INTERVIEW
2025.07.25
ワールドワイドで活躍するBAND-MAIDのアニソンへの進撃が凄まじい。それまでも彼女らのハードなサウンドをアニメに乗せてきたが2025年はMAPPAオリジナルアニメ『全修。』 、TVアニメ『ロックは淑女の嗜みでして』と立て続けに主題歌を担当し、夏のクールでもTVアニメ『桃源暗鬼』エンディング主題歌として「What is justice?」をリリースした。BAND-MAIDの王道でありながら進化を遂げたこの楽曲について、小鳩ミク(Vo/Gt)、SAIKI(Vo)、KANAMI(Gt)、AKANE(Dr)、MISA(Ba)のフルメンバーに揃っていただき、楽曲やアレンジ、歌唱について聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
――今回、リスアニ!として初めてインタビューさせていただくにあたり、1つバイオグラフィ的な質問をさせてください。皆さんは現在のようにアニメの主題歌を担当する以前にも、2016年のアニメコンベンション「Sakura-Con」で初の海外ライブを行われていますが、ご自身の音楽性とアニソンとの親和性についてはどのように捉えていますか?
小鳩ミク 私たちがアニソンを作る前から、海外の方が「アニソンをやってほしい」とか、「このアニメにはBAND-MAIDが合うと思う」という話をしてくれていたので、(メンバー随一のアニメファンである)AKANEを筆頭に、私たちも「いつかアニメの主題歌を担当できたらいいね」とずっと言ったりしてましたっぽ。なので、こうして何作もアニメに携わらせていただいているのがすごくありがたいですし、そういう意味でも1つ、夢というか目標を叶えているところは大きいですっぽね。
SAIKI 今年、「アニソンといえばBAND-MAIDですよね」と言われることが増えて「え!? そうなんだ」と(笑)。アニメ業界の方ではない方からも言われて嬉しかったですね。
小鳩 私たちのことをアニソンで知りましたという方も多くなってきているので、BAND-MAIDを知ってもらうきっかけになれているというのは嬉しいですっぽね。
KANAMI 嬉しいです。楽曲制作はアニメに合わせて、原作があるものに関しては原作を読ませていただいたり、ないものでも台本を読ませていただいて作り始めるので、新たなBAND-MAIDの一面を毎回引き出していただいていて、すごく刺激になっています。
――2025年は「Zen」(MAPPAオリジナルアニメ『全修。』オープニング・テーマ)、「Ready to Rock」(TVアニメ『ロックは淑女の嗜みでして』オープニングテーマ)、そして、今回「What is justice?」(TVアニメ『桃源暗鬼』エンディング主題歌)と、3クール連続でTVアニメ主題歌を担当されています。
小鳩 ありがたいことに、偶然が重なったんですっぽ。
SAIKI この3クール連続ということにも、いまだに信じられない思いでいます。最初で最後だろうと言いながら、今年は初めからずっと気合が入りっぱなしの半年でした。いずれも私たちのことを広めてくれるきっかけにもなっている作品です。『桃源暗鬼』も大きなプロジェクトなので嬉しいですし、『ロックは淑女の嗜みでして』(以下、『ロックレディ』)ではこんなにバンドとして演奏の面にフィーチャーしていただけて、BAND-MAIDの常識を皆さんに伝えられているのが嬉しいです。
――『ロックレディ』では主題歌だけでなく、作中の主人公バンドが演奏する楽曲の演奏とライブシーンのモーションキャプチャーも担当されました。
AKANE 実在するインストバンドさんの曲を演奏させていただくということで、嬉しさとともに緊張もしました。楽曲自体も難しく、チャレンジする中で成長させてもらった実感がありました。
MISA 普段BAND-MAIDでは5弦ベースをピックで弾いているので、(『ロックレディ』の白矢環として)4弦を指弾きするのは久々で、指の皮がカッチカチになりました(笑)。楽曲も今までになく長尺で7~8分もあり、普段のプレイではないことなので筋肉痛になりました(笑)。
SAIKI 私はキーボードの院瀬見ティナちゃんを担当させてもらいまして。これまで弾き語りでしかピアノやキーボードに触れていなかったのですが、ちょうどティナちゃんがバンド初心者だったので、気負いすぎずに頑張れました。普段は自分の声でみんなと「交わっている」ので、楽器だけでみんなと一緒に何かをするというのは楽しかったです。
――では、最新作『桃源暗鬼』ではどのようにアプローチをされていったかを伺えればと思います。まずは原作を読まれた皆さんの率直な感想をいただければ。
MISA 私は岡山県出身なので、桃太郎をモチーフにしているところにまず反応しました(笑)。その後、読み始めるといきなり主人公にとっての厳しい展開に胸が苦しくなりました。
AKANE 桃太郎と鬼という、誰もが知っているモチーフなので世界に入っていきやすいですし、物語が理解しやすくてテンポよく進むので読みやすい作品だなと思いました。アニメになってどんな動きや音楽が付くのかというところや、豪華なキャストさんにも期待していました。まさか校長役に緒方恵美さんが……!
SAIKI PVが公開されたときにAKANEと一緒に観たんですけど、まーうるさい(笑)。「キター!」って叫んでいるからセリフが聞こえやしない(笑)。
KANAMI 私は楽曲制作のために読むという前提で拝見したのですが、もう「止まらない止まらない」という感じで「誰を推しにしよう」みたいな(笑)。今は無陀野無人さんが推しになっているんですけど、美しい、かわいい、かっこいいキャラクターが勢ぞろいだし、戦うシーンがすごく多くて、それを楽曲に取り入れたいなと思って作らせていただきました。
――では「What is justice?」の楽曲制作の様子について伺っていきたいと思います。ただいまおっしゃいました戦いのシーンはどのように楽曲に取り入れていかれたのでしょうか?
KANAMI リフでゴリゴリに押し切りたいなって思ったので、結構ギターのリフが最初にぐっとくるような感じにさせていただきました。でもサビは「ボーカルのSAIKIに限界突破してほしい」という気持ちも込めて、こういうメロディーにさせていただきました。結果的にキーがすごく高くなってしまったので、大変な思いをさせてしまいましたが、お陰で完成形は本当に素晴らしく、思っていた以上のものを歌い上げてくれましたね。私自身もこの楽曲を作ることができたことによって、またバンドの新たな一面を広げることができたと思います。
――1番のAメロからゴリゴリのハードなサウンドでしたが、構成はどのように考えましたか?
KANAMI 最初はリフで押し切ったので、その後は抜くところを抜こう、みたいな感じですね。これは普段のBAND-MAIDの作業と変わらないのですが、曲のイメージが固まったら作曲モードに入ってパソコンに向かって作り上げていきます。大まかにフル尺を作って、早め早めにベースとドラムにパスしていきます。やっぱり2人のアレンジがないとBAND-MAIDの楽曲は仕上がらないので。
――ではMISAさんのベースアレンジの様子をお聞かせください。
MISA まず楽曲全体をよく聴いて、「ここは動かないほうがいいだろうな」とか「ここはメロディアスがいいだろうな」といったことを考えます。今回、サビはメロディーが引き立つ感じにした方がかっこいいのではないかなと思って作りました。あとは、アニメの映像と一緒に流れる様子を想像して作っていきます。
――AKANEさんのドラムはいかがでしょうか?
AKANE 私はフレーズをがっつりアレンジするというより、音の聴こえ方を重視して考えることが多くて。「ここの終わり方だったらバスドラで終わったほうがいい」くらいのバランスですかね。KANAMIが打ち込んだものを実際にドラムで叩いてみて、音のまとまりなどを調整しながらアレンジしていきます。レコーディングのときはボーカルのメロディーのことを考えながら叩いていることが多いです。この曲はAメロ、Bメロの盛り上げ方が分かりやすくて、シンプルで耳馴染みがいいのですが、意外と細かいことをしています。サビとかイントロも乗れるビートを繰り返すんですけど、途中に1拍休符が入ったかのようなフックがあるものを入れたりして、ビートの中で遊び心も忘れずに、みんなの耳に届くようなドラミングとどっしりさを意識しています。
KANAMI で、アレンジのデータを送ってもらって、チェックしてフィードバックを返します。
MISA イントロとかシンプルに聴こえて意外と難しいので、そこの刻みがきれいな波形になるまで結構苦戦しましたね。
KANAMI 波形はぴったりなんだけど、ちょっとドラムが遅く聴こえるから、ベースも遅くしてほしいなど、細かいとこまでお願いしました。Aメロのドラムとベースの2人だけになる部分ではよりベースの音が聴こえるので、細かくディレクションさせていただきました。
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