REPORT
2025.06.09
ライブの後半戦は、澤野が[nZk]や自身の活動を通して出会ってきた、豪華な顔ぶれのアーティストたちが次々と登場する。まずは“絶望系アニソンシンガー”を掲げて活動するReoNaが、2021年に[nZk]に参加して歌った「time」(TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』EDテーマ)を披露。海外におけるダークポップの潮流とも共振するエレクトリックなサウンドと、ReoNaのブレスを多く含んだ独特の声質、ひたむきさを感じさせる歌唱が、暗闇の中を必死に足掻くような緊迫感を生み出す。更に、[nZk]とは逆にReoNaサイドが澤野にオファーして作られた、ReoNaの楽曲「SACRA」を、初めて澤野と一緒にライブでパフォーマンス。共にSACRA MUSIC所属という縁だけでなく、出会いと別れ、命の華やかさと儚さ、様々なテーマとモチーフを内包した“桜”の歌を、ReoNaは風に舞う花びらのように美しく揺れる歌声で表現する。バラード調の美しいメロディ、澤野が弾くピアノの穏やかな響きを含め、彼のリリカルな一面が色濃く出た名曲であることを、改めて実感することができた。
まるで無垢な子供のようにピュアで生命力溢れるボーカルによって、それまでとはまた趣きの異なる美しい景色を創出したのが、リーガルリリーのボーカル/ギター、たかはしほのか(リーガルリリー)。TVアニメ『86―エイティシックス―』の第2クールEDテーマ「アルケミラ」をリーガルリリーが担当していた繋がりで、彼女が[nZk]に参加して歌った「LilaS」(TVアニメ『86―エイティシックス―』第2クール最終話EDテーマ)が、会場を感動で満たしていく。楽曲に込められたノスタルジックな抒情、再会の場景を表現するにあたって、たかはしのイノセントな歌声はこのうえなく最適な響きを持っている。彼女が[nZk]で歌唱を担当しているのはこの1曲のみだが、せっかくの機会ということでもう1曲、プライベートでも交流があるというmizukiが歌う「Avid」(TVアニメ『86―エイティシックス―』第1クールWエンディングテーマ)をカバーすることに。ふくよかで不思議なピュアネスを湛えたたかはしの声が、楽曲の持つセンチメンタルな要素をさらに引き立たせる、素晴らしい化学反応が生まれていたように思う。
そこから一転、不穏なイントロが鳴り響くと、Rei(Newspeak)が颯爽と登場し、[nZk]の最新楽曲となるダークかつヒロイックなアップチューン「INERTIA」(アニメ『TO BE HERO X』OPテーマ)を歌い始める。本公演の時点ではまだCDシングルのリリース前ということもあり、ライブで披露されるのはこれが初めてとなるが、音源バージョンよりもワイルドなバンドアレンジが施されており、Reiもステージを縦横無尽に動き回りながら、アグレッシブに会場を盛り上げていく。普段はロックバンド・Newspeakのフロントマンとして活動しているだけあって、ステージでの立ち回りも勇ましくかっこいい。そしてスペシャルなコラボレーションとして「LEveL」(TVアニメ『俺だけレベルアップな件』Season 1 OPテーマ)のカバーも披露。リリースから1年以上が経ったにも関わらず、ライブでは未披露状態だったのだが、待ち望んでいたファンは多かったようで、イントロの印象的なリズム音が鳴り響いた瞬間に、会場からは喜びの声が上がる。ロック度の強まったアレンジを背に熱狂的なパフォーマンスを披露し、強烈なインパクトを残してReiはステージを去った。
Reiの降壇後も、バンドは「LEveL」からの流れで、そのままジャムセッションに雪崩れ込み、熱量の高い演奏をぶつけ合うと、突然ストップして、アコギの情熱的なカッティングに導かれてスキマスイッチの2人が登場。大橋卓弥はマイクを手にし、常田真太郎は用意されたキーボードの前に座ると、[nZk]との楽曲「never gonna change」へ。白いライトに照らされて輝きに満ちたステージから、大橋のハイトーンボイスがまるでレーザー光線のように真っ直ぐ飛んでくる。厚みの増した演奏も相まって、会場全体が陽性のエネルギーに包まれる。そんなエピック感のある景色から、最後は常田が情感たっぷりの後奏で結び、客席は割れんばかりの歓声と拍手で応えた。その後、澤野・大橋・常田の3人は、スキマスイッチのリプロデュースアルバム『re:Action』(2017年)に澤野が参加したところから始まった縁について語らいつつ、大橋から澤野への「ライブをもっとやられたらどうですか?」という言葉に、やや戸惑いながらも「やります!」と答える一幕も。そしてお互いの共通項、共にASKAを尊敬して止まないという彼らが、澤野のキャリアにおいても重要なトピックとなったASKAとのコラボ曲「地球という名の都」をカバー。原曲へのリスペクトを感じさせながらも、大橋らしい伸びやかでエモーショナルな歌声が、楽曲に新たな風を吹き込み、どこまでも広がる青空のような、希望に満ちた想いを力いっぱいに届けた。
そして澤野が「REVIVƎЯ」(TVアニメ『俺だけレベルアップな件Season 2 -Arise from the Shadow-』サウンドトラック)を独りで奏で始めると、その厳かな空気から一転、ギター&ベースのリズミカルなフレーズと共に「膏」へと突入。岡崎体育がステージに姿を現すと、観衆を牽引するような力強いボーカルで会場のボルテージを一気に引き上げる。アッパーで高揚感に満ちた楽曲と晴れやかな歌声のマリアージュが、心を鼓舞してくれる。MCで澤野は、岡崎体育がインタビューで「澤野さんは年間400曲を書く」といった趣旨の発言をしていたのを見かけたが、実際は年間200曲で、なおかつ毎年というわけではないと訂正し、岡崎体育は「誇大表現になってました、すみません!」と平謝り。だが200曲でも十分すごいことであり、澤野のことを「天才中の天才」と絶賛する。そんな彼とも、[nZk]楽曲のカバーでコラボレーション。歌われたのは「COLORs」(TOHO animation MUSIC FILMS コラボソング)。原曲では秦 基博がフィーチャリングされていたが、岡崎体育のパワフルな歌唱スタイルも、楽曲が持つ躍動感に上手くフィットしており、観る者にワクワクするような気持ちを与えてくれた。
10周年を祝したライブもついにオーラス。豪華な競演のトリを務めたゲストボーカリストは、澤野とは彼が劇伴を担当する人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』で邂逅して以来、数多くの楽曲でコラボレーションを重ねている西川貴教だ。ラスボスのような風格を纏ってステージに現れた西川は、前述の人形劇の第4期『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』のオープニングを飾った自身の楽曲「天叢雲剣-SKYBREAKER-」でライブをスタートさせる。その隆々とした肉体と同様、逞しくビルドアップされた歌声が、剣の一閃のように会場を薙ぎ払い、その場の空気を完全掌握する。あまりにも圧倒的。ハリウッド映画の劇伴にも通じる、力強いリズムを多用した澤野の壮大な作風に、真っ向からぶつかり合える力量と迫力が、西川の歌声には備わっている。
歌い終えて「さあ、最後盛り上がっていこう!」と会場に檄を飛ばし、羽織っていた上着を脱ぎ捨てた西川は、続いて「Claymore」を披露。この楽曲も西川のオリジナル曲だが、実は『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』の劇伴曲「show-no-feel」をベースに作られたもの。ハードなギターサウンドを中心に、怒涛のように押し寄せるヘビーなサウンドの波と、頂点めがけてどこまでも上昇していく歌声の圧が鮮烈極まりない。その後のMCで、西川は同日に出演した生放送の音楽番組「Daiwa House Special 音道楽EXPO」には事前収録で臨み、澤野のライブにかけてきたと熱弁。[nZk]名義と西川貴教名義の両方でアルバムを作りたい、とラブコールを送る。そのように相思相愛(?)で相性抜群の彼らが、この日のクロージングナンバーとして届けたのは、西川が参加した[nZk]名義の楽曲「NOISEofRAIN」。ミディアムテンポのシリアスで重々しいサウンド、シャウト交じりのエネルギッシュなボーカルが、激情の雨となって降り注ぐ。終盤で両腕を大きく広げて歌う姿も威風堂々としたもので、圧巻のパフォーマンスで10周年のアニバーサリーライブを締め括った。
その後は、この日の出演者が全員ステージに登壇して記念撮影を行い、最後は澤野が1人残って挨拶をしてお開き……と思いきや、意外なサプライズが用意されていた。澤野が感謝の言葉を述べていると、BGMが突然途切れて、「膏」が流れ始め、澤野と再登場したバンドメンバーが、同楽曲のMVで披露されたコミカルなダンスを踊り始める。すると、同楽曲の歌唱を担当する岡崎体育も「ちょっと待て、これ、俺がもう1曲歌わせてもらえるってことちゃうん?」と飛び出してくるも、彼は無視してひたすたダンシングする澤野とバンドメンバー。さらに西川もダンスに加わり、多くのファンも踊って笑顔に包まれるなか、フィナーレを迎えた。
最後に澤野らしいユーモアも入れ込みつつ、豪華アーティストと共に[nZk]の軌跡を辿り、これまでの集大成を見せると同時に、カバーなどの嬉しい趣向で[nZk]のライブにおける広がりを改めて提示した今回のライブ。ボーカリストを固定しない[nZk]の多面的な可能性、そして音楽家・澤野弘之の才能の底知れなさに、今後の期待が止まらない素晴らしい一夜だったように思う。
<セットリスト>
[Introduction] [nZk]o1 Rap:SennaRin
01.NEXUS Vocal:Laco
02.Hands Up to the Sky Vocal:Laco
03.FAKEit Vocal:Laco
04.aLIEz Vocal:mizuki
05.A/Z Vocal:mizuki
06.&Z Vocal:mizuki
07.Into the Sky Vocal:Tielle
08.gravityWall Vocal:Tielle
09DARK ARIA Vocal:XAI
10.X.U. Vocal:XAI (Cover)
11.s-AVE ~ BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて) Vocal:SennaRin (Cover)
12.B-Cuz Vocal:SennaRin
13.time Vocal:ReoNa
14.SACRA Vocal:ReoNa
15.LilaS Vocal:たかはしほのか
16.Avid Vocal:たかはしほのか (Cover)
17.INERTIA Vocal:Rei
18.LEveL Vocal:Rei (Cover)
19.never gonna change feat. スキマスイッチ
20.地球という名の都 feat. スキマスイッチ (Cover)
21.膏 Vocal:岡崎体育
22.COLORs Vocal:岡崎体育 (Cover)
23.天叢雲剣-SKYBREAKER- Vocal:西川貴教
24.Claymore Vocal:西川貴教
25.NOISEofRAIN Vocal:西川貴教
●リリース情報
SawanoHiroyuki[nZk] 13th Single
「INERTIA」
6月11日発売
【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2696
価格:¥1,430(税込)
【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VVCL-2697~8
価格:¥2,200(税込)
※アニメ「TO BE HERO X」描きおろしイラストデジパック仕様
<CD>
01.INERTIA by SawanoHiroyuki[nZk]:Rei
02.PARAGON by SawanoHiroyuki[nZk]:Benjamin & mpi
03.INERTIA (TV size)
04.INERTIA (instrumental)
05.PARAGON (instrumental)
<Blu-ray> ※期間生産限定盤
01.INERTIA Music Video
02.アニメ「TO BE HERO X」ノンクレジットオープニングムービー
●作品情報
アニメ『TO BE HERO X』

フジテレビほかにて毎週日曜朝9時30分より放送中
<イントロダクション>
人は誰しも凡人で、即ち英雄である――
bilibili×アニプレックスによる完全オリジナルアニメーション誕生!
世界から脚光を浴びる監督Haolin(リ・ハオリン)(『時光代理人-LINK CLICK-』『天官賜福』『詩季織々』『TO BE HERO』シリーズ) とBeDreamが手掛けるスタイル横断型アニメーションシリーズ。
10名のトップヒーローを演じるキャストは宮野真守、花澤香菜、内山昂輝、中村悠一、松岡禎丞、佐倉綾音、水瀬いのり、山寺宏一、島﨑信長、花江夏樹、
物語を彩る音楽陣は澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO、ケンモチヒデフミ、DAIKI(AWSM.)、睦月周平、深澤秀行、馬瀬みさき、髙田龍一(MONACA)の実力派が集結。
奇跡の超豪華布陣が一堂に会するスーパーヒーロー活劇、2025年4月開幕!
異彩を放つヒーローたちが喝采を浴びる世界。
ここでは、「信頼」がスーパーヒーローを生み出す。
人々が「彼は空を飛べる」と信じれば、その男は飛行する能力を手に入れる。
逆に特殊な力を持つヒーローでも、信頼を失えば能力もまた失われる。
信頼はデータとして集計され、その数値によってヒーローのランキングが変動する。
2年に一度、トップランクのヒーローたちが集い繰り広げるヒーロートーナメント。
そこでのパフォーマンスによって「信頼値」が更新され、ランキングは再構築される。
ランキングの頂点に立つ絶対的なヒーロー、人はそれを「X」と呼ぶ――
【キャスト】
X:宮野真守
クイーン:花澤香菜
梁龍:内山昂輝
黙殺:中村悠一
リトルジョニー:松岡禎丞
ロリ:佐倉綾音
ラッキーシアン:水瀬いのり
トラ:山寺宏一
魂電:島﨑信長
ナイス:花江夏樹
【スタッフ】
原作・監督:Haolin(リ・ハオリン)
オープニングテーマ:「INERTIA」SawanoHiroyuki[nZk]:Rei
エンディングテーマ:「KONTINUUM」SennaRin
メインテーマ:「JEOPARDY」澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO、ケンモチヒデフミ、DAIKI (AWSM.)、睦月周平、深澤秀行、馬瀬みさき、髙田龍一(MONACA)
制作:BeDream
製作:bilibili & BeDream, Aniplex
【配信情報】
ABEMA / dアニメストア / dアニメストア ニコニコ支店 / dアニメストア for Prime Video / DMM TV
FOD / Hulu / J:COM STREAM(見放題) / Lemino / milplus見放題パックプライム / TELASA(見放題プラン)
TVer / U-NEXT / アニメ放題 / ニコニコ生放送 / ニコニコチャンネル / バンダイチャンネル ほか
※編成の都合等により変更となる場合がございます
©bilibili/BeDream, Aniplex
澤野弘之オフィシャルサイト
http://www.sawanohiroyuki.com/
SawanoHiroyuki[nZk] オフィシャルサイト
http://www.sh-nzk.net/
澤野弘之オフィシャルX
https://x.com/sawano_nZk
澤野弘之オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/user/SawanoHiroyukiSMEJ
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