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INTERVIEW

2022.12.07

【対談】ボカロP・ぬゆりがLanndo名義の1stアルバム『ULTRAPANIC』リリース!親交のある須田景凪とのスペシャル対談が実現!

【対談】ボカロP・ぬゆりがLanndo名義の1stアルバム『ULTRAPANIC』リリース!親交のある須田景凪とのスペシャル対談が実現!

「フラジール」「フィクサー」「ロウワー」などのボカロヒット曲で知られるほか、ずっと真夜中でいいのに。「秒針を噛む」の作編曲にも携わるなど(作曲はACAねとの共作)、幅広い活動で知られるボカロP・ぬゆり。彼がソロプロジェクトのLanndo(ランド)名義による1stアルバム『ULTRAPANIC』を完成させた。

ACAね(ずっと真夜中でいいのに。)、Eve、suis(ヨルシカ)、キタニタツヤ、Reol、びす、七滝今ら豪華ゲストボーカリストを各楽曲に迎え、中毒性の高いメロディと独創的なグルーヴを備えたポップチューンが詰め込まれた本作。そのうちTVアニメ『シャドウバースF』のOPテーマ「心眼」と、感傷的なバラード曲「冬海」で歌唱を担当したのが、バルーン名義の活動でも知られる須田景凪だ。

今回は、共にボカロP/アーティストとしての顔を持ち、2022年4月にはバルーン×ぬゆりとしてのコラボ曲「ミザン」を発表するなど、かねてより交流を深めていた2人の対談を実施。アルバム収録曲「冬海」「心眼」の話題を中心に、お互いのクリエイティビティについて幅広く語り合ってもらった。

友人同士の2人が感じる、お互いの音楽家としての印象

――お二人はTVアニメ『シャドウバースF』のOPテーマ「心眼」でコラボする前から面識はあったのですが?

須田景凪 2015~2016年頃の「ボマス(THE VOC@LOiD M@STER)」(※ボーカロイドの同人イベント)で、お互い出展していたときに挨拶したのが最初でした。その数年後に共通の知り合いを介して、ネット上で一緒にゲームで遊ぶ仲になって。なので別に音楽を一緒にやろうみたいな話は全然していなくて、普通の友達という感覚でした。

ぬゆり そこから少し踏み込むではないですけど、僕がLanndoとして発表したい楽曲のなかに、須田さんに歌ってほしいと感じたものがあったので、「この曲を歌ってほしいんだけど」とお願いしたのが、今回のアルバムに収録している「冬海」だったんです。そのときにちょうど『シャドウバースF』のタイアップのお話をいただいたので、須田さんにお声がけして一緒に作ったのが「心眼」でした。

――「冬海」のほうが先にあったんですね。話を少し戻して、「ボマス」で直接知り合われた当時は、お互いの音楽や活動に対してどんな印象をお持ちでしたか?

須田 個人的には、当時ちょうど同じくらいの立ち位置にいたような気がしていて。ただ、お互いジャンルが全然違ったので、良い意味でライバル視するような気持ちはなかったし、シンプルに楽曲が好きだったので、映像作家のアボガド6さんと一緒に挨拶に行った記憶があります。

ぬゆり あのときはびっくりしました。僕は当時、バルーン(須田)さんのことを雲の上の人くらいに感じていたので。

須田 いやいや、そんなことないから(笑)。

ぬゆり たしかにそのときは「シャルル」(※須田が2016年10月にバルーン名義で発表した楽曲)よりも前のことだったんですけど……僕は当時、ニコニコ動画のマイリスト登録数が1,000を超えられない人だったんですけど、バルーンさんは1,000を超えていて、自分の中ではそのラインが大きかったんです。だから「有名な人」という印象があって。

須田 でも、そう言われると俺も同じようなことを思っていたかも。ぬゆりには「フラジール」とか有名な曲がたくさんあるけど、自分がぬゆりの存在を初めて知ったのは、「DE-Pression」という攻めたギターロックの楽曲で。その頃からエレクトロっぽいものも作っていたし、色んなことができる人という印象があったので、その意味でクリエイターとして尊敬していたから。自分は当時、いわゆるバンドセット+シンセサイザーという王道の編曲が特に多い時期だったので。

ぬゆり ありがとう(照れ笑い)。ただ、僕は当時、自分の固定ジャンルがないことに対してコンプレックスを感じていて。何か自分の芯になるジャンルを作ろうとしても、どうしても同じような曲ばかりになってしまっていたので、バルーンさんみたいに自分らしいギターロックの楽曲を何曲も作れる人に憧れもありました。

静謐と激情が同居した初のコラボ曲「冬海」

――ぬゆりさんはLanndoを立ち上げた当初、ご自身でボーカルも担当することが多かったですが、今回のアルバム『ULTRAPANIC』は、ほぼ全曲で須田さんをはじめとしたゲストボーカルを迎えています。これにはどのような心境の変化があったのでしょうか。

ぬゆり 最初は自分で歌うことに興味があったのですが、挑戦していくなかで、どうしても上手くいかないと感じることが多くなってしまって(苦笑)。もちろん自分で歌うこと自体にも意味はあると思うのですが、今回は自分が表現したいものに対して一番良いアプローチができる方にお願いしたくて、各楽曲のイメージに合う方々にお願いしました。ただ、アルバムを作るなかで、最後の1曲(「ロウワー」)だけは自分で歌おうと考えていました。

須田 自分の中では、Lanndoはぬゆりのソロ名義というよりも、ぬゆりが人間を介して音楽を作るプロジェクトという意識なのかな、と勝手に感じていて。

ぬゆり そうなんです。まずLanndoを始めるときにコンセプトとして考えていたのが、「できるだけ人の力を借りよう」ということで。というのも、ボカロPとして活動していると、マスタリングや一部の楽器演奏を外注するくらいで、どうしても1人での制作になってしまうので、それを続けているとマンネリ化してしまうと感じたんです。なのでLanndoでは、楽器の演奏やミックスなどは自分以外の方にお願いするスタイルを取っているんです。

――先ほどのお話によると、須田さんとは「冬海」で先にご一緒されたそうですが、なぜこの曲を須田さんに歌ってもらいたいと思ったのですか?

ぬゆり そもそも、作品を作るうえで、自分とコミュニケーションが上手く取れる人で、なおかつ音楽的にも信頼している方にお願いしたい気持ちがあって。須田さんの音楽は昔から大好きですし、歌声もすごくかっこ良くて、特にサビの爆発力がすごいじゃないですか。僕は須田さんの歌声を思い出そうとすると、まずサビの歌声が頭に浮かぶんです(笑)。「冬海」もA・Bメロは落ち着いた感じだけど、サビで一気に広がりが生まれる楽曲なので、この曲には須田さんだなと思いました。

須田 ゲストボーカルとして誰かの楽曲で歌うのは初めての経験だったんですけど、それが友達のぬゆりの楽曲でできたのはすごく嬉しかったですね。これがもし自分とは遠い人からのオファーだったとしたら、もう少し、仕事という感覚にもなっていたと思うので。

――「冬海」は、切ない雰囲気が漂うミディアムバラードですが、どんなイメージで制作したのでしょうか。

ぬゆり 今回のアルバムは、まず「こういう曲が作りたい!」という気持ちを優先して楽曲を制作して、そこからアルバムの形にまとめていったのですが、「冬海」に関しては、最初にピアノのイントロを作ったんです。そのメロディが今までの自分にはあまりないものだったので、それを活かせるような曲調、ゆっくりめのテンポでちゃんとした和声のストリングスを入れた楽曲に挑戦したいと思って作った曲になります。

須田 独特な曲だよね。

ぬゆり あまりにも今までの自分とはかけ離れた曲調だったので、最初は須田さんに「歌だけじゃなくて編曲も一緒にやってくれない?」とお声がけしたんですけど、「編曲はこれでいいと思うよ」って言っててくれて。

須田 そう。そのときにもらったのは、まだ生音で録っていないデモ音源だったんですけど、別にそのままでもめちゃくちゃかっこ良かったので、「これは俺が入る隙間はないよ」っていう話をして。

ぬゆり それを聞いてちょっと自信がつきました(笑)。

――いい話です(笑)。須田さんは最初に楽曲を聴いてどんな印象を抱きましたか?

須田 話をもらったときは、それこそ「フラジール」みたいなアッパーな曲がくるのかな?と思っていたんですけど、音源を聴いたら、今までのぬゆりの楽曲で言うと「さいしょへ」に少し近い感じ、いわゆるみんなが想像するぬゆり節というよりも、歌ものに全振りしたものがきたなと思いました。特に落ちサビの歌声を10人分くらい重ねるところは、とんでもないことをお願いしてくれたなと思いつつ(笑)、自分としては、我を出すよりもぬゆりの解釈通りに歌いたかったので、ぬゆりの見ている景色を誤差なく表現できるように臨みました。

ぬゆり 歌入れのレコーディングの前日に、須田さんが「こんな感じでいい?」って確認の音源を送ってきてくれて。その歌を聴いたときに、これはキーを上げたほうが良くなるかも、という直感があったので、「ちょっと苦しいかもしれないけど……」って相談させてもらって(笑)。結果的に理想通りのものが出来上がりました。

――歌詞に目を向けると、感傷的な気持ちが描かれているように感じました。

ぬゆり 僕はいつも楽曲を全部書き上げたあとに歌詞を書くタイプで、書きながら「この曲って何なんだろう?」と考えるタームに入るんです。「冬海」もそうやってできた曲で、激情的な曲ではありますけど、最終的には失望で終わる曲にしたいというのがありました。

――須田さんの歌声も、温かみを含めた感情の揺らぎを感じさせつつ、ある種の喪失感というか、諦めのような部分が滲んでいるように感じました。

須田 それは、自分というよりも、ぬゆりのメロディと言葉の親和性が強いからだと思います。ぬゆりの楽曲は失望や諦めをテーマにしたものが多い印象ですけど、個人的には今回初めて歌わせてもらったことで、このメロディと言葉の組み合わせだからこそ、より悲しく聴こえるんだということに気づいて、腑に落ちた感覚がありました。

次ページ:ぬゆりらしさ全開の独創的なアニメソング「心眼」

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