アニメ音楽に特化した媒体「リスアニ!」と大阪のラジオ局・FM802のラジオ番組「802 Palette(ハチパレ)」による新たな音楽メディア「リスパレ!」が、今聴いてほしいアーティストを独自の視点で選出のうえプッシュするレコメンド企画「リスパレ!チョイス」。その第4弾選出アーティストより、今回はボカロP/シンガーソングライターとして活躍するseizaをピックアップ!
2022年1月にボカロPデビューし、同年4月に発表した「プラネテス」がボカロの祭典イベント“ボカコレ”などを通じて話題となり、ニコニコ動画で殿堂入り。SouやDAZBEEといった人気の歌い手がカバーして一躍注目のボカロPとなるなか、2023年からはセルフカバーにて自身の歌唱活動を開始。2024年10月に「星間漂流」でメジャーデビューし、2025年には春クールのTVアニメ『最強の王様、二度目の人生は何をする?』のEDテーマ「真昼の月」で初のアニメタイアップも経験した。そんな彼のバックボーンと創作の源泉に迫るインタビューをお届けする。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――まずは「リスパレ!チョイス」に選ばれた感想をお聞かせください。
seiza やっぱり活動を通して、多くの人に自分の音楽を届けたい気持ちがあるので、自分の活動だけでは手が届かなかった、交わらなかったであろう人の耳にも届けられるかもしれないと思うとワクワクします。特にFM802さんは、「802 Palette」の番組内で楽曲をかけていただいたり、何回か出演させていただいたりと、デビューからすごく良くしてくださっていたので、今回こういった機会をいただけて、本当に嬉しく思います。
――seizaさんは、ボカロPとシンガーソングライターの2つの顔をお持ちですが、そもそもどんなきっかけで音楽活動を始めたのでしょうか。
seiza 僕の音楽体験の始まりとしては、中学生の頃に友達の勧めでBUMP OF CHICKENを好きになったことです。そこから聴いていくうちに、見様見真似で音楽を始めたのが最初ですね。まずはギターのコピーをするところから始めて。それまではずっとサッカー少年だったので、ギターを手にするのもそれが初めてでした。そこから中学校を卒業する頃に、バンプを勧めてくれた友達と一緒にコピーバンドを組んだのが、音楽を自分で表現するという意味での始まりでした。
――当時の担当はギターボーカルだったのですか?
seiza そうでしたね。僕自身は正直ドラムをやってみたかったんですが、手軽に始められるのがギターだったというのもあって。それでギターをやっていたら「ちょっと歌ってみてよ」という流れになり、なんだかんだでギターボーカルをやるようになりました。元々歌が好きだとか得意だとか思っていたタイプではなかったので、成り行きというか、遊びの延長線上みたいな始まりだったのは覚えています。それから自分でも曲を作ってバンド活動をするようになりました。
――ちなみにBUMP OF CHICKENのどんなところに惹かれたのでしょうか。
seiza 物語的な歌詞だったり、藤原(基央)さんの人生観ですね。メロディももちろんですが、当時の思春期の自分には歌詞がすごくセンセーショナルに映って、人格が形成されていく上で、すごく影響を受けたと思います。他人との関わり方というか、対他人に対する自分のあり方だとか、個人的な感覚や感性はすごく影響されていますね。
――その影響を受けた対人関係や感性の部分で、具体的にご自身の考えとして言葉にできるものはありますか?
seiza 人間って、いくら血の繋がりや環境的な繋がりがあったとしても、どこまで行っても他の人とは他人じゃないですか。相手の気持ちや自分の気持ちを100%理解してもらうことも、理解することもなかなかできない。でも、それを踏まえた上で「わかり合おうとすることはできるよね」というか。人それぞれ抱えている大なり小なりの悩みや痛みがあって、そういうものを表にはさらけ出さずに生きているけど、一人になって立ち返るとそういうものと向き合わなくてはいけないし、ただ生活は続いていく。あくまでも個人として生きていくしかないけれど、そういう人間たちが集まって世界を形成していると考えると、少し人に優しくなれるよね、みたいな感覚は、自分の中に脈々とあるかなと思います。「一人だけど一人じゃないし、一人じゃないけど一人」みたいな。
――seizaさんの楽曲からも、何かが正しいわけでも間違っているわけでもないという歌詞の世界観を含めて深みを感じるので、今のお話が表現の核になっている部分なのかなと思いました。当時、バンプ以外にもバンド音楽には興味を持たれていたんですか?
seiza バンプきっかけで、いわゆる“ロキノン系”と言われるような、フェスに出ているようなアーティストの楽曲をひたすら聴き漁る青春時代でした。BUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、Galileo Galileiあたりが僕のルーツとしてあるのかなと思います。今でもずっとバンド音楽は好きで聴き続けていますね。
――seizaさんの音楽からはバンドのルーツも感じますが、アレンジに目を向けるとそれだけではない広がりを感じます。そのあたりはどういう影響源からきているのでしょうか?
seiza 自分の活動でもそうですけど、やっぱりボーカロイドですね。中学生時代に、当時はもっとアングラな世界でしたけど「ニコニコ動画っていうのがあるよ」と友達に教えてもらって、そこからボカロ文化を知って聴いていました。ネットミュージックとBUMP OF CHICKENの親和性みたいな部分もあったと思いますし、もちろんバンドサウンドも好きですが、J-POPからアイドルソングまで、色んな楽曲のアプローチを幅広く聴いてきたので、自分の楽曲のアレンジや編曲を誰かにお願いする時も、大衆にちゃんと届くようなアレンジを意識的にしています。
――J-POP的な部分で言うと、好きなアーティストはいらっしゃいますか?
seiza 家の中で両親がずっと音楽を聴いていたので、あまり特定の誰かという感じではないのですが、嵐だったり、木村カエラさん、スキマスイッチなどのJ-POPが流れていました。その中に父が好きなビートルズが入ってきたりして、家の中でも車の中でもそういう音楽を浴びながら育ってきたところがあります。
――なるほど、かなり雑食に色々な音楽を摂取していた青春時代だったんですね。その一方で、ボカロ音楽の中でのルーツや、のめり込むきっかけになった楽曲はありますか?
seiza 当時はハチ(米津玄師)さんがきっかけで入りました。数年経ってからですが、僕が初音ミクの楽曲で最初にリリースした「シーラカンス」(2022年)のアレンジをお願いした、歩く人さんにもすごく惹かれて、そこからさらにのめり込んでいった感じです。元々はボカロの中でもバンドサウンドっぽい楽曲を好んで聴いていたのですが、歩く人さんのエレクトロミュージックというか、ボタニカ的な楽曲の心地良さに惹かれていきました。
――自分でもボカロ音楽を制作・発表するようになったきっかけは?
seiza バンドをやっていた時も、ツアーを回ったりしていたのですが、結局そのバンドがなくなってしまって。そのバンドでは自分で作詞・作曲して、歌って、編曲もしていたので、うまくいかなかったことに関して責任の一端を感じるというか、自責の念があったんです。でも、バンドを辞めたけど音楽をやりたい気持ちはあったし、自分の声じゃなくても、残っている楽曲を自分じゃない誰かに歌わせたらどうなるんだろう?という興味が沸いて。それで自分の作った音楽を発表する場として、初音ミクに歌ってもらったのがボーカロイドを始めたきっかけです。
――「seiza」という名前はそのタイミングで使い始めたんですか?
seiza 元々バンドをやっていた時に、個人で別の名義を作ろうと思って用意していた名前でした。ボカロをやるにあたって、バンド活動の時の名前とは区別しつつ、今までやってきた音楽といきなり切り離すのも違うかなと思って。表現したいことは変わらないので、そういった繋がりを持たせるという意味でも、その当時に考えたseizaという名前を使い始めました。
――Xアカウントのプロフィール欄に「猫と宇宙が好き」とありますが、seizaという名前の由来はやはり宇宙が好きだからでしょうか?
seiza 間違いなく宇宙が好きだったというのはあります。僕が宇宙にロマンを感じるようになったきっかけとして、北海道の祖父母の家の庭先で見ていた星空や、「あの星とあの星を繋ぐと星座になるんだよ」と教わった思い出が原風景としてあって。それ以降、科学館やプラネタリウム、星空を眺める時間が好きになって、宇宙に関する文献を読んだり、ニュースを追ったりしていたんです。その中で「seiza(星座)」というのは、基本的には2つ以上の星を繋いで呼ぶことが多いので、発信する僕と、聴いてくれる人が一人いればseizaになるし、その輪がどんどん大きくなればなるほど大きなseizaになる。距離がどれだけ離れていても、結んでしまえばseizaになる。そういうロマンチックな感覚もありつつ、これ以上にいい名前は思いつかないなと思って使い始めたのが、この名前でした。
――その由来を聞くと、さらに素敵な名前ですね。その後、2023年からご自身で歌う活動も始められて、2024年10月に「星間漂流」でシンガーソングライターとしてメジャーデビューしました。これまでの活動を振り返って、活動の転機になった出来事はありましたか?
seiza 大きい転機といえば、やはり自分の声でまた歌い始めたことだと思います。ボーカロイドの楽曲のリスナーの方から「あなたの声でも聴いてみたい」というコメントをいただいたり、かつてのバンドの頃のファンの方からのコメントを見かけたりして、すごく温かさを感じて。それに背中を押されて、また歌い始めました。
――ボカロPを始めてから実際歌うまでに、1年半ほどの時間があったわけですが、その間、ご自身で歌うことに対してどのような思いがあったのでしょうか?
seiza 元々バンドをやっていた頃、よく遊びで「ライブと音源、二度とできなくなるとしたらどっちを取りますか?」みたいな質問をされた時に、僕はいつも「音源」の方を選ぶくらい、作品志向の人間だったんです。でも、実際にバンドがなくなってライブができなくなり、人と対面することがなくなると、すごく寂しさがあったんです。その孤独をどう埋めようかというところで、ひたすら初音ミクに歌わせてネットでの広がりに委ねていた部分があって、インターネットでも一人で向き合っている人たちとの繋がりを拠り所にしていたんです。初音ミクはすごく上手に歌ってくれるし、自分にはできないことも歌える。なので、このまま初音ミクで発表し続けていけばいいかなと思っていたなかで、「あなたの声で聴きたい」というコメントを見た時に、自分の中で蓋をしていた思いに気づかされたんです。やっぱり自分で書いた楽曲、自分の気持ちを込めた楽曲を、自分の声でもちゃんと届けられたら嬉しい。その気持ちが増していって、また歌い始めてみようと思いました。初音ミクが僕の名前を広げてくれたことにはすごく感謝しているので、これからもできる限り初音ミクのための楽曲も書き続けていきたいですが、自分の声で届ける表現も並行して続けていけたらなと思っています。
――今年1月には、活動3周年に合わせてボカロ曲「ペイルブルードット」を発表されました。初音ミクに歌ってもらう曲とご自身で歌う曲を作る時で、作り方やマインドの違いはありますか?
seiza 根本的に表現したいものは変わらないので、源流は同じなんですが、楽曲を作っていくうちに「この曲は僕より初音ミクの声の方が合うかもな」といった輪郭を帯びてくることはあります。僕が楽曲を作る時は、ギターの弾き語りから始めるんですよ。生まれ落ちた瞬間は自分のアコースティックギターと自分の声が始まりなので、そこからアレンジしていく過程で、初音ミクの方が合いそうか、自分の声の方が合いそうかが見えてくる。ただ、音作りに関しては、僕がやっているのはJ-POP、初音ミクはボーカロイド的な文化というところで、音像や音色を分けてアレンジしています。
――ボカロPはDTMで楽曲制作する方が多い中で、ギターの弾き語りから曲を作るというのは、seizaさんの作家性や個性に繋がっているのかもしれないですね。
seiza 確かに、言われてみたらそうかもしれないです。僕の場合、ボーカロイドにせよ僕の声にせよ、人が歌っているところを想像できるメロディだとか、J-POPらしさ、歌謡曲や童謡のように耳馴染みが良くて覚えられるメロディを意識して作っているので、結果、弾き語りでも歌えるメロディになってくるんですよね。その意味でメロディアスなところは意識しています。
――プラスしてseizaさんの歌声には清涼感や透明感があると感じるのですが、意識されていることはありますか?
seiza 自分の声でレコーディングする時は、歌詞の登場人物の心情に寄り添って、オーソドックスなアプローチをしています。これに関しては、この声に産んでくれた両親に感謝ですね(笑)。声は天性の楽器だと思っているので、運が良かったというか、感謝の気持ちです。
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