リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2025.06.19

あの時の記憶が鮮明に蘇る――アニメ10周年を記念し開催された“東京喰種FES. –PLAY BACK-”を振り返る

あの時の記憶が鮮明に蘇る――アニメ10周年を記念し開催された“東京喰種FES. –PLAY BACK-”を振り返る

TVアニメ放送10周年を記念して立川ガーデンステージで開催された“東京喰種FES. –PLAY BACK-”。豪華キャスト陣による生アフレコに加え、物語を彩った主題歌アーティストによるライブパフォーマンスでオーディエンスを大いに沸かせた。金木 研らと歩んできた10年をファンと共に振り返ったステージの模様をレポートする。

TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY Ryohey Nakayama

穏やかな時間が、「悲劇」の始まりまでPLAY BACK

厳かなクラシック音楽が流れる会場。ざわめきは開演を待つ人々の声。ストリングスの重厚な音がひと際大きくなったところで「アモーレ!紳士淑女諸君。このトレッビアーン!なショーへようこそ!」と月山 習(CV:宮野真守)の語りが響く。軽妙かつ軽快な語り口が、これから始まる“東京喰種FES. –PLAY BACK-”という特別なひと時を愉しむための“余興”として満員のフロアを『東京喰種』の世界へと連れていき、ステージはスタート。

壮絶な戦いの先にあった、TVアニメ『東京喰種トーキョーグール:re』最後のシーンから時が巻き戻されていく。あの日のこと。あの瞬間の思い。金木 研の叫び、永近英良が漏らした本音、霧嶋菫香の激昂、亜門鋼太朗の慟哭……まるで現実の時間も戻されていくような感覚に陥る。静けさに包まれたステージに花澤香菜が現れ、物語の、「悲劇」の始まりを語り出す。まだ金木が人間だった頃。行きつけの喫茶店「あんていく」で自分の好きな作家・高槻 泉の小説を愛読する神代利世と出会った時のこと。金木役の花江夏樹も舞台に上がり、花澤が演じる利世と金木の“あの場面”、喰種としての姿を見せた利世に金木が襲われた場面を生アフレコで聞かせる。利世の狂気を孕む声と金木の恐怖が渾身の芝居で蘇ると、オーディエンスはシーンと息を飲むように静まり返り、ステージを見つめる。そこに重々しいギターの音。People In The BoxがTVアニメ『東京喰種トーキョーグール』EDテーマ「聖者たち」を響かせる。重く厚く轟く福井健太のベースの音に、鼓動のようにリズミカルに打たれる山口大吾のドラム。そして憂いを帯びながらも切々と歌い上げる波多野裕文の歌声と爪弾かれるギター。それら3つの旋律が物語の不穏さと金木たちの暮らす街の日常の景色を感じさせた。

 

そしてステージには花江の姿が。瀕死の重傷から戻った金木の変化と「あんていく」との出会いを語り出す。続けて場面はCCG(喰種対策局)へ。20区で笛口リョーコの駆逐に向かう亜門と真戸呉緒上等捜査官の様子が亜門役の小西克幸の声で語られた。ここで亜門が慟哭する。「この世界は間違っている!歪めているのは“喰種”だ」と。金木も自問自答している。利世との事件をきっかけに半喰種となった彼は、喰種だけが世界を歪めているわけではない、と。そして朗読劇は菫香の場面へ。菫香を演じる雨宮天がステージに姿を現す。そして、リョーコの娘・笛口雛実を彼女の両親の赫包から作り出したクインケで襲う真戸呉緒に、成すべなく苦しめられる菫香の思いを叫ぶ。雛実の覚醒と真戸の最期――哀しみが哀しみを呼ぶ場面を見事に演じきった。

序盤のクライマックスは「アオギリの樹」に囚われ、ヤモリの拷問を受ける金木が、その心の内で利世と邂逅する場面。彼女から一方的に詰められる状況に近い2人の問答を、花江と花澤がファンの眼前で再現していく。問答を通して金木の願望、切望する未来、そして覚悟が見え、彼自身が内に在る利世を越えると心を決めるという本作において重要なシーンを改めて見せつけられたオーディエンスは、呼吸すら忘れたように身じろぎもしない。ヤモリを倒す戦闘シーンが終わり、照明で会場の雰囲気が変わると、イベントの司会を務めるニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が登場。花江、花澤をステージへと招くと、重厚な朗読劇の空気を和らげるようなトークパートへ。10年前の話や朗読劇で演じた『東京喰種』12話のアフレコの思い出など、キャスト2人が作品への飾らない思いを聞かせた。

 

 

花江をして「二度とやりたくない」と言わしめるTVアニメ『東京喰種トーキョーグール√A』の物語

トークパートでは「ずっと(金木が)つらかった『東京喰種トーキョーグール』シリーズでどこがMAXにつらかったか」と尋ねられた花江が「√Aです。 金木の感情が発散されるところがなく、ずっと苦しかった。もう一生やりたくないです(笑)」と答えていたものの、トークの後には『東京喰種√A』の場面へ。ヤモリとの戦闘後に「アオギリの樹」に入った金木と菫香の再会のシーン。本心からの思いと共に怒りをぶつける菫香と、感情を閉じ込めてしまった金木の行き違う思いが胸に刺さる場面の朗読が繰り広げられる。そしてステージに現れた釘宮理恵。釘宮演じる鈴屋什造が篠原幸紀特等捜査官と共に「あんていく」を訪れた場面だ。CCGによる「梟討伐作戦」の緊迫感あるシーンに重々しいストリングスと空間を切り裂くようなギターの音が響く。パートナーである篠原と「あんていく」の店長であり、「梟」である芳村の死闘を成すすべなく見つめる什造の絶叫がフロアを震撼させる。哀しみを滲ませる釘宮の声に、会場の空気がピンと張りつめた。

亜門との死闘を繰り広げた金木は「あんていく」に辿り着き、CCGの捜査官として「梟討伐作戦」に参加していた幼馴染の永近と会う。金木が喰種であることに気付いていたと話す彼の、優しさの滲む声を、永近演じる豊永利行が響かせる。思い出話をしながら、温かなひと時を過ごすも、実は瀕死の重傷を負っていた永近。それでも普段と変わらず、楽しく話す彼につい笑みがこぼれる金木だったが、「帰ろう……」と口にした永近は金木の目の前で力尽きる。そして響き出したのは『東京喰種√A』のOPテーマ、österreichによる「無能」。バイオリンの音色と静かに爪弾かれるベースの旋律、慟哭を思わせるドラムのビートとエモーショナルなギターの音、そこに哀しみや苦しみが滲むボーカルが乗り胸を打つ。スクリーンに映し出される金木は永近を抱き、哀しみを踏むように歩き続けた。金木の想いと金木を想う永近の想いとが重なり合うようなその場面に、フロアからはすすり泣きが響いた。

 

ここで再び吉田アナが登場し雨宮と豊永が呼び込まれる。やっていても苦しく、聞いていても苦しいと話す雨宮。そして重々しい空気となった会場を明るくするように豊永は軽快な声をあげる。ここで雨宮と豊永も10年という時間を振り返り、当時の思い出を語り合った。

次のページ:旧多二福の登場。そして世界の歪みと対峙する者たち

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP