リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2021.12.07

【インタビュー】巨匠・田中公平に訊く――「新サクラ大戦 the Stage ~二つの焔~」壮大なスケールの2.5次元文化へのビジョン、演者と役の“シンクロ”という独特な現象

【インタビュー】巨匠・田中公平に訊く――「新サクラ大戦 the Stage ~二つの焔~」壮大なスケールの2.5次元文化へのビジョン、演者と役の“シンクロ”という独特な現象

「新サクラ大戦 the Stage」の新たなる展開、「新サクラ大戦 the Stage ~二つの焔~」の幕がもうすぐ上がる。『サクラ大戦』シリーズの音楽といえば欠かせない存在である巨匠・田中公平に、帝国華撃団の成長、今回から参加する新キャストの魅力、そして、壮大なスケールの2.5次元文化へのビジョンを聞いた。浪漫の嵐が吹き荒れる……!

演者の役作りへの努力、そして新キャストの魅力とは?

――昨年11月の初舞台「新サクラ大戦 the Stage」、今年3月のライブコンサート「新サクラ大戦 the Stage ~桜歌之宴~」、9月の『新サクラ大戦 the Stage 〜桜歌之宴・彩〜』に続く、「新サクラ大戦 the Stage ~二つの焔~」の開幕が近づいています。田中先生の今の率直なお気持ちはいかがでしょうか?

田中公平 演者のみんながどんどんどんどん進化するのを目撃できるのは嬉しいな。最初に中止になったじゃない?(※注:「新サクラ大戦 the Stage」は当初、2020年3月5日から3月8日にかけての公演が予定されていたが、コロナ禍で同年11月に延期された)

――はい。

田中 延期していた8ヵ月の間に、彼女たちが自分たちなりに役作りをどんどんしてくれたのにびっくりしてね。1回目の舞台で、「ああ、ものすごくシンクロしてきたじゃん!」と思ったの。『サクラ大戦』という作品の良いところって、演者と役が最終的に同じになってしまうところなんだけど。前の帝国華撃団だって、カンナさんは最初のうちはカンナさんだったのに、どんどん田中真弓になってしまった(笑)(注:『サクラ大戦』のヒロインの1人、桐島カンナは2メートル近い身長を誇る大柄な空手の達人。一方、キャストの田中真弓は小柄で、当時の舞台ではその見た目のギャップがなにかと話題に)

前作「新サクラ大戦 the Stage」より

――でしたね(笑)。

田中 今回もどんどん、私生活からしゃべっている言葉から、近づいていくんだよね。あざみ(寒竹優衣)なんてもう、普段から冗談で「そうでごじゃる」とか言うしね(笑)。クラリス(沖なつ芽)なんて、普段から佇まいが、ほとんどクラリス本人。びっくりするよ。初穂役の高橋さんは、歌が抜群で、普段はほんわかしてるけど役に入るとめちゃくちゃ凛々しいし、アナ役の平湯さんは、もう立ち姿が美しくて、演技力は半端ない。

――世の中に舞台は数ありますが、『サクラ大戦』の独特な現象ですよね。不思議です。

田中 独特だよね。私は国内も海外も合わせて、ほかの舞台もいっぱい観に行くんだけれど、やっぱり「役をやっている役者さん」って感じ。なんで『サクラ』だけ違うんだろうな。伝統的にそうなっちゃうんだよね。もしかしたら影響しているのかもしれないのが、最初の打ち合わせのときに、全員に言ったのよ。まず「君たちをスタァにします」と。それからもう1つ、「気がついたら役になっています」と。その言葉で暗示を掛けたのかもしれない(笑)。

――素晴らしい曲をお書きになるだけではなく、そんなところでも田中先生のお力が。

田中 でもこれは、広井(王子)さんイズムなんですよ。広井さんは『サクラ大戦』をつくることになったときから、そういうことをずっと周りに言い続けていた。「(演者と役と)どっちが先かわからないようにしてちょうだい?」って。私はそのイズムを引き継いでいるだけなんです。「スタァにします」にしても、そんなに確証はなかった。なんでかっていったら、自分たちが頑張らなかったらスタァなんてなれないんだから。私の力じゃなく、彼女たち5人が根性入れて、本当に頑張っているからですね。

前作「新サクラ大戦 the Stage」より

――神崎すみれ役の片山萌美さんも存在感がありますね。

田中 いやぁ、おっしゃるとおりすごいね。立ち振る舞いとか、普通にいるだけで上品で、「何、この美人!?」って思うもん(笑)。富沢(美智恵)さんが舞台を観に来て、「もうすんごい!すんごい!」って言って帰っていったよ。

――すみれさんご本人が、舞台のすみれさんにお墨付きを。

田中 富沢さんは良い人だから、いつも人を褒めてくれるけど、あのときは本当にテンションが上がってたからね。今回の舞台でも彼女の歌う良いシーンがありますよ。期待してください。

――今回の舞台で初登場する、上海華撃団と倫敦華撃団の新キャストのご印象はいかがですか?

田中 オーディションで決めたんですけど、西田ひらり(ホワン・ユイ)はもう、ちょっと歌っただけで決定でした。民謡の全国大会で賞を獲るような子ですからね。歌が上手いし、こぶしが利くんですよ。中華ものの歌には、こぶしが必ず要るんです。胡弓のようなメロディを歌えないと無理。で、歌を教えるときに、「もっと胡弓みたいにやって」って言ったら、サッとできる。できそうでなかなかできないんだけどね、こういうの。

――民謡と中華風メロディ、スタイルは違ってもベースに対応力があるものなんですか。

田中 それだけじゃなくて、ピアノも彼女は弾けるんで、それが大きいね。音の到達点が彼女はわかるのよ。「この音からこの音までの到達点の間をこぶしで埋めて」っていうと、それができる。到達点がわからない人って、どこにいっていいかわからなくなるんだよね。

前作「新サクラ大戦 the Stage」より

――なるほど!こぶしもそうですが、民族音楽の独特な節回しは西洋音階では語れないものの印象がありますが、むしろそうした表現をするためには、西洋音楽の理論や音階がしっかりわかっていないとできないと。

田中 しかも彼女がすごいのは、こぶしをつけないで歌うこともできること。自然とこぶしが回る人と、意識して回している人は違うんです。ユイは回してる人なんです。

――すごい人がいたものですねえ……。

田中 ランスロットの小松穂葉ちゃんもすごいよ。本人が熱血少女で、面白い性格をしていて、それが佇まいに出てくる。シャオロン(本条万里子)は踊りがすごい。アーサー(楓)は(ミュージカル「美少女戦士セーラムーン」の)セーラージュピターですから、それはもう魅力的ですよ(笑)。モデルもやっていて、173センチある。演技にはまだちょっと硬いところがあるけど、そこがむしろアーサーっぽい。この4人はホント、「よくこんなメンバーが残っていたね」って思える。

――楽しみです。またそれを、先生が丁寧に育てられている印象がお話から伝わってきますね。

田中 ははは。私の周りにいる人は、みんな幸せだといいなって思ってるだけ。だから私、いつも上機嫌なんですよ。ぶすっとしてるとダメですね。嫌なやつが寄ってくるからね。

次ページ:田中公平が考える「2.5次元文化」へのビジョン――。

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP