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INTERVIEW

2025.05.13

TVアニメ『mono』が目指すのは「実際にそこに行ってみたくなるアニメ」!監督・愛敬亮太に本作制作の裏側について聞く

TVアニメ『mono』が目指すのは「実際にそこに行ってみたくなるアニメ」!監督・愛敬亮太に本作制作の裏側について聞く

出かけた先で360度カメラやアクションカムで撮影をしたり、ワインセラーに行ったり、大食いチャレンジをしたり、心霊現象が起こったり……。#5までの放送を終え、TVアニメ『mono』の様々な魅力がわかってきた今、本作の監督を務める愛敬亮太氏へインタビューを敢行!制作段階でのエピソードをたっぷり語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一

▼TVアニメ『mono』キャストインタビュー

TVアニメ『mono』放送スタート!メインキャスト・三川華月(雨宮さつき役)、古賀 葵(霧山アン役)、遠野ひかる(敷島桜子役)、上田麗奈(秋山春乃役)、河瀬茉希(駒田華子役)撮りおろしインタビュー!

「実際にそこに行ってみたくなるアニメ」を目指して

――TVアニメシリーズの監督をするのは今回が初めてとお聞きしています。

愛敬亮太 はい。『mono』が初めてになります。なので、これまでご一緒させていただいた先輩監督に話を聞いたり、同世代も監督になってきているので「どうやっているの?」と聞いたりしながら今制作をしています。

――直近だと、『呪術廻戦』シリーズの副監督をやられていましたが、かなり方向性が違う作品だなと思いました。

愛敬 僕は(スティーブン・)スピルバーグ作品とか、少年マンガ的な理不尽と戦うような作品が好きなんですけど、なぜか一番観ているアニメは『NEW GAME!』だったりするんです。絵コンテを描く時はいつも『NEW GAME!』を流して「がんばるぞい!」という気持ちでやっていて(笑)。しかも『NEW GAME!』で音楽を担当している百石 元さんは『mono』でも劇伴を制作してくださっていて。それを知った時は感動しました。

――ご縁があったんですね。TVアニメ『mono』の放送も始まりましたが、とても楽しく拝見させていただいております。

愛敬 ありがとうございます。#3の評判も、とても良かったみたいで……。

――(インタビュー時)ちょうど#3の放送が終わった段階ですが、『mono』の原作物であるあfろ先生が描いた『ゆるキャン△』キャラクターたちのカメオ出演が話題になっていましたね。

愛敬 なので『ゆるキャン△』が好きな方の応援がすごかったようです。『mono』からあfろ先生原作作品に触れた方は突然で驚いたかもしれませんが、『ゆるキャン△』も観ていただければ両方楽しめるのかなと思います。

――#1を観た時、話が上手くまとまっていると思いました。原作が4コママンガなので、エピソードとエピソードの間を埋めたり入れ替えたりする必要があったと思うのですが、構成してみていかがでしたか?

愛敬 少年マンガなどだと決めのコマがあって、それをアニメでも引用させていただくことが多かったんですけど、4コママンガだと色々と構成を考える必要があって難しかったです。ただ、そんなすべてが決まっていないところが同時に楽しさでもありました。

――オチはたくさんあるのでそれを流れのなかで処理しつつ、AパートとBパートのラストに向けて、どう盛り上げていくのか……。そこが『mono』は絶妙だと感じました。

愛敬 4コマ毎に1回オチがあって、ギャグ・ギャグ・ギャグで行きながら、途中でエモのオチもある。そこの塩梅をどう調整するかは確かに難しかったです。ギャグにも振り切れず、エモにも振り切れない場合にどうするかなど、色々考えさせられました。

――特に#1は、夜景を撮影するところに大きな盛り上がりを持っていくという流れがあったと思うので、構成もすごく練られているなと感じました。

愛敬 #1の関してはかなり練りましたね。僕のほうからは「入学式から始まる主人公の雨宮さつきと牧之原先輩のお話を増やしたい」というオーダーをシリーズ構成の米内山陽子さんにお願いしていたんです。ただ、終わりはタイムラプス撮影のところで終わらせたかったので、情報量が1.5~2話数分くらいのボリュームがあったんですね。でも、米内山さんが初稿からかなり上手く整えてくださいました。

――大量の情報を1話分にまとめる苦労があったと。

愛敬 そういう意味では#1はかなり労力を使いました。あとは#2もAパートとBパートそれぞれで敷島桜子と駒田華子のエモいシーンがあるので、絵コンテ・演出の藍崎 灯さんに盛っていただいたりして、「感動してくれたら良いなぁ」と思いながら音楽を付けていました。桜子が映画研究部のことを思い出すシーンのBGMに関しては僕が考えていたものではなく、演出家さんから「このほうが良いのではないか」と提案があって変えているんです。そういう意味で『mono』は各話演出家さんにかなり助けていただきながら完成しているところはあります。

――原作のあfろ先生からの要望もあったのではないでしょうか?

愛敬 あfろ先生は最初に「かましてください!」と言ってくださったんです。それは「盛ってください」とか、そういうニュアンスだと受け取っていて、「遊んでいいのかな?」と思って。アニメだと結構霧山アンちゃんのツッコミが強くなっているのですが、これはアンちゃんを演じる古賀 葵さんの演技に引っ張られたところもあるんですけど、そんな彼女のキャラクター性のおかげでテンポが良くなったり、強調が多い感じになったりしているのかなと思っています。結果各話のコンテ・演出さんの持ち味も強く出ているのではないかと。例えば#3の鉢伏山の展望台のシーンもそうで、原作では展望台に登って景色を見ているんですけど、取材に行ったら展望台の階段が壊れていたらしいんです。僕はスケジュールの都合で行けなかったんですけど、演出の方と制作進行の方が行った時に、ものすごい霧で全然景色が見えなかったらしくて。展望台にも登れないし、何も撮れないから帰ろうと思って下山していたら途中で唐突に晴れたので山頂に戻ったら、本当にアニメで描いたような美しい景色が広がっていたらしく……。なのでその経験をアニメで活かそうと思い、あのシーンが生まれました。だから原作だけでなく、我々の実体験もベースにしているんです。

――ロケハンの成果は、かなり反映されているのですね。

愛敬 僕は全部に同行することはできなかったのですが、スタッフで全話分ロケハンには行っていて。特に#3が本当に大変だったらしいです(笑)。アニメだと1泊2日で回っていますけど、実際は2泊3日で行っています。#4のAパートのワイン関連のロケ地はかたまっていたので良かったんですけど、Bパートのまんぷくフォトラリーも大変で。みんなお腹いっぱい食べていたんですけど、どこかのお店で「サービスで付けておいたから」ってご厚意もいただいてそれはさすがに持ち帰ったみたいです(笑)。

――秋山春乃先生が劇中で「実際にそこへ行きたくなるマンガ」を描こうと決意するシーンが#2でありましたが、今作の製作スタッフも「実際にそこに行ってみたくなるアニメ」にしようと思いながら作っているんだと感じました。

愛敬 それはもちろんです!景色も美術さんに力を入れて描いていただけて嬉しかったですね。ロケハンの資料もかなり多かったので大変だったと思うのですが、写真をたくさん貼って、「ここです」と言いながら描いてもらって(笑)。美術設定は10カットに1回場所が変わってしまうくらいの勢いだったので、美術さんには感謝しかありません。

――キャストに関しては、どのように決めていったのでしょうか?

愛敬 キャラクターに声質が合っているかどうかというのを一番大事に選ばせていただいたのですが、そこは音響さんやメーカー、原作の方々と相談しながら、5人のバランスをかなり考えて決めていきました。やはり声質が似てしまうと、掛け合いをした時にわかりづらくなってしまうので。最初に決まったのはさつき役の三川華月さんで、「主人公から決めましょう」ということだったんですが、全員一致の答えでした。

――ちょっと切なくなったりするところで、三川さんの声質がマッチしているように感じました。

愛敬 アフレコではアン役の古賀さんと桜子役の遠野(ひかる)さん、そして華子役の河瀨(茉希)さんがいい意味ですごく暴れてくれて。さつき役の三川さんと春乃役の上田(麗奈)さんは日常系作品のアンカーとして、落ち着いたキャラクターとしていてくれたんですよね。そのおかげでずっとわちゃわちゃしているわけではなく、本当の友達同士のようなバランスになっていたのかなと思います。バランスがすごく良かったという話はアフレコがすべて終わった後にキャストの皆さんにも伝えさせていただきました。

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