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2022.01.06

【ライブレポート】愛を歌い続けてきた旅路の果て――茅原実里、“Minori Chihara the Last Live 2021 ~Re:Contact~”ライブレポート。彼女の音楽は色褪せることなく、希望ある未来を描きながら生き続ける

【ライブレポート】愛を歌い続けてきた旅路の果て――茅原実里、“Minori Chihara the Last Live 2021 ~Re:Contact~”ライブレポート。彼女の音楽は色褪せることなく、希望ある未来を描きながら生き続ける

2007年、ランティスからアーティストデビューし約15年、声優・茅原実里は常に音楽とともにあった。自身が心から愛し、長きにわたって多くの人々から愛されてきた茅原実里の音楽――それが2021年12月26日に開催された“Minori Chihara the Last Live 2021 ~Re:Contact~”をもって、一旦のピリオドが打たれた。2000年代以降のシーンを牽引してきたアーティストとして、そのキャリアを総括する最後のライブで彼女はどんな姿を見せ、そしてどんな形の愛を歌ったのか。感動的なフィナーレ、その模様を徹底レポートする。

茅原実里の音楽という長きにわたる旅の終着点、会場となった神奈川県民ホールは、過去にカウントダウンライブなどが行われた思い出深い場所だ。多くの観客が詰めかけるなか、神秘的なシンセのSEが会場に流れる。一瞬のブレイクのあとに鳴らされたのは、最新作にして活動休止前最後の作品となったミニアルバム『Re:Contact』の冒頭を飾る「Re:Contact」のイントロだ。タイトルにある通り、茅原の2007年の名盤『Contact』の幕開けを連想させるコーラスとストリングスが会場内に満ちていくなか、ステージ上の薄い紗幕の向こう側にはバンド隊=CMB、そしてセンターに立つ茅原のシルエットが映る。そして紗幕が降り、茅原の「みんな!行くよー!」という号令とともにラストライブが幕を開けた。

「Re:Contact」は2007年のデビューシングル「純白サンクチュアリィ」以降、茅原の数々の名曲たちを生み出してきた菊田大介(Elements Garden)と畑 亜貴という黄金タッグによるもの。これまでずっと茅原の活動を見つめてきた2人によるはなむけを、茅原もタイトなバンドサウンドを背負いながら、力強くも前向きなボーカルを聴かせる。ラストライブがついに始まってしまったという感慨こそあれ、ウェットな要素は感じさせない、太陽のようにブライトで凛々しい彼女の魅力が前面に打ち出された幕開けとなった。“S.I.G.N.A.L. S.I.G.N.A.L.”という「Re:Contact」のアウトロが歌われ、その余韻のなかですぐさま聴こえてきたのは、またしても“S.I.G.N.A.L.”というリフレイン。こちらは『Contact』の冒頭を飾る表題曲「Contact」のイントロだ。「Re:Contact」から「Contact」へ、2021年から2007年へ――という彼女の過去と現在繋ぐ構成とタイミングの絶妙さは完璧さというほかなく、全身が総毛立つ感動があった。そしてもちろんそのあとには『Contact』の曲順通り「詩人の旅」へとシームレスに続いていく。彼女らしいハリのある高音も含めて、この一連の流れは間違いなくこの日のハイライトの1つで、歴史的名演に数えられると言っていいほどの素晴らしさがあった。

その後、同じく『Contact』収録の「too late? not late…」でダンサブルなサウンドに乗せて、当時から変わらぬ瑞々しい歌唱を聴かせたあとは最初のMCへ。「みんなに会えるのを楽しみにしていました」と笑顔を見せながら、「アニメ作品と一緒に歩んできた私にとっての大切な楽曲たちを聴いてください」と告げたあと、「みちしるべ」(TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ED主題歌)を披露し、穏やかなピアノの旋律とともに優しくも儚いボーカルを聴かせる。そこからはエモーショナルな人気曲「境界の彼方」(TVアニメ『境界の彼方』OPテーマ)、キラキラとしたサウンドが印象的な「この世界を僕らは待っていた」(TVアニメ『翠星のガルガンティア』OP主題歌)とアニメ主題歌を続けざまに披露した。彼女のライブではお馴染みのCMB紹介パートを挟んでから、前日がクリスマスということもあり、続いてはアニメーション映画『サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~』挿入歌でもある「キラキラ輝く、世界の時間」をしっとり聴かせる。そこから「Dears~ゆるやかな奇跡~」を披露し、『Re:Contact』から穏やかな日常を描いた「いつだって青空」へ。アコースティカルなサウンドに乗せて茅原の等身大の歌唱が沁みるパフォーマンスを見せて、一旦ステージを去った。

会場を包む穏やかな空気が、CMBによるプログレハードなインストパートで徐々に上昇していったのち、「Dream Wonder Formation」のシンセリフが鳴り響く。“電脳アリス”と“原点回帰”をコンセプトとした2012年のアルバム『D-Formation』に収録されたこの曲では、レッドの衣装に変えた茅原のボーカルも凛々しく響く。そこから荘厳なイントロダクションから「TERMINATED」、そして「Paradise lost」と鉄板曲を惜しみなく披露、ライブ中盤ながらクライマックスかのような熱量を客席に注ぎ込む。その盛り上がりに「ライブは最高だね」と噛み締めるように語ると、「声優として歌手として、私にたくさんのチャンスをくれた、私の未来を変えてくれた大切な曲を聴いてください」と告げて披露したのは、『涼宮ハルヒの憂鬱』から茅原が演じる長門有希のキャラクターソング「雪、無音、窓辺にて。」。2006年にランティスから発表されたこの曲こそが、茅原がアーティスト活動を本格化させる大きなきっかけであった、キャラソンながら彼女のキャリアにおいて重要な1曲だ。無機質なビートとボーカル、その陰に見られるエモーションは15年経った今も色褪せない輝きを放っている。そんなヒリヒリとした緊張感のまま、『Re:Contact』からデジタルサウンドと激情が合わさる「a・b・y」へと加速。情念の籠った歌唱でぐいぐいと引きつけたあとは、そのまま2007年のシングル「君がくれたあの日」へ。ここでも過去から現在、そしてまた過去へとハイスパートに行き来するスリリングな展開が続いた。

ハードな楽曲が続いたあとは一転して「FEEL YOUR FLAG」のハッピーなイントロが鳴り響き、「みんなー!フラッグ用意!」との号令。茅原のライブではお馴染みである“旗曲”の時間だ。観客も茅原と同じ白のフラッグを手にして、会場全体が一気に華やいだ景色となる。サビでは事前の練習がないなかステージ上の茅原と息のピッタリ合った旗振りがなされ、ピースフルな一体感に包まれた。そこから茅原が白いドレスに身を包んで再登場し、2008年のアルバム『Parade』から「Voyager train」を力強く披露。

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