特別編放送直前!TVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』の音楽を手がけたミト(クラムボン)とDÉ DÉ MOUSEが語る、『ワンエグ』の魅力!

今年1月から放送され、あの野島伸司が原案・脚本を務めることでも話題を集めたTVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』。その複雑かつ衝撃的なストーリーもさることながら、クラムボンのミトとDÉ DÉ MOUSEのタッグによる劇伴にも大きな注目が集まった。3月の本編終了後、特別編が直前に控えるなか、改めてこの二人に『ワンエグ』の音楽についてたっぷりと話を聞いた。

DÉ DÉくんとコライトするという話になって、正直ホッとした(ミト)

――今回はTVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』(以下『ワンエグ』)の劇伴を担当されたお二人にお集まりいただきました。特別編の放送直前ですが、お二人もその内容はまだ知らないんですよね? 第12回のエンディングからどうなるのか気になるところかと思いますが……。

ミト 第12回のラストで、ファンの人たちは「おいおいおい」となったんじゃないかな。

――たしかにまだ解決されていないこともありますからね。

ミト 『ワンエグ』って、野島伸司さんのシナリオもそうですけど、伏線がたくさん点在しているから、どこをどう拾ってどう着地させるのかが捉え方によって変わってくるコンテンツなのかなって思うんですよ。なので気づいていないままその伏線を回収しているんじゃないかっていう考察もありうる。90年代のドラマやアニメにあった奥ゆかしさみたいな、それが自分にとっては心地良いというか。終わっているんだけど、それを飲み込めているのか?って問いかけられている気がして。

――たしかに。それこそ90年代の野島脚本のドラマを通過している人はそういうメンタリティになりますよね。一方、作品のファンを公言するDÉ DÉさんとしてはいかがですか?

DÉ DÉ MOUSE もちろん楽しみなんですけど、いちファンとしていうと……特別編が怖い。特別編で色々回収されるのが怖いんですよ。結局どっちに転がっても怖いんですけど、観たあとに自分がどういう気持ちになるのかわからない。それなら投げっぱなしで終わってほしいという気分もあって、なんというか昔のヨーロッパの映画のような。

ミト 正直な話、自分も大団円で終わってほしいと思っていないところもあるんですよね。膨らんだ世界のままならあとは自分で広げられるし、2020年代にそれをできるのはすごいなって。

DÉ DÉ 僕的には夢オチで終わってくれてもいいなって(笑)。

ミト すごい人が劇伴をやっているなあ(笑)。

――それぞれ複雑な想いを抱えていますね(笑)。それは『ワンエグ』がそうさせる作品であるからこそだと思いますが、改めて本作の劇伴の依頼が来たとき、お二人はそれぞれどう思ったのでしょうか?

ミト 穏やかじゃないというか、普通のアニメにはならないだろうなって感じた記憶があります。野島さんが手がけたドラマを通過した側からすると、「きっと観ている人に何かしら傷跡を残すんだろうな」という予想はしていましたね。だから、今回DÉ DÉくんとコライトするという話になって、正直ホッとしたのはあったかも。

――ホッとした、ですか。

ミト 傷跡を残すような音楽を、自分の持っているカードでどこまで表現できるんだろうというのは正直不安だったので。私はその前からもしアニメ作品を誰かとコライトでやるとしたらDÉ DÉくんがいいって言っていたので、これはもう決まっていたんだなっていう。DÉ DÉくんとだったら、普段作っているアニメの劇伴というカードを持ちながらこの作品と向き合えるのかなって。

――DÉ DÉさんはいかがでしたか?

DÉ DÉ 最初の打ち合わせでストーリーの概要を聞いたんですけど、よくわからなかったんですね。「ちょっとゲームっぽいな」って思ったくらいで。なんなら僕は脚本をまったく読んでいないので、放送を観て「こういう話なんだ」って毎回思っていました。

若林監督が感覚派で、それを言語化するのが藤田音響監督(DÉ DÉ)

――聞くところによると、DÉ DÉさんは劇伴を作る際には脚本を読まないで作られるとか。

DÉ DÉ 今後劇伴のお仕事があっても、「頼むから読んでくれ」って言われない限りは読まないです(笑)。そしたら楽しみなくなっちゃうから。

――逆にミトさんは脚本などの情報を見ながら作られるんですよね。

ミト 僕は普通の人の倍くらい読んでいるかも。

――制作の際に脚本やコンテを自動スクロールして見ながら曲を書くと聞いたのですが……。

ミト そうそう。iPadに自動でテキストとかが流れるアプリがあるんですよ。クイックタイムを自分で作るみたいな。その流れるタイミングに合わせてシーケンスを走らせるというか。

DÉ DÉ それすごいよなあ。

ミト 私の場合は何か文字を見たりとか、言われているオーダーや絵などから情報を拾って書いていくんだけど、なんでかというと、言われたものを完璧に作ることからスタートするから。逆にDÉ DÉくんがあまり情報を入れないで、キャラクターの絵を見るだけで作るというのも腑に落ちるんですよ。絵って文字がないぶん音楽的なものと近しいんですよね。それで読解できる人もいるし、私みたいにロジックで捉える人間もいる。

――なるほど。

ミト 劇伴の現場ってそういう意識や感覚がある種乖離していないと拾いきれないメニューもあるわけですよ。『ワンエグ』も主要キャラクターが四人もいて、四人全員の性格を全部汲み取れるようになるなんて、なかなか難しいと思うんです。私は普段から山内真治音楽プロデューサーにもそう言っていて。アニメってそのシーンのカットで空気が変わったりキャラクターの性格も変わってくるわけで、それは一人でできなくもないけど、ともすればちょっと内包しすぎちゃうというか、そのコンテンツに対して囲い込んじゃう感がある。なので劇伴にももっと色んな目線があればいいなっていうのがあったし、それをやっているのが例えば今のハリウッドだったりするし。

――それが今回DÉ DÉさんと一緒に作る経緯にもなったわけですね。お二人による劇伴制作は、若林信監督と藤田亜紀子音響監督との打ち合わせがあってそれが5時間以上にも及んだと聞いたのですが。

ミト 多分、二度とあんなに長いメニュー打ちはしないかな。アニメ劇伴が初めてのDÉ DÉくんの前ですごいことしちゃったなって(笑)。

DÉ DÉ 僕はひよっ子なのでまだまだやりますよ!

ミト おそらくですけど、劇伴制作をある程度こなしてらっしゃる方だったら、先方からの一言二言とリファレンスをもって帰って確認すれば「大丈夫です」ってなるんですよ。でも今回は私が戦犯的なところがあったんですけど、DÉ DÉくんが初めてのアニメ劇伴だったので、丁寧にできるところは丁寧に進行したいなと。結構突っ込んでやったほうがいいなと思っていたら、藤田音響監督もそういうところにしっかり応えてくださり、さらには若林監督からも抽象的なオーダーがいっぱい出てきたんですよ。藤田音響監督がリファレンスを出してくれたのに対して、これは違うなって。

DÉ DÉ 例えば、「ここは『ファンタスティック Mr. FOX』みたいな感じですね」って、YouTubeを開いて、「あ、違いましたね」とか(笑)。でも、これじゃないんだっていうのはわかってよかったですね。ミトさんもわかると思うんですけど、感覚的なオーダーって難しくて。

ミト わかる、わかるよ……。

DÉ DÉ 「こんな感じで」って言われると、僕が考える“こんな感じ”と先方が考える“こんな感じ”にズレがあるかもしれないから、いつも「参考になる曲をください」って言うんですよね。CM音楽の作曲をやっていたときにそういうズレが生じたことがあって、それがないように先方に「こいつしつこいな」って思われるくらいやるんです。だから今回は若林監督が感覚派で、それを言語化するのが藤田音響監督みたいな感じだったのはすごくありがたかったですね。

――それだけ入念に打ち合わせた結果、しっかりとコンセンサスがとれたと。

ミト それこそ第1回のラストで(大戸)アイちゃんが走るときに流れる「Brand-new world」は、最初のメニュー打ちであの曲がテーマ曲的になるって話をして、本来だったら何度かリテイクが来るものなんですけど、ワンリテイクで済んだんですよね。

DÉ DÉ でも相当不安でしたよ。表現者って本来「俺がいいものをみんなに見せたい」っていうのがあるからそれを表に出すんだと思うんですけど、長い間やっていると自分の感覚って正しくないんじゃないかって思うようになって。

ミト わかるわかる。

DÉ DÉ 世間の良いものと自分が良いと思うもののズレを感じるようになると、自分の感覚が信じられなくなるんですよ。

ミト それは活動していくとどんどん増えてくるよね。

DÉ DÉ そうなんです、年々増えてきて。これでいいのかっていうのがわからなくて。そんな気持ちになっていたときに『ワンエグ』の劇伴を作ったので、リファレンス通りに作ったはずなのに、「何か違うな」って。そこからもっと自分を解放して作ったつもりなんだけど、これが合っているのかもわからない。

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