennaRin でも、内面なんですけど、日常生活の中にもハサウェイのことがちらついていて。『キルケーの魔女』の予告映像にも使われていましたけど、ギギがお風呂に浸かりながら「ハサウェイ・ノア、ハサウェイ・ノア」って名前をつぶやいているシーンがあって。ハサウェイのことは常に何かしら気になっている。そういうことが滲むような書き方をしていきました。

――なるほど。人物像の分析が好きなRinさんに聞いてみたいのですが、ギギはなぜハサウェイに惹かれていると思いますか?

SennaRin うーん、本当に惹かれているのかな?

――あっ、なるほど。惹かれていないという見方もありますね。

SennaRin ああ、いやいや。これは私の意見ですけど、ギギとハサウェイは、ギギの方が圧倒的にハサウェイに惹かれていると思います。で、ハサウェイの方は、ギギにクェス(・パラヤ)という初恋の失った人を投影していて。それで言うと、ギギって多分、屈折した人を好きになりそうじゃないですか。真っ直ぐに自分を好きになる人、自分のことを「好き」と言ってくれる男前な人、言ってしまえばケネス(・スレッグ)みたいな人ではなくて、「あ、この人は私のことを真っ直ぐには見ていない。誰かを通して私を見ているけど、でもこの人をものにできる私」みたいな。

――その考察、いいですね。ギギの本質を言い当てているような気がします。

SennaRin そういうちょっと歪んだ愛情表現というか、愛の形をしていそうな気がしていて……「CIRCE」の歌詞に“残像で濁した願いだって良い”と書いたのは、「別にクェスのことを重ねて見てもいいよ」っていうことなんです。ギギがクェスの存在に気付いているかは作品内で明言されていないので、私の想像ではあるんですけど。でもギギは勘が鋭いので、気付いているんじゃないかな。それとギギの中でもいろんな気持ちが戦っている気がします。「私のことを真っ直ぐ見て!奪い去ってほしい、好きと言ってほしい……でも、ちょっと突き放した態度でもいいよ」みたいな。そういう素直じゃない部分があるのかなって思いますね。

――確かにギギは、ハサウェイとケネスの2人の男を手玉に取るイメージが強いですが、案外気持ちが揺れる人という印象もあるので、その意味で「CIRCE」のどこかアンニュイな雰囲気はギギらしくもあるのかなと、今お話しを聞きながら感じました。

SennaRin 嬉しいです。「CIRCE」は完全にギギの曲なので、皆さんがこの曲を聴いてギギのことが浮かんだら、それが私の本望ですね。

――レコーディングではどんなイメージで歌ったのでしょうか。

SennaRin 澤野さんから、この曲はポップな洋楽のイメージで作ったと聞いていたので、お洒落に聴こえる歌い方にしよう、というのは念頭にあって。でも、声出し代わりに1発目でトライしたテイクが案外良くて、結局そのテイクが採用になりました。その時の声のちょっとしたかすれとか不安定な感じが、この曲に合っていたし、ニュアンスがよく出ていて、そこが良さになったんじゃないかなと思います。きっとギギがこの曲を歌うとしても、感情を乗せて激しく歌う感じにはならないと思うので。

川上洋平とのコラボレーションで表現したハサウェイとケリアの関係性

――もう1曲の川上さんとのデュエット曲「ENDROLL」に関しては、ハサウェイとケリアの回想シーンに合わせて制作した曲とのことですが、歌詞もハサウェイとケリアの両方の視点を意識して書いたのでしょうか。

SennaRin 自分の中では、1番はケリアからの目線、2番はハサウェイの目線というイメージでした。なので歌の構成としては男女逆になっていて、川上さんがケリアのことを歌っていて、私がハサウェイです。

――それは面白いですね。

SennaRin この曲では2人の想いのすれ違いを描きたかったので、1番はまだ未練があるケリアの気持ち、2番はケリアほど未練を持っていないハサウェイのイメージで、「もう仕方ないよね」みたいな感情の置き方にしています。だから、歌い方も1番より2番の方がちょっと冷たい。2人の温度差みたいなものを表現したくて、歌詞も歌もそうしました。

――サビの歌詞は、川上さんが歌う1番、Rinさんが歌う2番、2人で歌うラスサビの3回全てが同じ内容になっていますが、これにはどんな意図が?

SennaRin 2人が出会った頃の思い出や過ごした時間は同じもので、過去は常に変わらず一緒だから同じフレーズにしています。でも、それを思い出す時のハサウェイの気持ちとケリアの気持ちは違うし、思い出す回数も違う。ただ、お互いの考え方とか想いが変わっていくだけっていう。

――なるほど。ドラマチックでいいですね。

SennaRin (ドヤ顔で)嬉しいです。これから「ドラマチック」って使おう。ドラマチックな曲です(笑)。

――この曲、予備知識なしで聴いた時はハサウェイとギギのことを描いた曲なのかなと思っていたのですが、ハサウェイとケリアの回想シーンで流れる曲と知ってすごく合点がいったんですよね。なるほど、ハサウェイとケリア2人の曲だから「ENDROLL」なのかと。

SennaRin ありがとうございます!『キルケーの魔女』で2人はハッピーエンドにはならなかったので、「楽しいシーンはもうエンドロールでしか流れない」という意味を込めて付けました。サビの歌詞の“解いたって弱さが”のところは、ハサウェイが精神的に不安定だった時期を支えていたケリアの「私が支えてあげたのに!」みたいな部分をイメージして書いたので、ギギには無い要素かもしれないですね。

――レコーディングはどのように進めたのでしょうか。

SennaRin 私が先に録って、川上さんにはその音源を共有したうえで後日にレコーディングしていただきました。楽曲的にポツポツってセリフを言うようなメロディの楽曲だったので、私はそのイメージに合わせて歌唱したんですけど、完成版を聴いたら川上さんと重なっているところがすごくかっこよくなっていて、私も鳥肌が立ちました。

次ページ:“ギギの屈折した愛”と“ハサウェイの抱える闇”を投影した新曲

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