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INTERVIEW

2024.06.12

「リスパレ!チョイス」選出アーティスト・岬 なこインタビュー!

「リスパレ!チョイス」選出アーティスト・岬 なこインタビュー!

アニメ音楽に特化した媒体「リスアニ!」と大阪のラジオ局・FM802のラジオ番組「802 Palette(ハチパレ)」がタッグを組んだ新たな音楽メディア「リスパレ!」。アニメ、ゲームカルチャー、ネットミュージック、そしてそれらの枠を超えた様々なアーティストの魅力を伝える本プロジェクトでは、「リスパレ!チョイス」として、今聴いてほしいアーティストを独自の視点で選出。その第1弾として選ばれた6組のアーティストを積極的に紹介していく。

今回は、『ラブライブ!スーパースター!!』の嵐 千砂都役などで活躍する声優の岬 なこをピックアップ。2023年7月に個人での音楽活動をスタートさせ、話題作TVアニメ『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』のEDテーマ「スイートサイン」を担当するなど、表現者として活動の幅を広げている彼女は、どんな想いのもとアーティスト活動に取り組んでいるのか。独自の考え方に基づく歌との向き合いに迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

“歌を歌おうとしない”からこそ歌える、岬 なこだけの“歌”

――まずは「リスパレ!チョイス」に選ばれた今のお気持ちをお聞かせください。

岬 なこ 「リスアニ!」さんも「ハチパレ」さんもいつもお世話になっていて、私も大好きな媒体と番組なので、こういった形でご一緒できるのはすごく嬉しいですし、自分がプッシュされる側というよりも、私が出来る限り盛り上げていきたい気持ちなので、誠心誠意務めさせていただければと思います。

――岬さんは声優としての活動を経て、2023年7月にデビューアルバム『day to YOU』でアーティストデビューしたわけですが、アーティスト活動には以前から興味があったのですか?

 正直なことを言うと、最初は自分の意志で「アーティスト活動するぞ!」という前のめりな気持ちはまったくなくて、皆さんが私の背中を押してくれた、というのが一番近い答えなのかなと思います。なにぶん私は歌に対するマイナスな気持ちが強かったので、「自分に何が伝えられるんだろう?」というふわふわした気持ちのなか、皆さんに背中を押してもらってようやくスタートラインに立てました。

――歌に対して苦手意識があったということですか?

 そうですそうです。鼻歌を歌ったり、お風呂で軽く歌ったりするのは好きなんですけど、自分の歌を誰かに聴いてもらうことが全然好きになれなくて。どうしても周りと比べてしまったり、周囲の顔色や反応を伺ってしまう自分の根本的な性格もあるのですが、色んな面で「歌はなあ……」という感じでしたね。

――でも、声優のお仕事には歌が含まれることも多いですよね。

 もちろん私もマルチに活動できる声優さんになれたらいいな、という夢は持っていたのですが、なぜかそこに歌が含まれる意識がなかったんですよね。よくよく考えると“歌”って声優さんのお仕事の中でも結構必要なことだと思うんですけど(笑)。実際に声優の専門学校に通っていたときは歌の授業もあったんですけど、自分がそういう仕事をしている想像をまったくしておらず。今、自分が“岬 なこ”というアーティストとして歌を歌わせていただいている事実は、多分、自分が一番実感がないです(笑)。

――昨年に11月には初のワンマンライブを開催して、今年に入ってからは“リスアニ!LIVE 2024”や“ANIMAX MUSIX 2024 SPRING”といった大きなステージも経験されているのに、まだ受け止められていないと(笑)。

 もちろん表現することはすごく好きなので、ステージに立つときは「今のこの瞬間を最高に楽しくしよう!」と思うんですけど、「これから歌をうたうぞ!」と思ってステージに立つことはあまりなくて。あんなに大きな舞台に立てるとは、今でも思い出すだけで変な汗をかいちゃいそうです(笑)。

――声優としてキャラクターを背負って歌うときとは、また気持ちが違うわけですか?

 キャラクターを背負って歌う時は、そのキャラクターのバックボーンや性格を踏まえて私が代弁して歌う、一緒に頑張っているような感覚があるので、自然と口から色んな表現が出てくるんです。でも、いざ“岬 なこ”として歌うとなったら、考えれば考えるほど答えが出てこなくて。自分の歌から入っていないからこそ余計に掴むのが難しいのかもしれないです。

――まだ自分自身の歌を模索している段階なんですね。これまでアーティスト活動を行っていくなかで、歌やアーティスト活動に対する意識に変化はありましたか?

 一番大きく「あ、私はアーティストになったんだ」と思ったのは、デビューアルバムの『day to YOU』が実際に完成して皆さんの元に届いたときでした。レコーディングでは1曲1曲に対してどういう解釈で歌うか向き合いながらの制作だったのですが、いざ完成してみたら、アルバム自体が皆さんの1日を彩るようなコンセプトで作られたものだったので、演技とはまた違った形で、私の声を通して皆さんに何か影響を与えられたことを、コメントやお手紙を読んで初めて実感できて。少しは進めているのかなあって思いました。

――客観的な意見を受けてようやく自分の歌を認められるようになったと。

 私は自分に対してすごく甘いんですよ。めんどくさいと思ったら何もしないですし、今日は甘いものが食べたいなあと思ったら全力で食べますし(笑)。でも、そのぶん、自分に対して厳しい部分もあって、だからこそ自分の歌を認めてあげられない部分があったんです。そんななかで、応援してくださっている皆さんの言葉が心に溜まっていって、やっと自分のことをちゃんと見てあげられているように感じます。

――今はどの程度、自分の歌を受け入れられていますか?

 軽くハイタッチできるくらいで、まだハグはできないですね(笑)。例えば子供の頃からピーマンが嫌いだったとして、それを好きになるのは相当難しいことだと思うんですよ。ずっと目を背けてきたものに対して、少しの期間ちゃんと向き合っただけでプラスに変えられるかというと、それは簡単なことではなくて。なので一気に好きになろうと思うのではなくて、自分が「いいな」と思えるところを少しずつ積み重ねていって、最終的に私の歌を自分で好きになれたらいいなと思っています。

――向き合い方がすごく真摯ですよね。

 どうなんでしょうね。基本ずーっと細目でしか向き合っていないので(笑)。

――あまりはっきり見たくはないと(笑)。ちなみに音楽はどういうものに触れて育ってきたのですか?

 自発的に好きになるというよりも、周りの影響を受けて音楽を聴くことが多かったので、よく耳にしていたのは家族が好きなアーティストですね。例を出すと、お母さんが好きなaikoさん、お姉ちゃんが学生のときによく聴いていた倖田來未さん、お父さんはC&Kとかちょっとレゲエっぽいものを聴いていて。あとは小さい頃からダンスをやっていた影響もあって、ノリやすい音楽を「この音楽でかっこ良く踊れたらいいなあ」という感じで聴いていました。

――ダンスは何系をやっていたのでしょうか。

 メインはずっとヒップホップですね。途中からジャズもちょっとやっていましたけど、本当にかじる程度だったので。

――ということはヒップホップやR&Bなども馴染みが深い?

 だと思います。ビートががっつり刻まれている曲が好きなので。それこそ実家にいた頃は、親がラジオ好きなので、家でも車の中でもずっとラジオ番組が流れていて。その他にも学生のとき、友達にボカロを薦められて好きになりました。

――それこそアルバムではボカロPのナノウさんに「HURRAY!」という楽曲を書いてもらっていますね。

 そうなんです!自分があの頃に聴いていた楽曲を作った方に作ってもらえるとは思ってもみなくて、最初に聞いたときは「どうしましょう?」と思いました(笑)。ナノウさんの「ハロ/ハワユ」という楽曲は、私が学生の頃に初めてアプリを使って自分で歌を録音した曲なんですよ。ハモリパートも含めて全部自分で歌って。別にどこにも公開しなかったですし、もうデータも残っていないんですけど(笑)。ただ自分が気持ち良く歌いたいだけっていう。

――「ハロ/ハワユ」以外にも自分で歌を録ったりしていたのですか?

 HoneyWorksさんの曲が多かったです。そのタイミングでCHiCOさんにもハマったのもありますし、楽曲と楽曲が繋がっていくストーリー性に惹かれて。

――そういった自分の音楽の趣味が今のアーティスト活動に反映されていると思いますか?

 ……されていたらいいなあと思います(笑)。色んな楽曲を聴いていたし、ダンスもずっとやっていたからこそ、どんな楽曲でもすぐリズムに乗ることはできますけど、それくらいですね。

――でも、まだヒップホップダンスに合いそうな楽曲はないですよね。

 そうですね。デビューアルバムでガチガチのヒップホップを収録したら、多分皆さんの一日が荒れ狂うことになってしまうので(笑)。なのでこれから少しずつ、色んな可能性を求めて、色んな楽曲に挑戦するんだろうなと思っています。

――アーティスト活動を行うなかで、“歌”や“音楽”で表現を行うにあたって大切にしていることはありますか?

 これはキャラクターを背負う/背負わないに限らずなのですが、私は歌のお仕事に携わるようになった最初のときから、“歌をうたおうとしない”というマインドを大切にしていまして。

――歌のお仕事なのに、歌をうたおうとしない……なんか禅問答みたいですね。

 言葉にすると「何を言っているんだ?」という感じだと思うんですけど(笑)。多分、私自身が「歌は苦手……」と考え込んでしまうがゆえに、「今からこの楽曲を歌います」ということを意識してしまうと変に凝り固まってしまって、気持ちも体も硬くなってしまうので、歌をうたうのではなくて何か言葉を語りかけるように、日常会話のさりげない一言を言うように、どちらかと言うと朗読やセリフに近い感覚でレコーディングやライブに臨んでいて。今ではほぼ無意識でそれをやっています。

――なるほど。それは声優ならではのアプローチかもしれないですね。“歌”を“歌”として意識しないやり方が、今の自分には合っていると。

 「合っている」というよりも、これ以外に選択肢がない感じなんですけど(笑)。でも合っているんだと思います。これは多分、私が歌への苦手意識があるからこそ辿り着いた答えだと思っていて。みんな違ってみんないい。向き合い方も歌い方も、人にとって表現の仕方が違うからこそ、その魅力が引き立つと思うので、私も違う光になれていたらいいなと思います。

――ファンの皆さんに音楽を通じて伝えたいことはありますか?

 私が伝えたいのは「みんな違ってみんないいんだよ」ということで。私も悔しかったり落ち込んだときに音楽に背中を押されたり、今でも色んなアーティストさんの楽曲を聴いて自分を鼓舞して奮い立たせることがよくあるんですけど、私も色んな方の色んな人生のちょっとした彩りや支えになれたらいいなあと思っていて。それは歌に限らず、私が今世で生きていくうえで掲げている人生のテーマでもありますね。

アーティスト・岬 なこをより深く知るための3曲

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