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INTERVIEW

2025.05.28

音羽-otoha- の今後を大きく左右する“タルト事件”とは?TVアニメ『真・侍伝YAIBA』EDテーマ「pineapple tart」と、本楽曲を含むEP『sukimakaze』について聞く

音羽-otoha- の今後を大きく左右する“タルト事件”とは?TVアニメ『真・侍伝YAIBA』EDテーマ「pineapple tart」と、本楽曲を含むEP『sukimakaze』について聞く

マンガ「YAIBA」の完結から30年の時を経て、原作者である青山剛昌がシナリオを完全監修し“完全アニメ化”を謳って制作されたTVアニメ『真・侍伝 YAIBA』。そのEDテーマ「pineapple tart」を含むEP『sukimakaze』を音羽-otoha-がリリースした。自分を大きく変えるきっかけになった曲とも語る「pineapple tart」の制作について、そして今回のEP収録楽曲の歌詞やタイトルに込めた想いについて、たっぷりと語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一

自分の素の部分を引き出してくれたさやかというキャラクター

――マンガ「YAIBA」を“完全アニメ化”したTVアニメ『真・侍伝 YAIBA』のEDテーマを担当して、いかがですか?

音羽-otoha- 「YAIBA」という作品自体が昔から愛されているもので、それが今回アニメ化されることで、広い世代で愛される作品になると思いました。何より「青山剛昌アワー」(『真・侍伝 YAIBA』と『名探偵コナン』が続けて放送される毎週土曜日17時30分〜18時30分の時間帯のこと)というものが出来て、その渦の中に私が入ってお仕事をしているというのがいまだに信じられない気持ちです。

――オファーがあった際はどのようなお気持ちだったのでしょうか?

音羽-otoha- 原作マンガの「YAIBA」は存在は知っていたものの、世代が違うこともあって内容はあまり知らなかったんです。そんななか、「そもそも青山剛昌先生の作品の主題歌に自分が?そんな恐れ多いことがあって良いんですか!?」という心境で。最初は自分では力不足ではないかと思っていたんですけど、向き合うしかないと思いました。

――覚悟を決めたんですね。

音羽-otoha- はい。そこからはファミレスや自宅で原作を読み続け、気付いたら部屋中にコミックスが散らばっていました(笑)。最初に全巻目を通して、その後で断片的に思い出そうと思って、何度も何度も色んな巻を読んでいくうちに部屋が「YAIBA」だらけになってしまったんですね。これはどの作品でもそうなんですけど、タイアップの時は絶対に最新話まで読むようにしているので、今回も全巻読み込んだうえで曲を書いています。

――バトルも多い作品ですが、切り取ったのは日常的なところでした。どこを切り取るかについてはどう考えていったのでしょうか?

音羽-otoha- 私がそもそも活発なので、この作品を体現する曲を書くとしたら、主人公の鉄 刃に寄ると思うんです。ただEDテーマとしてお話をいただいていたので、アニメを観終わった後にちょっとホッとしてほしいなという感情がありました。そうなると刃よりも峰 さやかのほうが同じ年頃の子が共感しやすいのかなと思い、今回はさやかにフォーカスして曲を書き、アニメを観ている人に入り込んで聴いてもらえる内容を歌おうと考えました。

――タイアップの場合、アニメに完全に寄り添って歌詞を書くのでしょうか。それとも広く意味を持たせるために、自身の経験なども混じえて書いたりするのでしょうか?

音羽-otoha- 今回はその両方で、良いとこ取りをしたような気がします。これまではアニメに寄り添うことをかなり強く意識していたんです。ただ、元々、自分では自分のことを偏った考え方をしてしまうタイプだと思っていて。例えば、みんなが好きじゃないものを好きだったり、絶対にこうだ!と思うものがあったりということですね。ただ今回、曲を書いていく中で、実際の自分は偏っていない人間なのではないかということに気づいたんです。これはどう言えば良いのかが難しいんですけど、例えば刃って天才っぽい感じがするじゃないですか。ジャングル育ちという異質な生い立ちもあるし。でも、それと比べたら自分って結構普通なんですよね。特別変わったところもなく、何ならクソ真面目なほうなんです。さやかというキャラクターに助けられて、自分自身のそういう部分により気付けたと思っているんです。

――尖っていたりしても、案外ほとんどの人が、普通だったりするんですよね。

音羽-otoha- それで異世界とかSFとか退廃的な世界観とか大好きだけど、ほっこりしたものを見ると結局良いなぁと思ったりするんですよね。

――その気付きがあった後、曲はすんなり出来たのでしょうか?

音羽-otoha- 悩んだ末の1曲ではあったんです。そのなかでこれまでにない曲調だけど「これだったら」と思えたんですよね。それまで「音羽-otoha-っぽいね」と言われても自分ではよくわかっていなかったんですけど、この曲ができた時に初めて「自分っぽいかも」と思って。「曲調はこれまでにないけど、自分節があるから、この曲なら大丈夫だ」と思ってお渡しした記憶があります。

――すごく温かい曲ですよね。この曲を、温かい陽射しを浴びて歩きながら聴いていたら、幸せな気持ちになれたんですよ。

音羽-otoha- 私も同じことをしたことがあります(笑)。晴れの日に聴いていたら、タルトが食べたくなるなぁって思いました。これまでそういう温かい曲が自分にはなかったので、嬉しいです。

――歌詞にタルトというワードもありますけど、どのようなところから着想を得て書いていったのでしょうか。

音羽-otoha- 実体験に基づいている歌詞なんです。普段私は1人でご飯を食べることが多いのですが、私の誕生日を祝ってくれた友達がタルトを買ってきてくれたんです。その時に、人と切り分けて食べるって良いなとシンプルに思ったんですね。本当に子供みたいな感想ですけど(笑)。しかも紙皿とかではなく、ちゃんとしたお皿と銀のフォークを用意して食べたその行為がすごく健康的というか。絶対に自分以外の誰かがいてくれないとできない所作だし、丁寧な行為だったんです。タルトを食べながら話した時間も1人ではなし得ない時間で、自分は割とひねくれていて、こういう「人の温かみ」みたいなものにたいして斜に構えるタイプだと思っていたんですけど、それが結構ど真ん中に突き刺さってしまって……。シンプルなんですけど、そこで初めて食べ物をテーマに歌を作りたいと思ったんです。

――それがアニメの世界観に合っていたということですか?

音羽-otoha- タイミング的にはドンピシャで、何となく食べ物をテーマに曲を作りたいかもなぁと思って、デモの構想とかを考えている時にこのタイアップの話をいただいて。それで原作を読んでいたら食事のシーンがすごく多かったんです。どんなに忙しくても、どんなに戦っていても、絶対にみんなで食卓を囲んでご飯を食べているんですよね。それって素敵だなぁと思って。私はそういう余裕がない人間なので食をおろそかにしちゃうんですけど、書きたいと思っていたものがこの作品とすごくリンクしていると感じたんです。それで、ならなぜパイナップルなのかって思うじゃないですか。

――思いますね。

音羽-otoha- パイナップルタルトを食べたことがある人ってあまりいないと思うんです。食べたことがないものって、ちょっとした警戒心と期待があるじゃないですか。それって刃に出会ったさやかの心情に通じるのかなと思ったんですね。なので色んな果実を考えて悩んだんですけどパイナップルにしました。パイナップルを食べると舌がピリピリするのも刃っぽいですし、それを思いついた瞬間に色んなパズルがハマっていく感じがしました。そう考えるとタルトもさやかっぽいので、パイナップルもタルトもすごく重要なワードなんです。あと、逆でも当てはまると思っていて、それが2番以降になるんですけど……。

――2番で視点が入れ替わる感じになっていますよね。

音羽-otoha- そうなんです。実はフルで聴くと、そういうところも楽しめるし、さらに最終話まで観ると、より感じるものがあると思っています。

――かなり綿密に、仕掛けも考えて歌詞は書かれるんですね。

音羽-otoha- 考えますね(笑)。仕掛けでいうと、歌詞の”ちょっとだけまっててよ”や”ささやかに”は、何かをしのばせています。

――“雷”は、刃の持っている雷神剣ですし、作品ファンが喜ぶ仕掛けですよね。楽曲のアレンジもすごく良かったです。特にトロピカルなイントロがとても印象的でした。

音羽-otoha- 赤山コウさんと編曲をしているんですけど、イントロは赤山さんが考えてくださったんです。ただDメロの前の間奏部分は、私のデモをかなり活かしてくれています。あとこの曲、ギターを三井律郎さんが弾いてくださっているんですよ。さらにベースも高間有一さんで……。

――TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく』の結束バンドの演奏でお馴染みのお二人ですね。

音羽-otoha- だから、よくよく聴くと技巧がすごくイカつい曲なんです(笑)。私はライブでギターを弾くんですけど、その時は律郎先生のニュアンスを完コピして臨もうかなと思っています。サビはあの律郎さんが珍しく「むずいな…」と言うほどで、ギターが2本入っているんですけど、繰り返しが一回もないんです。この辺りはロジカルに考えられている赤山さんのアレンジだなぁと感じました。ベースもよく聴くとイカつめのフレーズが入っているので、個人的には嬉しいですね。

――「pineapple tart -Instrumental-」もかなり聴きごたえがありました。同時に、弾き語りでも良い曲なんだろうなと感じました。

音羽-otoha- それこそ最初はアコギの弾き語りで作ったので、そのイメージは最後まで引き継がれていると思います。

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