“迷い星のうた”から“目印のうた”へ――MyGO!!!!!、3年の進化を刻んだライブツアー“ZEPP TOUR 2025「心のはしを辿って」”東京公演レポート

ハードコアな新曲「往欄印」がかたどるバンドの現在地

愛音の「夏っぽい曲が続いてめちゃくちゃ楽しかったね」という言葉通り、ここまでアッパーな楽曲を多めに畳みかけてきたMyGO!!!!!だが、後半戦はより深く心に迫る楽曲が続く。その先陣を切ったのが「潜在表明」。重々しく唸るギターとベース、淡々と時を刻んでいくドラム、切羽詰まった表情でポエトリーリーディングを投げかけるボーカル。楽曲が進むにしたがって、潜在していた感情をより強く発露させていく燈の絶叫のような声が、観る者を圧倒する。続く「処救生」は会場がライブハウスだったからこそ、よりアンダーグラウンドな空気感に溢れていた印象で、濃密が故に息苦しさを覚えるほど。だが、MyGO!!!!!が代わりに“スーハ―”と呼吸してくれるような安心感もある。まさに“救いの歌”だ。

一拍置いて、燈以外のメンバーのコーラスも印象的な「名無声」へ。オーディエンスも一緒になって歌えるパートが多く、名も無き迷い人たちが寄り合い、連帯することで強さを見つけようとする部分が、この曲にはある。締めの“Oh Oh Oh”と会場中が高らかと歌い上げる場面で、燈が耳に手を当て、その声をしっかりと受け止めていたのが心に残った。そして「いよいよここからは終盤戦です」（愛音）と宣言すると、声出しで会場の士気をさらに高めて、ライブ初披露となる「掌心正銘」をパフォーマンス。「大切なもの、守りたいと思うほどに、わからなくなることもあって。それでも、伝えたい言葉があって。この手の中にあるもの。自分の心は知っている価値。心に記して忘れない。」。燈が楽曲に入る前に紡いだ言葉たちが、歌詞と共鳴し合って、我々に大切なことを教えてくれる。ソリッドなギターサウンドとタフなリズム、サビの駆け上がっていくようなメロディ。色んな意味で聴き手の背中を押してくれる、MyGO!!!!!らしいステージだった。

そんな「掌心正銘」の後奏からそのまま繋げるように、楽奈が威勢よくギターリフを掻き鳴らして「孤壊牢」に突入。この曲がライブで初披露されたのは昨年12月の東京・日比谷公園大音楽堂公演“MyGO!!!!! 7th LIVE「こたえなんてなくても」”なので、まだそれほどライブで馴染みがあるわけではないが、パワフル＆疾走感のある曲調も相まって、すでに人気曲となっている。サビで“Hey! Hey!”と応酬するパートも完璧で、愛音の煽りに合わせてフロアからは大きな声が飛ぶ。そしてライブ本編の最後の楽曲へ。「すべての音が鳴り止んで、やがて僕らは日常に戻る」（立希）、「それぞれをただ生きる時にも、鳴り止まない残響になりたい」（そよ）、「どこにいたって、思い出してほしくて」（楽奈）、「どんな街にだって、連れて行ってほしくて」（愛音）、「僕らの音を、僕らの声を、離さないでほしいんだ」（燈）と順番に言葉を紡ぐと、燈が「往欄印（おうらい）」と曲名を告げて完全未公開の新曲を放つ。疾走する2ビートがハードコア直系の激情を振りまくなか、燈のポエトリー調の歌が交差してメッセージを投げかけていく。それは“僕”から“君”に呼びかける“目印のうた”。かつての内省ばかりだった迷子はここにはいない。今の彼女たちは、聴衆の不安を掻き消し、力強く牽引する力を持つ、5人でひとつのMyGO!!!!!なのだ。互いのエネルギーを高め合うような演奏と歌で会場中から“君の声”を引き出したバンドは、いつまでも鳴り止まない音をオーディエンスの脳裏に刻み込んで、ライブを終えた。

会場からの盛大な“MyGO!!!!!”コールを受けて、お揃いの白いツアーTシャツに着替えてステージに舞い戻ってきた5人は、切れ味鋭いギターサウンドが印象的な「聿日箋秋」でアンコールをスタート。真っ直ぐに突き進むような曲調も相まって、言葉と音がダイレクトに飛び込んでくる。お互いの道を歩む、すべての人々に届けるMyGO!!!!!流のエールソングだ。

その後、キャスト陣が改めて挨拶を行い、先ほど披露した新曲「往欄印」が表題曲となる8月6日リリースの7th Singleや、2025年4月にKアリーナ横浜で開催された“MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」”のBlu-rayの詳細などを告知すると、再び楽器を手にしてラストナンバーへ。

彼女たちがこの日のフィナーレに選んだ楽曲は、バンドの原点でもある最初のオリジナル曲「迷星叫」。会場の照明が明るくなって、満天の星空のように輝くなか、5人は心から楽しそうに音を奏で合う。2番ではそよが楽奈の元まで歩み寄り、代わりに燈がそよのポジションに移動して歌う場面も。1st LIVEの頃から何度となく観てきた「迷星叫」だが、こんなにも眩しくて美しい楽曲だとは、気付かなかった。かつて星を求めて彷徨っていた5人の迷子たちは、今や夜空に輝く一番星として、多くの迷える人々の道しるべになっている。“迷い星のうた”から“目印のうた”へ。この3年での成長をしっかりと示して、ツアー初日を最高の仕上がりで締め括った。

MyGO!!!!! ZEPP TOUR 2025「心のはしを辿って」
【東京公演】セットリスト

M1. 端程山
M2. 歌いましょう鳴らしましょう
M3. 影色舞
M4. 輪符雨
M5. 砂寸奏
M6. 猛独が襲う
M7. swim
M8. 壱雫空
M9. 潜在表明
M10. 処救生
M11. 名無声
M12. 掌心正銘
M13. 孤壊牢
M14. 往欄印
EN1. 聿日箋秋
EN2. 迷星叫