スピラ・スピカ(以下、スピスピ)の幹葉が、自身の憧れの人物に直接会いに行き、対談を通じて学びと刺激を得る人気企画『幹葉の森 おしゃべりルーム』。第7回のゲストは、ピン芸人・ハリウッドザコシショウ。幹葉がかねてからの「いつかお話ししてみたい!」と願っていた対談がついに実現した。
本連載で芸人をお迎えするのは初めて(!)となった今回のインタビューでは、ハリウッドザコシショウならではの哲学、芸人としての信念、さらにはネタ作りやSNSとの向き合い方まで、縦横無尽に話が展開。スーツアクターとしての活動やLIVE“幹葉生誕祭~はじめての、みきはっぴーばーすでー!(前夜祭)~”を控えている幹葉。表現者としてさらなる高みを目指す幹葉にとって、多くの刺激とエネルギーを受け取る貴重な時間となった。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香
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――お二人は同じ事務所なんですよね。でもお話するのは初めてだとか。
幹葉 そうなんです!今日は“初めまして”なので、まずは自己紹介をさせてください!徳島県の板野郡松茂町出身、幹葉と言います。高校卒業まで徳島で過ごしていて、大学進学のために関西へ。そこでバンド活動を始め、一度は就職もしたんです。でもやっぱり歌うことが諦められなくて、音楽活動を本格的に再開しました。その後、色々とあり、今はサポートメンバーに入ってもらいスピラ・スピカとしてライブをしながら、歌やラジオパーソナリティのお仕事の他、最近は「The Wakey Show」というNHK Eテレの番組で、ウェイキー役として着ぐるみアクターとして出演をさせてもらっています。
ハリウッドザコシショウ へー、就職もしてたんだ。諦められないって気持ちはわかるな。
幹葉 ザコシさんの単独ライブにも遊びに行ったことがあるんです。事務所でお見かけすることも何度かあったのですが、ぜひ一度お話ししてみたいなと思っていました。この「幹葉の森」では、芸能界で生きていくためには……というのを大きなテーマとして、色々な方にお話を聞いているんです。ぜひハリウッドザコシショウさんにお話を伺いたいなと思いまして……。
ザコシショウ 正解!それを俺に聞くのは大正解!ただ、こういうインタビューであまり真面目なことを言ってると「バカ真面目やな」ってケンドーコバヤシにイジられたりもするんだけど……何が聞きたい?
幹葉 リスアニ!がアニメ音楽メディアなので、まずはアニメの思い出があったらお伺いしたいです。幼少期に観ていたアニメってありますか?
ザコシショウ 結構なんでも観てたよ。『キン肉マン』『北斗の拳』『ハイスクール!奇面組』とか。おじさん世代だからあまりわからないかもしれないけど。
幹葉 私は『ちびまる子ちゃん』が大好きで、めちゃくちゃ影響を受けているんです。子供の頃からずっと観てきて、『ちびまる子ちゃんランド』にもよく行くんです。ザコシさんは静岡県出身ですよね?『ちびまる子ちゃん』は観ていましたか?
ザコシショウ あ、そうそう。まさに実家があるのは清水市(現・清水区)だから。『ちびまる子ちゃん』が好きなのか。なんかその感じ、わかるよ。喋り方とか、確かにちょっと似てる気がする。
幹葉 あと『笑ゥせぇるすまん』に今ハマっているんです。今日も朝から1話分観てきて。ザコシさんの『笑ゥせぇるすまん』も観てます。
ザコシショウ えっ、『笑ゥせぇるすまん』を今観てるの?なんでまた『笑ゥせぇるすまん』?
幹葉 すごく怖くて深くて引き込まれるんです。ドーン!ってされる前の緊張感がクセになりますし、社会風刺も効いていて、現代でも考えさせられることが多い印象です。
ザコシショウ でもあれよく観ると、喪黒福造自身がトラブルを仕掛けてるところもあんのよ(笑)。その“ワケわからなさ”が面白くもあるんだけどね。
幹葉 ザコシさんは「創聖のアクエリオン Myth of Emotions Ver.」(TVアニメ『想星のアクエリオン Myth of Emotions』)のMVに出たり、『デュエル・マスターズ WIN』にもアニメ&実写での出演されていましたよね。どういう経緯だったんでしょう?オファーを受けて?
ザコシショウ そうそう。アニメに関しては、本格的に出たのは『デュエル・マスターズ』が初めてじゃないかな。「もっとハンマーカンマーっぽく」というディレクションを受けたのを覚えてる。いやいや、俺が一番ハンマーカンマーなんじゃないの?って(笑)。でもプロだからやるしかない。なんとかアレンジして応えたよ。基本的には、なんでも瞬時にやるようにしてる。
幹葉 色々な番組を観ていて、「これできる?」って振られる場面があると、ザコシショウさんはすぐに「やります!」って答えている印象があります。それがすっごくかっこいいなって。
ザコシショウ 別にできてるわけじゃないのよ(笑)。でも基本「やります」って即答するようにしてる。「ちょっと考えさせてください」って言うと「もうええわ」ってなるから。
幹葉 逆にこれはできない、ってなったものはあるんですか?
ザコシショウ 5年前、1回だけ断ったことあるよ。「誇張しすぎたヘリコプターってできますか」って言われて、どうやってやんねん!って。で、断ったんだけど、今思えばやっときゃ良かったなって後悔してるかな。やってみる、っていうのが大事だと思うから。
幹葉 なるほど……!勉強になります。ザコシショウさん、NGなお仕事ってあるんですか?
ザコシショウ う~ん。NGじゃないけど、ドラマはちょっと考えるかな。セリフも超長いし、自分のスタイルでできないならやる意味ないかなと。自由に言っていいならやるけど……でもセリフ長いのとか絶対ムリ。2文字くらいしか覚えられへん。
幹葉 色々なところですでにお話しされてるとは思うんですけど、お笑い芸人を目指したきっかけも改めて伺いたいです。
ザコシショウ きっかけ? 芸人になったのは昨日。昨日の朝やるって決めて、そこからトントン拍子でここにいる。
幹葉 昨日!(笑)。そしたら私が行った単独で見た人は誰だったんだろう……?
ザコシショウ あれは残像。昨日の残像がステージに立ってただけ。でもな、お笑い芸人になるためにはな、まず“地獄の四丁目”まで掘って、マントルまで潜って、マグマにダイブして、冷やして、フィギュアにして、それを秋葉原で売るところから始めなあかんから。フィギュアになるくらい自分を固めないとね。そこから初めて“芸人として売る”に進めるのよ。
幹葉 す、すごい……!そのマグマに飛び込むところから始めないといけないんですね……!?(笑)。
一同 (爆笑)。
──(笑)。本当のことを言うと……?
ザコシショウ 小2くらいから「芸人になりたいな」って思ってはいて。テレビでビートたけしさんや「オレたちひょうきん族」とか観て、「すげえなあ」って。笑わせたいというより、「こうなりたい」って憧れが先だった。
幹葉 その声の大きさと気持ちの熱さも昔からだったんですか?例えば、友達の前でネタを披露したりだとか、そういうことはあったんでしょうか。
ザコシショウ いや、全然。それこそ、さっきも話題に挙がったけど(出身が)静岡じゃん。静岡の人って引っ込み思案だから。だから全然ネタとかも披露してなかったし、当時は不良ばっかりの学校で。ネタ帳持ってたら不良に見つかって、「ふざけんな!」って破られて。そんな感じだったから、前に出るとかそういう感じじゃなかった。そもそも静岡って、中途半端な場所にあるんだよ。東京も大阪も行けるけど、当時は東京にNSC(NSC吉本総合芸能学院)がなかった。だから大阪一択。他のスクールはべらぼうに高くて。相方は一瞬就職に内定してたから、一度はやっぱり(大阪に行くのは)やめるって言ってたんだけど、よくよく聞くと仮だったらしくて。結局「一緒に行きます!」となって、その相方と一緒に大阪に行くことに。
幹葉 私は大学時代は枚方市にいたんですけど、ザコシさんはNSCに行ってからは、どのように過ごされていたんですか?お笑い一色という感じですか。
ザコシショウ ひらかたパークの枚方にいたんだ!俺は……お笑い一色と言えば一色かなあ。竪穴式住居に住んで、風をしのいだり、マンモスを狩ったりして。輪切りのまる~い石で買い物してたかな。
幹葉 私の知らない大阪だ……。時代も行き来できるんですね……(笑)。
ザコシショウ そう。で、相方は相方で、「宇宙飛行士になりたい」とか言い出してさ。最終的にシュバッと宇宙に向かって飛んでいったんだよ。宇宙船じゃなく花火背負って。それを見送りにいって、コンビが解散して。で、そこからタイムスリップして、今に至るんですよ。つまり、昨日デビューして、過去に1回行って、色々やって、また昨日戻ってきた。そういう感覚。
幹葉 ほおほお……!(笑)。
一同 (爆笑)。
――その戻って来るまでの過程を聞きたいです(笑)。
ザコシショウ 撮れ高がない(笑)。どこから話したらいいかな……。元々はその相方と「G☆MENS」というコンビを組んでたんですけど。吉本興業からナベプロ(渡辺プロ)にいって、2年くらい活動して、解散して、1人になって。ナベプロは即戦力を求める会社だから、そんな状態だとネタもかけないし、即戦力にもならない。それで練習生になったんで、辞めることに。で、1年くらいフラフラしてたんだけど、コンビ時代にやっていたショートコントを4コママンガにまとめて、マンガ家になろうと思って。マンガ家の知り合いに「漫画家になりたいんだけど」って相談したら、「持ち込み行ってみたら?」って言われて行ったわけよ、出版社に。
幹葉 行動力がすごい!
ザコシショウ で、大手に持ち込んだら「半分くらい面白いけど、半分くらいつまらない」と。で、小さめの出版社に行ったら、今度は「あなたみたいに面白くないマンガ初めてだよ」って言われて。「あなたね、お笑いのビデオでも観たほうがいいよ」ってダメ出しされたの。お笑い芸人ということを隠してたんだけど、その言葉に腹が立ってね。そこから「やっぱお笑いしかねえな」ってなって戻ってきた。
幹葉 その悔しさが、再びお笑いに向かわせてくれたんですね。
ザコシショウ そう。その時はめちゃくちゃムカついたけどね。もしあの担当者がいなかったら、もしかしたら、今の俺はいないかもしれないよね。
幹葉 その方は、今もザコシショウさんが芸人だって知らないんですか?
ザコシショウ 知らないだろうね。
幹葉 そこから心を燃やしてやっていくなかで、今の事務所であるSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)にはどのように辿り着いたのでしょうか?
ザコシショウ マンガ家を諦めてからは半年くらい何もしてなかったんだけど、ナベプロの時の後輩から「ソニーがお笑いの部署作ったらしいっすよ。今ネタ見せしにいってるんですけど、兄さんも行ってみたら?」って言われて。ネタもないけど、それでも良いということだったので行ってみた。当時は他の事務所で失敗したやつばっかりが集まっていて、当時は“芸人の墓場”とか言われたけど、だからこそ、威張る芸人もいないし、年功序列でもなく実力主義。上下関係よりも「面白いかどうか」がすべてっていうのも良いなと。
幹葉 今では「ザコシさんがいるから」ということでSMAに入って来られる方もいるのでは?
ザコシショウ まあいるにはいるっぽいね。でも全然挨拶もされないよ(笑)。
幹葉 挨拶は大事!SMAには私も長い間お世話になっているので、SMAのお話が伺えて嬉しいです。ところで、ザコシさん、見た目が本当にお若いですよね。さっきから表情筋がすごく動くんですよ!だから若く見えるのかも!
ザコシショウ いや、もう51やで。でも、同年代と並んだら多分俺が一番若く見えるかもな、とは思う。
幹葉 パックとかしてるんですか?
ザコシショウ してねーよ!(笑)。肌はシミだらけ。“じじいの手”よ。
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