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INTERVIEW

2023.03.24

佐藤拓也がFYA’M’として駆け抜けた時間――3年目を迎える「アオペラ」への想いやゴスペラーズとの出会いを振り返る

佐藤拓也がFYA’M’として駆け抜けた時間――3年目を迎える「アオペラ」への想いやゴスペラーズとの出会いを振り返る

「青春」×「アカペラ」、純度100%の最強ボイスエンタテインメント「アオペラ -aoppella!?-」(以下、「アオペラ」)。まもなく3年目に突入する本コンテンツで私立奏ヶ坂中学高等学校のアカペラユニット・FYA’M’で部長兼バンドリーダーを担う宗円寺朝晴。都立音和高校のリルハピでベースを担当する宗円寺雨夜の双子の兄であり、にこやかな笑みをたたえた表情が印象的な朝晴を演じるのは佐藤拓也。コンテンツのスタートからFYA’M’として駆け抜けた時間のこと、ゴスペラーズとの出会いから最新作『アオペラ5』についてまで、余すことなく語ってもらった。

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INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ

初挑戦のアカペラは、大変さも挑戦も含めて毎回楽しさでいっぱい

——2021年3月4日にプロジェクトがスタートした「アオペラ」ですが、アカペラをやってきた今日までというのはどのような時間でしたか?

佐藤拓也 昨今、声優によるステージパフォーマンスというのはだいぶ一般的になってきたなと思っていたのですが、どんどん裾野が広がっていくなかでまさか「アカペラ」があるとは。そのコンテンツに僕がキャスティングされるというのは、すごく驚きを持って受け取りました。いざやってみると、「声優向き」と言い切ってしまうのも難しいですが、1つずつのパートや声を重ねていきみんなで1つの作品を作るというのは、日ごろ我々がマイク前でやっていることと重なる部分があるなと思いましたし、そういう部分もあってレコーディングを重ねるごとに面白くなっていったなと思っています。

——アカペラで音楽の構造を知っていくことになり、それによってご自身の音楽の聴き方への変化はありましたか?

佐藤 元々音楽を聴くときに、メインボーカルよりもドラムやベースに耳がいくような音楽の好みでもあるんですね。そうするとやっぱりコーラスラインも気になっていくので、各パートの居方や出方も意識してしまうんです。どれくらい前に出ていいものか、という匙加減やバランスについては、宗円寺朝晴として4thリードという場を与えられたときに、どれだけ自分の歌い方を主張していいのかを、改めて音楽を聴くうえでの視点として増えたものだなと思いますね。

——そうして歌に向き合われてきた佐藤さんですが、「アオペラ」で知ったアカペラの面白さと難しさについて教えてください。

佐藤 レコーディングはどうしても1人ずつになるので、ヘッドホンで音源と呼ばれるものを聴くときにも自分のパート+リズムのクリックくらいしか流れていなくて。実際にどうすればこの曲に帰結していくのか、と最初はすごく手探り感があったんですけど、ユニットのみんなの声が集まったものを聴いたときにすごく興奮するんですよね。「みんなで作った!」という達成感と、充実感みたいなものがすごく曲の中に満ちている気がして。そうすると「次も頑張りたいよね」という意識へと繋がっていく。それが面白さだと思いますね。

——では、難しさというと?

佐藤 コーラスだからと遠慮しすぎてもいけないし、かといってリードボーカルだからとドンと派手にやっていいのかというとそうでもなくて。一般的な歌唱よりは、自分以外の人たちのことを考える頭の面積を大きくしておかなきゃいけないんですね。歌いながらも人のことを考える。難しさというよりも、これまでにはなかった意識が生まれたなと思いますね。

——同時に魅力に思う部分も伺おうと思ったのですが、面白さも難しさも総じて魅力になっているのかな、と感じますね。

佐藤 難しいから面白い、というところがあるんですよね。何回もチャレンジしていって、その曲の中での最適解みたいなものは自分の中にあるんですけれども、みんなの声をもらったときに「そういうアプローチもあったよね」という発見が毎回あるし、FYA’M’に限らずリルハピもそうですが、他人のパフォーマンスを聴いたときに「素敵だな」「素晴らしいな」と心から拍手したくなる気持ちが生まれるので、それは素敵な共演者の中でやらせてもらっていることが大きいと思います。

——その「アオペラ」で佐藤さんが演じている宗円寺朝晴について、演じる際にはどのようなことを意識されているかをお聞かせください。

佐藤 演じるときは、動じないことを意識しています。ずっとマイペース。かといってリーダーだから、と超然としているかというと必ずしもそうではなくて、年齢相応の脆さみたいなものも内包している人なので、大人になりきらないけれど周りからみるとすごく大人っぽく見えるよね、という塩梅を探っています。でも周りが朝晴を盛り立ててくれて、信頼してくれていることが大前提としてあるので、全部を自分で決めるというよりも周りのみんなを信頼して任せるようなところがあって。いざとなったら口を出すくらいの匙加減の人なので、俺様タイプというよりも陰の実力者というリーダー像でもあります。

宗円寺朝晴

宗円寺朝晴

——では歌う際にはどのようなことを意識されていますか?

佐藤 FYA’M’が比較的大人っぽい楽曲が多いこともありますが、若さの中にある余裕や伸びしろみたいなものを表現できればなと思っていて。それは大きくゆったりかっこよく歌うということではなくて。歌声から朝晴自身もみんなで声を合わせて1つの世界を作るアカペラが大好きなんだなっていうことが滲むことが一番なんですよね。その「楽しい」「好き」という気持ちが、大人っぽい曲の中の若さとして出したい、という意識でいます。

——歌っていて、弟・雨夜の存在を意識されることはありますか?それこそ弟の存在もあって「余裕」が出てくるのかなとも思いますが。

佐藤 僕が朝晴然として歌う際には、そこはカットしていますね。メンバーと、そのパフォーマンスを聴いてくれるであろう人たちのことに集中しているかなぁ、と思います。むしろ弟の存在が常にあると、もしかしたらそこに普段の朝晴くんの、彼が自覚していないけれど持っている弟への甘えみたいなものが生まれてしまう気もするので、そこは努めて考えずに、目の前で行われていることに集中するようにしています。だって朝晴くんを形成している大切な存在ですし、雨夜くんへの甘えってどうしたってあるはずですから。

——双子の弟が別の学校でまったく違うタイプの楽曲を歌っている、というのは朝晴を演じていていかがですか?

佐藤 面白いですよね。お互いにああしろ、こうしろというわけでもなく、変に遠ざけるでも干渉するでもなく、「兄さんはこれが好き」「雨夜くんはこれが好き」みたいな部分も尊重している気がするので、ほぼ見分けのつかない双子であっても個性は確かにあるということを感じられて、僕は素敵だなと思っています。

「FYA’M’のメンバーにはリスペクトしかない」

——ここまで共に音楽を紡いできたFYA’M’ですが、まずはFYA’M’の楽曲の印象を教えてください。

佐藤 高校生なりの、「僕らが憧れている大人ってこういう印象です」みたいなものを頑張って表現していますよね。大人が等身大の、ウェットな世界を表現しているのとは違って、「僕らはこういう大人をかっこいいと思っているんです」という憧れみたいなものを表現しているんだろうなって感じます。リルハピは、彼らのそれまで生きてきて好きだと感じたものをぽんぽんとストレ-トにぶつけるユニットだとするならば、早く大人になってみたい気持ちがある人たちなのかなっていう捉え方をしています。

——メンバーに対してはいかがですか?一緒に曲を紡いで。

佐藤 めちゃめちゃすごいですよ!上手!いや、上手なのはたしかですが、それよりもさらに「まだ持っているのかよ!」と楽曲ごとに驚かされています。(仲村)宗悟くんにしても、濱野(大輝)くんにしても、絶対にあの2人がいれば、彼らの作った土台があれば、その上でどんなに跳ねても踊っても平気だという絶対的な信頼感がある。リード組もそれぞれの音色が違うので、4人いるリードみんなの音がそれぞれ「ここにいるよ」って感じられるときと、それが溶けて交じり合うときの気持ち良さはどちらもやっぱりたまらないなって思っています。どのパートを預けてもやれてしまう人たちなので、メンバーにはリスペクトしかないです。特に濱野大輝という楽器を、ここまでフルスペックで使えるコンテンツってそう多くないと思っていて。「ずるいな、素敵だな、めちゃくちゃ良いじゃん!」って思っています。

——プロジェクトスタートから共に走ってきたリルハピ、そして新星・VadLipの印象もお聞かせください。

佐藤 リルハピは「アオペラ」という世界の芯ですから。センターチームだと思っていますので、彼らという大黒柱がいてくれるおかげでFYA’M’もVadLipも好き勝手ができると思っています。もちろんリルハピも、自分たちの好きな音楽を追求していると思うんですけど、大人になるとちょっとこそばゆく感じてしまうくらいの爽やかさがあって、それは聴く人の世代によっても感じ方が変わる音楽だと思っています。リアルな年代の人にも素直に受け入れてもらえると思うし、大人の人たちからするとちょっとした懐かしさと共に「こういう気持ちがあったよね」ということを感じて元気をもらえて、また明日に迎えるようなユニットだなって思っています。

——VadLipはいかがですか?

佐藤 いやぁ……底知れない。まだ先行の2ユニットほど楽曲がないにも関わらず、圧倒的な存在感を見せつけてきていますよね。それとメンバーが分厚い!分厚すぎる!ということもあって、同じ作品を構成するメンバーとしてもこれほど頼りになる第三勢力もないだろうと思っています。初めてMVで楽曲を聴いたときには、本当に拍手したくなるくらい素晴らしかったので、彼らから学ぶこともたくさんあると思うし、よくぞ来てくれました!という想いです。

3年目に突入し、成長したFYA’M’を感じさせる『アオペラ5』

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