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INTERVIEW

2025.04.17

アーティスト活動30周年を迎える椎名へきるが時代を超えて伝えたいメッセージとは――アルバム『LOVE and ROCK go together』リリースを記念し椎名へきるの音楽を振り返る

アーティスト活動30周年を迎える椎名へきるが時代を超えて伝えたいメッセージとは――アルバム『LOVE and ROCK go together』リリースを記念し椎名へきるの音楽を振り返る

2024年でアーティスト活動30周年を迎えた声優・椎名へきる。昨年はセルフカバーアルバム『HARMONY STAR』をリリースし、それを伴うライブ“HEKIRU SHIINA 30th ANNIVERSARY LIVE 〜HARMONY STAR〜”を大成功させた。さらに今年に入り神奈川県民ホールでのライブ“椎名へきる LIVE 2025 STARTING LEGEND WINTER”を開催したばかりの彼女がソニーミュージックから、過去の楽曲をコンパイルしたアルバム『LOVE and ROCK go together』をリリースすることが発表された。今作は自身の膨大な楽曲から“LOVE”と“ROCK”をコンセプトに2枚にコンパイルしたものとなっている。本作のリリースをきっかけに改めて椎名へきるの音楽を振り返り、彼女が時代を超えて今こそ伝えたいメッセージに迫っていく。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

椎名へきるを形成する“LOVE”と“ROCK”、そしてその芽生え

――ソニーミュージック時代の楽曲をコンピレーションした『LOVE and ROCK go together』ですが、このプロジェクトはどのようにして始まったのでしょうか?

椎名へきる 本作は私がソニーミュージックに所属していた時にお世話になったスタッフの皆さんからの提案で制作がスタートしたんです。2024年9月28日に活動30周年ライブ“HEKIRU SHIINA 30th ANNIVERSARY LIVE 〜HARMONY STAR〜”を日本青年館ホールで開催し、それをソニーミュージック時代の歴代スタッフの皆さんが揃って見に来てくれていて、なんか同窓会みたいになって(笑)。その時に集まった皆さんがライブを見て熱いものを受け取り、何かを企画しよう、私の音源を残すために何かできないかとの話になったのが今作の始まりだったと聞いています。

――ライブをきっかけに企画が動き出したと。

椎名 そうですね。それで今回はシングル曲、アルバム曲問わず私の目線で選曲した楽曲を収録したコンピレーションアルバムを作ろうということになりました。これまでもコンピレーションアルバムはリリースしているのですが、今回のように私自身が選曲したアルバムはなかったので。

――そんななか、選曲のテーマとして設けたのが“LOVE”と“ROCK”だったと。

椎名 一番わかりやすいコンセプトを決めるとしたらもう“LOVE”と“ROCK”しかないなと思って。以前から自分で歌詞を書く時も“愛”や“何かと戦うこと”からは切り離して考えられませんでしたから。ただ、今回は2枚組で32曲収録させていただいたんですけど、“LOVE”と“ROCK”の2つに分けて収録曲を考えていこうと思ったら、私の音楽はどれもそのどちらかだけではできていない。完全に切り分けることができないことに気付かされて。

――“LOVE”の中にも“ROCK”があるし、“ROCK”の中にも“LOVE”があるということですね。今回のアルバムには「風が吹く丘」「Graduater」「-赤い華- You’re gonna change to the flower」のような代表曲が入っていませんが、そこはあえて外されたんですか?

椎名 気付いてくださいましたか(笑)。まず悩んだのが、これだけ自分の楽曲があるなかで1枚で16曲しか選べないことなんです。私のディスコグラフィからどうやってふるいに掛けていくんだという葛藤があって。もちろん私として外したくない曲はたくさんあったんですけれど、昨年リリースしたセルフカバーアルバム『HARMONY STAR』で歌い直しをしている曲もあり、それらは「『HARMONY STAR』を聴いてください」という形に留めさせていただきました。それと今回は歌い直しではなく昔歌った音源をそのまま収録するということで、初々しかった私の歌声を聴いていただければなとも思って、ファンの方々から支持が高い楽曲をできるだけ入れるようにしました。

――収録が時系列順に並んでいるのも印象的でした。サウンドや歌われている時代感の変化がわかる作りになっているなと。

椎名 確かに使っている打ち込み楽器の音に時代を感じますし、歌詞には時代感の変化ありますよね。特に“LOVE”のほうは変化が激しい気がします。1曲目の「すごく楽しい空になるのに」から最後の「ロックンロール・ラヴレター」では歌われている内容も全然違っていますよね。

――そうですね。「攻撃は最大の防御」は1995年の曲ですから、歌詞にも“ポケベルにメッセージ残して”とありますし。

椎名 そうなんですよ!今の子たちはポケベルなんて知らないだろうから「これはどういう意味なんだろう?」って思われるかもしれない。ただ、それぞれの楽曲に時代性はあるんですけど、やっぱりメロディの良さは変わらないですね。この時代のソニーミュージックさんってすごく良い作家さんが多くて、音楽的にきちっとしているんですよ。だから1曲ずつがすごくクオリティが高くて。今聴いてもすごくちゃんとしているし、サビだけじゃなくてAメロやBメロも綺麗なんです。あと、今の子たちにぜひ感じてもらいたいのは曲の長さなんです。1曲の中にまずイントロがあり、ギターソロもあるという構成になっていて。

――それがあるからこそ、へきるさんの音楽はバンドを背負ったライブが映えます。

椎名 嬉しいです。ソニーミュージックさんとお仕事を始めた頃、レーベルに所属しているバンドさんたちが出されているCDをたくさんいただいたんですよ。それを聴いていた中に「この曲のギターが良い」というのがあって、それがSIAM SHADEさんだったんです。それでSIAM SHADEのDAITAさんに「Graduater」を弾いていただき、その後は楽曲も作ってもらって。それが今回のアルバムにも収録されている「抱きしめて」なんです。

――実にDAITAさんらしいプレイが聴かれる楽曲ですよね。

椎名 はい。ギタープレイももちろんですけど、やっぱりメロディメーカーとしても素晴らしいので、作っていただいて良かったなってその時もすごく思って。アレンジは大坪(稔明)さんなのですが、イントロに変拍子とかに出てきちゃうわけですよ。デモテープにはそんなの全然入っていなかったんですけど。今ライブでやってもイントロはドラムの人が「間違える」って嫌がられるんです(笑)。

――「抱きしめて」はボーカルの録り直しもあったと伺いました。

椎名 そうでした。当時はベースだけ収録した後に歌の収録をして、後からミュージシャンの人たちの演奏を入れていくという形で制作をしていたんです。それで最後にDAITAさんがギターを入れたら、すごく伸びやかで力強い音になっていたわけですね。そうしたら自分が最初に収録した歌とギターの景色が寄り添っていなくて。今だったらできないことですけど「もう一度歌い直したいです」と話をして、彼のギターと景色を合わせるように歌い直したんです。

――へきるさんの考えるロックが固まったのがその時期なのかもしれないですね。

椎名 そうですね。だから1997年から1998年にかけて、「Graduater」以降は特にロック色が強くなってきています。そこから少し遡ると1996年の「目を覚ませ、男なら」をはじめ、(後藤)次利さんがロックっぽい曲を作ってくださって。「やっぱりこっちのほうが私好きなんだな」というものにどんどん目覚めていったのがその頃なんです。

次のページ:ファンと共に歩み、これからも変わらず生き続ける“LOVE”

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