REPORT
2025.12.29
今年10月から11月にかけて全国4都市4公演が行われた“小倉 唯 LIVE TOUR 2025 「Love♡Ratory」”は、アーティスト・小倉 唯の今を象徴するようなツアーとなった。本ツアーと連動する形で制作されたミニアルバム『Labo-Ratory』のタイトルにも冠されている“ラボラトリー(=実験室・研究室)”と、彼女の音楽表現には欠かせない要素“Love(=愛)”を掛け合わせた造語が意味するのは、伝統と革新の融合。デビュー以来、十数年に渡り自分なりの“かわいい”を追求してきた彼女ならではのオーセンティックなスタイルと、さまざまな新しいチャレンジを詰め込んだ、ファンが求めているものをすべて叶える100パーセント小倉 唯の世界。そんな本ツアーより、ダブルアンコールも実現して約3時間に及んだ11月24日の神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール千秋楽公演のレポートをお届けする。
PHOTOGRAPHY BY YOSHIHITO KOBA
TEXT BY 北野 創
この日の会場となったパシフィコ横浜 国立大ホールは、小倉が初めてソロライブを開催した場所であり、近年も度々ライブを行っている、ファンにとって聖地と言える場所。客席には本ツアーのグッズである背中に唯印の入った黒いジャージ(唯ジャージ~小倉研究所~)や、昨年のバースデーイベントに合わせて制作された小倉の顔のバックプリント入り法被(I・LOVE・YUI♡法被)などを羽織ったファンが多く見受けられ、開演前から唯成分高めの空間が出来上がっている。
ステージに目を向けると、そこにはピンク色を基調とした2階建てのステージセットと本ツアーのライブロゴが。研究所をイメージしたであろう装飾を加えつつ、カラフルな色彩感が見た目だけでも楽しい。ちなみに本研究所“Love♡Ratory”では愛と平和とかわいいを研究しているという。そんななか、所長の小倉 唯と助手の一つ目モンスターが登場するオープニングムービーと共にライブがスタート。ステージ2Fに登場した小倉が本ツアーのオープニング曲に選んだのは、自身が作詞したおしゃふわラブリーなポップチューン「すうぃ~と♡ぱーてぃー」。衣装は同曲のリリックビデオのイラストを再現した、フリルや飾りをふんだんにあしらった甘々なコーデだ。小倉は冒頭の一節を歌うと「今日は一緒に素敵な研究していきましょー!」と会場に呼びかけ、ファンは大きな歓声とピンク色のペンライトを振って応える。
そして、こちらも小倉が作詞したシングル曲「I・LOVE・YOU!!」で“きみ”に会いたかった想いをストレートに届けると、ファンも盛大な“L・O・V・E”コールで大きな愛を伝達。楽曲後半でステージ1Fに降り立ちファンと物理的にも距離を縮めた小倉は、セリフパートの“大好き~!”という言葉を嬉しそうな表情と共に伝える。同じくファンの盛大なコールが定番となっている「トキメキWeekend!」では、メイドウェイトレス風の衣裳を着た4人のダンサーズが登場。ド派手なレーザー演出とダンスも合わさって、小倉 唯と出会えた週末のトキメキがさらに増大していく。この曲でも「ツアー千秋楽に駆けつけてくれたみんなのことが大好き~!」とセリフをアレンジして届け、会場は大歓声とひと際大きなコールで彼女の想いに応答。本楽曲の歌詞にある“推せるときに全力で推しとかなきゃ 人生って分からないから!”というフレーズが、まさに至言と感じられる瞬間だった。
その後のMCでは、研究所をイメージした本ツアーのコンセプトと「衣装もめくるめく変化していく実験的なライブ」になることを説明しつつ、巻き髪ツインテールで髪にもシールなどを付けてデコレーションした今の衣裳をたっぷりとアピール。「この後も怒涛の展開なので、皆さんついてこれますかー!」と呼びかけて会場のボルテージを上げると、ステージを左右に行き交いながら手を振ったりハートマークでファンサして溢れる想いを伝えた「ココロテレパシー」、ダンサーとのシンクロダンスでも魅せたエレクトロニックなアップナンバー「Caramel Ribbon…」と続け、多彩な表情を見せていく。かわいさもかっこよさも完璧に表現できる存在、それがアーティスト・小倉 唯の今の姿だ。
ライブの転換タイムには、ゆい博士が助手と共にさまざまな実験を行う幕間映像が上映。ウソ発見器を使ってプリンを食べた犯人を捜すも結局、勘で犯人を当ててみせたり、黒ひげ危機一髪をかわいくキャッチする反射実験では、ゲームを始めて2回目でいきなり黒ひげが飛び出したためキャッチミスするも「博士は超ラッキーということでOK」にしてしまうなど、唯我独尊ぶりかわいさに転換してしまう映像で、ファンに愛と平和と癒しを与えていた。
そんな映像の中で突然サイレンが鳴り響き、緊急事態が発生。「ぴょんぴょん飛び跳ねる影が増殖中」とアナウンスされると、ライブは次のブロックへ。キョンシー風の衣裳を着た小倉がメインステージに現れて、最新ミニアルバム『Labo-Ratory』より、ハロウィンをイメージしてキョンシーをモチーフに制作された本人作詞曲「きょんきょん♡らぶぽーしょん」を披露。黒いキョンシーダンサーを従えつつ、“跳んで 跳んで”などのキョンシー要素を取り入れた中毒性の高いフレーズとヘッドセットマイクを用いた動き多めのパフォーマンスで、自らの虜を増やしていく。そこから、“病みかわ”な表現を追求した「Empty//Princess.」へ。アッパーなビートと濃いピンクや紫の照明演出を含め、ただ甘いだけではない愛情で絡めとるようなアプローチによってファンを魅了した。
そして小倉ナレーションによるダンサー4名それぞれのソロタイムを挿み、今度は白をベースにしたナース風の衣裳に着替えた小倉が「みんなお待たせ―!」と登場して、『Labo-Ratory』収録曲「治癒治癒ちゅっ♡」を歌唱。どこか毒っ気のある“病みかわ”曲から、愛らしさに全振りしたハイテンションな“癒し”ナンバーへの切り返しで、ファンの心を奪っていく。さまざまなスタイルの“かわいい”を追求する小倉 唯の研究成果が大きく花開いた一幕と言えるだろう。
続く「ドキドキラビリンス」は、これまでよりもビートとユーロダンス感を強めたニューアレンジで披露。そこから「エンジョイ!」「PRISM BEAT」というエレクトロポップ系の2曲をメドレーで届けてスタイリッシュ&ダンサブルな一面を見せると、ここで本ツアー最大のサプライズ曲と言うべき小倉 唯史上初のメタルを取り入れた新曲「True Path」へ。ツアーグッズの黒ジャージを羽織った小倉は、冒頭の哀愁漂うフレーズをアカペラで歌うと、その後は怒涛のハイブリッドメタルサウンドに飛び込み、時に激しく、時に儚く、その世界観を表現していく。ラテントラップ風に展開する2番ではクマのぬいぐるみを振り回しながらラップを披露し、サビではそれを放り捨ててかつてなくクールな表情で迫る。間奏では「おいお前ら、声出せるのか!」「お前らの本気見せてみろよ!」と檄を飛ばし、背中を見せてバックプリントの唯マークをかっこよくアピール。ラストは激情のメタルサウンドに合わせて「叫べー!」と語尾が上がっていくシャウトで客席を熱狂させ、クマのぬいぐるみを拾い上げて高々と掲げて楽曲を締め括った。“ゆいメタル”という新たなジャンルが生まれた瞬間だ。

SHARE