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2021.11.30

【ライブレポート】2年ぶりのツアーが教えてくれた新しい景色――水瀬いのり“Inori Minase LIVE TOUR 2021 HELLO HORIZON”横浜アリーナ公演レポート

【ライブレポート】2年ぶりのツアーが教えてくれた新しい景色――水瀬いのり“Inori Minase LIVE TOUR 2021 HELLO HORIZON”横浜アリーナ公演レポート

その場にいるすべての人々の念願が叶った瞬間だった。水瀬いのり、実に2年ぶりとなる全国ツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2021 HELLO HORIZON”のファイナル公演。10月17日、会場は横浜アリーナ。そう、昨年に開催を予定していたが、コロナ禍の影響で中止となったツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2020 We Are Now”で立つはずだったステージだ。その後、同年12月に行われたデビュー5周年記念オンラインライブ“Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes”の会場にもなったが、そのときは無観客配信。ファンとともに横浜アリーナでライブを作り上げるのは今回が初となる。万感の思いを込めて実施された、横アリ公演のレポートを、ここにお届けする。

9月より大阪、愛知、福岡、仙台と巡ってきた今回のツアー。そのオーラスにふさわしく、会場のキャパ数は水瀬の単独公演としては過去最大の規模。新型コロナウイルスの感染対策に伴い、収容人数を制限したとはいえ、会場全体に灯る青色のペンライトの景色は壮観だ。そんななか、ライブはOP映像からスタート。広大な草原にポツンと置かれた大きな木箱に腰掛け、上機嫌にハミングしながらスマホで自身のライブ映像を視聴する彼女。そこに次々と書き込まれるファンからのコメントを見ているうちに、想像の羽が広がっていき、彼女の意識は青いペンライトと盛大なコールに包まれたライブ空間へと飛んでいく。そして我に返った水瀬は、居ても立っても居られない様子で立ち上がり、カメラに向かってにこやかに手を振って、映像はフェードアウト。スタッフのツイートによると、この映像のBGMは白戸佑輔が作編曲したとのことだ。

そしてライブは鉄板曲「Ready Steady Go!」で元気いっぱいにスタート。水瀬はステージから客席に突き出したセンターステージの突端、いわゆる“でべそ”と呼ばれるポジションにいきなり登場し、ファンと最も距離の近い場所から「“HELLO HORIZON”ツアー、ラスト横浜、みんなで1つになりましょー!(タオルを)回して!」と声をかける。それに応えて会場中がタオルを頭上に掲げて回し、早くも最高の一体感が作り上げられた。

続いての「ピュアフレーム」は、“君”と久しぶりに再会して楽しいひと時を過ごす歌詞のシチュエーションが、久々の有観客ツアーにぴったりの晴れやかなナンバー。サビで“May be 君が好きだよ”と照れ隠しの愛情を示すところが水瀬らしくもある内容だが、“May be(多分)”という予防線もかき消してしまうほど、この日の水瀬の歌声や笑顔からは、ファンに対する気持ちの強さが伝わってくる。その一方、「Million Futures」ではややシリアスな面持ちで、どんなことがあっても希望ある未来に向けて前進する心意気を、ときに目を伏せて歌の世界観に没頭しながら表現する。

MCで「(ステージに)出た瞬間、目が合った皆さんが一気にウッとなっているのが目に入って、歌う前からもらい泣きしそうになってしまいました」と、1曲目でのセンターステージからの登場について語る水瀬。昨年のツアーが中止となり、「今まで当たり前のようにみんなと楽しい時間を過ごしていたのは奇跡だった」ことに気づいたという。ライブに対する想いもさらに強まっているなか、「1秒1秒を大切に歌を届けられたら」と、改めて今の気持ちを口にする。

そして本ツアーでライブ初披露となった「Morning Prism」では、横ノリの軽快なリズムに体を揺らせながら、朝の空気感にも似た爽やかな美声を届ける。曲中にはクラップパートもあり、オーディエンスも楽曲に合わせてクラップしながら、新しい時間の始まりを喜び合う。スクリーンに投影された煌びやかな映像も相まってか、いつも以上にピュアな輝きを感じられたのが「アイマイモコ」。水瀬はステージ上をゆっくりと歩き、ファン1人1人に目を向けて、お互いの繋がりを確かめ合いながら歌を届ける。

続いてバンド紹介コーナーへ。この日の“いのりバンド”のメンバーは、バンドマスターの島本道太郎(ベース)、藤原佑介(ドラムス)、小畑貴裕(キーボード)、植田浩二(ギター)、沢頭たかし(ギター)の5名。各々が「Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap!」のインストアレンジを演奏しながら、その腕をアピールする。そして純白の華麗な衣装に着替えた水瀬がステージに舞い戻ると、加工ボイスなどエレクトロニックなサウンドをたっぷりと含んだダンサブルなナンバー「クリスタライズ」を披露。会場にはレーザーが飛び交い、先ほどまでとは別世界に来たかのようだ。それに続くはメルヘンチックな曲調でキュートな魅力を全開にした「Well Wishing Word」。“お別れ”をあくまでもハッピーに描いた歌詞を含め、満開の笑顔で歌う水瀬を見ているとグッとくるものがある(ちなみに「クリスタライズ」「Well Wishing Word」はどちらも栁舘周平が作詞・作曲・編曲を担当)。

その後のMCで、新しい衣装について説明。胸元についているストーンは「クリスタライズ」の輝きをイメージ、メッシュ地のスカートとショートパンツを合わせたガーリーかつボーイッシュなデザインは、「Well Wishing Word」に登場する男女それぞれの視点をイメージしたものだという。そんな種明かしに続いては、今回のツアーでライブ初披露の楽曲を立て続けにパフォーマンス。イントロからノスタルジックな雰囲気が漂う「思い出のカケラ」では、“あの日”があったからこそ今の自分、そしてこれからの自分があるということを、溢れんばかりの感情を込めて大切に歌い紡ぐ。彼女の強い想いが会場中に伝播していくような、不思議な感動が込み上げる名唱だった。

 

しとやかなバラード「ソライロ」では、水瀬が立っているセンターステージが青く光り、スモークと合わさってまるで彼女が雲の上で歌っているかのような、幻想的な演出も。さらに物語のように感情の機微の変化が見られた「茜色ノスタルジア」では、センターステージからメインステージへと歩きながら、不器用な恋心を切々と表現。終盤、茜色の照明がステージを照らすなか、笑顔を見せながら想いを届ける水瀬の姿からは、悲喜こもごもあったとしても誰かを好きになる純粋な気持ちは決して自分を裏切らないこと、その大切さがひしひしと伝わってきた。

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