――高校在学時の2021年9月にTikTokで動画の投稿を始め、そこから1ヵ月でフォロワー10万人を達成。2023年6月に配信シングル「永眠のすゝめ」でデビューしました。デビュー前から現在に至るまで、ご自身の中で転機になった出来事はありますか?
なるみや 今は恥ずかしくて非公開にしているんですけど、初めてTikTokに投稿したのが、曲は曲でもネタ投稿というか、面白おかしく簡単に作曲できる方法の解説動画みたいなものだったんです。ちゃんと歌うのもその時が初めてだったので、打ち込みが上手いわけでも歌が上手なわけでもないのに、こんなにたくさんの人が聴いてくれるんだ、というのがあって。それまでは「音楽をする人はみんな上手じゃないといけない」という意識があったんですけど、未熟な自分を出した時にたくさん反応が返ってきたことで、音楽に対して寛容になれたというか、自分の未完成なところも含めてちゃんと聴いてくれる人たちがいるとわかったので、あまり恐れずに曲を作ったり出したりできるようになりました。
――それによって作る楽曲も変わっていきましたか?
なるみや 最初は明るい曲や強い曲を書いていたんですけど、だんだん歌詞の内容も暗くなっていって……今ではもう「暗い」としか言えなくなっちゃいましたけど(笑)。普段思っていることも、歌詞に載せてなら言っちゃっても大丈夫なんだな、と思えるようになりました。
――今「暗い」とおっしゃいましたが、それはご自身の本質とどう繋がっていると思いますか?
なるみや 音楽をやっている人たちは、自分の美しいところや見てほしいところを切り取って世に出しているんだろうな、という偏見が自分の中にあって。人の前で明るく話すとか着飾ることは簡単だけど、逆に弱いところや突かれたくないところを出していくのは難しい。それができないことで苦しんでいる人たちは多分いっぱいいるし、私自身もそうだったので、その自分なりの発散の仕方が、曲にして出していくことかな、という感覚です。
――なるみやさんにとっての音楽は、日常的には表に出せない感情を表現する場所になっているわけですね。
なるみや 多分、私が歌詞で書いている内容を、例えばSNSとかで毎日発信していたとしたら、周りからしたら見ていられないと思うんです(笑)。そういうのを全部曲にして出すようにしています。私は日常でも、作ってる料理をちょっとこぼしただけで「ああ……」っていう気持ちになっちゃうので。
――ライブ配信で、ご自身の活動テーマとして「救われない不憫を救う音楽を作る」とおっしゃっていましたが、そういう気持ちを抱える人に向けて音楽を届けたい気持ちがある?
なるみや そうですね。最初はそんなつもりはなかったんですけど、リスナーさんが「思ってたことを言ってくれた」とか「言葉にできなかった感情が曲になっていて救われた」とファンレターで書いてくださったりすると、私も「自分と同じような気持ちの人がいるんだ」と知ることができて。同じ境遇を聴いたり好んだりする人って絶対どこか似た感性があるはずなので、今はそういう人と関わりを持てることが純粋に嬉しいです。
――他に音楽表現を行うにあたって大切にしていること、信念のようなものはありますか?
なるみや 曲を書く時に考えているのは、普通に人が喋っていて出てこないような難しい熟語や片仮名言葉は使わない、ということです。感情をそのまま歌いたいので、リアルに苦しんでいるその瞬間を書けるように意識しています。韻を踏みたいメロディが出てきた時に、辞書で韻を踏めそうな言葉を調べるんですけど、せっかくいい韻だったとしても「今こんなに辛い時にこんな言葉は出てこないだろうな」と思ったら使うのを止めたりすることもあって。気持ちを乗せられる言葉というのを一番優先しています。
――なるみやさんは甘くて繊細な歌声も特徴的で個性になっていますが、ご自身の歌声については、客観的にどう評価されていますか?
なるみや 元々DTMを先に始めて、後から曲の形にするために自分で歌い始めたので、私は自分の歌声を“楽器”だと捉えていて。その意味では扱いにくい楽器だなとは思います(笑)。ティンパニをメインにたくさん曲を作れって言われたら難しいじゃないですか。ギターとかピアノみたいな声だったら良かったなと思うんですけど、ちょっと特殊すぎる楽器だなと。
――わかりやすい例えですね(笑)。ただ、なるみやさんの歌声は楽曲ごとに表現の幅が豊かな印象があります。
なるみや ありがとうございます。上手く歌おうとするといつもの真っ正面のティンパニの音になっちゃうんですけど、レコーディングは時間をかけながら歌を録ることができるので、色んな歌い方にチャレンジしていて。最新曲の「ユキくんあのね」という曲では、ずっと幼い感じのかわいい声で歌い続けているんですけど、最後の方にちょっと乱暴な歌い方になるシーンを作ってみたりしています。逆にこの声のおかげで曲の幅もちょっと広がったのかなって思ったりもします。
――実際、その特徴的な歌声を求められてか、他のアーティストの作品にボーカルで参加することも多いですよね。MAISONdes「ポップコーン!! feat. ハローキティ, なるみや, 原口沙輔」やTAKU INOUEさんの「ピクセル」などで歌っていて。
なるみや 毎回すごくありがたいですし楽しみなんですけど、やっぱり自分のボーカルとしての自己評価は低いので「本当に大丈夫なのかな」って、プレッシャーもすごく感じていて(苦笑)。でも、曲を作る人が変わるだけで声の印象もこうやって変えることができるんだ、というのは良い発見になりました。どちらの曲も自分じゃないみたいというか、自分が歌っているとあんまり思えないくらい劇的に良い曲だったので。
――「ポップコーン!!」でご一緒した原口沙輔さんの楽曲で言うと、「人マニア」を一人多重アカペラで歌ってみた動画もすごかったです。
なるみや 元々X(旧Twitter)でサビ部分だけ自分の声でやってみた投稿をしていたんですけど、それを結構面白がってもらえたのでやってみました。私の声が苦手な人はもう最悪だと思うんですけど(笑)。結構大変で、ボイパ(ボイスパーカッション)のパートも全部自分で録って、編集して……丸5日ぐらいずっと作業して作りました。沙輔さんのあの曲だからこそ、全部自分の声でフルでやっても面白く終われたのかなと思います。実際楽しかったですね。
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