近藤玲奈が見せる表現者としての凄み――TVアニメ『事情を知らない転校生がグイグイくる。』OPテーマ「アルコルとポラリス」に迫る

闇深さが全開!?　捻じれた愛を表現したカップリング曲

――シングルのカップリング曲「LemonAid LOVE」についてもお伺いさせてください。こちらは表題曲とはまったく趣きの異なる、どこか危うい雰囲気の情熱的なラブソングです。

近藤　でも面白いのが、登場人物の関係性みたいなものは表題曲と似ていると思うんです。なので私は、表題曲から時間が経って、女の子側の好きな人への想いが捻じれてしまった結果、こうなってしまったんじゃないかな？っていう妄想をしています（笑）。このままだとバッドエンドになりそうな……。

――バッドエンド寄りなんですね。

近藤　想いが強くなりすぎたからこその、女の子の苦しむ気持ちと言うか、執着心がすごく出ている楽曲だと思うので……私はこの「LemonAid LOVE」がめちゃくちゃ推しなんですよ。

――近藤さんの闇深さは『11次元のLena』でも伝わってきたので、ある意味、すごく納得です（笑）。

近藤　そうなんですよ、私はこういう要素があると喜んでしまうんです（笑）。カップリング曲についてはほかにも候補がたくさんあったのですが、「LemonAid LOVE」はイントロが流れた瞬間に「これ！」って決めたくらいで。私は好きな楽曲の場合、聴き始めて3秒でピンとくるタイプなんです。

――即決だったんですね。

近藤　好きすぎるからこその捻じれた愛が描かれた歌詞も素敵だなと思って。自分も好きなものには執着してしまうタイプなのですが、「LemonAid LOVE」を歌うにあたって、想う対象を決めなくちゃいけないと思ったんです。でも、気付いたらその対象が自分の中にすでにあって。

――というのは？

近藤　私は『アキバ冥途戦争』に登場する（万年）嵐子さんのことが、ガチ恋と言っていいくらい大好きでして（笑）。ちょうどそのアニメの放送時期に、この楽曲のレコーディングを行ったこともあって、実は嵐子さんのことを想いながらこの曲を歌ったんです。そういう具体的な対象がいたからこそ、感情を爆発させながら歌うことができました。

――近藤さんは『アキバ冥途戦争』に主人公の和平なごみ役で出演されていましたが、歌うときはキャラクターではなく、近藤玲奈として歌ったわけですよね。

近藤　はい。嵐子さんは、近藤玲奈という人物を認識していないので、私のことなんか視界にも入っていないんですよ。私はこんなにも想っているのに、相手は私の存在すら知らないし、住んでいる世界も違う。二次元のキャラクターに恋をすると、本当にそれが苦しくて……なのでその気持ちを全部吐露したような曲です（笑）。歌詞にある“歪だとしてもいいワタシのことだけを想ってくれたなら”の、「私のことを想ってくれるのであればどんな形でもいいよ」っていう気持ちも「超わかる！」と思いながら歌いました（笑）。

――なかなか業が深いといいますか、かなり捻じれた愛の歌ですね（笑）。なごみにとっても嵐子は大切な存在でしたが、まさか近藤さんがそこまで嵐子さんラブだったとは。

近藤　『アキバ冥途戦争』の放送中は、リアルタイムでアニメを観たあとにそのまま寝るのが習慣になっていたのですが、たしか第4話くらいから、嵐子さんが夢に出てくるようになったんです。それで、私が敵に囲まれて「死ぬかも……」っていう状況のときに、嵐子さんが助けに来てくれる夢を見て。そのときに「嵐子さんが私の存在を認識してくれている！」と思いましたし、起きてからも夢を思い出して「また会いたい」と思って……これは恋だなって気付きました（笑）。夢なら次元を超えて会うことができるので、本当に「夢、ありがとう！」って感じです。

――それほどまでの想いがこの楽曲に込められているとは思いませんでした。

近藤　自分的にも熱が入っていたので、テストで歌ったタイミングから、ディレクターの方に「今日はノリノリですね」と言っていただいたくらいです（笑）。

――「アルコルとポラリス」はかわいらしさを感じさせるアプローチでしたが、こちらの楽曲の歌声は大人っぽいですよね。

近藤　表題曲の女の子も、時間が経って大人になることで、こうなってしまう可能性があると思うんですよ。タイトルはかわいらしいのですが、歌詞はすごく重い内容で、愛よりも強いものを求めている怖さというか、「愛を超えたら何があるんだろう？」ということを考えさせる部分があって……。

――近藤さん自身も共感できる部分があるのでしょうか？

近藤　私も、自分のことをどういう形でもいいから見てほしい、みたいな部分はあると思っていて。でも、私は人に対してコミュニケーションをグイグイ求めていくのではなくて、どちらかと言うと控えめなタイプなので、例えすごく好きな人がいたとしても、多分自分からアピールはしないだろうし、それができないんですよね。しかも、そのぶん、自分の内側に気持ちがすごく募っていくというか。私はこんなに気持ちを持っているのに、相手は私のことを何とも思っていない辛さ。でも、自分から「こっちを見てほしい」と言うのも違うんですよ……そんな私と同じタイプの人たちは絶対に共感してくれる楽曲だと思います（笑）。

――わかりました（笑）。その意味では、2曲が表裏一体になっている部分もありつつ、それぞれで全然違った一面を表現できたシングルになりましたね。

近藤　今までリリースしてきた楽曲とは違ったものにしたいと思っていましたし、今後も新曲を作る機会があったとしたら、また違った近藤玲奈の一面を見せられるように、常に自分を更新していきたいなと思っています。

――次はどんな楽曲を歌ってみたいですか？

近藤　私は最近、K-POPをよく聴いているので、K-POPの楽曲によくあるようなバチバチのラップ曲にも挑戦してみたいです。今回のアーティスト写真の衣装もK-POPを意識しまして、メイクも韓国のメイクさんのYouTubeとかを観ながらたくさん勉強したんです。私は好きすぎると「それになりたい！」ってなるんですよ。なので今回は私のこだわりがたくさん詰まっています。

――ほかにも今後アーティスト活動を通して挑戦してみたいことはありますか？

近藤　『11次元のLena』で1曲作詞を担当させていただいたのですが（「僕が愛される日は」）、作詞もまたやってみたいんですよね。なんなら作曲をやってみたい気持ちもあって……。

――おお！作曲の経験はあるのですか？

近藤　いえ、楽器はできないので、やるのであれば自分で考えた歌のメロディに歌詞を乗せて作ってみたいです。

――自分で何かをクリエイトしたい気持ちが強いのでしょうか。

近藤　だと思います。私はドラマやアニメを観たり、音楽を聴いていると、無意識にじっとしていられなくて、その作品の中の人物になりきってしまうんです。ドラマを観ていると「自分もこの役をやってみたい」「自分がこの役をやったらどうなるんだろう」と気になって、突然立ち上がって、セリフをマネしたりしていて。傍から見ると本当に変人なのですが（笑）、今は自分だけの表現したい世界を作り出したい欲求があります。

――近藤さんは根っからの役者であり、表現者なんでしょうね。そういえばYouTubeの公式チャンネルにアップしているVlogも、自分で映像編集をされているんですよね？

近藤　そうなんです。気づいたら自分でできるようになっていました。

――気づいたら!?

近藤　はい（笑）。でもアプリ1つあればできるので、時間はかかりますけど、楽しく作業しています。自分に対するツッコミの字幕を付けたりするのも、私が自分でやるからこそ面白い部分があるんじゃないかと思って、自分でやりたくなっちゃうんです。だからいつか作曲も自分でできたらいいなと思います。

●リリース情報
近藤玲奈 2nd Single
「アルコルとポラリス」
4月5日発売

■mora
通常／配信リンクはこちら

品番：COCC-18069
価格：￥1,650（税込）

＜収録内容＞
1.アルコルとポラリス（TVアニメ「事情を知らない転校生がグイグイくる。」OPテーマ）作詞・作曲・編曲:hisakuni
2.LemonAid LOVE
作詞：藤村鼓乃美　作曲・編曲:鶴﨑輝一
3.アルコルとポラリス(Instrumental)
4.LemonAid LOVE(Instrumental)

●作品情報
TVアニメ「事情を知らない転校生がグイグイくる。」
2023年4月から TOKYO MX、読売テレビ、テレビ愛知、BS フジ、アニマックスにて放送スタート！

＜イントロダクション＞
Twitterで話題となり、月刊「ガンガン JOKER」で連載開始。これまでの累計PV数は2億以上。
転校生の高田くんは知らない。
クラスメイトの西村さんが、何故かクラスの皆から「死神」と呼ばれていることを。
「死神」だなんて……なんてかっこいいあだななんだ！
からかわれてる女の子。クスクス笑うクラスメイト。
転校生の高田くんは、そんなクラスの事情は知らない。
無知で、素直は、最強だ。
だからまっすぐ、彼女に届く。
そんな小学校の教室から始まる物語は、誰もがあの頃を思い出し、心にまっすぐ届いてくる。

【スタッフ】
原作:川村拓(掲載月刊「ガンガン JOKER」スクウェア・エニックス刊)
監督:影山楙倫
助監督:川西泰二
シリーズ構成:ヤスカワショウゴ、ほしかわたかふみ
キャラクターデザイン:嘉手苅睦
音楽:増田俊郎
美術監督:呂佳芳
色彩設計:柳井皓太
撮影監督:川田哲矢
編集:柳圭介
音響監督:原口昇
アニメーション制作:スタジオサインポスト

【キャスト】
西村茜:小原好美
高田太陽:石上静香
日野大地:河西健吾
安達海美:近藤玲奈
笠原すみれ：丸岡和佳奈
北川虎太郎：天﨑滉平
高田雪子：種﨑敦美
茜の父：福山潤