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REPORT

2021.05.08

甜花のつよさと、ふたりっきりのアルストロメリア。“THE IDOLM@STER SHINY COLORS 3rdLIVE TOUR PIECE ON PLANET / TOKYO” DAY2レポート

公演ごとに顔ぶれが変わるソロ楽曲ブロックは、涼本あきほの「Damascus Cocktail」からスタート。カメラに背中を向けて登場した涼本は、情熱的なイントロにぴったりのダンスで魅せる。放課後クライマックスガールズにおける夏葉が、無敵の5人の中ではしゃいで弾けてみせる姿だとすれば、「Damascus Cocktail」で表現されるのは等身大の有栖川夏葉に近く思える。吐息混じりの“見せてあげるわ”からニュアンス重視のダンスで見せたつややかさは新境地と言ってもいいものだった。MCでの涼本の「力強い歌詞に、夏葉の強いだけじゃない甘い歌声が混ざってカクテルみたいになってる」という的確な表現の美しさも記憶したい。

岡咲美保は「あおぞらサイダー」を披露。背を向けた岡咲が頭上でキュートに開閉する手のひらが、耳に心地よいコーラスと共に炭酸の泡がぱっとさわやかにはじける様子を表現する。1番では“聞いてる?”“知りたい?”とちょっとわがままで小悪魔的な問いかけになっているAメロが、2番では“あれ?”“今日すっごく楽しかった!”と喜怒哀楽が洪水のようにあふれるフレーズに変わる。「すっごく楽しかった」のはじけるような台詞の中には刹那のウィンクが織り込まれ、躍動する“最近たくさん頑張ったから”のフレーズはCD音源以上にはっちゃけた感じにアレンジ。そこに表出されている感情やテンションの方向性は明確なのに、その奥にある真実はなかなか見通せない……という市川雛菜そのものを体現するようなパフォーマンスだ。歌い終えた岡咲の「リハーサルだと正直余裕かも? わたしつよい! って思ってたのに、本番って緊張するんだね!」という言葉も雛菜らしさ満点だった。

成海瑠奈は「プラスチック・アンブレラ」を披露。成海が演じる三峰結華は一見軽妙でつきあいやすい人物像の奥に、とても複雑でセンシティブな想いを抱えている少女だ。東京公演で髪を下ろしてストレートヘアーにした成海の姿は、“NOT≠EQUAL”の三峰結華を思い出させる。

降りしきる雨の演出の中、アンティーク調の檻のような装飾をほどこしたビニール傘を差した成海がステージに登場。アンティーカのゴシックな衣装とのとりあわせが不思議な非日常感をかもしだしている。メロディアスで壮大なサウンドの中、独白のように語られる三峰結華という少女の想い。“わかってほしい”“わかられたくない”“わからないでいてね”の3連でなんとも言えない笑みを浮かべ、その笑顔の色がすっと消える流れは成海ならではの一流の感情表現だ。転調後、歌詞の流れに合わせて傘を閉じると、傘をステッキに見立ててダンス。やがて再び傘を差した小さな影の向こうには、雨上がりの虹がかかる。憂いの気配はそのままに、しかし美しい余韻が残るラストだった。

関根瞳は「ありったけの輝きで」を披露。まずは曲の並びの話をすると、どこか影の残る空に雨上がりの虹がかかって終わった「プラスチック・アンブレラ」のあとに、キラキラの虹に包まれた街で“もう傘はいらない気がしてる”と歌う「ありったけの輝きで」を歌う構成が見事だ。「プラスチック・アンブレラ」のどこか宙に浮いた(だからこそ美しい)余韻を、別の楽曲が放つ輝きで回収してみせた。

まっすぐに王道を行き、輝きで世界を満たすパフォーマンスが最後に控えてくれているという安心感は、関根と真乃が283プロダクションという場所で担う役割とどこか重なるものだ。そして関根が明るく素直で誰からも愛される櫻木真乃像を全身で体現しているからこそ、ラスト前の転調部で、真乃がかつての臆病な自分を思い起こす歌詞を歌う時の少し切なげな表情がさらに印象的になる。そこから再び大輪の笑顔を取り戻し、ありったけの輝きとともにステージを締めくくるのだが、ライブ終わりの関根の涙と想いを知ってから見返すと、また違った感慨を覚えるパフォーマンスだった。歌い終えた関根は、真乃の誕生日に大切なソロ曲を歌えた喜びを語っていた。

アンコールでは、スクリーンに全国のプロデューサーたちの声なき呼び声があふれる中、七色のユニットになった283プロのアイドルたちが再び登場。そこには前日に続き、新ユニット・SHHisより七草にちか役の紫月杏朱彩、緋田美琴役の山根 綺の姿があった。「Resonance+」の冒頭でアイドル(キャラクター)イラストとともに映し出されたふたりは、髪型や雰囲気を含めてにちかと美琴をよく再現している。サビの「だから精一杯の声を」のフレーズで生き生きと舞う山根の姿が印象的で、いつか作品の世界の美琴もこんな風に自由に、仲間たちとステージで躍動してほしいと感じた。

初ステージの2日目に立つふたりを見ていると、前日のお披露目だけでも有観客で迎えることができたささいなタイミングのいたずらに、少しだけ感謝したくなった。雪のイベントが、嵐のライブがいつしか忘れられない記憶になるように、22人が支え合って作り上げた無人のライブが、いつか大切な思い出になることを願いたい。

Text by 中里キリ

THE IDOLM@STER SHINY COLORS 3rdLIVE TOUR PIECE ON PLANET / TOKYO DAY2
2021.4.25 東京ガーデンホール
<セットリスト>

M01:リフレクトサイン(Team.Luna/菅沼千紗、成海瑠奈、結名美月、丸岡和佳奈、前川涼子、北原沙弥香、田嶌紗蘭)
M02:プラニスフィア ~planisphere~(Team.Stella/関根 瞳、礒部花凜、河野ひより、黒木ほの香、田中有紀、土屋李央)
M03:SOLAR WAY(Team.Sol/峯田茉優、八巻アンナ、永井真里子、涼本あきほ、幸村恵理、和久井 優、岡咲美保)
M04:Spread the Wings!!(シャイニーカラーズ)
M05:Twinkle way(イルミネーションスターズ/関根 瞳、峯田茉優)
M06:ダブル・イフェクト(アルストロメリア/黒木ほの香、前川涼子)
M07:五ツ座流星群(放課後クライマックスガールズ/河野ひより、永井真里子、丸岡和佳奈、涼本あきほ)
M08:Black Reverie(アンティーカ/礒部花凜、菅沼千紗、八巻アンナ、成海瑠奈、結名美月)
M09:Hide & Attack(ストレイライト/田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香)
M10:いつだって僕らは(ノクチル/和久井 優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保)
M11:純白トロイメライ(アンティーカ(礒部花凜、菅沼千紗、八巻アンナ、成海瑠奈、結名美月)
M12:Anniversary(アルストロメリア/黒木ほの香、前川涼子)
M13:あの花のように(ノクチル/和久井 優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保)
M14:Damascus Cocktail(有栖川夏葉(CV.涼本あきほ))※以下、ソロ曲は公式表記による
M15:あおぞらサイダー(市川雛菜(CV.岡咲美保))
M16:プラスチック・アンブレラ(三峰結華(CV.成海瑠奈))
M17:ありったけの輝きで(櫻木真乃(CV.関根 瞳))
M18:Destined Rival(ストレイライト/田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香)
M19:学祭革命夜明け前(放課後クライマックスガールズ/河野ひより、永井真里子、丸岡和佳奈、涼本あきほ)
M20:Happy Funny Lucky(イルミネーションスターズ/関根 瞳、峯田茉優)
M21:Multicolored Sky(シャイニーカラーズ)
-ENCORE-
EN1:Resonance+(シャイニーカラーズ)
EN2:Color Days(シャイニーカラーズ)
EN3:Dye the sky.(シャイニーカラーズ)

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

関連リンク

「アイドルマスター シャイニーカラーズ」公式サイト
https://shinycolors.idolmaster.jp/

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