“ありがとう、ずっと隣にいてね”。様々な「富田美憂」に出会える、物語が詰まった1枚に――。1stアルバム『Prologue』ロングインタビュー

声優として目覚ましい活躍をしている富田美憂が、ついに1stアルバム『Prologue』をリリースする。2019年11月にアーティストデビューを果たし、これまでに3枚のシングルを発表してきた彼女。それらの楽曲で見せてきた凛々しい佇まいはもちろん、本作ではさらに多彩な楽曲にチャレンジすることで、大人びた表情からかわいらしい一面までを披露。初めての自身作詞曲「Letter」を含め、様々な“富田美憂”に出会える1枚になっている。歌唱だけでなく制作にも深く関わった彼女が、本作に込めた想いを語る。

新しい物語の始まりと、自身の成長過程を表現した『Prologue』

――アーティストデビューから1年半ほど経ちましたが、デビュー当初と比べて活動に対する意識に変化はありますか?

富田美憂 すごくあります。お客さんの前でちゃんとパフォーマンスができたのは、1stシングルの「Present Moment」のときだけで、2ndシングル「翼と告白」のリリース時期に(新型コロナウイルスの蔓延に伴う)緊急事態宣言が発令されて、リリースイベントなどが全部中止になってしまって。ちょうどその時期に一人暮らしを始めたこともあり、自分自身と向き合う時間が増えたんです。そのときに、一度初心に戻ってみようと思って。例えばお芝居のお仕事であれば、もちろんそれまでも全力投球でお仕事に向き合ってきましたけど、果たして1つ1つのオーディションを絶対に合格する気持ちでやっていたかと聞かれると、そうはなれていなかったかもと思ったんですよね。

――経験を積んできたことで、馴れみたいな部分も出てくるでしょうしね。

富田 そうなんです。この1~2年でフレッシュな後輩の子たちが増えて、その子たちの姿を見ていると、「なんでも全力で頑張ります!」という気持ちを忘れてはいけないと思ったんです。テープオーディションの場合、作品の資料が私の手元に届いてからテープを録るまでに大体1週間ぐらいの猶予があるんですけど、じゃあその1週間を死ぬ気で頑張って、「絶対に私がこの役を獲ってやる!」くらいの気持ちでやらないとダメだと思って。それって歌のお仕事も一緒だと感じたんですね。

――というのは?

富田 コロナ禍以降は、ほぼオンラインでのパフォーマンスになったので、こちらもより熱量をもって歌わないと、モニター越しに観ているお客さんとの間にギャップが生まれると思うんです。以前、私がお世話になっているダンスの先生が、「ライブはディズニーランドと一緒で、お客さんを現実に返してはいけない」と教えてくださって。それを実現するためには、先を急ぐというよりも、目の前の1つ1つのお仕事に全力で取り組むことが、きっとこれからに繋がる。それがこの1年半かけて出した、自分なりの答えでした。

――でも、それってしんどくないですか?

富田 しんどくなるんですよ(笑)。しかも私は、仕事のことを忘れられるような趣味もなくて、全部お仕事に繋げて考えてしまうから、たまに「しんどいなあ」と感じることもあります。でも、初心に戻って地道に頑張ったぶん、今回のようにアルバム制作のお話をいただけたり、オーディションに受かったときの喜びが大きくなるので、頑張っています。

――なるほど。では、今回のアルバムに関しても、全力で向き合われたわけですね。

富田 アルバムはファンの皆さんも待ってくれていたので、半端な気持ちではいけないと思って、それこそタイトルも楽曲の収録順も自分ですごく悩みながら考えました。1曲ごとのコンセプトについても、スタッフの皆さんと一緒に考えさせていただきました。時間をかけてこだわったものにすれば、そのぶん皆さんも喜んでくれるだろうし、努力してきた時間は絶対に裏切らないと思うので。

――アルバムタイトルの『Prologue』には、どんな意味を込めたのでしょうか。

富田 1stアルバムは人生で1回しか出せないものですし、ある意味では1つの区切りになるものだと思ったんです。新しいスタート地点じゃないですけど、ここから次の作品に続くとなったときに、今の自分が出せる全力を越えられるように、自分を鼓舞するという意味でも、「序章」や「始まり」を意味する言葉を付けさせていただきました。5~6個くらいタイトル案を考えたんですけど、最終的に一番シンプルな『Prologue』にしまして。

――アルバムタイトルを発表する際、クイズ形式で別のタイトル候補もいくつか明かしていましたね。『Nestle Case』や『Can’t get out』といったタイトルがありましたが。

富田 あれも全部私が考えてボツになった案です(笑)。『Prologue』というタイトルには、別の意味もあって。今回のアルバムでは、収録曲ごとに別々の主人公を設定して、全10曲で10役を演じるように、色んな表情を見せて歌えたらと思ったんです。そういう物語的な部分にかける意味でも、物語の最初によく使う「プロローグ」という言葉をタイトルにしました。

――10曲中7曲が新曲になりますが、富田さんの要望やアイデアも盛り込まれているんですか?

富田 そうですね。自分の中にもなんとなく「こういう曲を歌ってみたい」というイメージが何個かあったので、マネージャーや日本コロムビアの方から「どういう曲を歌いたいですか?」と聞かれた際にお伝えしました。例えば「片思いはじめました」は、少女マンガのようなピュアな恋模様を描いた、甘酸っぱい、清涼飲料水みたいなシュワっと感のある曲、という私のリクエストからコンペをしていただいて。あとは、自分のアーティストとしての強みは何かを考えたときに、普段声優のお仕事をしているからこその表情の出し方、声色の変化が私の強みになると思ったので、あえて全部違うタイプの曲を選ばせていただきました。

――たしかに今作には色んな表情の富田さんが詰まっていて、きっとやりたいことがたくさんあったんだろうなと感じました。

富田 はい!(笑)。シングルではいつも、表題曲とカップリング曲とのギャップ、二面性を喜んでいただけたので、今回も「えっ!こんな曲も歌えるの?」とびっくりしてもらえたら嬉しいなと思って。

――富田さんは、ここ数年、声優としても色んな役柄に挑戦しているので、その経験が活きた部分もあったのでは?

富田 歌のお仕事とお芝居のお仕事、両方がお互いに良い要素を交換し合えているように思います。ここ1~2年で演じられる役幅が広がったことは自分でも感じていて。例えば、アルバムのリード曲の「ジレンマ」も、1stシングルの頃には多分歌えなかったと思うので、その意味では声優としての経験が繋がっているように感じます。

――1stシングルのレコーディング当時は19歳、現在は21歳ということで、その1~2年は富田さんにとっても大きかったんでしょうね。

富田 まさしくその通りで、今回のアルバムのテーマの1つに「成長過程」というものがあるんです。19歳と21歳の狭間と言いますか、子供から大人に切り替わった瞬間を1stアルバムに残していただけるのは貴重な機会なので、アルバムを1枚通して聴くことで、昔から応援してくださっているファンの方も一緒に、今までの思い出を振り返ったり成長が見えるアルバムにしようと思って。なので1曲目はデビュー曲の「Present Moment」、2曲目はあえて大人っぽい「ジレンマ」にしました。

――曲順も含めて「成長過程」を見せられるものにしたかったと。

富田 はい。だから、アーティストとして一番最初にレコーディングした「Present Moment」から始まって、そこから色んな曲を歌って得た経験を経て、最後は私が初めて作詞に挑戦した「Letter」で締める構成にしました。

次ページ:リード曲「ジレンマ」で見せる、これまでになく大人っぽい世界観

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